太った中年

日本男児たるもの

ヒトラー亀

2009-12-26 | weblog

Dragon Boats

 

推心置腹

誠心誠意を持って人に接すること。

中国西漢の末年、王莽(おう・もう)は当時の王位を簒奪し「新朝」を創り皇帝になった。王莽は政策の改革を行なったが、煩瑣で厳しい政令で人々の生活はさらに困り苦しんだため、新朝政権を覆そうとする民衆が各地で反乱を起こし、劉玄(りゅう・げん)を擁立し「更始皇帝(こうしこうてい)」にした。当時、「邯鄲(ハンダン)の戦」で王莽の軍を破った慎重な性格で評判のあった劉秀(りゅう・しゅう)の戦績を称え、更始皇帝・劉玄が劉秀に「蕭王(しょう・おう)」の称号を与えた。

その後、劉秀がさらに強力な敵「銅馬軍」を破り、その他の群雄割拠をも次々と破り降参させた。劉秀は降参した敗軍らを自分の部隊に組み込み、降参した元リーダたちに官職を与えた。しかし、敗軍の将たちはこれまで劉秀とは敵対した相手だったことから、劉秀はいずれ自分たちを殺害すると不安と疑心の日々を過ごしていた。

一方、劉秀も彼らの内心の不安を察し、彼らが率いていた元の軍隊に戻し、自分は僅かな人員だけを連れて各軍営を巡視することにした。敗軍の将たちは自分たちに全く警戒しない上、信用してくれた劉秀に対して、「蕭王は自らの誠心を他人の腹に置いてくれている以上、わが身を顧みずに尽力するほかならぬ」と思うようになり、全員が安心して劉秀に服従するようになった。

劉秀は王莽による簒奪後の後漢時代の混乱を統一し、漢の王朝を再興し、後漢王朝を建て漢光武帝になった人物だ。

後人はこの物語から「推心置腹」を諺とし、後世に伝えた。即ち、誠心誠意を持って人に接すること。

 

誠心誠意を持って人に接することなどないと思われる噛みつき亀の池田信夫blog。

以下、相変わらずの噛みつき亀が亀ちゃんに噛みついている。しかし、少しトーンが変調している。

財政赤字はフィクションか

亀井金融担当相が、「来年度予算は92兆円では足りない。95兆円に増やせ」と吠えている。彼は記者会見で「財政赤字はフィクションだ」とのべ、「日本のように外国からの借入金がほとんどない国は世界にない」とその優位性を強調したそうだ。

これは財政学の初歩的な練習問題だが、宮崎哲弥氏のような半可通にありがちな間違いで、対外債務と政府債務を混同している。たしかに日本国債の債権者の93%は日本人なので、外国に対して債務不履行を起こす心配はない。個人金融資産は1400兆円あるから、900兆円の政府債務が国内でファイナンスできることも事実だ。

しかし国債を償還するには増税が必要だ。IMFの試算によれば、プライマリーバランスの赤字を半減させるだけでGDPの14%以上の増税が必要になる。これを消費税だけでまかなうと、40%以上の税率になる。それは論理的には可能だが、消費税率を5%から引き上げるだけで大騒ぎする国で、そんな税制改正が国会で通る可能性はゼロだ。つまり日本の政府債務は、すでに政治的には返済できない状態なのである。それを歳出削減で解決することも不可能であることは、今回の予算編成で明らかになった。

バラマキ財政派の人がよくいうのは、「財政危機なら、誰も国債を買わなくなって金利が上がっているはずだが、日本の金利は低いじゃないか」という話だ。これも一見もっともにみえるが、国債のほとんどを買っているのは個人ではなく邦銀だ。彼らの調達金利はゼロに近いので、長期金利が1.2%でも1%以上の鞘がとれる。「まずデフレを止めよ」とか騒いで過剰な金融緩和を求める人々が、国債バブルを膨張させているのだ。

