太った中年

日本男児たるもの

政治的覚醒

2009-12-24 | weblog

Manila Skyline

 

捷足先登

行動の早い者が先に目的に達する。

「捷」とは敏疾であること。「捷足先登」とは、行動の早い者が先に目的に達すること。 早い者勝ち。

紀元前200年頃の秦朝末期。各地の豪傑たちが天下を争い、動乱が絶えなかった。当時、最強の武将・劉邦には韓信という優秀な部下がおり、韓信の活躍で次々とライバルの城を攻め落とした。功を成した韓信は、劉邦から「斉王」に称せられた。

その時、韓信の策士・荊通(かいとう)は、韓信に劉邦を離れてライバルの項羽と手を結び、天下を分割して、将来自らが王になるよう勧めた。しかし、韓信は、劉邦の恩義に背くことはできないといって、劉邦と共に項羽を攻めた。長い戦いの末、韓信の活躍により劉邦が天下を取った。

その後、漢帝国を築いた劉邦は、韓信に対して疑念が芽生え始め、あれだけ功のあった韓信を淮陰侯に降格した。韓信はそれを不服として立ち上がったが、密告されて誅殺された。

死に臨んで韓信は、「当初、荊通の進言を聞き入れなかったのは、最大の過ちだった」と嘆いた。これを聞いた劉邦は荊通がかつて韓信に謀叛を勧めたことを知り、手下に命じて荊通を捕まえ、殺そうとした。

韓信に謀叛を進言したかと尋問する劉邦に荊通は、「秦が力を失った後、英雄たちは皆が天下を取ろうとしていました。当然、才の高い、行動の素早い者が勝つわけです。才のある者なら、皆王になろうとするものですが、彼らをことごとく殺すことができましょうか?それに当時、韓信は主であって、臣である私はただ主のために全力を尽くしただけなのに、何の過ちがあるのでしょうか?」と劉邦に反問した。劉邦は道理がないわけではないとも感じ、荊通を赦免した。

その後、このエピソードから「疾足先得」という熟語ができ、後に「捷足先登」に変わった。「行動のもっとも早い者が勝つ」ということだ。

早い者勝ち、そんな時代ではない。しかし、いつの時代も早い者が勝つというパラドックス。

 

さて奥さん、以下、ちょうど一年前の田中宇のコラム。長いので抜粋転載。

 

世界的な政治覚醒を扇るアメリカ

民主党の外交戦略家の重鎮で、オバマ新大統領の外交顧問をしてきたズビグニュー・ブレジンスキーが、12月16日に興味深い論文を発表した。「世界的な政治覚醒」(The global political awakening)という題名で、米国が指導力を失う中、環境・社会・経済などの分野で起きる世界的な問題に対する論争が活発化し、世界的な政治覚醒が起きると予測している。

ブレジンスキーは、次のように書いている。「歴史上初めて、人類のほとんど全員が、政治的に活発になり、政治的に覚醒し、政治的に相互連携する」「世界的な政治活動によって、これまで植民地支配や帝国的支配によって抑制されてきた、文化的な尊厳や経済成長の機会を求める動きが、世界的に勃興するだろう」「これまで500年間、世界の中心は大西洋諸国(欧米)だったが、中国と日本の新たな台頭によって、その状態は終わる。その次にはインドやロシアも勃興するかもしれない」

ブレジンスキーは、以前から「世界的な政治覚醒」という言葉を、予測として発し続けてきた。彼が2003年に出した「孤独な帝国アメリカ」(原題:The Choice)という本にも、同じ分析が出ている(同書の日本語訳の解説は私が書いた)。今回も、以前と同じ予測の繰り返しだ。

しかし今回、彼の言葉に特に重みがあるのは、彼がオバマの顧問であるということに加えて、来年にかけて世界では、米国の覇権衰退や欧米中心体制の崩壊、イスラム世界や中南米などでの反米的な政治運動の盛り上がり、米国や世界各地での暴動などが予測され、世界的な政治覚醒が起こりそうな感じが現実的に強まっているためだ。

中国と日本の台頭が米英支配を崩す??

今回のブレジンスキー論文で気になるもう一つの点は「中国と日本の台頭(傑出)によって、大西洋諸国(欧米)の500年間の世界支配は終わる」と書かれていることだ。米英に代わって日中が世界を支配する時代が間もなく来ると言わんばかりである。

実際の日本がとっている姿勢は、ブレジンスキーの予測とは正反対だ。日本政府は、1日でも長く対米従属を維持したいと考えている。たとえ今後米国の覇権が崩壊しても、日本政府は今のところ、世界の多極化には貢献したくないようだ。政治鎖国的な傾向をとりつつ米国が復活するのを待つ方が良いというのが、今の日本の姿勢である。米国の財政破綻が近いというのに、日本政府は09年度予算で「米軍再編協力費」の名目で米軍にあげるお金を3倍に増やした。外務省は「これで米国に貢献できる」と喜んでいる。米国の傀儡国の傾向をむしろ強めるのが、今の日本国の方針である。

