智徳の轍 wisdom and mercy

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悼むべきではない輪廻転生談(アナヌソーチャ・ジャータカ)

2004-10-04 | ☆【経典や聖者の言葉】



 これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、夫人が死んだ一人の資産家に関して講演なさったものです。
 彼は夫人が死んだせいで、水浴することもなく、食べることもなく、仕事に従事することもなくなってしまったそうです。彼は、疑いなく、不運な出来事に征服されて、火葬場に行き、悲嘆してさまよい歩きました。
 しかし、彼の内側には、屋根の上の灯明のように、真理の流れに入る道の土台が輝いていました。明け方、尊師は世界について考えると、彼をご覧になりました。
「このわたしを除いて、不運な出来事を取り去り、真理の流れに入る道を授ける者は他にだれもいない。わたしは彼の助けとなろう。」
 そして、食事の後に施し物のための巡回から戻り、後に出家修行者を案内して、彼の家のドアに達しました。資産家は聞いて、出迎えなどの尊敬がなされました。用意された座にお座りになり、資産家が近付いてうやうやしくあいさつし、そばに座ったとき、
「帰依信男よ、どうして黙っているんだ。」
とお尋ねになりました。
「はい、尊師よ、わたしの夫人が逝ったのです。そのことを悼んで、思念しているのです。」
と申し上げると、
「帰依信男よ、壊れる法則にあるものは、まさしく壊れる。それが壊れたとき、思念することは適していないんだよ。そして、大昔からの賢者たちは、夫人が逝っても、『壊れる法則にあるものが壊れた』ということで、思念しなかった。」
 このように言って、彼に懇願されたので、物語をお話しになったのです。