しかし今のような金余りがいつまでも続く保証はない。高齢化によって家計貯蓄率は急速に低下して2.7%になり、低金利で資本流出も急増している。資金需給が逼迫すると金利が上がり、邦銀はキャピタルロスを抱えるので、彼らが国債を売却するとさらに金利が暴騰(国債価格は暴落)する・・・という悪循環が起こる。井堀利宏氏もいうように「市場が将来のデフォルトを予想して金利が上昇し始めたら、そのときにはもう手遅れ」なのだ。

今週のニューズウィークにも書いたことだが、このように長期的な財政危機を考えないでバラマキ福祉を続ける「短期決戦」志向は、日本軍以来の伝統だ。兵站などの計画的な準備をしないで場当たり的に戦力を逐次投入する作戦は、補給の途絶によって餓死が戦死を上回る悲惨な結果をもたらした。バラマキを戦闘、財政を補給と考えれば、同じ構造であることがわかるだろう。

外国の侵略や植民地支配を受けたことがなく、内戦も少なかった日本では、長期的な戦略を立てて戦争に備える必要がないので、強い指導者はきらわれ、ボトムアップの決定を尊重する調整型リーダーが好まれる。中には石原莞爾のような戦略家もいたが本流にはなれず、中枢を握ったのは東條英機のようなその場の「空気」を読んで大勢に迎合する人物だった。意思決定を各閣僚にゆだね、自分では何も決めない鳩山首相は典型的な東條型リーダーだ。

財政赤字は、先送りしていると確実に大きくなる。かつての不良債権問題が、1998年に信用不安という形で爆発したように、国債バブルも遠からず崩壊するだろう。大増税も歳出削減も不可能な以上、残された道はインフレ(による実質的な債務不履行)しかない。Reinhart-Rogoffも示すように、経済の破綻した国で財政が破綻するのはありふれた現象で、そのときハイパーインフレが起こることも珍しくない。

考えてみれば、ハイパーインフレで戦争のように人命が失われるわけでもない。老人の資産が消滅して世代間の不公平がなくなり、実質賃金の切り下げによって新興国との賃金格差もなくなる。チェ・ゲバラを尊敬して「革命的政策」を求める亀井氏が、そういう日本経済の「自爆」を求めているとすれば、意外に正しいかもしれないし、それしか道は残されていないような気もする。

普段なら「オレの意見が正しい。それを理解できない学者、政治家、評論家、その他はどうしようもないバカだ」つー傲慢不遜な態度でイヤミタップリの語り口が池田センセの芸風。ところが上記コラムでは悲観論、終末論を漂わせている。どうしたのだろう、ナニか悪いものでも食ったのか、ちょっと心配だ。

 

亀井氏「撃ち方やめだ」 弱る首相に配慮、予算では沈黙(朝日新聞) - goo ニュース

総額7.2兆円の緊急経済対策の取りまとめでは最後まで増額を求めた国民新党の亀井静香代表が、来年度予算編成では一転してダンマリを決め込んだ。米軍基地問題をめぐる混乱や偽装献金事件で鳩山政権の支持率が急落しており、「首相に相当気を使った」(周辺)ようだ。

「撃ち方やめだ」。首相が偽装献金事件の釈明会見を開いた24日、亀井氏は同党幹部に92.3兆円の来年度予算案を受け入れるよう指示。95兆円の予算を組むよう主張していたが、すんなり譲歩した。

なんだ亀ちゃん、池田信夫blogを読んでいるのか。そんなに心配しなくていいぞ。

 

離党また離党…自民に危機感 参院選の勝算も立たず(朝日新聞) - goo ニュース

自民党の現職の参院議員3人が年末に相次いで離党の意向を表明し、1993年の野党転落時の再現を恐れる声が広がっている。党支持率が低迷し、来夏の参院選の勝算が立たず、党再建の道筋が見えないことが、議員の不安をかき立てている。

