第三次世界大戦を阻止するブログです。
シリア騒乱と修羅の世界情勢
米政府はタンカー攻撃で反イランの宣伝を始めたが、早くもほころび
オマーン沖で攻撃されたタンカーのうち国華産業が運行する「コクカ・カレイジャス」は魚雷、ノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」は磁気機雷に攻撃されたと報道されていたが、国華産業の堅田豊社長は6月14に開かれた記者会見の席上、2発目の攻撃の際に乗組員が「飛来物」を目撃していたことを明らかにした。「間違いなく機雷や魚雷ではない」という。
ドナルド・トランプ政権に限らず、アメリカの政府はこうした際、詳しい調査を行わずに断定的な主張を繰り返す。証拠を明らかにしないことも少なくないが、明らかにしても怪しげなものだ。2003年にイラクを先制攻撃する前、ジョージ・W・ブッシュ政権は「大量破壊兵器」の脅威を宣伝、証拠らしきものを示していたが、すべてインチキだった。
今回、トランプ政権も似たことを行っている。その宣伝活動で中心的な役割を果たしているのはマイク・ポンペオ国務長官だが、この人物、自分が嘘つきだということを公言している。
6月には重要な集まりが続く。すでに終了しているが、6月6日から7日にかけてはサンクトペテルブルクで国際経済フォーラムが開催されてロシアと中国とのつながりを再確認させ、6月14日から15日にかけては中国とロシアを中心とするSCOの首脳会談がキルギス共和国で開かれている。そして6月28日から29日にかけては大阪でG20首脳会議。6月13日には安倍晋三首相がイランの最高指導者アリー・ホセイニー・ハメネイと会談している。
イランとの関係を深めているロシアや中国が存在感を示す会合や催しにぶつけるようなタイミングでタンカーへの攻撃は引き起こされた。
本ブログでも紹介したが、ネオコンの拠点と言われるブルッキングス研究所が2009年に出した報告書には、アメリカ軍による空爆を正当化するイランによる挑発をどのように実行するべきかが書かれている。世界の人びとに気づかれず、イランが挑発しているように見える演出をするということだ。
今回もそうしたシナリオに沿った動きをポンペイたちは実行しているように見えるが、過去のこともあり、見え見え。以前ならアメリカを恐れて騙されたふりをする国が大半だったろうが、今は情況が違う。アメリカ中央軍が公表した「証拠写真」を証拠として不十分だとドイツの外相にも言われている。
安倍晋三首相がイランの最高指導者アリー・ホセイニー・ハメネイと会談した6月13日、2隻のタンカーがオマーン沖で攻撃を受けたという。日本の国華産業が運行する「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍)とノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍)で、前者は魚雷、後者は磁気機雷によるもので、タンカーの乗組員44名はイランの救助隊に救助され、ジャースク港に移送されたと伝えられている。
イランを安倍首相が訪問した主な目的はドナルド・トランプ米大統領のメッセージをイラン側へ渡すことにあったのだろうが、ホルムズ海峡を経由して運ばれる石油への依存度が高い日本の懸念も伝えたようだ。
1908年にペルシャ(現在のイラン)で石油が発見されるとイギリス支配層はAPOC(アングロ・ペルシャ石油)を創設、利権を手にした。1919年にイギリスはペルシャを保護国にする。
1921年にはレザー・ハーンがテヘランを占領、その4年後にカージャール朝を廃して王位についた。これがパーレビ朝のはじまりである。この新王朝を介してイギリスはペルシャを支配した。
1935年に国名がペルシャからイランへ変更、それにともなってAPOCはAIOC(アングロ・イラニアン石油)になる。名称に関係なく、イギリスの支配層がイランの石油で儲けるための会社だ。
イギリスはパーレビ朝を利用してペルシャの石油を支配したのだが、その仕組みが第2次世界大戦後、1950年代に入ると揺らぐ。イギリスによる収奪に対する不満が高まり、1951年にムハマド・モサデクが首相に選ばれた後、議会ではAIOCの国有化を決める。その直後にアバダーン油田が接収された。
しかし、イギリスの圧力でモサデクは翌年に辞任するが、庶民の怒りを買うことになって5日後にはモサデクが再び首相になった。その間、AIOCは石油の生産と輸送を止めて抵抗している。
現在、トランプ政権は似たようなことを実行している。イラン産原油の輸送を止めるため、消費国に買うなと命令したのだ。が、それが困難な国も存在する。そこで日本、韓国、トルコ、中国、インド、台湾、イタリア、ギリシャに対してアメリカ政府は猶予期間を設定したが、それが時間切れになる。中国はイランからの石油輸入を続けそうだが、他の国はアメリカからの圧力に抗しきれないかもしれない。
今回のタンカーに対する攻撃についてマイク・ポンペオ国務長官はイランが実行したと非難したが、例によって証拠は示していない。単なる「お告げ」だ。
この攻撃はネオコンの拠点と言われるブルッキングス研究所が2009年に出した報告書に基づいていると指摘する人もいる。アメリカ軍による空爆を正当化するイランによる挑発を示せれば良いのだが、この報告にも書かれているように、世界の人びとに気づかれず、イランにそうした行為をさせるよう仕向けることは非常に難しい
そうした難しい工作は2015年に合意されたJCPOA(包括的合意作業計画)から始まるとする見方がある。アメリカ大統領だったバラク・オバマがこの作業計画に参加したのは、アメリカがイランの核開発を巡る対立を平和的に解決しようとしているとアピールするためだというのだ。
