1977年5月に、琵琶湖で淡水赤潮が発生した。
ウログレナ・アメリカーナ(以下、ウログレナと略す)という植物プランクトンの異常増殖だった。
琵琶湖の南湖から北湖西岸にかけて、水面が赤褐色に染まった。
それまでにもウログレナの存在は確認されていたが、大規模な発生はこのときが初めてだった。
なぜ、ウログレナのような赤潮が発生したのだろうか。
ここに、京都大学理学部分析化学研究室が分析した琵琶湖北湖における栄養塩データがある。
1962年から1981年にかけてのデータである。
1965年頃から、アンモニア態窒素濃度が急上昇している。
当時の分析精度がどの程度であったかについては不明だが、この濃度はとても高いと言える。
おそらくかなりの量のし尿や肥料が琵琶湖に直接流入していたのではないだろうか。
次に、リン濃度が上昇している。
アンモニア態窒素濃度は次第に低くなり、代わりに硝酸態窒素濃度が上昇している。
このような背景の下に、1977年の淡水赤潮が発生したのだ。
ただ、全リン濃度から見ても分かるように、この時期を通してみても琵琶湖のリン濃度は低かった。
ではなぜウログレナは異常増殖したのだろうか。
実は、ウログレナは、自分自身で水中のリンを取り込むほかに、バクテリアが摂取したリンを利用することも出来る。
バクテリアは、プランクトンよりかなり早くリンを取り込むことが出来る。
ウログレナが、他の植物プランクトンとは異なり優位だったのは、この能力のおかげだった。
このことによって、ウログレナはリン濃度の低い琵琶湖でも増殖できたのだ。
したがって、ウログレナの発生は、琵琶湖の富栄養化のさきがけであったと言われている。
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