goo blog サービス終了のお知らせ 

シリア騒乱と修羅の世界情勢

第三次世界大戦を阻止するブログです。

Fw: [ 田中宇:無実のシリアを空爆する ]

2019年11月21日 | シリア

2013年8月29日木曜日

Fw: [ 田中宇:無実のシリアを空爆する ]

 
>田中宇の国際ニュース解説 無料版 2013年8月28日 http://tanakanews.com/
>
>●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
>サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変 http://tanakanews.com/130823egypt.php
>終戦記念日に考える http://tanakanews.com/130816japan.php
>国際情勢の夏休み http://tanakanews.com/130814world.php
>
>━━━━━━━━━━━━━
>★無実のシリアを空爆する
>━━━━━━━━━━━━━
>
> 米国が英仏の賛同を得て、早ければ8月29日にシリアを空爆するという。
>首都ダマスカスの近郊で、8月21日に化学兵器によって市民が攻撃され多数
>の死者が出たとされる件について、米政府は「シリア政府軍の仕業に違いない」
>と断定し、国際的に違法な化学兵器の使用に対して制裁する目的で、シリア沖
>の地中海にいる米軍艦や、英軍の潜水艦から、トマホークなどのミサイルを
>発射して、シリア軍の基地などを破壊する予定と報じられている。攻撃対象が
>多くなる場合、B2ステルスなど、ミサイルより多くの爆弾を落とせる戦闘機
>を使う予定だという。
>
>http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/171340
>Strike on Syria `As Early as Thursday'
>
> 攻撃の時期については、9月1日以降との説もある。時期の早晩があるかも
>しれないが、米政府の高官がマスコミに攻撃を明言しており、言葉だけでなく、
>いずれ攻撃が行われる可能性が高い。攻撃は2日間行われる予定だ。世論調査
>では、米国民の9%しか、シリアに対する軍事攻撃を支持していない。
>
>http://rt.com/usa/us-syria-strike-chemical-060/
>Obama reportedly considering two-day strike on Syria
>
> 取り沙汰されている空爆の理由は「シリア政府軍が化学兵器を使って無実の
>市民を大量殺害したから」だが、シリア政府軍が化学兵器を使ったという確た
>る証拠を、米英仏は持っていない。8月21日に市民への化学兵器による攻撃
>が行われたとされる根拠は、ユーチューブなどに、被害者を撮影したとされる
>映像が掲載されたり、現場の地域(Ain Tarma、Zamalka、Jobar。いずれも反
>政府派が強い)の病院に医薬品などを供給している「国境なき医師団」が、現
>場の病院の医師から、化学兵器の被害を受けたと思われる多数の市民を手当し
>ているとの報告を受けたりしたことだ。
>
>http://www.washingtonpost.com/world/national-security/kerry-obama-determined-to-hold-syria-accountable-for-using-chemical-weapons/2013/08/26/599450c2-0e70-11e3-8cdd-bcdc09410972_story.html
>After Syria chemical allegations, Obama considering limited military strike
>
> しかしこれらの証拠は、化学兵器を使ったのが政府軍であるということの証
>明になっていない。証拠とされるユーチューブの動画の中には、事件の前日の
>8月20日にアップロードされたものもあり、ユーチューブのサーバーがある
>米国とシリアとの時差を考えても、動画が事件前にアップされていたという指
>摘がある。
>
>http://rt.com/news/syria-chemical-prepared-advance-901/
>Materials implicating Syrian govt in chemical attack prepared before incident - Russia
>
>http://investmentwatchblog.com/news-of-chemical-weapons-attack-in-syria-published-one-day-before-massacre-happened/
>News of chemical weapons attack in Syria published one day before massacre happened
>
> また、アップされた動画を見た英国の科学捜査の研究機関(Cranfield Forensic
>Institute)の専門家(Stephen Johnson)が、写っている被害者の容態が、
>化学兵器の被害を受けたにしてはおかしいと思われる点が複数あると指摘して
>いる。写っている負傷者は、身体に白い気泡(水ぶくれ?。foaming)ができ
