太った中年

日本男児たるもの

鳩山の裏切り

2010-06-16 | weblog

「ダブル辞任の仕掛け人はどちらか」

6月11日のEJで、政官財プラス記者クラブメディアの連合軍が小沢幹事長を中核とする鳩山政権を崩壊させるために組んだ3つの目標を示しましたが、再現しておきます。

1.小沢一郎幹事長を失脚させて鳩山内閣を崩壊させる

2.各省庁の官僚による抵抗で記者クラブ温存をはかる

3.2010年参院選で民主党を過半数割れに追い込む

この1と2については、既に達成されています。問題は3ですが、これについてはどうでしょうか。既に参院選は7月11日に投開票が行われることに決定しています。

つい2週間前までは、民主党の過半数割れはほぼ確実の情勢であったのです。しかし、小鳩政権が崩壊し、菅政権になってからは、民主党の支持率は急回復して、単独過半数も不可能ではなくなっています。これは連合軍側にとっては大きな計算違いになりつつあります。

実は連合軍が一番恐れたのは、小沢幹事長が権力を維持したまま民主党が参院で単独過半数を達成することだったのです。そのため、相当荒っぽい手段まで取って小沢幹事長潰しをやったのです。はっきりいうならば、世論の誘導です。これはメディアが一番やってはいけない禁じ手です。

もし、一人の現職国会議員を含む小沢氏の秘書3人の逮捕・起訴がなければ、鳩山政権の失政があったとしても、連合軍側が恐れた最悪の事態──小沢氏が権力を維持したまま民主党が参院選で単独過半数を達成──これは実現していたはずです。今回の民主党の支持率の急回復を見ると、小沢氏にからむ「政治とカネ」の問題が、いかに鳩山政権や民主党の支持率の足を引っ張っていたかが歴然としています。何しろ、何もしていない菅政権の支持率が鳩山政権時の3倍も回復しているからです。

さて、今後の政治情勢を判断する重要なポイントは、今回の鳩山─小沢のダブル辞任の本当の仕掛け人が、鳩山か小沢かのどちらであるかということです。

1.仕掛け人は「鳩山首相」である   ・・・・ 鳩山主導

2.仕掛け人は「小沢幹事長」である ・・・・ 小沢主導

興味本位の詮索ではなく、このどちらの立場に立つかによって今後の政治情勢は違ってくるのです。つまり、無役になった小沢氏の影響力をどう見るかの度合いが違ってくるからです。

小沢氏を批判する側──政官財プラス記者クラブメディアの連合軍は1の立場に立ち、「小沢の時代は終わった」と宣伝しています。これに対して、小沢主導説に立って報道している週刊誌メディアがあります。どちらが正しいのでしょうか。

6月7日のEJ第2828号では、私は鳩山主導説に立って記事を書きましたが、その後の調査によると、鳩山主導説は違っている可能性が高くなっています。

鳩山主導説を最初に口にしたのは、田原総一朗氏です。6月2日の小鳩辞任を受けて急遽設けられたテレビの特別番組で田原氏はこういったのです。

実は首相を訪ねてきた小沢幹事長、輿石参院幹事長に対して、最初に辞任を迫ったのは鳩山さんなのです。自分も辞めるから小沢さんも辞めて欲しいとね。──田原総一朗氏

これを私は聞いていたのです。さらに、「夕刊フジ」のコラム『風雲永田町』を担当している鈴木棟一氏がやはり鳩山主導説に立って、鳩山氏の立てた親指と小沢氏への辞任要求を結び付けて書いていたので、7日の時点では正しいと思ったのです。

鈴木棟一氏は9日発行のコラムでも次のように書いて、さらに鳩山主導説を展開しています。

6月1日の鳩山、小沢、輿石の3者会談。鳩山首相が言ったという。「私も責任を感じております。しかし、幹事長、あなたも辞めてください。この(支持率低下の)事態は普天間問題ではない。リーダーシップでもない。『政治とカネ』の問題ですよ」。これに輿石氏が強く反発したという。「とんでもない、いま小沢幹事長に辞められたら、参院選をどう戦うのだ」。鳩山氏が重ねて言った。「私は一緒に辞めるというなら辞めますが、小沢幹事長が辞めなけば辞めません」(一部略)「鳩山は同時辞任を提案したので、小沢と輿石が鳩山辞任のホコを収めるのではないかと期待してた節もある」。「夕刊フジ」6/9

