太った中年

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小沢新党

2010-06-10 | weblog

田中康夫と亀井静香と鈴木宗男と加藤紘一と小沢一郎の新党の試論(世に倦む日日)

空しい言い訳になるが、今日(6/8)、その提案を書こうと思ったら、現実政治の動きの方に先を越された。小沢一郎が民主党を離党し、亀井静香と組み、新しい政党を立ち上げた場合は、党首には田中康夫を据えるのがベストな布陣だろうという記事を書くつもりだった。以下の内容は、私自身のコミットメントと言うよりも、政治のシミュレーションとしての試論であり、言わばクライアントに代理店が提案するマーケティング戦略の企画書のようなものとしてお考えいただきたい。

まず、その新党を構成する主要メンバーを並べると、田中康夫、亀井静香、鈴木宗男、加藤紘一、田中真紀子、小沢一郎である。そして、政党の理念と戦略を一言で表現すると、カントリー・パーティーあるいはナショナル・パーティーであり、地方主義を掲げる。地方に重点を置く。地方の票を狙い、地方の選挙区を制する。仮に党名を国民党としよう。現在、ローカル・パーティーとして新党大地があるが、同じ論理の政策主張を全国の地方に拡大した政党、それが国民党である。

その新党は、新自由主義に対抗し、必然的に脱マスコミあるいは反マスコミの性格を帯びる。25条系の政策軸で左側にポジションし、9条系の政策軸では右側に位置を取る。保守で反新自由主義。戦略として、衆院300小選挙区の過半数を取ることを目標とし、特にこれまで自民党に投票してきた農村の保守票を狙う。政策標語は、もし、菅直人が民主党の標語を新しいコピーに切り換えたら、「国民の生活が第一」を奪い取って使う。
 
ラディカルに「格差をなくす」でもいいかもしれない。「国民の生活が第一」の政策の正統な後継者であることを宣言し、民主党が捨てたそのキャッチコピーを掲げる。国土の均等的発展を目指し、地方経済の再建と農林水産業の再生に注力し、都市と農村の格差の是正を訴える。所得の再配分に政策の焦点を当て、消費税増税に反対し、所得税・資産税の累進課税強化と証券課税、および海外現地法人の内部留保課税によって税収増を図る。

労働者派遣法を再改正し、製造業の派遣労働を例外なく即刻に全面禁止する。道州制に反対し、ナショナル・ミニマムの権利の保全を全面に打ち出す。等々を政策の柱とする。これらは、基本的に国民新党の亀井静香が主張してきたものと同じだ。本来、こうした政策は、社民党や共産党など左派のセグメントに所属する勢力が拡大して、立法府で強く要求する中で政府の政策に反映されるものだが、現状は左派の政治勢力が全く脆弱かつ不活発で、カリスマの出現もなく、国民の支持を集められない。右側ばかりが活発に動いて政界再編のエネルギーを噴出している。これらの政策の実現を求めている国民は多い。

特に、都市と農村の格差の是正の問題については、きわめて国民的要求の強い問題であるにもかかわらず、政党が重要問題として取り上げず、マスコミは全く無視をしている現状がある。不思議なことだが、農村で票を取ってきた自民党が、小泉改革以来すっかり変貌して、地方経済を破壊する新自由主義の政策を固守している。

マスコミの報道や解説の論調は、完全に東京と大都会の住民の利害にシフトしたもので、外資系企業や金融機関の論理で凝り固まっている。外資系というのは、基本的に東京にしか事業所を置いていない。外資系にとって日本とは東京のことである。東京はこの10年間に本当に変わった。高層ビルがそこら中に無闇に林立し、ランドマークの景観が次々と変わり、もう、目の前の背の高いビルが何のビルだか分からないほどの状態になっている。

品川駅の東口(港南口)が変わり、新橋駅の東口(汐留)が変わり、丸の内がすっかり変わり、六本木が変わり、東京駅の東口(八重洲)も変わった。しかし、地方には高いビルは建設されない。名古屋で、トヨタのバブル景気の影響で、ようやく三つか四つほど背の高いビルが建ったが、他の地方都市はどうだろうか。どこも景気が悪く、次々と百貨店が潰れている。龍馬の高知では、はりまや橋交差点の土佐電鉄デパートが潰れた。

東京で言えば、銀座四丁目交差点の一角に建っていなければいけない百巻店が忽然と消滅し、その空間が惨めな更地になっている。高知の人は心を傷つけられているだろう。地方では、昔から繁盛していたアーケード商店街がシャッター商店街に変わっている。儲かっているのは、地元の商店街から客を奪った岡田克也のイオンと、中国製低価格衣料品のユニクロだけだ。

地方に住む人も働いている。税金を納め、子供を育て、老いた親を介護している。地方に住む日本人は働いても豊かになれない。カネは東京に吸い上げられ、外資に吸い上げられている。労働をして価値を生産しているのは、東京の人間だけではない。けれども、東京にばかり高層ビルが建つ。東京の各所でビル建設の工事をしている。資本は東京にだけ投下されている。

