アメリカ
2019年12月12日 (木)
冬到来とともに熱くなるパイプライン戦争
トム・ルオンゴ
2019年12月8日
Strategic Culture Foundation
全てにとって、2019年12月は磁石だ。多数の重要な地政学問題が今月山場に達するが、その多くが、エネルギーに大いに関係がある。今月、ロシアの巨大ガス企業ガスプロムがこれは三つの主要パイプラインプロジェクト、ノルドストリーム2、トルコストリームと「シベリアの力」の建設を終えることになっていた。
「シベリアの力」はできている。完成している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平主席が、今月稼働するパイプラインに命名した。来月プーチン大統領は、四本になる可能性があるトルコストリーム・パイプラインの最初のものを開通すべく、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会うためトルコ訪問予定だ。
パイプラインが稼働するのに強固に反対しているアメリカ合州国による常軌を逸したレベルの圧力のために、ノルドストリーム2は予定より遅れ続けている。
そして、その理由は、ガスプロムを取り巻く今月解決が必要な主要エネルギー問題最後のもの、同社とウクライナ・ナフトガス間のガス通過輸送契約だ。
二つのガス会社は何年も法的闘争で動きが取れなくなっているが、その一部は、2014年に、ウクライナから離脱してロシアに再加入したクリミアの決定が中心だ。だが問題の大部分は、過去の期限が切れるガス通過輸送契約の経費を巡る論争だ。
これら訴訟は新規契約調印を阻止するための恐喝として利用されているので、今や詳細は究極的に無関係だ。ウクライナはスウェーデンでと同様、契約法の教義ではなく、社会正義のレンズを通して、ガスプロムを告訴したのだ。
これらは、ナフトガスがガスプロムのヨーロッパ資産を差し押さえるのを可能にする政治的決断で、対立に対するどんな解決も困難にした。これらの政策は前ウクライナ大統領、長年アメリカ国務省の手先ペトロ・ポロシェンコがに積極的に推進したものだが、全くウクライナの助けにはならなかった。
ドンバスの離脱を防ぐための戦争を続けさせながら、ウクライナから資産をすっかりはぎ取ったのが結果の全てだ。
これはノルドストリーム2完成を真っ向から阻止するのではないにせよ、延期させるために、EU加盟国のデンマークなどにかけた外的圧力と符合する。
アメリカのノルドストリーム2反対は、ウクライナでの影響力を強化して、ロシアと国境を共有するウクライナをロシアと対立する属国に変えるのが狙いなのだ。もしガス通過輸送契約がなく、ノルドストリーム2がなければ、アメリカのLNG供給元がそこにガスを売り、ロシアから収入と事業を奪うことができるのだ。
それは実に単純だ。だがその戦略は何か勝利のように見えるものを達成する虚しい希望から、数年のうちに、一手/対抗の一手という複雑なチェス試合へと変身したのだ。しかし、これは本物のチェス試合ではなく、時間制限された試合なのだ。
なぜなら、必ず2019年末は来るのだから。ウクライナは最終的に、どちらの方向に行くかを決定しなければなるまい。しかも、結局、アメリカはトランプ大統領の下、長期の信頼できるパートナーではなく、脅迫と威嚇で、自国目標を追求するいじめっ子だと、はっきり悟ったEUの前に、同じ選択肢が置かれたのだ。
アメリカ側に留まるか、ノルドストリーム2を許可するか。ヨーロッパの選択は明確だった。10月に、デンマークが建設に最終的な環境許可を与えたのだから、ノルドストリーム2は完成するのだ。
この遅れで、完成は2020年になった。EUのガスパイプライン規則をパイプラインと、それを通して流れるガスを「切り離す」ようガスプロムに強要するよう変えることを含め、他のすべてが、この時点までに失敗したので、それがアメリカ上院にとって、パイプライン完成を止める最後の一つの機会となっている。
ドイツはEUレベルではなく、ドイツ連邦レベルでノルドストリーム2を規制するのを可能にすべく法令を改正した。これは期待できる限り最高の勝利だった。
これはガスプロム・パイプライン構築を支援する誰であれ制裁し、事業から無理やり追い出そうと願うアメリカ上院外交委員会委員長ジム・リッシュの反応を引き起こした。
「行動する理由は、窓が閉じつつあることだ。ノルトストリームは既にほとんど作られている。それは彼らに大変な負担になるだろう。もしこれらの制裁が成立すれば、彼ら[企業]は中断し、ロシアは、もし実現できるなら、実現する別の方法を探さなければなるまいと思うとリッシュは述べた。
実際は、窓は既に閉じているのだ。
結局、たとえこの法律が成立しても、パイプラインの完成や、それを通してガスが流れるのを阻止する方法はあるまい。完成するための残りのパイプラインは、ごく僅かで、完成を阻止する実際的方法はない。リッシュや他のアメリカ上院議員は、未完成の無益な浪費事業としてノルドストリーム2を立ち往生させるのを望んでいるが、それは愚かだ。
ドイツ政府はこのパイプラインを欲しており、そのためドイツ政府は請負業者へ支払い、パイプライン完成を保証する資金を出すだろう。