>ているが、報じられているような化学兵器の攻撃を受けた場合、気泡はもっと
>黄色か赤っぽくなるはずで、白い気泡は別の種類の攻撃を受けた症状のように
>見えるなど、シリア軍が持っている化学兵器が攻撃に使用されたと結論づける
>のは早すぎる。専門家はそのように指摘している。
>
>http://www.euronews.com/2013/08/21/expert-casts-doubt-on-chemical-weapons-footage-from-syria
>Expert casts doubt on Syria chemical weapons footage
>
> また、現場の「国境なき医師団」がシリア政府軍の攻撃であると証言したよ
>うな報道があるが、実のところ医師団は「化学兵器攻撃の可能性が高いが、誰
>が攻撃してきたかはわからない」と言っている。また、米国の金融界や大企業
>の献金を受けて活動している同医師団について、戦争で儲けたい米国の勢力の
>意向を代弁している疑いがあると見る向きもある。
>
>http://www.activistpost.com/2013/08/doctors-behind-syrian-chemical-weapons.html
>"Doctors" Behind Syrian Chemical Weapons Claims are Aiding Terrorists
>
> シリアでは今年3月にも化学兵器による攻撃があり、シリア政府や、同政府
>を支持するロシアなどは「反政府勢力が化学兵器を使った」と主張する一方、
>反政府派や彼らを支持する米欧などは「政府軍が化学兵器を使った」と主張し、
>対立してきた。シリア政府軍は化学兵器を持っていることがわかっているが、
>反政府勢力は持っていないと、当初思われていた。だがその後、シリアに隣接
>するトルコの当局が、トルコ国内のシリア反政府勢力の拠点で、化学兵器の
>材料を押収するなど、反政府派による犯行の可能性が高まった。国連は、シリ
>アに専門家の調査団を派遣することを決め、調査団は8月中旬にダマスカスに
>到着した。その数日後の8月20日、調査団が滞在するダマスカスのホテルか
>ら15キロしか離れていない地域で、化学兵器による攻撃が起きたとされている。
>
>http://www.activistpost.com/2013/08/propaganda-overdrive-suggests-syria-war.html
>Propaganda Overdrive Suggests Syria War Coming Soon
>
>http://www.tanakanews.com/130625mideast.htm
>悲劇から喜劇への米国の中東支配
>
>http://tanakanews.com/130507israel.php
>大戦争と和平の岐路に立つ中東
>
>http://tanakanews.com/121212syria.php
>シリアに化学兵器の濡れ衣をかけて侵攻する?
>
> 3月に化学兵器を使ったと疑われているアサド政権が、国連の調査団が到着
>した直後のタイミングをわざわざ選んで、調査団の滞在場所からすぐ近くで、
>一般市民を化学兵器で攻撃するとは考えにくい。シリアの内戦は今年に入り、
>アサドの政府軍が優勢になり、政府軍は、各地の反政府派の拠点を奪還してい
>る。しかも政府軍は空軍を持っており、化学兵器でなく通常兵器による空爆の
>方が、反政府派を効率的に駆逐できる。政府軍が、自分らが優勢な時に、非効
>率的な化学兵器を使うとは考えにくい。反政府派が、これまでも自分らに有利
>な偏向報道をしてくれてきた米欧のマスコミが「政府軍の仕業だ」と決めつけ
>てくれるとの見通しで(もしくは米国側から持ちかけられて)、国連調査団の
>目前で化学兵器を使ったと考える方が納得できる。
>
>http://www.globalresearch.ca/us-sponsored-rebels-in-syria-have-been-defeated-government-forces-are-restoring-peace-throughout-the-country/5346632
>US Sponsored Rebels in Syria have been Defeated. Government Forces are Restoring Peace throughout the Country
>
> 事件後、米英マスコミの多くは、政府軍の仕業と決めつけて報道し、化学兵
>器による死者の数を「60人」「600人」「1400人」などと、競ってつ
>り上げて報道した。
>
>http://voiceofrussia.com/2013_08_21/Chemical-weapons-use-in-Damascus-only-a-fool-can-believe-it-expert-5491/
>Chemical weapons use in Damascus: 'only a fool can believe it' - expert
>
>http://21stcenturywire.com/2013/08/22/chemical-weapons-media-propaganda-in-us-uk-is-designed-to-hide-the-truth-in-syria/
>`Chemical Weapons' media propaganda in US, UK is designed to hide the truth in Syria
