boban のんびり 株投資日記

備忘録です。ディトレードなどの短期勝負ではないので、日々の変化はあまりありません。

ドル買いで存在感みせるミセス・ワタナベ

2014-09-25 | 2014
2014年 09月 25日 15:15 JST ロイター

[東京 25日 ロイター] - 円安が進む外為市場で、日本の個人投資家の投資スタンスに変化が出てきた。これまで逆張りが目立った、いわゆる「ミセス・ワタナベ」は、ドル先高観を背景に直近では押し目買いで存在感を見せるようになっている。利益確定のドル売りを進める海外ファンド勢との対決構図にも、注目が集まっている。

<想定外の円安テンポ>

1カ月で6円強の円安進展は、多くの個人投資家にとって「想定外」と映っていたようだ。

東京都内在住で、FX(外為証拠金取引)を始めて3年目になる40代主婦のAさんは昨年、高値圏の105円前半でドルを買った。ところが年明けからドル/円JPY=EBSは下落し、その後も101─104円のレンジ相場が続いたため、ポジションは塩漬け状態に。9月に入り105円後半まで上昇したところで、ようやく利益を確定させた。

一方、愛知県に住むFX歴6年の30代会社員、乙村亮さんは、年明けから春にかけて円売りポジションを取ったものの、長く続いたレンジ相場の中で、思うように利益を出せなかった。

8月に入って円安方向の強いトレンドが発生し、102円後半から109円超えまでの間に何度か利益確定と押し目買いを繰り返しながら取引した。「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産構成見直しのニュースも話題となり、大きな資金が円安・株高トレンドを支えたおかげで、取引がしやすい環境になった」と振り返る。

今、Aさんはドル買いのタイミングを計っている。「(ドル買いポジションを)持ち続けていれば良かったが、ここまで上がるとは正直思っていなかった。昨年の高値づかみの経験もあるので、今は手が出せないが、一回落ちたところを確認して押し目買いしたい」と話す。

著名な個人投資家として知られ、為替に関するセミナーなども開く鏑木高明氏は、ミセス・ワタナベのスタイルが変わってきたとみている。「今年の逆張り投資が失敗してきたことで、押し目買いを待つ姿勢になっている」という。鏑木氏自身は長期投資を基本とするが、セミナーに来る投資家は、足元のドル急上昇に付いて行けず、押し目を狙っている参加者が多いと話す。

<潮目の変化は9月初旬>

これまでミセス・ワタナベは、相場が上昇すれば売り、下落すれば買い、という「逆張りスタンス」をとることが多かった。

ドル/円は今年1月に年初来高値105.45円をつけた後、半年以上も101─104円のレンジでもみあってきた。この間、ミセス・ワタナベはおおむね「101円に近付けば買い、104円に近付けば売りというムードが強かった」(国内金融機関)という。

相場の上昇に逆らう傾向は、市場でドル高のシグナルが点灯してからも継続した。8月末のジャクソンホール講演でイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長のハト派色が後退したと解釈されドルが7カ月ぶりの高値をつけた後も、個人投資家はドル売りポジションを増やしていたと複数の市場筋は指摘する。

潮目が変わったのは9月初旬だ。1月に付けた年初来高値105.45円を明確に上抜けたことが、大きな分岐点になった。日米金融政策の方向性の違いを意識した短期筋が「急激にドル買い/円売りのポジションを膨らませた」(外資系証券)ほか、スコットランド独立をめぐる不透明感が、ドル買いの流れを加速させた。そこでようやく個人投資家のスタンスに変化が出たという。

個人投資家の動向に詳しい外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「104円で売って踏み上げられ、105円で売っても踏み上げられた。106円台に入ってからはさすがに逆張り的なドル売りが減ってきた」と指摘する。

現在のスタンスは「様子見ムードの中、少しでも押し目があれば買おうというかたちになっている」という。

外為どっとコムの9月24日終了時点でのドル/円の取引残高は、ドル買い/円売りの比率が57.0%と、9月2日の51.5%から上昇している。その間、ドル/円は104円前半から一時、109円半ばまで上昇。逆張りスタイルなら、この比率は低下したはずだが、逆に増加しており、スタンスの変化をうかがわせる。

<海外短期筋と個人投資家のぶつかり合い>

近年、日本の個人投資家「ミセス・ワタナベ」は、外為市場における存在感を増してきている。

国際決済銀行(BIS)が実施した最新の「為替トレーダー調査」(2013年9月公表)で、為替取引全体のうち、個人投資家に関わる取引のシェアは3.5%となり「もはや無視できない存在になった」(シティバンク銀行の尾河眞樹シニアFXマーケットアナリスト)。

中でも日本の個人投資家の為替取引は、東京市場におけるスポット取引全体の19%に達するなど「相場の変動要因になりうる規模だ」(同)という。

実際、足元のドル/円の動きには底堅さが目立つ。24日の市場では、訪米中の安倍晋三首相が最近のドル高/円安傾向について「地方経済に与える影響を注視したい」と発言したと伝わると、いったんドルは弱含んだ。だが、下押しは限定的で108円半ばを維持した。

FXプライムbyGMOの上田眞理人常務取締役は「108円半ばに落ちたところでは、個人投資家のドル買いが観測された」と話す。明確に順張りになったとは言えないものの「一部の個人投資家は、ドルを買わなければならないという心理になりつつある」とみている。

米連邦公開市場委員会(FOMC)やスコットランドの住民投票など重要イベントを消化し、ヘッジファンドなど海外短期筋は、徐々にこれまでの取引で得た利益の確定売りに動き始めている。

しかし、スタンスが変わった個人投資家が押し目買いに動けば、調整幅は大きくならないかもしれない。

外為どっとコム総研の神田氏は「海外投機筋のドル売りが出た局面で、その売りを吸収する余力は、十分にありそうだ。利益確定の売りと下値を支える個人投資家が対決する構図が浮かんでいる」と話す。

注目度を集めるミセス・ワタナベの動向が、ドルの水準を一段と押し上げる要因になる可能性も出てきた。


(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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