ガラパゴス通信リターンズ

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パチプロと乙女

2006-04-07 06:50:05 | Weblog
 学生の卒論には、ニートやフリーターを主題としたものが多い。自分たちにとっての切実な問題だからだろう。みな一生懸命に取り組んでいる。彼女たちは統計や文献にあたるだけではなく、当事者たちにインタビューをして論文を書いている。立派なことだ。この手の論文を指導していつも疑問に思うことがある。日本にニートって本当にいるのだろうか。
 彼女たちが「ニートに会いました」といってインタビューをとってくるのは、きまってパチプロの人たちだ。働く気力も、学ぶ意欲もない若者。それがニートだといわれている。パチプロは生産的な生き方ではない。しかし彼らは長時間パチンコの前で「労働」(?)をしている。台の研究にも余念がないのだろう。無気力な「怠け者」に務まる仕事ではない。
 若者の総人口から、学生と正社員、フリーター、そして求職中の人を控除した部分をニートと呼んでいる。日本のニートは統計上の残余カテゴリーである。だから60万人(鳥取県の人口に等しい)という膨大な数になる。フリーターも、たまたま働いていない時期に調査にあたればニートにカウントされる。パチプロもデイトレーダーもみんなニートだ。
ニートの「発祥国」はイギリスだ。イギリスは、日本より20年早く経済の停滞を経験している。若い頃に仕事に就くことができず、無業者のままで過ごした世代の子どもたちがいま若者になっている。若者の荒廃ぶりも日本とは桁違いだ。ニートということばには、イギリス現代史の暗部が刻印されている。安易に日本の現状にあてはめるべきではない。
 ところで皆さんは驚かないだろうか。良家のお嬢さんの「友だちの友だち」には、きまってパチプロがいるのだ。この国には、パチンコに溺れている途方もない数の人々がいる。だからサラ金が繁盛し、個人破産が激増しているのだ。ニートの幻影に怯えるよりもこの現実を直視してきちんとした対策をたてることの方が、喫緊の課題だとぼくは思うのだが。