>
> 事件直後は米国政府(国務省報道官)も「誰が化学兵器を使ったかまだわか
>らない」と慎重姿勢だったが、マスコミはそんなのおかまいなしだった。03年
>の米軍イラク侵攻の直前、米英マスコミが、実は存在していないだろうと最初
>からわかっていたイラクの大量破壊兵器の脅威をでっち上げ、競って報じて
>いたのとまったく同じ姿勢だ。イラク戦争の失敗後、米英マスコミは、戦争を
>起こすプロパガンダ機関になったことを反省し、姿勢をあらためたはずなのに、
>今回またシリアで、03年と同質の扇動が繰り返されている。
>
>http://www.reuters.com/article/2013/08/22/us-syria-crisis-usa-state-idUSBRE97L0Z620130822
>U.S. says unable to conclusively determine chemical weapons used in Syria
>
>http://www.reuters.com/article/2013/08/27/us-syria-crisis-china-idUSBRE97Q09420130827
>Remember bogus U.S. excuses for Iraq war before attacking Syria: China's Xinhua
>
> FT紙はご丁寧にも「イラクへの侵攻は、イラクの体制を転換する意図(米
>英によるおせっかい)で行われたが、シリアへの侵攻は、独裁のアサド政権を
>倒そうとするシリア人自身の活動を支援する(良い)ものだ。イラクとシリア
>はまったく意味が違う(イラクは悪い戦争で、シリアは良い戦争だ)」という
>趣旨の記事を載せている。
>
>http://blogs.ft.com/the-world/2013/08/why-syria-is-not-iraq/
>Why Syria is not Iraq
>
> FTの記事は間違いだ。今のシリア反政府勢力の参加者のほとんどは、シリ
>ア国民でない。他のアラブ諸国やパキスタン、欧州などから流れてきたアルカ
>イダ系の勢力で、トルコやヨルダンの基地などで米欧軍などから軍事訓練を受
>け、カタールなどから資金をもらっており、事実上の「傭兵団」だ。外国勢力
>が傭兵団を使ってシリアに侵攻している。FTなどが妄想している「シリア市
>民の決起」とはまったく違う。シリアの一般の国民の多くは、長引く内戦にう
>んざりし、アサド続投で良いから、早く安定が戻ってほしいと考えている。
>
>http://www.washingtonsblog.com/2013/08/medias-reporting-on-syria-as-terrible-as-it-was-on-iraq.html
>Media's Reporting on Syria as Terrible as It Was on Iraq
>
>http://edition.presstv.ir/TextOnly/detail.aspx?id=254692
>`None of insurgents were Syrian'
>
>http://tanakanews.com/120613syria.htm
>シリア虐殺の嘘
>
> シリア反政府勢力が良くない存在であることは、米軍のデンプシー参謀長も
>明確に認めている。デンプシーは「シリアの反政府勢力は過激なアルカイダが
>多く、彼らを支援して政権をとらせることは、米国の国益にならない」と断言
>している。マスコミの歪曲はひどい。「ジャーナリズム」の「あるべき姿」は、
>世界的に(もちろん日本でも)すでに消滅して久しい。今の(もしかすると
>昔から?)ジャーナリズムは全体として、読者や視聴者に間違った価値観を与
>え、人類に害悪を与える存在だ。(マスコミは昔から戦争宣伝機関の機能を持
>っていたが、近年までうまく運用され、悪さが露呈しにくかった。911後、
>宣伝機能が自滅的に過剰に発露されている)
>
>http://news.antiwar.com/2013/08/21/gen-dempsey-syrian-rebels-wont-be-us-allies-if-they-seize-power/
>Gen. Dempsey: Syrian Rebels Won't Be US Allies If They Seize Power
>
> 米政府はシリア空爆を決めた後、ケリー国務長官が「シリア政府軍が化学兵
>器を使ったことは否定しようがない」「それを疑う者は不道徳な陰謀論者だ」
>と表明し、根拠なしに政府軍犯人説を主張した。しかし他の諸国は、もっと慎
>重な姿勢だ。
>
>http://news.antiwar.com/2013/08/26/no-proof-but-kerry-insists-syria-allegations-undeniable/
>No Proof, But Kerry Insists Syria Allegations `Undeniable'
>
>http://21stcenturywire.com/2013/08/27/john-kerry-delivers-obamas-war-declaration-against-syria/
>John Kerry Delivers Obama's War Declaration Against Syria
>