 その昔のことは、第十節の『小覚醒輪廻転生談』に説明されています。ここではこれは要約です。
 その昔、バーラーナシーで、ブラフマダッタが君臨していたころ、到達真智運命魂は祭司の家に存在するようになりました。青年に達すると、タッカシラーですべての学識を獲得し、父母の面前に行きました。この輪廻転生談の中で、偉大な生命体は、神聖行をなす少年だったのです。そこで、彼の父母は告げました。
「妻を求めよう。」
「わたしには家庭生活は必要ありません。わたしはあなた方の臨終に際して、出家します。」
到達真智運命魂はそう言いましたが、彼らに何度も懇願されたので、一つの金の容姿を製作して言いました。
「このような少女を得たら、受け入れましょう。」
そこで彼の父母は、
「その金の容姿を屋根のある乗り物の上に置いて行きなさい。バラリンゴの大陸の平原を吟味し、このような祭司の少女を見た場合には、この金の容姿を施し、彼女を家に連れてきなさい。」
と、大きな従者団と共に人々を放ったのです。
 さてそのとき、一人の功徳のある生命体が、神聖天の世界から死んで、カーシ王領の町村の八億の財産がある祭司の家の少女となって存在するようになり、彼女はサンミッラバーシニーと名付けられました。彼女が十六歳になったとき、綺麗で、愛敬があり、愛欲神の天女に似ていて、すべての顕著な特徴に恵まれていました。また、彼女には、肉欲による心が以前に生じたことはなく、絶え間なく神聖行をなしたのです。
 さて、彼らは金の容姿を持ってさまよい歩き、その村に達しました。ここで、人々はそれを見て言いました。
「不確かではありますが、祭司の娘である、少女サンミッラバーシニーがここにとどまっていますよ。」
 人々はそれを聞いて、祭司の家に達し、サンミッラバーシニーに求婚しました。そこで、彼女は父母に伝言を届けたのです。
「わたしはあなた方の臨終に際して、出家します。わたしには家庭生活は必要ありません。」
彼らは言いました。
「娘よ、お前は何をなすつもりなんだ。」
そして、金の容姿を持って、大きな従者団と共に、彼女を放ったのです。
 到達真智運命魂とサンミッラバーシニーは、双方とも望んでもいないのに、結婚したのです。彼らは、一つの寝室で一つの寝台に横たわったとしても、お互いに肉欲によって見ることはなく、二人の向煩悩滅尽多学男、二人の神聖天のように、一つの場所に住んでいました。
 間もなくして、到達真智運命魂の父母が逝ったのです。彼は彼らの葬式を行なってから、サンミッラバーシニーを呼びにやって言いました。
「親愛なる妻よ、わたしの家の資産が八億、お前の家の財産が八億と、こんなにたくさんのこの財産を持って、家族の財産と屋敷を所有しなさい。わたしは出家するつもりだ。」
「殿方、あなたが出家するならば、わたしも出家します。わたしはあなたをあきらめることはできません。」
「それじゃあ、来なさい。」
 そこで、すべての財産を布施の口に解放し、ひとかたまりの唾のように繁栄を捨てたのです。
 そして、雪山に入り、双方とも苦行者として出家して、野生の根が実となるものを食物とし、長い間住んだ後、酸っぱいものと塩を用いるために雪山から降りて、規則正しい順序でバーラーナシーに達して、国王の庭園に住みました。
 彼らがそこに住んでいると、優美な女の托鉢修行者は、まずく雑多な食事を食べて、赤痢という病気に冒されました。彼女はちょうど良い薬を得られないまま、衰弱しました。
 到達真智運命魂は、時が来たので、一軒一軒施し物の食事のために歩き回り、彼女を抱いて市の門へと導き、一つの小屋で平たい厚板に横たえてから、自ら施し物の食事のために入りました。彼女はそこで、出かけることなく逝きました。多くの人は、女の托鉢修行者の容姿の立派さを見ると、周りに輪を作り、泣き叫び悲嘆しました。到達真智運命魂は、施し物の食事のために歩き回って帰ると、彼女の死んだのに気付いて言いました。
「壊れる法則にあるものが壊れた。すべての構成要素は無常であり、これもまた同じことなのだ。」
 そして、彼女を横たえた平たい厚板に座り、雑多な食事を食べて、口をゆすぎました。周りに輪を作ってとどまっていた多くの人が尋ねました。
「尊者よ、この女の托鉢修行者は、あなたにとってどういう方なのですか。」
「家庭生活を送っているとき、わたしの喜びの基礎でした。」
「尊者よ、わたしたちは抑えることすらできずに、泣き叫び悲嘆しているのに、なぜあなたは泣き叫ばないのですか。」
「生きているときは、この人はわたしにとって重要な人でした。今は、高い世界と結ばれたので、何でもありません。異なった人の力の及ぶところにあるのに、どうしてわたしが泣き叫びましょうか。」
と、到達真智運命魂は、多くの人に法則を説くと、これらの詩句を唱えました。

  あなたは数多くの者の中に存在している。
  彼らの中にいれば、わたしなど何になろう。
  だから不運な出来事ではない。
  この親愛なるサンミッラバーシニーを。

  もし存在しなくなるごとに、
  いちいち悼むならば、
  いつも死の神の力が及びつつある、
  自分自身を悼みなさい。

  とどまって、座って、
  横たわる遊行者は、
  見続け、まばたきする間でも、 
  そこで青春を記憶修習することはない。

  そこで、自分自身で宗教的義務の支配下となり、
  離脱し不確かさのないとき、
  まさに生き残っている者こそを気の毒に思いなさい。
  離れた者を悼むことはない。

 このように、偉大な生命体は四つの詩句によって、無常性の行為をわからせ、法則を説きました。多くの人は女の托鉢修行者の葬式を行ないました。到達真智運命魂は、雪山に入り、静慮と証智を生じさせて、神聖天の世界を最終地点としたのです。

 尊師はこの教えをもたらした後、種々の真理を説明し、輪廻転生談に当てはめられたのです。真理を完達したとき、資産家は真理の流れに入る果報を確立しました。
「そのときのサンミッラバーシニーはラーフラの母であり、さて、その苦行者は、まさにわたしなのである。」


チェーティヤ輪廻転生談

2004-10-03 | ☆【経典や聖者の言葉】
チェーティヤ輪廻転生談(チェーティヤ・ジャータカ)


 これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたとき、デーヴァダッタが大地に入り込んだことに関して講演なさったものです。というのは、その日、法則の広間で会話が始まっていたからです。
「友よ、デーヴァダッタは嘘の言い方をなし、大地に入り込み、超期間地獄を最終地点とするようになったのだ。」
 尊師は近づいて、
「向煩悩滅尽多学男たちよ、君たちは今ここで、何の談話のために一緒に座っているんだ?」
とお尋ねになりました。
「これしかじかについてです。」
と申し上げると、
「向煩悩滅尽多学男たちよ、今だけでなく前世においても、まさに大地に入り込んだのだ。」
と言って物語をお話しになったのです。

 その昔、第一のカルパのとき、マハーサンマタという名前で、数えられないほどの寿命の国王がいました。彼の息子はロージャという名前で、ロージャの息子はヴァラロージャという名前で、彼の息子はカルヤーナという名前で、カルヤーナの息子はヴァラカルヤーナという名前で、ヴァラカルヤーナの息子はウポーサタという名前で、ウポーサタの息子はマンダーターという名前で、マンダーターの息子はヴァラマンダーターという名前で、彼の息子はチャラという名前で、チャラの息子はウパチャラという名前でした。アパチャラというのもまさに彼の名前でした。
 彼はチェーティヤ国の王領にあるソッティヴァティ市に君臨していたとき、四つの如意を具足していました。上方に浮揚して空間を進み、四方で四人の愛欲神の息子たちが同様に剣を手に持って彼を守り、身体からはビャクダンの香り、口からは青蓮華の香りを放っていました。
 彼にはカピラという名前の主席祭司である祭司がいました。さて、祭司カピラの弟はコーラカランバカという名前で、子供のころから国王と同好の友であり、一緒に同じ大師の家で学識を学んだのでした。国王はまさに少年であったとき、
「わたしが王権を得たならば、君に主席祭司の地位を与えよう。」
と約束していました。しかし、彼が王権を得ても、父の主席祭司である祭司カピラを主席祭司の地位から失墜させることができなかったのです。
 さて、主席祭司が国王自身の奉仕に来ているとき、彼に対して国王は尊重し、敬意を払った行為を見せました。祭司はそれに気づき、
「国王がまさしく同様に若い者たちと一緒であれば、心づかいは楽になるだろう。わたしは国王に許可を求めて出家しよう。」
と思念して、
「愛欲神のような王よ、わたしは年老いました。家には息子がいるので彼を主席祭司にしてください。わたしは出家するつもりです。」
と、国王に許可を求めて息子を主席祭司の地位につけさせたのです。彼は国王の庭園に入り、尊い人の禁欲生活に出家し、静慮と証智を生じさせ、息子と近い場所である、まさにそこで生活しました。コーラカランバカは、
「この者は出家したが、わたしに特別な地位を譲ってくれなかった。」
と、兄に対して反感を持っていました。ある日、くつろいだ会話をしているとき、彼は国王にこう言われました。
「コーラカランバカよ、君は主席祭司の地位についていないな。」
 そして言いました。
「はい、愛欲神のような王よ、ついていません。わたしの兄がつかせています。」
「君の兄は出家したのではないのか。」
「はい、出家しました。しかし、特別な地位は息子に譲ったのです。」
「それでは、わたしが君につかせよう。」
「愛欲神のような王よ、歴代継承されてきた特別な地位を兄から取り去って、わたしがつくというようなことはできません。」
「それでは、わたしが君を兄にして、相手を君の弟にしよう。」
「愛欲神のような王よ、どのようにしてですか。」
「嘘の言い方をなすのだ。」
「愛欲神のような王よ、気づいていないのですか。わたしの兄は偉大で驚くべき法則を具足し、神秘力を身につけています。彼はあなたを驚くべき法則によって惑わすでしょう。四人の愛欲神の息子たちは消え去るようになるでしょう。あなたの身体と口からの香りは悪臭のようになるでしょう。あなたは空間から降ろされ大地にとどまるようになるでしょう。あなたは大地に入り込むようになるでしょう。そのとき、あなたの話通りになすことはできないでしょう。」
「あなたはそのように認知してはならない。わたしはなすことができるのだ。」
「愛欲神のような王よ、あなたはいつなすのですか。」
「これから七日後だ。」
 その話は市のすべてに普通に知れ渡るようになりました。
「国王は嘘の言い方をなし、兄を弟にして特別な地位を弟に与えるそうだ。いったい嘘の言い方というものはどのようなものだろうか。青だろうか、それとも黄色などの中の、ある色彩だろうか。」
と、このように多くの人々に考えが生じました。そのとき真に世界は真理の言い方をしていたときであり、嘘の言い方というものはこのようであるということでさえ、人々にはわからなかったのです。主席祭司の息子もその話を聞いて、父に伝えました。
「お父さん、国王は嘘の言い方をなし、あなたを弟にし、わたしたちの特別な地位をわたしのおじに与えるそうです。」
「息子よ、国王は嘘の言い方をなしても、わたしたちの特別な地位を取り去ることはできないだろう。ところで、どの日になすのだろうか。」
「これから七日後だそうです。」
「それでは、そのとき、わたしに告げなさい。」
 七番目の日に多くの人々は、
「わたしたちは嘘の言い方を見よう。」
と、王宮前の広場に集まり、寝台を重ねたような見物席が組み立てられました。息子は行って父に告げました。装飾され着飾った国王は出て、王宮前の広場の多くの人々の真ん中で空間にとどまりました。苦行者は空間を進んで国王の前方に皮の敷物を広げ、空間に蓮華座で座りました。
「大王よ、あなたが嘘の言い方をなし、弟を兄にして、彼に特別な地位を与えようとしていること、それは実際に本当ですか。」
「はい、大師よ。わたしはそのようにしようとしています。」
 それで、苦行者は彼に忠告し、
「大王よ、嘘の言い方というものは恐るべき徳の破壊者です。それは四つの離別である苦しみの世界にあなたを生じさせます。国王というものが嘘の言い方をなすならば、法則を殺すことになります。それは法則を殺し、まさに自らを殺します。」
と言って、第一の詩句を言いました。