オバマはポール・ウォルフォウィッツが口にしていた侵略計画に基づき、2011年春にリビアとシリアを侵略する。使われたのはサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵(アル・カイダ系武装グループ)。
ウォルフォウィッツを含むネオコンが1980年代から考えていた計画はイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル国を築いてシリアとイランを分断、次にシリア、最後にイランを制圧するというものだ。
2001年9月、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺ではイラク、シリア、イランのほか、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが攻撃予定国に加えられる。
リビアが狙われた理由として石油利権が指摘されているが、それ以上に大きな理由は、ムアンマル・アル・カダフィがアフリカを欧米から独立させるために独自の通貨(金貨)を導入する計画を立てていたことにあると言われている。
オバマはネオコンの計画に従って動いていた。そのネオコンはロシアを再支配するだけでなく、イラン制圧を予定していたのだ。6月13日のタンカー攻撃が誰の利益になるかは明白だろう。
アメリカの「ユダヤ人指導者」が6月5日にアミー・クロウバシャーをはじめとする民主党の上院議員25名と会談した。言うまでもないことだが、この「ユダヤ人指導者」は決してユダヤ系アメリカ人の指導者でも代表者でもない。イスラエルが組み込まれた支配システムにつながっている人びとだ。
民主党だけでなく共和党の議員もイスラエルを絶対視するのだが、その最大の理由はカネ。アメリカの選挙は膨大な資金が必要で、その相当部分が有力メディアへ流れ込む。有力メディアにとってもイスラエルはカネ儲けのために大切な存在だ。
今回の会合にも代表が出席しているロビー団体のAIPACなどを介して多額の資金がアメリカ政界へ流れ込んでいるが、その源泉はアメリカ議会がイスラエルへ流し込んでいるカネ。日韓疑獄と同じ構造だ。
そのイスラエルが作り上げられた場所にはアラブ系の住民が住んでいた。つまり、イスラエルは侵略によって出現したのだが、侵略の黒幕はイギリスにほかならない。
まず1917年にイギリスのアーサー・バルフォア外相がウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出したところから始まる。いわゆる「バルフォア宣言」だ。その中で、「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。(実際に書簡を書いたのはアルフレッド・ミルナーだと言われている)
このロスチャイルドはイギリス系だが、パレスチナにユダヤ人の国を作ろうというシオニズムを推進していたのはフランス系のエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルド。1882年にユダヤ教徒のパレスチナ入植に資金を提供している。(Will Banyan, “The ‘Rothschild connection’”, Lobster 63, Summer 2012)
その孫に当たるエドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルドはヘンリー・キッシンジャーと親しいと言われ、イスラエルの核兵器開発に対する最大の資金提供者としても知られている。
エドモンド・ジェームズを記念して1958年に「ヤド・ハナディブ(ロスチャイルド基金)」がイスラエルで設立され、1989年にはイギリスのジェイコブ・ロスチャイルドが理事長に就任した。このジェイコブはロスチャイルド一族を統括する立場にあり、トニー・ブレア元首相とも親しい関係にある。本ブログでは何度か指摘したが、ブレアのスポンサーはイスラエルだと言われている。
現在、イスラエルで首相を務め、ドナルド・トランプ陣営に近いと言われているベンヤミン・ネタニヤフの父親はベンシオン・ネタニヤフ。ベンシオンはニューヨークでウラジミール・ジャボチンスキーの秘書を務めた人物だ。ちなみにジャボチンスキーは「修正主義シオニスト世界連合」の祖と言われている人物だ。
ロスチャイルドの流れとジャボチンスキーの流れには違いがある。一時期は激しく対立していたと言われている。その関係がヒラリー・クリントンとトランプの対立、サウジアラビアの皇太子交代につながった。
田川健三がギリシャ語から訳し、注釈を書いた『新約聖書』を読むと、「ヨハネの黙示録」は原著者の記述に何者か(田川は編集者Sと表現)が勝手に書き込んだ文章の合わさったものだという。その編集者Sは「極端にごりごりのユダヤ主義者」だとも指摘している。つまり、自分たちこそが真のユダヤ人だというわけだ。
この編集者Sの主張を全面的に受け入れ、新約聖書の他の部分を軽視しているキリスト教徒がアメリカには少なくない。黙示録を読み込むほどユダヤ至上主義にのめり込んでいく。そうしたキリスト教徒の中にマイク・ペンス副大統領やマイク・ポンペオ国務長官は含まれると言えるだろう。
そのため、ユダヤ至上主義の影響力は無視できないが、「ユダヤ」にとらわれると間違った方向へ進む危険性が高いことも確かだ。「ユダヤ」を隠れ蓑の使っている人たちがいる。
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