制裁が貿易を阻止できる程度には限度があり、いったん完成してしまえば、パイプラインを通して流れるガスを制裁する能力はアメリカにはない。ドイツの未来に必要なパイプラインを止めるために、それほど多くの時間や人的資源や資本が浪費されたのは悲しく痛ましいことだ。
毎年15.75bcmの天然ガスでNATO加盟国のトルコをロシアに結び付けるトルコ・ストリームをアメリカは覗き込めないことが、アメリカ政策の偽善を強調している。トルコ・ストリームは、他の経路が建設され、契約されるにつれ、最終的に、失われたサウス・ストリーム・パイプラインに取って代わるだろう。
東ヨーロッパ諸国全てがトルコストリームの未来を切望している。セルビア、ハンガリー、ブルガリア、イタリアやギリシャは全て潜在顧客だ。
もしウクライナとロシア間で何も解決しなければ、現在ウクライナからガスを得ているこれら全ての国々は危険な状態になる。これが、プーチンとウクライナのゼレンスキー大統領間の会談がそれほど重要な理由だ。ドンバスでの戦争を終わらせ、ガス通過合意の方向に同意することで、ウクライナとヨーロッパの基本構造に与えられた損害をくい止める機会が得られるのだ。
この訴訟でナフトガスのガスプロムに対する未払いは120億ドル以上ある。ノルドストリーム2が既成事実である以上、ゼレンスキーが会談で使える影響力は、それしかない。
このゲームは、ロシアに対する戦争で、アメリカの外交政策支配層がヨーロッパを戦場として利用する方法の縮図だ。政治的風向きが変わっていることを考えて、ヨーロッパは、もううんざりしている。
ガスプロムがウクライナとの協議に背を向け、ノルドストリーム2が完成するまで待つという実際の恐れがあるのが、ヨーロッパのガス貯蔵施設が一杯な理由だ。ガスプロムはウクライナが訴訟を取り下げる条件で、現在の契約延長を申し出ている。
ナフトガスはノーと言った。ゼレンスキーがイエスと言うほど賢いかどうか見ることになる。
トム・ルオンゴは、アメリカ北フロリダを本拠とする独立の政治、経済アナリスト。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2019/12/08/as-winter-comes-pipeline-wars-heat-up/
2019年12月13日 (金)
アフガニスタン・ペーパー暴露で最も重要なのは、それを公にするのがいかに困難だったかだ
2019年12月11日
ケイトリン・ジョンストン
CaitlinJohnstone.com
アメリカ干渉政策の歴史を全く研究をしたことのなかった人々にとっては衝撃的な暴露、アフガニスタン戦争に関して、アメリカ政府幹部が国民にウソをついていた明確な否定し難い証拠をワシントン・ポストが発表した。
冗談抜きに、これは極めて良い、ニュース価値がある報道で、アフガニスタン・ペーパーを社会に認識させるという大変な仕事をした人々は全面的称賛に値する。アメリカ軍幹部の率直な発言は、そもそも始めから、これが誰も理解していない地域で始められた、勝利がどのようなものなのか、誰も明確に説明さえできない、勝てない戦争だったとはっきりと述べており、この戦争について政府から大衆が聞かされてきた、あらゆることと矛盾する極めて重要な情報だ。
だがこの話題で現れた最重要な暴露はアフガニスタン・ペーパーそのものではない。
アフガニスタン・ペーパー暴露で最も重要なのは、「ポストは、いかにしてアフガニスタン・ペーパーを掘り出したか」という題の別記事の、政府の秘密の爪から重要文書を引き出すために味わったワシントン・ポストの実に困難な時間の詳細説明だ。ワシントン・ポストは、最初アメリカ政府に拒絶された後、3年にわたり、2つの訴訟で補う必要があった情報公開要求により、ペーパーが究極的に、どのように入手されたか説明している。
「アフガニスタン・ペーパーを入手するためのポストの取り組みは、ジャーナリストや、国民にとって、政府の公共情報を引き出すことが、どれほど困難であり得るかを例示している」とワシントン・ポストは報じている。「情報公開法の目的は、連邦機関を世間の厳しい目にさらすことだ。だが法の精神を阻止する決意が固い当局が、請求者が最終的に諦めることを期待して、何年もの間、要請を長引かせることが可能なのだ。」
「2017年10月、フリン・インタビュー資料を得るため、弁護士費用で何十万ドルも費用がかかる措置だが、ポストはワシントン連邦地方裁判所で監察官を告訴した」とワシントン・ポストが付け加えている。
今ワシントン・ポストは、現在地球上で一番金持ちの人物としてランクされているジェフ・ベゾスが一人で所有している巨大営利マスコミだ。この記事を読んでおられる読者のどなたか、国の透明性法規に従わせるようアメリカ政府と何年も戦う何十万ドルもの資金と、人生をお持ちだろうか? 終始アメリカ帝国主義に反対している代替メディアのいずれかが、それだけの大支出をする余裕があるだろうか? 私はそうは思わない。
政府の不透明な壁の背後から、こうした文書を引き出すため、ネオコンがはびこり、あらゆる機会にアメリカ干渉を促進する大量の実績を誇るマスコミ、ワシントン・ポストに、アメリカ納税者が頼らなければならないのは憂慮すべきことではあるまいか?