   まことに殺された法則が殺し、
   殺されていないものは何も殺さない。
   全くこの理由ゆえに、
   法則を殺してはならない。
   殺された法則があなたを殺さないように願う。

 それで、彼にさらに同様に忠告し、
「大王よ、もし嘘の言い方をなすならば、四つの如意は消滅するでしょう。」
と言って、第二の詩句を言いました。

   偽りを話している者から、
   愛欲本質神たちは立ち去る。
 尋ねられた質問に気づいていながら、
 それとは違って回答するならば、
 口は臭いにおいを発し、
 そして、天の場所は奪われる。

 それを聞いて、国王は恐怖し、コーラカランバカを見ました。それで、彼は国王に、
「大王よ、恐怖してはなりません。あなたがまさに最初に、わたしにこれを語ったのではないのですか。」
などと言いました。国王はカピラの発言を聞いても、まさに自分自身の話を推し進め、
「尊者よ、あなたは弟で、コーラカランバカが年上です。」
と言いました。それで、彼の嘘の言い方と共に、四人の愛欲神の息子たちは、
「こんな嘘つきの保護は引き受けられない。」
と剣を足元に捨て、消え去ってしまいました。口はあたかも割れて腐った卵のような悪臭、身体はあたかも開かれた屋外便所のような悪臭を発し、空間からは落ち、大地に固定され、このように四つの如意はなくなってしまいました。それで、偉大な主席祭司は彼に、
「大王よ、恐怖してはなりません。もし真理を話すならば、あなたのすべてを元どおりになしましょう。」
と言って、第三の詩句を言いました。

   国王よ、
   もし全く真理を話すならば、
   あなたは以前のとおりになるだろう。
   国王チェーティヤよ、
   もし嘘を話すならば、
   あなたは大地にとどまるだろう。

