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人民元国際化

2009-10-09 | weblog

中国・人民元の国際化加速、円の地位低下懸念も(読売新聞) - goo ニュース

10月27日に人民元建て国債を中国本土外で初めて発行するほか、中央銀行である中国人民銀行には近く、専門組織が発足する見通しだ。

先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が3日採択した共同声明も、中国の人民元レート柔軟化への取り組みを歓迎した。ただ、変動相場制への移行など「真の国際化」の実現には時間がかかりそうだ。

◆格好の「実験場」

中国政府が本土外では初の試みとして香港で発行する総額60億元(約790億円)の国債は、満期が2、3、5年の3種類ある。9月28日には募集が始まり、窓口となる中国銀行(香港)と交通銀行香港支店の担当者は「お客さんの反応はすごくいい」と顔をほころばせる。

これまで中国の金融商品を購入できる外国人は原則として、中国政府から許可を得た機関投資家に限られ、限度額も設定されていた。しかし、今回は個人投資家も含めて特別な許可は不要で、限度額もない。欧米の金融機関が集まる香港を「実験場」として、「人民元の国際的地位を高める」(中国財務省)のが狙いだ。

一方、人民銀行は近く、貿易決済の拡大、対外投資や対外援助などに人民元を幅広く使うための仕組みを検討する部署を行内に新設する。

◆円の地位低下も

中国が人民元国際化を目指す背景には、国内総生産(GDP)が日本を抜いて米国に次ぐ2位に躍り出ることが時間の問題となるなど、世界経済における中国の存在感が高まっていることがある。昨秋のリーマン・ショック以降、米ドルに対する信認が揺らいだことを受けて、アジア域内に「元経済圏」を広げたいという思惑もうかがえる。

温家宝首相は9月に大連で開かれた「世界経済フォーラム(夏季ダボス会議)」で、「人民元の国境をまたぐ流通は拡大しており、それに伴って人民元の国際的な地位も高くなるべきだ」と訴えた。

人民元の国際化は、同じアジアの主要通貨である円の地位低下につながる可能性もある。鳩山首相が提唱する「東アジア共同体」構想でアジア域内の共通通貨創設が検討課題となれば、その議論の過程で日中の主導権争いが激しくなることも予想される。

◆変動相場には時間

G7は3日の声明で、中国の人民元レート柔軟化に向けた取り組みが「中国経済及び世界経済全体のより均衡のとれた成長促進に寄与する」と明記した。

ただ、中国政府は、人民元レートの値動きを市場に完全に任せる変動相場制への移行には当面踏み切りそうにない。元急騰を招く可能性が高く、高成長を支える輸出産業に大きな打撃となりかねないからだ。

さらに、海外からの国内投資に制限を設けない資本移動の自由化についても、世界的なマネーの動きに国内経済が 翻弄 ( ほんろう ) される懸念があるとして消極的だ。

野村香港リサーチの木下智夫エコノミストは「中国政府は、変動相場を実現させる場合でも10年ほどの時間をかけるのでは」と指摘している。

(以上、読売新聞より引用)

再来する日中通貨戦争

■水面下の覇権争い重大 軍事と合わせ浸透作戦

昭和20年8月15日をもって時代が一変した、とみなすのは間違っている。戦前と違うのはあくまでも様相であって、日本の運命を左右する歴史の地殻は戦前と変わってはいない。

通貨という市場経済の基本単位を起点に時代を考えてみよう。

日本は1930年代初め、中国大陸で軍事と合わせて日本円の浸透作戦を展開していた。当時、中国は銀本位制だったが、経済社会は大混乱に陥っていた。大恐 慌の最中、米ルーズベルト政権が銀を産出する米西部諸州の要請で銀相場を暴騰させたため、中国から銀が米国に向けて大量に流出したためだ。

そこで英国が米国を誘い込んで蒋介石国民党政権の幣制(通貨制度)改革を支援し、国民党政権は1935年、中国統一通貨「法幣」の発行にこぎ着けた。日米開戦の6年前、ABC(アメリカ、ブリテン、チャイナ)の通貨連合に日本円は包囲された。

日本軍は、日本円を信用の基盤とする軍票や1940年に樹立された汪兆銘による親日派政権の発行する銀行券で物資調達し、占領地域の民生の安定を目指した が、いずれも法幣の信用力にかなわず、苦戦を強いられた。命綱の通貨が使えなければ、武力にものを言わせる戦線拡大しか打開策はなく、最後には真珠湾攻撃 まで突き進んだ。