> フランスの外相は、シリア政府軍の拠点を空爆することを強く支持した。し
>かし、そこには「もし化学兵器を使ったのがシリア政府軍であるとしたら」と
>いう条件がついている。英国の態度も同様だ。イタリアは、国連で化学兵器の
>使用者が確定しない限り、空爆に参加しないと表明した。ドイツなどもこの線だ。
>
>http://edition.presstv.ir/TextOnly/detail.aspx?id=320003
>`US unclear on Syria chemical arms use'
>
>http://www.thelocal.it/20130827/italy-rules-out-action-in-syria-without-UN
>Italy rules out action in Syria without UN
>
> 今年3月に反政府派が化学兵器を使ったと指摘するロシアは「誰が化学兵器
>を使ったか確定するのが先だ」と言っている。決めつけを表明した米国以外は
>「もしシリア政府軍が化学兵器を使ったのなら、政府軍の基地を空爆すべきだ
>(もしくは空爆もやむを得ない)」と言っているが、マスコミは「もし」の部
>分を意図的に小さく報じ「空爆すべきだ、空爆はやむを得ない」と報じている。
>
>http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-23845800
>Syria crisis: Russia and China step up warning over strike
>
> シリアにはちょうど国連の化学兵器調査団がいる。彼らは当然ながら、8月
>21日の化学兵器使用現場を調査しようとした。しかし現地に向かう途中、反
>政府派から狙撃され、引き返さざるを得なかった。その後、日を変えて再び現
>場に向かい、2度目は現場を検証できた。だが、調査結果を持ってダマスカス
>から米欧に戻ることができないでいる。米国が国連事務総長らに圧力をかけ、
>調査団のシリアからの帰国を阻止している。この指摘は、米国の元大統領補佐
>官のポール・クレイグ・ロバーツが発したものだ。以前から彼の指摘は的確で、
>注目に値する。
>
>http://www.paulcraigroberts.org/2013/08/26/syria-another-western-war-crime-in-the-making-paul-craig-roberts/
>Syria: Another Western War Crime In The Making - Paul Craig Roberts
>
> 対照的にFTは「シリアの独裁を倒すために立ち上がろう」と題する、昔の
>共産党機関誌顔負けの扇動的な題名の記事で「シリア政府が調査団の現地訪問
>を阻止している」と指摘している。当然ながら、信憑性に疑問がある。
>
>http://www.ft.com/intl/cms/s/0/710d67fc-0be6-11e3-8840-00144feabdc0.html
>We must stand up to Syrian tyranny
>
> 別の報道で「米英は、早く調査団を現地に訪問させろと言っているが、国連
>事務局が、治安の問題を理由に、訪問を先延ばしにしている」という指摘もあ
>る。これまた疑問だ。国連など国際機関の内部の議論を一般人が検証できない
>ことを良いことに、誰が賛成して誰が反対しているかを逆に書くのは、昔から
>英国が得意とするプロパガンダ手法だ。
>
>http://thecable.foreignpolicy.com/posts/2013/08/23/un_blocking_its_own_chemical_weapons_investigation_into_syria
>U.N. Slowing Its Own Chemical Weapons Investigation In Syria
>
> 現在の米政府の姿勢は「国連の調査団は来るのが遅すぎた。反政府勢力の証
>言から、シリア軍の犯行であるのは、すでに間違いない。いまさら調査しても
>意味がない」というものだ。ケリー米国務長官は「国連の調査は重要だが必須
>でない。すでに(政府軍が犯人だということで)結論が出ている」と言っている。
>
>http://news.antiwar.com/2013/08/25/obama-administration-accepts-rebels-account-on-syria-prepares-for-war/
>Obama Administration Accepts Rebels' Account on Syria, Prepares for War
>
>http://www.smh.com.au/world/obama-considering-limited-military-strike-on-syria-20130827-2snl8.html
>Obama considering limited military strike on Syria
>
> なぜ米国は、国連の調査を妨害するのか。もしケリーが断言するとおり化学
>兵器使用の犯人がシリア政府軍であるなら、国連調査団をさっさと現地に行か
>せて米国に帰国させ、国連総会で真相を発表させれば良い。それをせず逆に、
>調査団の帰国を遅らせ、妨害しているのは米政府自身なのに、アサドが妨害し
>ているんだとマスコミに歪曲報道させている。真相は、化学兵器を使ったのが