「見なさい、大王よ。まさに最初の嘘の言い方によって、あなたの四つの如意は消滅したのです。気づきなさい。今でも元どおりになすことができます。」
と、彼は言われても、
「このようにして、あなたはわたしを惑わせようとしているのでしょう。」
と、再び同様に嘘をつき、足首まで大地に入り込みました。それで、祭司は彼に再び同様に、
「気づきなさい、大王よ。」
と言って第四の詩句を言いました。

   尋ねられた質問に気づいていながら、
 それとは違って回答するならば、
   時期外れの雨を彼に降らせ、
   彼にちょうどよいときの雨を降らせない。

「嘘の言い方の果報によってあなたは足首まで大地に入り込んだのです。気づきなさい、大王よ。」
と、彼に再び同様に言って、第五の詩句を言いました。

   国王よ、
   もし全く真理を話すならば、
   あなたは以前のとおりになるだろう。
   国王チェーティヤよ、
   もし嘘を話すならば、
   あなたは大地に入り込むだろう。

「尊者よ、あなたは弟で、コーラカランバカが年上です。」
と、彼は三たび同様にまさに嘘の言い方をなし、膝まで大地に入り込みました。それで、彼に再び同様に言いました。
「気づきなさい、大王よ。」

   尋ねられた質問に気づいていながら、
 それとは違って回答するならば、
   王よ、まさにその舌が二つに分かれた、
   胸ではって進む者である。

   国王よ、
   もし全く真理を話すならば、
   あなたは以前のとおりになるだろう。
   国王チェーティヤよ、
   もし嘘を話すならば、
   あなたはさらに多く大地に入り込むだろう。

と、これらの二つの詩句を言って、
「今でも元どおりになすことができます。」
と言いました。国王は彼の発言を心に留めず、
「尊者よ、あなたは弟で、コーラカランバカが年上です。」
と、四度同様に嘘の言い方をなし、腰まで大地に入り込みました。それで、祭司は彼に、
「気づきなさい、大王よ。」
と言って、再び二つの詩句を唱えました。

   尋ねられた質問に気づいていながら、
 それとは違って回答するならば、
   王よ、
   まさにその舌がない魚である。

   国王よ、
   もし全く真理を話すならば、
   あなたは以前のとおりになるだろう。
   国王チェーティヤよ、
   もし嘘を話すならば、
   あなたはさらに多く大地に入り込むだろう。

 彼は五度同様に、
「尊者よ、あなたは弟で、コーラカランバカが年上です。」
と、嘘の言い方をなし、へそまで大地に入り込みました。それで、
祭司は彼に再び同様に、
「気づきなさい、大王よ。」
と言って、二つの詩句を唱えました。

   尋ねられた質問に気づいていながら、
 それとは違って回答するならば、
   王よ、彼の家に娘たちは生まれるが、
   息子たちが生まれることはない。

   国王よ、
   もし全く真理を話すならば、
   あなたは以前のとおりになるだろう。
   国王チェーティヤよ、
   もし嘘を話すならば、
   あなたはさらに多く大地に入り込むだろう。

 国王は心に留めず、六度同様にさらに同じ嘘をつき、胸まで大地に入り込みました。それで、祭司は彼に再び同様に、
「気づきなさい、大王よ。」
と言って、二つの詩句を唱えました。

   尋ねられた質問に気づいていながら、
 それとは違って回答するならば、
   彼の息子たちはいなくなり、
   あらゆる方角に去るだろう。

   国王よ、
   もし全く真理を話すならば、
   あなたは以前のとおりになるだろう。
   国王チェーティヤよ、
   もし嘘を話すならば、
   あなたはさらに多く大地に入り込むだろう。

 彼は悪い友と付き合った邪悪心によって、彼の発言を心に留めず、七度同様にさらに同じことをなしました。それで、その大地に裂け目が生じ、超期間地獄から火炎が立ち上がり捕らえたのです。

