平成の仮面ライダーシリーズ、延々と続いております。江戸期から「鬼」の名で呼ばれ、代々世襲され続けているライダーが妖怪と闘うという、水木しげるばりの設定の、なごみ系のシリーズもありましたが、昭和のそれに比べて残虐度が増している印象を受けています。悪徳弁護士の仮面ライダーが出てくるシリーズもありました(「龍騎」)し、ライダーの敵方が観念的な「ゲームとしての殺人」にふけるシリーズ(「クウガ)もありました。とても子どもにみせられた代物ではありません。みせてたけど…。
初代仮面ライダーの敵方、ショッカーの働く悪事といえば幼稚園バスを襲うことぐらいでした。当時の新聞には「ショッカーは世界制服を標榜しながら、幼稚園バスばかりを標的にしている。こんなことで大望を実現することができるのだろうか。人事ながら心配になる」という投書が載ったりしたものです。この話を授業でしたところ、こんな反論を寄せた学生がいます。
① 観念的な「ゲームとしての殺人」などより、子どもたちにとっては、身近な幼稚園バスが襲われる場面の方がよほど恐ろしい。② 自分が信頼していたものが襲われる経験は、子どもたちのなかに社会や他者への不信感を植え付ける。人間の社会は信頼によって成り立っている。子どもたちの中の不信の芽が将来大きく育った時に社会は崩壊し、世界はショッカーの手に落ちるであろう。
頭のいい人がいるものだと感心しました。不信の増大が社会を崩壊させる。いま子どもが被害者となる事件が起きるたびに、大人たちは過剰反応を示しています。子どもが被害にあう傷害事件や殺人事件は、年々減少傾向にあるにも関わらず、です。「失われた子どもの安全」は、メディアの作り出した幻影でしかありません。そうした過剰反応が、他者や社会への不信感を子どもたちに植え付けていくことを私は危惧しています。
最近の子どもの犯罪というのは、それとは逆に「可愛い顔してあの子わりとやるもんだね」みたいな正真正銘の凶悪犯罪ですな。親兄弟を焼き殺してみたり、両親を路上でメッタ刺しにしてみたり、大学生を集団リンチしたあげく生き埋めにしてみたり・・・と。全く情け容赦のない冷酷無比の犯行です。なぜこんな事件が相次いで起きるのか。原因は、各々の観点から、多様に説明できるでしょう。
小生はこう思います。犯罪者が次の2つの真実に気づいていないからだ、と。
①「人間の本質は肉体ではなく魂であって、カネを含むモノは魂を磨く単なる道具にすぎない。したがって、拝金主義を含む物質主義というのは、愚の骨頂である。」
②「命は一つである。換言すれば、人間でも動植物でも魂は根っ子でつながっている。したがって、他者を傷つける行為(殺害はその最たるもの)は、結局は己れを傷つける行為となる。」
やや、ちょっと今流行りのスピリチャリズムっぽくなりましたな。でも、最近凶悪犯罪の報に接する度に、正直そんなふうに思いますぞな。
この偏向報道が生じるメカニズムを説明します。ーーー新聞やテレビが報じるトピックを決めているのは現場の記者ではなくデスクーデスクは普通四十代なので十数年後に定年退職ー退職後の年金が気になるーだから少子化による年金制度の危機に関心があるー年金を支える若い世代が減っては困るーそこで子供が被害者になった事件は大きく扱うー他方で過労死をめぐる裁判には大したニュース価値はないと判断するー自分がミジメになるから
ひろのさま。まさにそんなものでしょう。マスコミ産業労働者の勤務実態というのは本当に過労死レベルで、それが報道の内容をゆがめている可能性については真剣に論じる必要があるのかもしれません。