智徳の轍 wisdom and mercy

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三十八 善き人(二)

2005-07-29 | ☆【経典や聖者の言葉】


一 ビック達よ、善き人が家に生まれることによって、多くの人々には福利と利益と安楽とがあるのだ。
 すなわち、父母には福利と利益と安楽とがあり、妻子には福利と利益と安楽とがあり、奴隷や召使いには福利と利益と安楽とがあり、友人や知人には福利と利益と安楽とがあり、先祖には福利と利益と安楽とがあり、国王には福利と利益と安楽とがあり、神々には福利と利益と安楽とがあり、サマナやブラーフマナには福利と利益と安楽とがある。
二 ビック達よ、たとえるならば、大きな雲によって、すべての穀物がもたらされ、多くの人々には福利と利益と安楽とがあるようなものであり、ビック達よ、このように、善き人が家に生まれることによって、多くの人々には福利と利益と安楽とがあるのだ。
 すなわち、父母には福利と利益と安楽とがあり、妻子には福利と利益と安楽とがあり、奴隷や召使いには福利と利益と安楽とがあり、友人や知人には福利と利益と安楽とがあり、先祖には福利と利益と安楽とがあり、国王には福利と利益と安楽とがあり、神々には福利と利益と安楽とがあり、サマナやブラーフマナには福利と利益と安楽とがある。

  智慧ある者が家に住むとき、実に多くの福利があり、
  父と母とを、以前昼夜に活動し、
  以前なしたことを憶念【おくねん】しながら、法と共に尊敬する。
  梵行をなす、家なき出家者である子供を、
  確かな帰依があり、愛すべき者は、諸法を知って尊敬する。
  国王の利益、神々の利益、親戚や仲間の利益、
  彼はあらゆる人の利益になる。真理の法によく立脚し、
  強欲の垢【あか】を調伏できる、彼はシヴァ大神の世界に赴く。

【解説】
 前経もそうなのだが、ここでいう「善き人」とは、菩薩【ぼさつ】を指している。つまり、菩薩が生まれることで、多くの人が福利や利益、安楽を得るということである。
 例えば、オウム真理教での典型的な例としては、A正悟師が生まれて、彼のお父さんが、現在二部上場のオーナー社長となっている。これなどはまさに典型的な例である。あるいは、あるサマナのお父さんが会社で首を切られる寸前だったのが、そのサマナが成就した瞬間に首がつながったという話もある。つまり、「善き人」なのである。
 詩句の中に「シヴァ大神の世界に赴く」という表現が出てくるが、仏教の世界観では、色究竟天【しきくぎょうてん】にシヴァ大神は住んでいらっしゃるということになっている。ということは、この世のすべてのものに利益を与えた「善き人」、菩薩がどこへ行くかというと、色究竟天に生まれ変わるということである。つまり、単なる布施ではなく、多くのいろいろな善行を積むことによって、梵衆天よりも十六段階上の色究竟天まで行ってしまうということである。
 また、神々に対しての利益とは、例えば毎日供物を捧げる、あるいは賛歌を唱えるといったことを指している。