   尊い人に厳粛に宣言された、
   その国王は以前、空中を歩行した。
   しかし、その者は大地に入り込み、
   時に達して悲惨な状態になった。

   全くこの理由ゆえに、
   欲求が来ることを賢者たちは称賛しない。
   害されていない心は、
   真理を伴った言葉を話す。

 これらは現正覚者の詩句です。
「国王チェーティヤは尊い人に毒づいて嘘の言い方をなし、超期間地獄に入り込んだ。」
と、多くの人々は恐怖していました。国王の五人の息子たちは来て話しかけました。
「あなたはわたしたちの助けとなるものになってください。」
「息子たちよ、あなた方の父は法則を破って嘘の言い方をなし、尊い人に毒づき、超期間地獄に入ったのです。法則というもの、これは殺されると殺します。あなた方はここに住んではいけません。」
と、祭司は言って、最年長の者に言いました。
「来なさい、息子よ。あなたは東の門から出て、まっすぐに行くと、純白の七つの部分で立つ象宝を見るでしょう。それを目印として、そこで城塞を築いて住みなさい。その城塞は象の都市という名前になるでしょう。」
 二番目の者に呼びかけて言いました。
「息子よ、あなたは南の門から出て、まさにまっすぐに行くと、純白の馬宝を見るでしょう。それを目印として、そこで城塞を築いて住みなさい。その城塞は馬の都市という名前になるでしょう。」
 三番目の者に呼びかけて言いました。
「息子よ、あなたは西の門から出て、まっすぐに行くと、たてがみのふさふさしたライオンを見るでしょう。それを目印として、そこで城塞を築いて住みなさい。その城塞はライオンの都市という名前になるでしょう。」
 四番目の者に呼びかけて言いました。
「息子よ、あなたは北の門から出て、まさにまっすぐに行くと、すべてが宝で成り立つ五つの車輪を見るでしょう。それを目印として、そこで城塞を築いて住みなさい。その城塞は北の五つの豊かな都市という名前になるでしょう。」
 五番目の者に呼びかけて言いました。
「息子よ、あなたはこの場所に住んではいけません。この城塞に大きな塔を建てた後、出て北西の方角にまっすぐに行きなさい。行くと、二つの岩山がお互いにぶつかって、ダッダラーと音を出しているのが見えるでしょう。それを目印として、そこで城塞を築いて住みなさい。その城塞はダッダラの都市という名前になるでしょう。」
 彼ら五人は同様にその目印に行って、その場所で城塞を築き住みました。

 尊師はこの教えをもたらした後、
「向煩悩滅尽多学男たちよ、今だけでなく前世においても、デーヴァダッタは嘘の言い方をなして大地に入り込んだのだ。」
と言って、輪廻転生談に当てはめられたのです。
「そのときの国王チェーティヤはデーヴァダッタであり、祭司カピラはまさにわたしなのである。」


神聖天に関係づけられた経典(ブラフマ・サンユッタ)