汪兆銘政権の政府顧問だった陸軍経理将校、岡田酉次氏は、その回想録で「幣制改革は日中戦争の一つの導火線となったと同時に、 中国戦勝の一大原動力ともなったように思われる」「幣制改革は、蒋介石政権の戦時経済体制の根幹をなした。日華事変以前にこの改革がなければ、『焦土抗 日』を叫んで全面戦争を指導展開することは、すこぶる問題だっただろう」と述懐している。

◆教訓生かした“勝者”人民元

しかし、蒋介 石政権は抗日戦争で勝利した後、腐敗堕落し、法幣を乱発したことで悪性インフレを引き起こした。対する毛沢東の共産党は30年代から「辺区券」と呼ばれる 通貨を発行し、法幣や日本軍票に対峙(たいじ)してきた。優秀な経済専門家たちが設計した規律ある辺区券は信用度が高く、法幣を圧倒。中国共産党は中華人 民共和国の建国に先駆けること10カ月、新統一通貨「人民幣」(人民元)発行に踏み切った。人民元は通貨戦争の最終的な勝者なのである。

中国は 戦前のこうした通貨戦争の教訓を現代に生かしている。基本は米国との「連合」である。胡錦濤総書記・国家主席は党内の異論を押し切り、ドルと米国債を買い 続け、人民元の発行量もドルに合わせることで対ドルレートを安定させている。一方でため込んだドルを利用し、海外の石油資源を買い占める。

北京は人為的にドルとの交換レートを安定させることで、信用度を急速に高めている。昨年9月のリーマン・ショック後は台湾やベトナムなど周辺地域・国で人民元の流通促進を図っている。ブラジル、ロシアなどとも通貨協定を結び、人民元による貿易決済を始める計画だ。

◆国際流通少ない…日本円

自国通貨で投資したり、代金を払えたりすることはその国に莫大(ばくだい)な利益をもたらす。例えば、今年3月末時点でドル札は約57兆円分が米国外で流 通している。米国はドル札を刷ることで海外から57兆円のモノやサービスをほぼタダで手に入れているわけだ。ドル札1枚当たりの印刷コストはわずか4セン トにすぎず、百ドル札1枚を刷れば99ドル96セントの貨幣発行益を獲得できる。

日本円は「国際通貨」と呼ばれながらも、海外での流通はごくわ ずかだ。日本企業はアジア地域の子会社との取引では円を使うが、残る大半はドル決済である。中国はその点、国際化で出遅れながらも、東南アジアを中心にじ わじわと人民元を浸透させつつある。上海の証券市場を対外開放すれば、企業や投資家は人民元建ての金融資産を大量保有し、人民元の国際化は一挙に進展しよ う。

金融危機はいま、モノやサービスで中国市場の国際的地位を一挙に高めている。中国系企業が人民元を武器にビジネス機会を広げる好機である。日本企業が円を使えず、中国や東南アジアなどで人民元で投資や貿易の決済を迫られる日もいずれ来るだろう。

通貨の覇権争いは残酷な戦場ではなく、水面下で静かに繰り広げられる。そしてその勝敗は一国の富を、国民の幸不幸を左右する。忘れても時代は繰り返す。重大さを自覚できないようだと、戦う前に負ける。

(以上、産経新聞 イザ!より引用)

人民元国際化が始動 プラス面とマイナス面

人民元国際化のプロセスは7月1日、「越境貿易人民元決済試行管理方法」の公布・施行によってその第一歩を踏み出した。もちろん、人民元の本当の意味での国際化を実現するまでにはまだかなりのプロセスを経なければならない。中国内外の現在の条件や環境も、人民元を本格的に国際化するほどに整ってはいない。だが、人民元の国際化の効果について事前研究や分析を行ったり、将来の関連政策を制定したりするのにあたって、人民元決済業務のスタートが大きな意義を持つことは間違いない。「人民日報海外版」が伝えた。

あらゆる経済現象は二面性を持ち、中国経済の発展に対する人民元国際化の影響にもプラスの面とマイナスの面がある。人民元国際化について考える時には、両方をきちんと見据えることが必要だ。

まず、人民元国際化によるプラスの影響としては、次の6点が挙げられる。

第一に、人民元国際化は、人民元の国際的な地位を上げることになる。ある通貨が国際間で一般的に受け入れられ、支払い・決済・投資・貯蓄の手段となれば、その通貨は、その他の通貨より高い地位を持っているということができる。人民元国際化のプロセスは、人民元の地位が不断に高まるプロセスでもある。

