智徳の轍 wisdom and mercy

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スジャータ輪廻転生談(スジャータ・ジャータカ)

2005-02-17 | ☆【経典や聖者の言葉】


これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、父を亡くした資産家に関して講演なさったものです。
彼は父が死んでから、悲嘆して歩き回り、悲しみをぬぐいさることができませんでした。尊師は彼に真理の流れに入る果報の土台があることを見て、サーヴァッティで施し物のために歩き回り、後に出家修行者を従えて家に行き、用意された座に座りました。
彼も尊師にうやうやしくあいさつして座ると、
「帰依信男よ、何か不運な出来事があったか。」
とおっしゃられました。
「はい、尊師よ。」
と申し上げると、
「友よ、大昔からの賢者は賢者たちの話を聞いて、父が逝ったときも悲しまなかったのだよ。」
 このように言って、彼に懇願されたので、物語をお話しになったのです。

 その昔、バーラーナシーでブラフマダッタが君臨していたころ、到達真智運命魂は資産家の家に存在するようになり、スジャータクマーラと名付けられました。
 彼が青年に達したとき、祖父は逝き、彼の父は、父が死んでから、悲しみに取りつかれていました。火葬場から骸骨を持ってきて、自分自身の大庭園に粘土で作られた塔を作り、それをそこに葬り、行くときごとに花で礼遇し、思案しては悲嘆し、水浴もせず、油を注いで清めることもせず、楽しく味わうこともせず、仕事を吟味することもせずにいました。
それを見て、到達真智運命魂は、
「父はわたしのおじいさんが死んだときから、悲しみに征服されて、歩き回っている。そして、わたしを除く他の者では、父に熟知させることはできない。一つの方法を用いて、父の悲しみをなくしてあげよう。」
と、城塞の外部で、一頭の死んだ雄牛を訪れて、草と飲み水を持ってきて、その前方に据え、
「食べろ、食べろ。飲め、飲め。」
と話しかけました。来る人ごとにそれを見て、
「スジャータよ、君は気が狂ったのか。死んだ雄牛に草と水を与えているではないか。」
と話しかけても、彼は何も返答せずにいました。そこで彼の父の面前に行き、
「あなたの息子は気が狂った。死んだ雄牛に草と水を与えている。」
と話しました。
 それを聞いて、資産家は父に対する悲しみは失せ、息子に対する悲しみが確立しました。彼はすばやい動作で行き、
「息子スジャータよ、君は賢者ではなかったのか。何の義理で、死んだ雄牛に草と水を与えるのか。」
と言って、二つの詩句を唱えました。

  なぜかき乱されて緑の草を刈り、
  「食べろ、食べろ。」
  と、生命のない腐った牛に、
  口を利くのか。

  食べ物と飲み物によって、
  死んだ牛は生き返らない。
  君は愚か者と同じように、
  かいのないことを無益に話す。

そこで、到達真智運命魂は二つの詩句を唱えました。

  異なることなく、
  頭、手足や尾がとどまっており、
  耳さえも異なることなくとどまっている。
  確かに牛は生き返るだろう。

  おじいさんの頭と手足は、
  まさに見られることもない。
  粘土で作られた塔のところで泣き叫んでいる、
  あなたこそが愚か者ではないのですか。

 それを聞いて、到達真智運命魂の父は、
「わたしの息子は賢者だ。この世の世界と高い世界でなされるべきことをわかっている。わたしに熟知させるために、このような行為をなしたのだ。」
と思念し、
「息子よ、賢者スジャータよ、『すべての経験の構成は無常である』と、わたしはわかった。これからは悲しまないだろう。父の悲しみを取り去る息子は、あなたのようなもののことだ。」
と言って、息子を礼賛しました。

  本当に、精製されたバターをまき散らした、
  火災として炎を上げて燃えているわたしに、
  水を注ぐように、
  すべての悲哀は煩悩破壊された。

  本当に、心に内在した、
  わたしの不運は流れ去り、
  悲しみに打ちひしがれた、
  わたしの父に対する悲しみは晴らされた。

  このわたしは不運が流れ去り、
  悲しみを離れて、平穏となった。
  青年男子よ、あなたから聞いたので、
  わたしは悲しむことはなく、泣き叫ぶこともなくなった。

  慈悲のある、
  智慧ある者たちは、
  スジャータが父を悲しみについて、
  じっくり考えさせたようになすのだ。

 尊師はこの教えをもたらして、種々の真理を説明し、輪廻転生談に当てはめられたのです。真理を完達したとき、資産家は真理の流れに入る果報を確立しました。
「そのときのスジャータは、まさにわたしなのである。」


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