2004-10-03 | ☆【経典や聖者の言葉】

五、別の見解


 サーヴァッティの地にて。
 ところでそのとき、ある神聖天にこのような邪悪見解が生じたのである。
「ここに来ることのできる、出家修行者やあるいは祭司があることはない。」
 直ちに、世尊はその神聖天の考えを心によって認識し、例として、力のある男があるいは曲げた腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を曲げるという、まさにこのように、ジェータ林で消滅して、神聖天の世界にに生じられたのである。
 直ちに、覚者はその神聖天の空中高く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入られた。
 さて、聖者マハーモッガッラーナには、これがふと心に浮かんだ。
「いったいどこに、世尊は今とどまっておられるのだろうか。」
 実に、マハーモッガッラーナは、清浄であって人間を超越した天眼によって、世尊がその神聖天の空中高く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入っておられるのを見た。見ると、例として、力のある男があるいは曲げた腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を曲げるという、まさにこのように、ジェータ林で消滅して、神聖天の世界に生じたのである。
 直ちに、聖者マハーモッガッラーナは、東の方角によってその神聖天の空中高く、世尊よりより低く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入った。
 直ちに、聖者マハーカッサパには、これがふと心に浮かんだ。
「いったいどこに、世尊は今とどまっておられるのだろうか。」
 実に、聖者マハーカッサパは、清浄であって人間を超越した天眼によって、世尊がその神聖天の空中高く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入っておられるのを見た。見ると、例として、力のある男があるいは曲げた腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を曲げるという、まさにこのように、ジェータ林で消滅して、神聖天の世界に生じたのである。
 直ちに、聖者マハーカッサパは、南の方角によってその神聖天の空中高く、世尊よりより低く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入った。
 直ちに、聖者マハーカッピナには、これがふと心に浮かんだ。
「いったいどこに、世尊は今とどまっておられるのだろうか。」
 実に、聖者マハーカッピナは、清浄であって人間を超越した天眼によって、世尊がその神聖天の空中高く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入っておられるのを見た。見ると、例として、力のある男があるいは曲げた腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を曲げるという、まさにこのように、ジェータ林で消滅して、神聖天の世界に生じたのである。
 直ちに、聖者マハーカッピナは、西の方角によってその神聖天の空中高く、世尊よりより低く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入った。
 直ちに、聖者アヌルッダには、これがふと心に浮かんだ。
「いったいどこに、世尊は今とどまっておられるのだろうか。」
 実に、聖者アヌルッダは、清浄であって人間を超越した天眼によって、世尊がその神聖天の空中高く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入っておられるのを見た。見ると、例として、力のある男があるいは曲げた腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を曲げるという、まさにこのように、ジェータ林で消滅して、神聖天の世界に生じたのである。
 直ちに、聖者アヌルッダは、北の方角によってその神聖天の空中高く、世尊よりより低く、蓮華座で座り、火の要素の生起のサマディに入った。
 直ちに、聖者マハーモッガッラーナは、その神聖天に詩句によって話しかけた。

  「友よ、前もってあなたにあった見解が、
   今日同様にあなたにあり、
   神聖天の世界において、光り輝くものを、
   離れて乗り越えたのをあなたは見ましたか。」

  「尊い人よ、前もってわたしにあった見解が、
   今日同様にわたしにあり、
   神聖天の世界において、光り輝くものを、
   離れて乗り越えたのをわたしは見ました。
   わたしは常であり、不滅であると、
   このわたしが今日、どのように断言できましょう。」

 直ちに、世尊はその神聖天を戦慄させて、例として、力のある男があるいは曲げた腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を曲げるという、まさにこのように、その神聖天の世界で消滅して、ジェータ林に生じられたのである。
 直ちに、その神聖天は、ある神聖代議天に呼びかけた。
「尊い人よ、来なさい。聖者マハーモッガッラーナの所に行きなさい。行って、聖者マハーモッガッラーナにこのように話しかけなさい。
『尊い人モッガッラーナよ、例として、尊者モッガッラーナやカッサパやカッピナやアヌルッダのような、このような大いなる如意とこのような大いなる威神力がある、かの世尊の他の多学の弟子たちは、いったいいるのでしょうか』と。」
「わかりました、尊い人よ。」
と、実にその神聖代議天はその神聖天に承諾して、聖者マハーモッガッラーナの所を行った。行くと、聖者マハーモッガッラーナにこう言った。
「尊い人モッガッラーナよ、例として、尊者モッガッラーナやカッサパやカッピナやアヌルッダのような、このような大いなる如意とこのような大いなる威神力がある、かの世尊の他の多学の弟子たちはいったいいるのでしょうか。」
 直ちに、聖者マハーモッガッラーナは、その神聖代議天に詩句によって話しかけた。

  「三つの神秘力と如意に達し、
   他心の正しい智慧を所有していて、
   漏を破壊した供養値魂の、
   数多くは覚者の多学の弟子である。」

 直ちに、神聖代議天は聖者マハーモッガッラーナが説いたことに喜びを見いだして感謝して、その大神聖天の所に行った。行くと、神聖天にこう言った。
「尊い人よ、聖者マハーモッガッラーナはこのように言いました。

  『三つの神秘力と如意に達し、
   他心の正しい智慧を所有していて、
   漏を破壊した供養値魂の、
   数多くは覚者の多学の弟子である』と。」

 その神聖代議天はこれを言った。そして、大喜びしたその神聖天は、その神聖代議天の説いたことに喜びを見いだした。


57の罪過(ラトナーヴァリー)

