2014年 09月 22日 14:09 JST ロイター
[香港 22日 ロイター] - 中国企業を標的にした本格的な空売りの動きが、3年ぶりに復活しつつある。ただ今回は、空売りの手掛かりとなった調査機関のリポート執筆者は匿名性を確保し、怒り心頭の中国企業や中国政府による人物特定と迫害の可能性から身を守っている点が特徴的だ。
今月になって潤滑油添加剤メーカーの天合化工(1619.HK: 株価, 企業情報, レポート)、データセンター運営の21ビアネット(VNET.O: 株価, 企業情報, レポート)、食肉加工メーカーの神冠控股(0829.HK: 株価, 企業情報, レポート)といった中国企業3社に対して、いずれも不適切な会計処理があったとのリポートを別々の調査機関が公表した。3社はそろってリポートの内容に根拠はないと主張したものの、まずは調査機関の顧客から、次いでリポート公表後に他の投資家から空売りを浴び、いずれも株価が打撃を受けた。
これらのリポートは担当アナリストの氏名はもちろんのこと、連絡先の電話番号すら記していない。
直近で中国企業への空売りが最も活発だったのは、米上場の中国企業の時価総額210億ドル強が消し飛んだ2011年で、当時はほとんどの調査担当者が身元を明らかにしていた。
例えばマディ・ウォーターズのカーソン・ブロック氏は、複数の中国企業の不正を公然と非難した。
ただいくつかのメディアによると、カーソン氏は2012年、殺害の脅迫を受けたとの理由で香港から米カリフォルニア州に引っ越したという。
空売り専門家のジョン・ケアンズ氏はロイターのインタビューで「中国に拠点を置く調査担当者であるなら、匿名で活動するのが妥当といえる。なぜなら中国本土企業の一部には否定的な調査をする人々に報復してきたという前歴があるからだ」と語った。
ケアンズ氏が率いる調査会社アルフレッド・リトルは、業界データでみて対象企業を空売りした場合のパフォーマンスが最も良いことが判明している。
そのケアンズ氏も2011年のリポートに記載した企業の1社から脅されたことを明らかにしており、調査担当のKun Huang氏は中国で2年間も投獄された。
中国政府は商業目的での情報利用に対する締め付けを強めつつあり、金融業界のアナリストによると特に空売りには苛立ちをあらわにしている。12年には国営通信社の新華社が、空売りをあおるリポートには悪意があり、手っ取り早く金を稼ぐためだけが目的だと断じた。
オーストラリアの空売り業者ブロンテ・キャピタルのジョン・ヘンプトン氏は、こうした中で調査機関は現在、自らの所在地や身元を隠すためにインターネット上の手段を巧みに使いこなしていると指摘。「中国当局の態度がどんどん危険になっているので、匿名性が高まりつつある」と話した。
今月、一連の空売りが始まったきっかけは、国際的ハッカー集団「アノニマス」傘下の株式調査組織を名乗る「アノニマス・アナリティクス」が、天合化工は事業の規模や範囲などの説明が不適切で市場に虚偽の書類を開示した、などと記したリポートを公表したことだった。
同じ日には別の調査会社エマーソン・アナリティクスが、神冠控股は「昨年の売上高を少なくとも10─15%水増ししていた」などと批判した。
その後、トリニティ・リサーチ・グループは、21ビアネットが「会計処理及び証券取引上の不正に関与しているという圧倒的に明白な証拠」があるとのリポートを示した。
いずれのリポートにも電子メールのみが記載されていて、連絡先の氏名や電話番号は見当たらない。
(Lawrence White、Pete Sweeney記者)