第二に、国際金融制度の構築や国際ルールの制定における中国の発言権を強めることになる。国際通貨制度改革のプロセスに対する大きな影響力を米国が持つことができることと、世界通貨・準備通貨としての地位を米ドルが持っていることとは、切り離して考えることはできない。

第三に、人民元の国際化は、中国に通貨発行益をもたらすことになる。人民元国際化の最終目標は国際準備通貨となることであり、準備通貨の発行は、通貨発行益を発行国に与える。人民元の国際化が実現すれば、外貨の利用によって引き起こされる財産の流出を減らすことができるだけではなく、海外の資金の利用に新たなルートを与えることともなる。

第四に、中国の貿易取引と非貿易取引にあたって人民元を直接使って支払い・決済ができることになる。外貨を使って支払いをする必要がなくなることは、中国の貿易取引と非貿易取引の発展に有利なこととなる。

第五に、人民元が国際準備通貨になれば、外貨準備高を減らし、巨額の外貨準備を管理するためのコストを減らすことができる。

次に、人民元国際化のマイナス影響としては、次の4点が挙げられる。

第一に、人民元の国際化は、資本項目へのコントロールを中国が取り消すことを意味しており、自由両替が可能な通貨に人民元がなることを意味している。これによって、中国の金融市場が海外投機資本のターゲットになる可能性が出てくる。投機資本の打撃を受ければ、人民元と中国の金融市場に大きなダメージが出ることになる。

第二に、人民元国際化は、中国にインフレを起こす可能性がある。人民元が国際化すれば、国際間の価格計算・支払い・貯蓄に使われる手段になるため、人民元の需要は大きく上昇するだろう。このような需要増加によって、人民元の発行量は大きく増加し、インフレ圧力を引き起こす恐れがある。

第三に、中国の貨幣政策のオペレーションに一定の困難を与える可能性がある。人民元が地域化・国際化していない状況では、中央銀行がどれほどのベースマネーを投入しても、中国の国内で流通するだけだった。だが人民元が地域化・国際化を実現すれば、かなりの部分が海外で流通することになる。こうして海外に流れ出た貨幣が国内の物価にすぐに影響することはないが、正確なデータはつかみにくくなり、数量の増減は貨幣当局がコントロールできる範囲を超えてしまう。そうなれば貨幣供給量に対する中央銀行の調節は難しくなる。海外に流出したこれらの人民元は一定の条件が整えばいっきに還流し、国内の通貨流通と貨幣価値の安定に影響を及ぼす可能性がある。また資本の流出や流入に対する制限を取り消せば、中国の金融市場と世界の金融市場は一体化し、中国国境を資本が自由に出入りすることになる。貨幣政策の効果は人民元国際化で薄れることになる。

第四に、中国経済の成長持続にもある程度のマイナス効果が出ることが考えられる。人口が多い中国では就職難の問題が長期的に存在してきた。就職難を緩和し、急速な経済成長を維持するためには、内需拡大と外需開拓を同時に行う必要がある。だが、人民元国際化の最終目標は国際準備通貨になることだ。準備通貨となれば、人民元は、国際流動性をほかの国に提供しなければならなくなる。このことは中国の国際収支を必然的に赤字にする。さもなければ、人民元準備の出所をほかの国がなくしてしまうことになる。国際収支が長期的に赤字を続けるということは、輸出の減少と輸入の増加を意味している。その結果、外需は減少し、国内市場の一部もなくなることになる。国内の就業を増加させ、中国経済の急速成長を保つことに対しては、一定のマイナス影響が出ると考えられる。

このように、人民元国際化にはプラス面とマイナス面がある。人民元が国際化の歩みを始めた今日、人民元国際化の利害を客観的に認識し、その利益を増やし被害を減らす方策を事前に研究することは、経済学者にとっての差し迫った課題だと言える。

(以上、中国共産党機関紙人民日報のネット版人民網日本語より引用)

前エントリーに続き、中国共産党が深謀遠慮を廻らせ米ドルの信用低下に伴い第3の基軸通貨を狙う人民元。先のイスタンブールIMF総会は世界の主要国になった中国に対して内需拡大政策を維持しながら世界金融危機から脱却したときに対ドルの為替レートを引き上げることで合意したようだ。そうなると必然的に円の地位も低下するわけで、そのことについて日本政府はどのような戦略を持っているのだろうか、よくわからないね。