離党第1号は来夏に改選を迎える田村耕太郎氏(46)=鳥取選挙区=だった。現職を公認する場合も、党員による信任投票を実施しようとした県連との関係が悪化。最後は県連が折れて11月下旬に田村氏の公認を申請したが、田村氏は「変わろうとしない党には従えない」として、一方的に離党を表明した。

>1993年の野党転落時の再現を恐れる声が広がっている

というのかすでに再現している。

 

ヒトラーの経済政策 - 池田信夫blog

鳩山首相の政治生命も、秒読みになってきたようだ。1年もしないうちに首相がコロコロ変わる「ワイマール症候群」が続くと、国民の中にヒトラーのような「強い指導者」を望む群衆心理が出てくるのは、古今東西を問わない。日本ではそういう心配はないと思っていたが、「100兆円の国債の日銀引き受け」を主張する亀井静香氏が鳩山氏の次の首相候補に擬せられるのを見ると、万が一のリスクも考えたほうがいいのかもしれない。

ナチは一般に思われているように大資本の利益を代弁したわけではなく、その正式名称「国家社会主義ドイツ労働者党」が示すように、労働者の党だった。ヒトラーはユダヤ人に代表される大資本を攻撃して弱者のルサンチマンに訴え、短期間に権力を掌握したのだ。彼はメーデーを国民の祝日として労働組合を統合・強化し、「生活に困っている者をまず助ける」という経済政策の原則を掲げた。これは「生活が第一」という民主党と似ているが、類似はそれだけではない。ヒトラーが実施した政策は、次のような徹底したポピュリズムだった:

公共事業で失業問題を解消

中小企業のモラトリアム

ユダヤ人(大資本)に増税して労働者には減税

生活保護の拡大と(派遣村のような)救貧活動

老人福祉の大幅な強化

有給休暇や健康診断などの労働者福祉政策

自動車税の減税

高等教育の無償化

母子手当による少子化対策

大規模店舗の規制

高利貸しの追放

価格統制

ヒトラーはアウトバーンを初めとする大規模な公共事業によって600万人の失業問題を解決し、これは世界で初めての財政出動による雇用創出政策といわれる。経済政策を立案したシャハト経済相は銀行家で、ケインズの理論も知っていたと思われるので、これはニューディールより早いケインズ政策である。これによってドイツの工業生産は、ヒトラーが政権を掌握した1933年から5年間で倍増した。そして何よりも大きな失業対策は、軍需産業への莫大な投資と兵士の動員だった。

こうしたバラマキ財政の財源は国債で調達されたが、シャハトが帝国銀行(中央銀行)の総裁を兼務していたときは、国債の発行にも歯止めがかけられていた。しかし戦費の調達に迫られたヒトラーはシャハトを解任し、帝国銀行を国有化して大量の国債を引き受けさせ、財政が破綻して戦争にも敗れた。ハイパーインフレが起こらなかったのは価格統制をしていたためだが、敗戦によってヒトラー政権の発行したライヒスマルクは紙切れになった。

ナチの赤字財政がうまく行った(ように見えた)のは、ヒトラーの絶対的な権力があったからだ。国債とは課税の延期に過ぎないので、徴税能力がその担保なのである。ヒトラーなら消費税を80%にすることもできるだろうが、普通の政権には不可能だ。そういう政策をとれるのは、亀井氏ぐらいのものだろう。日本郵政の社長人事のような暴挙を簡単に許す民主党政権では、あっというまに全権委任法が成立する可能性もゼロではない。いやな世の中になってきたものだ。

追記:リフレ派が亀井氏を賞賛しているのも不気味だ。経済問題を「簡単に解決できる」というカルト的な教義は恐い。

ちょっと目を離したら噛みつき亀が弱気の亀ちゃんに噛みついた。ヒトラー亀は笑える。

そうだ、タイトルを変えよう。