これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、父を亡くした資産家に関して講演なさったものです。
彼は父が死んでから、悲嘆して歩き回り、悲しみをぬぐいさることができませんでした。尊師は彼に真理の流れに入る果報の土台があることを見て、サーヴァッティで施し物のために歩き回り、後に出家修行者を従えて家に行き、用意された座に座りました。
彼も尊師にうやうやしくあいさつして座ると、
「帰依信男よ、何か不運な出来事があったか。」
とおっしゃられました。
「はい、尊師よ。」
と申し上げると、
「友よ、大昔からの賢者は賢者たちの話を聞いて、父が逝ったときも悲しまなかったのだよ。」
このように言って、彼に懇願されたので、物語をお話しになったのです。
その昔、バーラーナシーでブラフマダッタが君臨していたころ、到達真智運命魂は資産家の家に存在するようになり、スジャータクマーラと名付けられました。
彼が青年に達したとき、祖父は逝き、彼の父は、父が死んでから、悲しみに取りつかれていました。火葬場から骸骨を持ってきて、自分自身の大庭園に粘土で作られた塔を作り、それをそこに葬り、行くときごとに花で礼遇し、思案しては悲嘆し、水浴もせず、油を注いで清めることもせず、楽しく味わうこともせず、仕事を吟味することもせずにいました。
それを見て、到達真智運命魂は、
「父はわたしのおじいさんが死んだときから、悲しみに征服されて、歩き回っている。そして、わたしを除く他の者では、父に熟知させることはできない。一つの方法を用いて、父の悲しみをなくしてあげよう。」
と、城塞の外部で、一頭の死んだ雄牛を訪れて、草と飲み水を持ってきて、その前方に据え、
「食べろ、食べろ。飲め、飲め。」
と話しかけました。来る人ごとにそれを見て、
「スジャータよ、君は気が狂ったのか。死んだ雄牛に草と水を与えているではないか。」
と話しかけても、彼は何も返答せずにいました。そこで彼の父の面前に行き、
「あなたの息子は気が狂った。死んだ雄牛に草と水を与えている。」
と話しました。
それを聞いて、資産家は父に対する悲しみは失せ、息子に対する悲しみが確立しました。彼はすばやい動作で行き、
「息子スジャータよ、君は賢者ではなかったのか。何の義理で、死んだ雄牛に草と水を与えるのか。」
と言って、二つの詩句を唱えました。
なぜかき乱されて緑の草を刈り、
「食べろ、食べろ。」
と、生命のない腐った牛に、
口を利くのか。
食べ物と飲み物によって、
死んだ牛は生き返らない。
君は愚か者と同じように、
かいのないことを無益に話す。
そこで、到達真智運命魂は二つの詩句を唱えました。
異なることなく、
頭、手足や尾がとどまっており、
耳さえも異なることなくとどまっている。
確かに牛は生き返るだろう。
おじいさんの頭と手足は、
まさに見られることもない。
粘土で作られた塔のところで泣き叫んでいる、
あなたこそが愚か者ではないのですか。
それを聞いて、到達真智運命魂の父は、
「わたしの息子は賢者だ。この世の世界と高い世界でなされるべきことをわかっている。わたしに熟知させるために、このような行為をなしたのだ。」
と思念し、
「息子よ、賢者スジャータよ、『すべての経験の構成は無常である』と、わたしはわかった。これからは悲しまないだろう。父の悲しみを取り去る息子は、あなたのようなもののことだ。」
と言って、息子を礼賛しました。
本当に、精製されたバターをまき散らした、
火災として炎を上げて燃えているわたしに、
水を注ぐように、
すべての悲哀は煩悩破壊された。
本当に、心に内在した、
わたしの不運は流れ去り、
悲しみに打ちひしがれた、
わたしの父に対する悲しみは晴らされた。
このわたしは不運が流れ去り、
悲しみを離れて、平穏となった。
青年男子よ、あなたから聞いたので、
わたしは悲しむことはなく、泣き叫ぶこともなくなった。
慈悲のある、
智慧ある者たちは、
スジャータが父を悲しみについて、
じっくり考えさせたようになすのだ。
尊師はこの教えをもたらして、種々の真理を説明し、輪廻転生談に当てはめられたのです。真理を完達したとき、資産家は真理の流れに入る果報を確立しました。
「そのときのスジャータは、まさにわたしなのである。」