ガラパゴス通信リターンズ

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学園パラダイス

2009-07-28 11:05:00 | Weblog
 ぼくが中学生だった70年代のはじめのころは、部活はそれほど盛んではありませんでした。熱心な指導者がいる強い部活と野球部以外はほとんどお遊び。高校に入ってレベルの違いにびっくりするというのが通例でした。

 中学校が部活に力を入れるようになったのは、学校が荒れはじめた1980年代のことです。荒れる子どもたちを押さえつけるために、学校のなかでは暴力装置のような体育教師が強い権限をもつようになりました。子どもたちのエネルギーのはけ口に部活が活用されていったのです。

 部活がこの時代に肥大していった背景には、子どもたちの「学びからの逃走」があります。学校の勉強が分からないという子どもが70年代から増えていきました。「落ちこぼれ」という不愉快なことばができたのもこの頃のことです。過大な勉強の負担が子どもたちを苦しめ、学校の荒れをもたらしている。そうした認識は、教育に関わる人たちの間に広く共有されていました。以来、「ゆとり教育」の時代にいたるまでの約30年間、小中学校での学習内容は減らされ続けていったのです。「学びからの逃走」を続ける子どもたちを学校に引き留めるために部活が重視されるようにいったのではないか。

 この頃から共働き家庭が増えてきています。親たちは、中学校に託児所的な機能を求めるようになりました。そして80年代は、万引きのような「遊び型犯罪」が増え、戦後3番目の少年犯罪のピークとも言われていた時代です。社会の側も、子どもを野に放たない「留置機能」を学校に求めたといえなくもありません。

 80年代はいじめが注目され始めた時代です。子どもを長い時間学校に囲い込んでおけばいじめが増えるというのは誰にでもわかる理屈です。いじめに苦しみながら、子どもたちを長く囲い込むことを求められるという矛盾した状況に当時の日本の中学校は置かれていたといえます。