2004-10-03 | ☆【経典や聖者の言葉】


1 怒り 
心が乱れ騒ぐこと
2 恨み 
怒りに結びついている
3 覆い 
自己の欠点を覆うこと
4 張り合い 
自己の欠点に執着すること
5 たぶらかし 
他人を欺くこと
6 へつらい 
心の性行をゆがめること
7 そねみ 
他人の長所をねたむこと
8 物惜しみ 
施しを怖れること
9 無ざん 
自己に恥じないこと
10 無き 
他人に恥じないこと
11 傲慢 
他人を敬わないこと
12 動乱 
怒りがかき立てられること
13 おごり 
高ぶること
14 怠惰 
諸々の善を行わないこと
15 七つの慢 1 慢 
慢心を起こして、我は劣る者より劣る、同等の者と等しい、劣る者より優れている、または等しいと誇ること
     2 高慢 
自己より優れている人と等しい、あるいは更に優れていると誇ること
     3 思い上がり 
最高の者よりも更に優れていると誇ること
     4 我執心 
五つのとらわれの集積に「我あり」と我執を起こすこと
     5 うぬぼれ 
修行の報いを得ていないのに得た、と考えること
     6 邪慢 
悪業をなすことを称えること
     7 卑下慢 
自己を必要なし、と自己を軽蔑すること
五邪生活
16 偽善 
利得や名聞のために感官を制すること
17 冗言 
利得や名聞のために優しい言葉を人前で並べ立てること
18 そそのかし 
他人の財を得るために、それに賛辞をなすこと
19 呵責 
利得のために、あからさまに他人を責め立てること
20 利得によって更に利得を求めること 
先に得たものに賛辞をすることで、他からより以上の利得を得ようとすること

21 罪過の陳述 
他人の誤りを一つ一つ述べ立てること
22 驚怖 
理解がないために生じた惑乱
23 悪貪 
自己の良くない資具に対して生じる
24 自他区別の思い 
愛著,邪悪心,迷妄によって思いが汚されていること
25 不作意
 心で現に観察していないこと
26 尊敬の欠如 
27 不恭敬 
師に対して偽りのあること
28 染着 
愛欲愛著から生じる小さな煩悩
29 偏執 
欲望から生じる極めて大きな束縛
30 貪
自己の事物に対する貪りであり、そこから貪着を持った心が生じる
31 不当な貪り
他人の事物に対して執着すること
32 貪着すべからざるものへの貪欲
捨てるべき女人に貪着すること
33 悪欲
徳がないのにも関わらず、徳があると偽ること
34 大欲
はげしい渇望で、満足の喜びが欠けていること
35 得欲
自己に得が具備している、と何とかして知らそうと欲すること
36 不忍
他人が加える害や自己に生じる苦しみを忍ばないこと
37 無作法
師や指導者のされることに尊敬を払わないこと
38 忠告を聞き入れないこと
法則にかなった言葉が述べられても、それを尊重しないこと
39 親しい人との結合を考えること
親しい人への愛着
40 土地への愛着
41 不死分別
死の恐怖を恐れないこと
42 随順を求める思い
功徳を備えているふりをして、他の人々が我を何とかして師とするように、と考えること
43 他人に貪着する思い
他の人々に愛着すること
44 憎しみの心を抱くこと
損得を考えること
45 不快
落ち着くところのない心
46 うらやみ
欲に濁っている心
47 疲倦
努力がなくなった身体が怠惰であるがための過失
48 改変
煩悩によって身体と色つやが変化すること
49 食酔
不節食によって身体が安らかでないこと
50 心の卑弱
心がきわめて卑俗である
51 愛欲の衝動
五つの愛欲の構成要素を貪り求めること
52 害心
三時に渡って、自己と味方と敵方のいずれにもある無意味な疑念から、他人を害しようとする心
53 頑固
身体が鈍重となり、そのために活動を離れていること
54 愚鈍
眠っていること
55 興奮
心身の浮つき
56 後悔
悪事をなして悔やむことであり、後に身をさいなむことから生じる。
57 疑念
絶対の真理、三宝などに対して猶予すること