地方には高層ビルは建たない。逆に県都の商店街が廃れ、地方紙の経営も厳しくなり、地銀が隣の県の地銀と合併を余儀なくさせられている。土建会社が人員削減し、県内の就職先がなくなっている。町から離れた農山村からは郵便局が消え、学校が統廃合されてなくなり、保育所がなくなり、医師がいなくなって病院や診療所が閉鎖され、自治体の合併で役場までなくなっている。さらに山奥に入ると、もはや日常の買い物もできない買い物難民の限界集落の状態になっている。人が住めなくなっている。

だが、そうした地方の現状や要求が政治に反映されない。地方で生きる人々は、それでも何とか町おこし村おこしをしようと懸命で、そのためには高速道路がどうしても必要だと必死で陳情しているのに、マスコミはそれは無駄だと言い、不要だと言い、それに答える政治は「旧来型の自民党の利益誘導の政治」だと言い、悪性表象で塗り固めて攻撃し排除する。

最近、気づくのは、NHKまでが民放と同じ新自由主義的な報道の傾向になっていることだ。地方を重視した視線が消えている。9時のニュースの青山祐子と大越健介に親米新自由主義が顕著で、クローズアップ現代も以前のような企画が途絶えている。あの鎌田靖までが、すっかりサラリーマン・キャスターに転向した。NHKの報道から反新自由主義の問題意識が消えた。NHKに異変が起きている。NHKが地方を捨てた。

今、日本の社会から格差を是正する政策が求められているはずだ。そして、格差の是正こそが、本来の内需を生み出し、奪われ失われフリーズさせられていた消費を立ち起こし、地域経済と国内経済を活発化させ、日本経済を回復軌道に乗せるのだと、私はそう確信している。

多くの地方の人々が、自信と希望を失いながらも心の中でそう思っているに違いない。自分の暮らす地域に元の豊かさを取り戻したいと願っているはずだ。そうした政策を正面から掲げて国民の支持を受ける政治勢力の出現を求めているに違いない。そうした地方の要求の受け皿になる保守新党を上に挙げたメンバーで作るとき、田中康夫が党首に収まるのが、最も安定的でかつ効果的な組織となるだろう。

党首は若くないといけない。そして、党首はテレビに出演して華麗な弁舌をパフォーマンスできないといけない。小沢一郎にはその能力がない。小沢一郎は幹事長で党務を仕切り、テレビには幹事長代理を出せばいい。もう2人か3人、50代とか40代の人間が必要だが、公募をかければ、必ず有能な人材を集められるだろう。政治を志している人間は多いし、地方の再生のために政治を変えようと思っている人間も少なくない。

田中真紀子が言っていたが、民主党の議員には都会出身のエリートが多い。元官僚とか、外資系の証券会社とか、弁護士とか、マスコミ出身とか、そういう人間が集まっている。彼らは政策志向だが、その政策主義の中身は、現在の新自由主義的な大枠を前提にした専門知識の世界での政策志向であって、路線を大きく転換させる政策のデザインはできない。重箱に隅をつつく官僚の「政策」と同じだ。

つまり、民主党の政治家たちの「政策」と言うのは、単に大臣になるため、出世するための知識と道具の話でしかない。その最も典型的な像は、小僧の古川元久が提供している。民主党でも自民党でも、どっちでもいい政治家であり、霞ヶ関の官僚が閣僚のお面をかぶってテレビで舌を回している政治家である。国民が希求しているところの「政治を変える」方向に寄与する能力ではない。

喩えて言えば、幕末における幕吏の政策能力である。国民が求めている政治家は、西郷隆盛や大久保利通のような大型の政治家であり、国民が待望している政策は、坂本龍馬の戦中八策のような革命的な政策である。政策の意味が違う。国民が要求する政策はスケールが大きくラディカルなものだ。この政党は、もし結成された場合は、マスコミと距離を置く政党になる。マスコミからは常に悪罵される政党になる。

しかし、政党が国民に向かって政策を説明して支持を訴える場は、基本的にはテレビであり、したがって、この政党の代表としてテレビに出る者は、きわめてハイレベルなディベートの能力を持っていなければならず、キャスターやコメンテーターが繰り出す批判をクイックに切り返して論破し、テレビ論戦を制圧しなくてはならないことになる。

この政党はテレビでは常に異端席に座らされ、非難の集中砲火を浴びる宿命を持つ。だが、われわれは、その不利な論陣を実力で突破し、マスコミ側を圧倒して沈黙させるカリスマの出現を待望しているのだ。テレビ討論の場で、新自由主義の「正論」で攻めるマスコミ側を粉砕する英雄の姿を見たいのである。一色清や与良正男を論難し、面罵し、恥を掻かせて俯かせるタフな政治家に登場して欲しいのだ。

(以上、阿修羅より転載)