ブレジンスキーは1970年代から「日本は国際政治に関与する気がないので、永久に米国の属国であり続けるしかない」と言って日本を侮蔑してきたが、日本政府は侮蔑されても喜々として対米従属を堅持している。今回のブレジンスキーの「中国と日本は」というくだりは「中国」だけが本質的な主語で「日本」は、ブレジンスキーの中国偏愛を読者に悟られないようにするための当て馬にすぎないのかもしれない。

今回の日中に関する指摘を詳しく説明したものを、ブレジンスキーはすでに1997年のフォーリンアフェアーズ論文「ユーラシア地政学」で書いている。この論文は、ユーラシア大陸を「地政学的な巨大なチェス盤」にたとえ、米国がどうやってユーラシア大陸を支配するかを書いたことで有名になった。だが、世間で取り沙汰された好戦的なイメージとは裏腹に、論文が掲げた目標は「NATOにロシア、中国、日本を入れて全ユーラシア安保体制を作る」という、世界安定化であり、その目標達成のために米国は中国との協調が必要だという話になり、1998年にクリントン大統領が、日本に立ち寄らずに中国を訪問して「中国重視・日本軽視」を見せつける「ジャパン・パッシング」につながった。

この論文は11年前のものだが、この11年間で世界は、共和党ブッシュ政権下でいったん過激に好戦的になったのが大破綻し、今またブレジンスキーに頼る民主党政権になろうとしており、再びこの論文が有効になる事態に戻ろうとしている。その意味で、ブレジンスキーの97年の論文は、08年の今回の論文につながっている。「全ユーラシア安保」は「NATO」+「上海協力機構」+「北朝鮮6カ国協議が発展したもの」として実現していく道筋ができつつある。

日本に再要求されそうな「米中日三角外交」

ブレジンスキーは97年の地政学論文で、日本は米国の同盟国であり続けるのが良いと書いたが、その一方で、日米同盟は反中国同盟であってはならない、日本を中国敵視の不沈空母にしてはならないとも表明している。同時に、米国のユーラシア戦略の中では日本より中国の方が重要なコマであり、米中日の安定した三角関係を築くことが重要で、日本は中国が民主化するまでのつなぎ役として意味があるとも書いている。

実際のところ米国の上層部は、中国が共産党独裁体制のままで北京五輪の開催を許しており、中国を民主化させる努力をほとんどしていない。ブレジンスキーはカーターの大統領補佐官だったが、カーターは初めて訪中したニクソンの後を受け、米中国交を正常化した。カーターの親中国政策の裏にいたブレジンスキーは、ニクソン・キッシンジャーと同様、中国を大国化へと誘導する先鞭をつけた。

97年の論文で「米中日の三角関係」が望ましいと書かれたことは、日本の政界にも影響を与え、小沢一郎や加藤紘一が日本の国家戦略として「米中と等距離の正三角形外交」を打ち出すことにつながった。01年の911後、ブッシュの米国は単独覇権主義を掲げたが、日本側はこれが実は隠れ多極主義であると裏読みせず、真に受けたため「米中等距離外交」の構想は姿を消し、日本は反中国の対米従属一本槍に走り、加藤紘一の実家は右翼に放火された。

しかし今、ブッシュの単独覇権主義は全崩壊し、オバマ新政権はブレジンスキー流に、表向きは「強い米国の復活」を掲げるが、MGI報告書などでは多極化を容認する姿勢を強めている。おそらくオバマ政権は、日本に対し、97年論文にあるような、日中の接近による米中日三角戦略の再生を隠然と求めてくるだろう。

米国の促しに応え、日本が中国との関係を強化し、ロシアとの関係も改善して、多極型の新世界秩序に即した国家姿勢に転換していくなら、それがブレジンスキーの言う「中国と日本の台頭によって、大西洋諸国の世界支配が終わる」ことになる。逆に、もし日本が、中国との関係強化を拒否し、従来の対米従属のみに固執した場合、オバマの米国は日本を軽視する傾向を強め、米中2国のみで太平洋を協同支配する態勢を強めるだろう。

無意味になる対米従属

今の日本では、対米従属は古来不変の国是であるかのように感じられる。しかし現実には、日本の対米従属戦略の根幹にある要件は「米英が世界最強であり、米英に逆らうものは原爆を落とされ、破滅する」という、第二次大戦から得た政治教訓と「世界最大の市場であり、技術力や金融財政技能の源泉である米国と親密である限り、日本経済も安泰だ」という戦後の経済戦略である。そして、これらの政治的・経済的な要件は今後、米国の覇権衰退とともに失われていく公算が大きい。

今の日本経済は、ドルと米国市場ばかりを見ている。経済人はドル高円安を歓迎し、米国の消費市場を最重視している。ニューヨーク株式市場が下がれば、翌朝の東京株式も下がる。しかし今後、ドルが崩壊して決済通貨・備蓄通貨として使いものにならなくなり、米国の不況が悪化して米国が消費大国でなくなったら、日本経済にとってのドルや米国の価値は大幅に下がる。ドルと米市場が崩壊したら、その後の日本は、ドルではなく円を使って貿易決済した方が良い状態になる。日本製品を輸出する最重要市場は、米国ではなく中国になる。日本人が最重視すべき為替相場は、円ドルではなく円人民元になる。日本は、円を含む多極型の通貨体制を認めざるを得なくなり、中国にも人民元を切り上げて多極型通貨体制に入るよう求める必要が出てくる。