結局は、ワシントン・ポスト自身が認めているように、ドナルド・トランプに一撃を加えるためにアフガニスタン・ペーパーを公表したのだ。ポストによれば、当時トランプ選挙運動の一員だったマイケル・フリンが、アフガニスタン復興特別査察官(SIGAR)事務所に、アフガニスタン戦争に関し、何らかの興味をそそる発言をしたという情報を得た後、文書を探して、2016年、これを始めたのだ。現在トランプがタリバンと、将来あり得る軍事撤退に関する交渉の最中なので、ワシントン・ポストは更にもっと多くの情報を要求する法廷闘争の完了を待つより、むしろ今、ペーパーを出版する決断をしたのだ。
「トランプ政権がタリバンと交渉し、アフガニスタンに駐留しているアメリカ兵13,000人を撤退させるべきかどうか考えている中、「ポスト」は、最終決定を待つのではなく、国民に知らせるべく、今文書を公表する」とワシントン・ポストは報じている。
これら文書を追求し発表するために、ワシントン・ポストが、巨大な富と資源を注いだのは、明らかに本質的に良いことだ。だが、もしそれらの書類がトランプ政権を困らせる機会を提出しなかったなら、ポストはそうしただろうか? 戦争だ大好きなことで悪名が高いワシントン・ポストは、どのような種類の情報は、追求し、発表するために、その富や資源を使わないのだろう? おそらく一切合切。
選挙で選ばれた、あるは選ばれたわけではないアメリカ政府指導部がしている許しがたい物事を巡る不透明さの巨大な壁のおかげで、アフガニスタン・ペーパーが明らかにしたことより遥かに、遥かに悪い、一層遥かに不快な、我々が知らない、我々が知らないことさえ知らないものがあるだろうというのは、極めて確実な想定だ。もし我々がこの情報のほんの僅かでも知りたいと望む場合、戦争が大好きで支配体制を支持している億万長者の報道機関に、党派的な追求をしてほしいと祈らねばならないというのは、実に気掛かりなことではあるまいか?
#AfghanistanPapersのようなものが、シリアでのアメリカ関与について公表されるのを私は期待している。話題は、腐敗や進展についての虚偽報告についてではなく、そうと知りながら、お仲間の過激反政府ゲリラ、アルカイダや、ISISさえも支援したことについてのものなのだ。
- Max Abrahms (@MaxAbrahms) 2019年12月10日
つまり、アフガニスタン・ペーパーは、我々が知らなかったことを明らかにしたわけではないのだ。アフガニスタン侵略は、9月11日のずっと前から既に計画があったのは周知のことで、侵略後、多くのウソがでっちあげられたことも何年も周知のことで、戦争がどれほどうまく行っているかについてウソをつかれていたのも長年周知のことだった。今回の暴露は、社会の動向に常に注意を払っている人なら誰でも既に知っていることを具体化し、衆目を引いたのだ。アメリカが率いる他の全ての軍事介入と同様、アフガニスタンについても我々はウソをつかれていたのだ。アメリカ政府は、何らかの大規模な未知の衝撃的暴露を食い止めようとして、ワシントン・ポストの情報公開要求に抵抗していたわけではない。政府は単により都合なので、とにかく彼らに抵抗したのだ。
ジュリアン・アサンジは「情報の圧倒的多数が、国家安全保障ではなく、政治的安全保障のために機密扱いされている」と、かつて言っていたが、違法な拒否や、膨大な情報公開法要求の未処理分、正当化できない編集や、できる限り機密を維持するための逃げ道の利用によって、これが暗黙ながらアメリカ政府によって確認されるのを我々は目にしている。あるツイッター・フォロワーが最近言ったように「情報公開法は政府活動を「日光」にさらすことを法的に必須化するため1966年に制定された。53年後、政府は、いかにして法律を無力化し、またもや彼らの悪行を隠す方法を学んだのだ。全てを機密扱いするのは一つの手段で、費用がかかる「訴訟」をもう一つ増やすのは、また別の手段だ。」
ものごとは、こうあってはならない。自分たちの税金を使って、自分たちの名において何をしているかについて、政府に真実を話させるために、不道徳な金権政治マスコミ組織を当てにしなければならないなどということはあってはならない。自由な国なら、国民にはプライバシーが、政府には透明性があるはずだ。全部のアメリカに集中している帝国による監視と、政府の秘密が益々増大し、我々が得ているものはまさに正反対だ。
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