ガラパゴス通信リターンズ

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リーチ一発ツモ!

2006-04-13 06:17:40 | Weblog
 鳥取県がその人口に比べて多くの優れた人材を輩出している分野が二つある。一つは野球のピッチャー。そしてもう一つがマンガ家である。前者では米田哲也、福士明夫、小林繁、川口和久。後者では水木しげる、青山剛昌、谷口ジローらがいる。なんともすごい顔ぶれである。倉吉市出身の山松ゆうきちのマンガも、とぼけた味があり、ぼくは大好きだ。

 山松はギャンブルものを得意としている。そのなかに、仏陀とキリストと孔子とマホメッドの4聖人が集まって麻雀をやるマンガがある。この4聖人、性格がとても悪い。人をあしざまにののしる。いんちきをやる。すねる。恫喝をする。突然説教をはじめる。山松は麻雀の本質をよくとらえている。麻雀とは人間性の悪い部分を引き出す遊びなのである。

 三島由紀夫の自殺について、こんな評論を読んだことがある。三島は麻雀をやらなかったから自殺した。三島は自分の才能が枯渇することを恐れていた。才能が枯渇して酷評にさらされることを恐れていたのである。麻雀をやれば、いつもボロクソにいわれるから打たれ強くなる。だから三島も、才能の枯渇を恐れることなどなかっただろうという理屈だ。

 いまの若者は麻雀をやらない。みんな忙しいからなかなか4人そろわないのかもしれない。麻雀の卓を囲むと罵詈雑言が常にとびかう。このこともいまの若者たちにはガマンできないのだろう。小さな頃から大事に育てられた彼らはとてもプライドが高い。相手を傷つけまいとひどく気を使うカルチャーも根を張っている。麻雀におよそ向かない人たちだ。

 ぼくも麻雀を覚えたのは学部を卒業した後のことだ。まわりに強いのがゴロゴロいる。「現金輸送車」になることを恐れたのだ。大学入学直後、山上たつひこのこんなマンガを読んだ。麻雀を知らない4人が雀卓を囲んで、ひたすら牌を混ぜている。あげくに疲れ果て、「こんなことをやって何が面白いのか」と叫ぶ。ぼくは「本当にそうだなあ」と思った。