しかし、最初に鳩山主導説の口火を切った田原総一朗氏はBSの政治番組で、微妙に表現を修正させ小沢主導説に舵を切ったように見えるのと、6月7日発売の『週刊ポスト』の上杉隆氏の記事「官邸崩壊再び──すべては小沢の『永田町爆弾』だ」は完全に小沢主導説に立っています。

鳩山氏は小沢氏に対して辞任を求めたと語り、報道も「鳩山が小沢を道連れにした」との見方が一般的だ。だが、今回の辞任劇は小沢氏が巧妙に仕組んだものだ。鳩山氏には小沢氏を辞めさせるような力はない。一方の小沢氏は、自分が辞める時は鳩山氏を抱きかかえて辞めると決めていた。つまり、逆である。──『週刊ポスト』6/18・25

さらに決定的なのは、10日発売の『週刊文春』6/17の冒頭記事「菅総理『小沢斬り』の全内幕」において、小沢主導説が展開されていることです。『週刊文春』は一貫して反小沢側の雑誌であり、それが小沢主導説に立っているのです。その内容は明日のEJで述べます。

関連情報

W辞任は織り込み済み──仕掛け人は小沢氏?

関係者によると1日の会談では参院選の厳しい情勢を踏まえ輿石氏が首相に辞任を促したという。その際、輿石氏は野党が参院に首相の問責決議案を提出した場合、社民党や民主党の一部議員が賛成し可決の可能性が高いことなどを説明。その背景には「小沢幹事長が水面下で社民党に対して働きかけて、同党が問責決議案や衆院での内閣不信任案に賛成する方針を表明することで鳩山首相に圧力をかける構図を作った。これを裏付けるかのように社民党の又市征治副党首がこの日の退陣表明を正確に“予言”していた」(民主党の内情に詳しい報道関係者)。小沢氏は先月30日に側近議員らに「鳩山降ろしに動いていい」と指示を出したとされる。

 

「予想できなかった鳩山の裏切り」

すべては小沢氏のシナリオ通りに動いたのです。ただ、ひとつの計算外のことを除いてです。

小沢氏のシナリオでは、6月4日に鳩山首相と小沢幹事長が辞任して、その日のうちに新首相で組閣し、翌日5日に認証式を終える──すなわち、挙党態勢で電撃的に新体制に移行するというシナリオです。しかし、5日は土曜日であり、天皇陛下の健康状態も含めて、スケジュール的に可能であるかまで調べているのです。5月28日のことです。

ここで大切なのは挙党態勢ということです。代表選をやると政治空白ができ、猟官運動がはじまって、誰が代表になるにしてもグループ間に亀裂が起きる──選挙前にそういうことを起こしたくないと小沢氏が考ええたのです。

5月31日に、鳩山首相は小沢幹事長と輿石参院幹事長に面会を求められたのです。このとき、小沢氏はシナリオを首相に打ち明け、首相にこう話しています。

鳩山さん、新体制になれば、起死回生になる。僕も退くから、鳩山さんも退いてくれないか。──『週刊文春』6/17より

しかし、いきなり退陣要求を突き付けられた鳩山首相は、煮え切らない態度を取り続けたのです。しかし、輿石幹事長から「参院議員の命を預かる代表ではないか!」と一喝されると鳩山首相は、「しばらく考えさせて欲しい。その方向で考えますから」といったので、小沢氏と輿石氏は引き揚げたのです。もちろん、小沢氏が鳩山首相にこのことは誰にも喋るなと念を押したことはいうまでもないことです。

そして次の6月1日、2度目の3者会談が行われ、鳩山首相は辞任を了承したのです。ここまではシナリオ通りだったのです。しかし、小沢氏の想定外の事態が起こったのです。それは、前夜の3者会談の内容をすべて菅氏に喋っていたのです。

