ガラパゴス通信リターンズ

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そんなバナナ!

2007-08-03 05:38:28 | Weblog
7月の末に「子どもと教育の社会学」という授業の最終回を行った。給食費未納問題をとりあげた。みんな「親の規範意識の低下」の結果、給食費の未納者が急増しているというマスコミ報道を素直に信じていた。そこで、未納者はどれぐらいの比率でいると思うと尋ねると彼女たちはこう答える。「えー、40%」。「うーん20%」。「もしかして30%」。ぼくが人数で1%強、額にして0.5%強という「正解」を話したらみんなとっても驚いていた。このエピソードから、二つの事実が浮かび上がってくる。

 ①みんな給食費の問題は知っているが、正確な内容は知らない。つまり見出しはみても記事の内容は読んでいない状態。新聞を読んでいる学生は皆無。テレビとネットのニュースしかみていない。ああいうのは「ヘッドラインジャーナリズム」というのか、見出しばかり流しているようなものです。②「未納者急増」のイメージが一人歩きすると、2割も3割も4割も未納者がいるような途方もない「擬似環境」が形成される。たしかにそれだけ増えれば親の「規範意識」が問題になると思う。

 急増というが、前年のデータはない。他の公共料金の場合10パーセント程度の未納を前提に予算を組んでいるので、1%の未納は教育に対する親の規範意識の驚異的な高さを物語っている。 ぼくはいった。「みなさんが学年最初のテストで99点をとったとする。ところが先生に呼び出されて『この点数は、あなたの勉学意欲がひどく低いことを物語っています。しかも前回のテストに比べてひどく下がっています』といわれたようなものです。『ひどく下がる??99点で?前回のテスト???これがはじめてじゃん』とみなさんなら思うでしょう」。

 この授業は4月に『子どもの誕生』の紹介からはじまり、著者のアリエスがバナナ商人だという噂がアメリカでたったという話をした。最後が給食費の未納問題(を軸に教育改革批判)。どこにつながりがあるのか。そう、給食の花形はぼくらのころバナナでした。「親の規範意識の低下」なんてそんなバナナ!