Chris Rapley氏の論点は大まかに分けて三つある。
その一つが、海面水位の上昇についてだ。
最終氷期(7万年前から1万年前)が終わった完新世の後半に、地球上で気候が比較的安定した時期があった。
この時の海面水位の変動は、年間に0.2ミリメートル程度だったことが海岸地形や考古学的なデータからわかっている。
19世紀後半から海水面は上昇を始めた。
20世紀中には、年間1.83ミリメートルの海水面上昇があった。
ところが最近20年間では3.3ミリメートル上昇してきている。
この数値はとても小さいように思われるが、地学的には重要な意味を持っている。
そして現在の海水面の上昇速度は、年間10ミリメートルに近づいている。
さて、西南極にある南極半島には水面下2000メートルにわたって氷床が広がっている。
ちょうどドレーク海峡を挟んで南アメリカの対岸になる場所だ。
この半島は、イギリス・チリ・アルゼンチンの3国がそれぞれに領有を主張しているが、現在は南極条約によって棚上げになっている。
1990年以降この氷床が崩壊を始めており、氷のクラックを通して暖かい水が入り込み、これが2000メートル下の基盤まで到達すると氷床が基盤から離れて、一挙に氷山の崩壊が進むと考えられている。
西南極における全氷床が溶解すると海水面は6メートル上昇すると言われている。
北半球では、グリーンランドの氷床が、1990年からの10年間でそれまでの6倍以上も溶けてしまった。
氷床や氷河の溶解による海水面の上昇は、実測値のほぼ半分に相当している。
残りの水面上昇は、海水の温度膨張に起因している。
イギリスでは、海水面の上昇は非常に深刻な問題として捉えられたおり、ロンドンを流れるテムズ川には大規模な防潮堤が建設されている。
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