政治的にも、米国覇権の衰退は、日本の国是を根幹から揺るがす。米国の不況の深化は、暴動や反政府活動など、米国内政治の混乱に結びつきそうだが、その状態が長引くほど、日本は米国に頼れなくなる。在日米軍の空洞化も強まる。

その一方で、日本国内の政治も、09年以降、混乱や政界再編が激化すると予測される。今は自民党と民主党という二大政党は、いずれも対米従属を基本方針としているが、米国の崩壊と同期して起きそうな今後の日本の政界再編によって、対米従属ではなく米中等距離の外交戦略を掲げる大型政党が日本に登場し、政権をとるかもしれない。小沢一郎が民主党で米中との正三角形の外交戦略を復活し、政権党になるかもしれない。

日本の官界では、外務省は最期まで対米従属を貫きたがるだろうが、財務省はドルが崩壊したら「円の国際化」をやりたがるだろう。すでに官界では、昇格した防衛省が中国との関係緊密化を模索し、対米従属一本槍の外務省との間で摩擦を生じさせている。

日本人が覚醒しうる好機

今後予測されるこのような政治転換の中、日本人は、どこかの時点で「そもそも日本の対米従属は、米国が圧倒的に強い覇権国だったから採用していた戦略だ。米国が弱くなり、経済的にも軍事的にも日本が対米従属する利点がなくなった以上、日本は対米従属をやめた方がいいのではないか」という思いにとらわれるだろう。このような思いが日本人の中に広がっていくと、国民の間で「ならば日本はどうすべきか。世界の中でどう振る舞いたいか」という考察が始まる。

これは、ブレジンスキーがいうところの「政治的な覚醒」となる。日本人は、戦後60年間、自分たちを拘束してきた対米従属の呪縛から解放される機会を得る。対米従属の呪縛は、戦後の日本が再び対外野心的な戦略をとらないようにするための「瓶のふた」だったが、すでにこの「ふた」は破れかけ、裂け目から青空がのぞいている。日本人にとっての「アメリカ以後」が迫っている。

日本は、米英との戦争に大敗北したから、戦後は対米従属した。戦前の日本は、国際的な野心の強い国だった。日本人は勝手に「自分たちは戦後、全く変わったんだ」と思い込んでいるが、もしかするとそれは、過去を簡単に忘れる民族的特技を持つ日本人の幻想でしかなく、ブレジンスキーは日本人自身より良く日本人のことを知っていて「米国の覇権が崩壊したら、中国と日本が台頭して世界支配に乗り出す」と書いたとも考えられる。

日本は、対米従属をやめた後は、対中従属するという未来像もあり得るが、日本人のほとんどは、中国に従属するなど真っ平だろう。日本人は、敗戦しなければ対米従属すら望んでいなかったはずだ。中国に従属するぐらいなら、中国に負けないように必死で頑張った方が良い、と多くの日本人が考えるはずだ。

従来の日本は、対米従属することで冷戦型の中国包囲網の一翼を担っていることになるという、お気楽な対中戦略をとっていた。米国覇権衰退後の日本には、そんな贅沢なお気楽さは存在しない。独自の力で、中国の台頭に対応せねばならない。

しかし、悲壮感にさいなまれる必要はない。中国は日本と同様、経済的な繁栄を維持することで、国を安定させており、この先20年ぐらいは、この状態は変わりそうもない。中国が日本と戦争したら、中国の経済繁栄は失われ、不安定になる。中国は日本と戦争してもメリットがない。日中は対立関係を続けるかもしれず、小競り合いぐらいはあるかもしれないが、全面戦争にはなりにくい。日中とも安定重視である以上、折り合いをつけて安定的な日中関係を模索する可能性の方が大きい。

そして、米国の覇権が衰退している中で、いったん日中で話がつけば、次は日中協同でアジアや世界の安定化を模索しようという話になるかもしれない。「欧米の支配は終わり、日中が世界を支配する」という、今はまだ奇異に感じられるブレジンスキーの予測は、意外に先々の現実に即したものかもしれない。

2009年から日本でも大不況が深刻化し、当分は失業したり減給したりして、日本人の生活も大変になるだろうが、この不況は日本人を対米従属から解き放ち、政治的覚醒につながりうる。日本にとって敗戦以来の大転換となりうる、政治的な好機がやってくる。

田中ウータンは中東大戦争さえ予言しなければいい男なのに残念。上記コラムはオバマを操る外交顧問ブレジンスーの論文を分析して日米中の正三角形外交戦略を示唆した。民主党が政権党になり対米自立、親中路線を歩んでいる現実を考えればその分析予想がほぼ正鵠を射ていることに驚かされる。ただ対米従属の意識は外務省だけなく日米関係の危機を煽ったマスコミも酷く、政治的覚醒には程遠い。

しかし、のりピーは覚醒していた。

のりピーは隠れ多極主義者だった。