2010年5月になった。
柔らかな風が薫るこの季節が、女は大好きだった。
若葉が芽吹き、すべてが真新しい感覚にとらわれる。
山々が萌える時だ。
とうとう東京から泥中の温度を計るスタッフがやってきた。
持参してきたのは、3mのスティックに高解像度の水温計を複数個取り付けた装置だ。
これを泥の中に突き刺して、温度を計る。
彼らを案内して琵琶湖へ赴いた。
静穏な湖面をゆっくりと温度計が降りていく。
一か所の計測にかかる時間はほぼ1時間だ。
朝からとりかかって、夕方までに5カ所の地中温度を計測することができた。
すると面白いことがわかった。
1カ所だけ、地中の温度勾配が一桁高いのだ。
ここでは、下から上に向かって暖かい水が移動している可能性がある。
ベントとの関係がありそうだ。
そう、女は確信した。
いろいろやってみることだ。
結論を急ぐこともないだろう。
この周辺は、何かが異なっている。
そのことがわかっただけでも、大きな進歩だ。
すべては知るということから始まる。
サイエンスとは、知り続けることであり、立ち止まらないことが大切なのだ。
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