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どうする(9)

2014-07-03 09:52:24 | ButsuButsu


以下のような論文が米国生態学会誌に受理された。

タイトル:Phytoplankton functional group dynamics explain species abundance distribution in a directionally changing environment

著者: Cheng-Han Tsai, Takeshi Miki, Chun-Wei Chang, Kanako Ishikawa, Satoshi Ichise, Michio Kumagai, Chih-hao Hsieh

掲載誌はまだ決まっていないようだが、共著者の三木氏から内容について以下のようなコメントが届いた。

1980年代後半に琵琶湖で起った水温上昇など一連の変化が、生態系にどのような影響を及ぼしたかについては、これまできちんとした議論がなされてこなかった。

本論文によって、初めてレジームシフトが起こっていたことが明らかとなった。

そういう意味で、大きな一歩と言える。

一連の地球環境の変化は、知らないうちに私たちの周辺の環境を変えつつある。

その良い事例と言えるだろう。

きちんとしたモニタリングの必要性が、また新たに証明された形となっている。

以下に、三木氏のコメントを記載する。

***

国立台湾大学海洋研究所・滋賀県琵琶湖環境科学研究センター・立命館大学琵琶湖Σ研究センターなどから構成される国際的な研究グループは,琵琶湖において1978年から30年以上にわたって蓄積されてきたモニタリングデータ(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター取得)をもとに,植物プランクトン全体の長期動態評価を行いました.その結果,琵琶湖では,健全な生物相では起こりえないような,特殊な構造変化が1980年代後半に起こっていたことが明らかになりました.

一般に多様な種を擁する生態系では,それぞれの種の個体数は時々刻々変化し,全体の中での優占割合とその順位が交代するという,「個体数分布の変動」を見せます.このようなダイナミックな変動の中にあっても,全体としてみると,健全な生態系は個体数の大きな種のグループと個体数の小さなグループとかバランスよく共存する規則的な構造を保つことが知られています(文献).しかし琵琶湖では80年代後半にこのバランスが大きく崩れ,個体数の小さいグループが消失し現在まで回復していないことが示されました.この生態系におけるいびつな構造への変化は、植物プランクトン種数の全体的な減少からは説明できず,河川や琵琶湖の沿岸域の環境に適した特性を持つ種のグループ(たとえば,ササノハケイソウ属やクンショウモ属の一部)が選択的に消失したことに起因していました.さらにその消失原因は,琵琶湖水温の長期的上昇および琵琶湖の水位変動幅の減少である可能性が示されました.我々の知る限りこのような変化は他の湖沼や海洋では報告された事例はなく、今後、地球温暖化が懸念される中で生態系異変にかかわる重要な学術的発見であると思われます.

以上のことは,琵琶湖をはじめとする生物多様性の高い生態系においては,長期モニタリングと生態系の構成種それぞれの特性を考慮した定量的評価が重要であることを示しています.また,様々な環境ストレスに同時にさらされている生態系の変化を検出するためには,出現種数を指標とした従来の方法に加えて,個体数分布に注目した生物相全体の構造解析が有効であり,その結果は、今後の生態系管理に有効であると考えられます.

本研究の論文は,アメリカ生態学会誌EcologyにX月Y日付けにオンライン掲載されました.

文献リスト
Gray, J. S. 1981. Detecting pollution induced changes in communities using the log-normal
distribution of individuals among species. Marine Pollution Bulletin

Magurran, A. E., and P. A. Henderson. 2003. Explaining the excess of rare species in natural
species abundance distributions. Nature 422:714-716.

Harte, J. 2003. Tail of death and resurrection. Nature 424:1006-1007.

Connolly, S. R., T. P. Hughes, D. R. Bellwood, and R. H. Karlson. 2005. Community
structure of corals and reef fishes at multiple scales. Science 309: 1363-1365.




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