ガラパゴス通信リターンズ

3文社会学者の駄文サイト。故あってお引越しです。今後ともよろしく。

ショッカー

2006-07-04 15:11:43 | Weblog
 
 平成の仮面ライダーシリーズ、延々と続いております。江戸期から「鬼」の名で呼ばれ、代々世襲され続けているライダーが妖怪と闘うという、水木しげるばりの設定の、なごみ系のシリーズもありましたが、昭和のそれに比べて残虐度が増している印象を受けています。悪徳弁護士の仮面ライダーが出てくるシリーズもありました(「龍騎」)し、ライダーの敵方が観念的な「ゲームとしての殺人」にふけるシリーズ(「クウガ)もありました。とても子どもにみせられた代物ではありません。みせてたけど…。

 初代仮面ライダーの敵方、ショッカーの働く悪事といえば幼稚園バスを襲うことぐらいでした。当時の新聞には「ショッカーは世界制服を標榜しながら、幼稚園バスばかりを標的にしている。こんなことで大望を実現することができるのだろうか。人事ながら心配になる」という投書が載ったりしたものです。この話を授業でしたところ、こんな反論を寄せた学生がいます。

 ① 観念的な「ゲームとしての殺人」などより、子どもたちにとっては、身近な幼稚園バスが襲われる場面の方がよほど恐ろしい。② 自分が信頼していたものが襲われる経験は、子どもたちのなかに社会や他者への不信感を植え付ける。人間の社会は信頼によって成り立っている。子どもたちの中の不信の芽が将来大きく育った時に社会は崩壊し、世界はショッカーの手に落ちるであろう。

 頭のいい人がいるものだと感心しました。不信の増大が社会を崩壊させる。いま子どもが被害者となる事件が起きるたびに、大人たちは過剰反応を示しています。子どもが被害にあう傷害事件や殺人事件は、年々減少傾向にあるにも関わらず、です。「失われた子どもの安全」は、メディアの作り出した幻影でしかありません。そうした過剰反応が、他者や社会への不信感を子どもたちに植え付けていくことを私は危惧しています。