「あとは菅さんがやってくれるか」と鳩山氏がいったところ、菅氏は「条件がある。非小沢でやりたい」と鳩山氏に提案したというのです。ここで、小沢シナリオは一気に崩れ、代表選の流れができてしまったわけです。

小沢氏は裏切られたのです。その怒りは相当のものであったといわれます。その証拠に小沢氏の関係者は、鳩山氏側にわざわざ次のように通告しているのです。

小沢が怒っていることは2つある。約束を違えて喋ったこと、菅への根回しは小沢がやるつもりだった。次に小沢外しを陰で画策していること。──『週刊文春』6/17より。

これは何を意味するのでしょうか。

これは完全に小沢氏に喧嘩を売っています。小沢氏としては菅首相を中心とする反小沢グループに加えて、鳩山氏も許せないでしょう。しかし、これは政治の世界というものなのでしょう。小沢氏は党内の権力抗争を避けようとしたのですが、結果としては民主党の首脳陣が小沢氏に喧嘩を売り、権力抗争になってしまう
ことは確実です。

6月4日の代表選の朝のことです。衆議院第一議員会館の会議室に一年生議員が続々と集まってきたのです。その数は約60人ほどです。菅支持グループが前日からFAXやメールで一年生議員に連絡を回したのです。菅氏を支持する総決起大会への誘いなのです。彼らは小沢チルドレンの切り崩しを画策したのです。

会議室に入ると、数人がマイクを手に自分の思いを喋り始めたのです。「今までは自由な政治活動ができなかった」とか、「暗い気持ちで過ごした」とか話し始め、それは小沢批判集会そのものになったのです。

6月7日の両院議員総会のあった日のことですが、奇妙な情報が党内を駆け巡ったのです。それは民主党本部の金庫を開けたら空っぽだったというウワサであり、間もなくそれは根も葉もないガセネタとわかったそうです。

しかし、この一件は、今回の執行部人事で、日頃小沢氏に批判的な発言を繰り返す小宮山洋子議員が財務委員長に就任したことに関係があります。小沢氏のカネの使い方を調査し、公表するぞとの牽制であるとの見方もあります。次元の低い話です。

しかし、民主党の前途は多難なのです。せっかく小沢氏が選挙前に党内にそういう波風を起こさないように自らの身を捨てて選挙に勝利するよう考えたプランを踏みにじり、逆に党内を反小沢で結束させるなど最悪の選択といえます。一体誰のお陰で万年野党の民主党が政権がとれたと思っているのでしょうか。そこに小沢氏に対する少しは感謝の念はないのでしょうか。

ところで、支持率が回復した民主党ですが、果たして参院選は勝てるのでしょうか。目標は3つあるのです。

1.単独過半数 ・・・・・・ 60議席

2.改選数維持 ・・・・・・ 54議席

3.改選第一党 ・・・ 自民党を上回る

現時点の分析ではっきりしていることは、「単独過半数」は難しいということです。社民党が連立離脱をしなければ、現在の支持率があれば単独過半数も可能だったのですが、今となってはよほどのことがない限り、困難です。

菅政権は「改選数維持」を目標としていますが、選挙戦が最もうまくいってこのレベルです。しかし、これもギリギリの目標であり、ハードルは高いといえます。

結局達成できそうなのは、3の「改選第一党」です。自民党が獲得できそうな議席は最大で46議席であり、これ以上は伸びないと考えられます。民主党は少なくともこれを上回ることは可能であるといえます。

関連情報

・民主党が改選議席数を下回わるとどうなるか

与党が改選議席数を下回り、参院で過半数割れに陥ると、衆参ねじれ国会となり、民主党はかつての自民党と同様に国会運営に行き詰まる。この場合、公明党と連携を探る必要が出てくるが、「民主党幹部で公明党とパイプがあるのは小沢氏ぐらいです。小沢氏は連立組み替えの窓口役となることで、復権のきっかけをつかむのではないか」(伊藤氏敦夫氏)

(以上、Electronic Journalより転載)