太った中年

日本男児たるもの

財政破綻後

2009-10-18 | weblog

夕張の今~北海道で聞いた恐ろしい話

3年前の2006年、北海道夕張市が財政破綻したことは、皆さんの記憶に新しいことと思います。最近はマスコミで報道されることもほとんどなくなってしまいましたが、今、この町はどうなっているのでしょうか。

実は、人口は相変わらず着実に減少し続けています。

1960年には約10万人の人が住んでいたこの町ですが、2005年に1万3000人まで減っていました。そして、今年の初めには1万1740人。今年になっても毎月減少が続き、8月末の時点では1万1488人です。働く場所のない30代、40代を中心として流出が続いていると言われています。

では、将来、一体どこまで人口が減るのでしょうか?

以下の表は、国立社会保障・人口問題研究所が発表しているデータを基に私が作成した表です。夕張市の人口が2035年までどのように推移するかを示しています。人口は25年後の2035年には約5000人、そして、別の長期推計では2050年頃には2000人を切っていると予想されているのです。

実は高齢者も減少している

夕張市の高齢化率(65歳以上人口を市の総人口で割ったもの)は40%を超えていて、大変だ、大変だと言われていますが、高齢者の「人数」で見ると別の姿が見えてきます。

夕張では、65歳以上人口はすでに減少に転じているのです。75歳以上人口の推移を見ても、2015年をピークに減少に転じます。高齢化率だけ見ていると、このことは見落とされます。

増え続けるお年寄りをどうするかという問題ではなく、20歳から65歳までの働く世代が減り続けるので、お年寄りを地域社会で支えていけるのだろうかということが大きな問題なのです。

寝耳に水ではなかった財政破綻

夕張市の財政破綻は全く突然で市民には寝耳に水だったと言われていますが、これも事実とは違います。

すでに1990年の夕張市議会で、破綻した財政をどうするかという議論が行われているのです。夕張市議会も当時の中田鉄治市長も、破綻状態にあることを知っていたのです。

中田市長の答弁を見ると、「日本一財政が硬直している」との指摘を関係機関から受けていると答弁しています。また、財政再建団体にするしかないとも答えているのです。

「もう、どうしようもない」と分かっていたのに、市も、国も15年以上にわたって先送りを続けてきたのです。

夕張市の巧妙な粉飾決算にごまかされたというわけではなく、みんな知っていたことです。1990年当時、自治省担当局長は中田市長のことを「日本で一番地域振興の上手な市長」と激賞していたのですから、国としても今さら財政再建団体にすることなどできなったのでしょうね。

2000万円を超える退職金を手にした市役所幹部

では、そのような状態を知りながら破綻を止められなかった議会は、今どうなっているか。全員、辞職でしょうか?

破綻して議員の数は大幅に減りましたが、定員9人のうち、破綻前からいる議員が3分の2を占めているのです。また、住民も、そのような破綻を止めることのできなかった議員を当選させてしまうのです。

極めつけは、市役所職員の退職金です。もともと職員数が多すぎたのですが、破綻して職員の退職者が相次ぎました。民間の常識なら、退職金はほとんど出ないと思いますよね。

残念ですが、法律通り、みなきちんと退職金をもらっています。2000万円を超える退職金を手にした幹部もいるのです。破綻した自治体の責任のある管理職がこのような高額な退職金をもらうことは、一般人の感覚では考えられないことだと思います。

札幌市に送り込まれる生活保護者

都会に住む方たちにとっては、このような地方の自治体の破綻は全く関係ない別世界の出来事と思われるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。実は、都市部に必ず悪影響が出ます。

その一例が、札幌市の生活保護者の急増です。

人口188万人の札幌市の2008(平成20)年度の生活保護関係の予算は983億円で、一般会計の12.5%を占めています。そして、今年になって申請は急増しているそうです。

どうしてでしょうか。

自治体関係者にお話を伺ってみると恐ろしい話を聞くことができました。景気の悪化ということはもちろんありますが、札幌市周辺の財政の厳しい町村役場の人たちが、生活保護に転落しそうな方たちに対して、「引っ越すお金のあるうちに札幌に転居しなさい」と勧めているのだそうです。

これは自治体関係者の間では、公然の秘密です。それで、札幌市の周辺部の比較的家賃の安い地域に、そのような方たちが流入しているようです。

なんとも恐ろしい話ですが、地方では暮らしていけなくなった人が都市部に流入しているのです。私の予想よりもだいぶ早いのですが、これが都市と地方・農村の関係です。

中長期のスパンで考えると、地方が疲弊すると、都市部にも大きな悪影響が及ぶのです。都市部の景気がよく、生活保護のお金をいくらでも出せるほど余裕があれば、何の問題もないのですが。

私は、かつて市長をしていましたが、これまで国、県、市役所に勤務した経験があり、今は社員数30人のベンチャー企業で働いています。また、今は横浜に住んでいますが、地方中心都市と人口9000人の山陰の過疎の町に暮らしたこともあります。地方も都会も、役所も民間も知っている。それが私の強みです。

その経歴を生かして、地方で起こった事件や政府が発表した政策が都市部で暮らす方々にとってどのような意味を持つのかなどをお伝えしながら、時には自分の処方箋をご提案し、皆さんと一緒に解決策を考えられればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

木下 敏之 Toshiyuki Kinoshita

1960年、佐賀市生まれ。東京大学法学部卒業。農林水産省を経て、99年佐賀市長選挙に39歳で当選。6年半にわたって市長を務め、福祉、教育、IT、観光、入札などの改革を成し遂げた。現在はITと省エネのベンチャービジネスに携わりながら、自治体改革の講演やコンサルティングを行っている。

(以上、JBpressより転載)

財政破綻した夕張市のその後。夕張市議会と市長は破綻状態にあることを知っていながらそれを市も国も15年以上隠ぺいし続け、退職した職員には高額の退職金を支払っていた。人口減少に歯止めが掛らず、生活保護に転落しそうな人は札幌市へ送り込む。よくもまあそんなことを思いつくと呆れた。