>反政府勢力だということだろう。それが国際的に暴露されると、米英が支援し
>てきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまい、
>ロシアの言いなりでアサド続投を認知する国際会議をやらねばならなくなる。
>
>http://rt.com/news/russia-syria-chemical-attack-801/
>Russia suggests Syria `chemical attack' was `planned provocation' by rebels
>
>http://www.presstv.ir/detail/2013/08/26/320509/antisyria-western-axis-coming-apart/
>Anti-Syria Western axis coming apart
>
> 反政府勢力の犯行を隠すため、米国は国連調査団を帰国させず、彼らが帰っ
>てくる前に空爆を開始し、真相をうやむやにしつつ、シリアの空軍力を壊滅さ
>せ、混乱のうちに反政府派を反攻させ、米軍の地上軍派遣をやらずに、アサド
>政権を倒すまで持っていきたいのだろう。ロイター通信も、そのような筋書き
>を報じている。米軍は、イラクやアフガンよりひどい占領の泥沼になるシリア
>への地上軍侵攻に猛反対している。
>
>http://www.activistpost.com/2013/08/reuters-us-to-strike-syria-before-un.html
>Reuters: US to Strike Syria Before UN Evidence Collected
>
> イラクとアフガンの失敗以来、米英などでは、政界や世論が、シリアやリビ
>アなど中東の紛争地で戦争をすることに反対する傾向が増している。米英政府
>が、議会でシリアとの戦争の必要性についてきちんと議論すると、空爆ができ
>なくなり、反政府派の悪事が国際的に暴露されていくのを看過せねばならなく
>なる。だから米英政府は、自国の議会が夏休みの間に、急いで空爆を実施しよ
>うとしている。本来、米国も英国も、戦争するには議会の承認が必要だ。
>
>http://news.antiwar.com/2013/08/27/war-on-syria-imminent-us-wont-seek-un-or-nato-vote/
>War on Syria Imminent, US Won't Seek UN or NATO Vote
>
> 米国では911事件以来、大統領が「テロリストとの戦い」を開始する権限
>を持っている。だからオバマは合法的にシリアを空爆できる。しかし英国では、
>議会の決議を経ずに首相が勝手に戦争を開始できない。特に英国は、03年に
>米国のイラク侵攻につきあって大失敗して以来、開戦権について議会が厳しく
>なっている。あと一週間もしたら、英国は議会がシリア空爆を阻止する決議を
>して、米国と一緒にシリアを空爆できなくなる可能性が高い。だから、米国の
>オバマより英国のキャメロンの方が、シリア空爆を急いでいる。英国はこの
>10年ほど、米国に冷たくされ、何より大事だった英米同盟が希薄化している。
>シリアに濡れ衣をかけて空爆する悪事を米国と一緒にやれば、英米同盟を立て
>直せるかもしれないと、英政府は考えているのだろう。悪事を一緒にやった者
>同士は(悪事の悪さが大きいほど、強い)運命共同体だ。
>
>http://news.antiwar.com/2013/08/25/us-britain-and-france-agree-to-attack-syria-within-two-weeks/
>US, Britain and France Agree to Attack Syria Within Two Weeks
>
> 米政府は、国内・国際的な反発を減らすため、空爆によってアサド政権を倒
>す目的でなく、使用禁止の大量破壊兵器である化学兵器を使った「罰」を与え
>るのが目的だとしている。だからアサドの大統領官邸やシリア政府の役所など
>は空爆対象にならないという。だが真の目的は、シリアが100機ほど持って
>いる空軍の戦闘機を、空爆によってできるだけ多く破壊し、反政府軍に対する
>シリア軍の優勢を壊すことだろう。反政府軍は地上軍だけなので、空軍力があ
>る政府軍に勝てない。政府軍の戦闘機やヘリのほとんどを破壊すれば、内戦は
>地上軍どうしの戦いになり、政府軍の優位が減る。米英などは最近、シリアの
>南隣のヨルダンの基地を使って、シリア反政府派を軍事訓練し、シリアに戻す
>ことに力を入れている。
>
>http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.543880
>Obama's Syria options: From a symbolic strike to wiping out Assad's air force
>
>http://news.antiwar.com/2013/08/25/report-claims-us-israeli-trained-rebels-moving-toward-damascus/
>Report Claims US, Israeli Trained Rebels Moving Toward Damascus
>
> 今後、米英仏が本当にシリアを空爆するかどうか注目が必要だ。この戦争に
>は、イランやイスラエル、ヒズボラ、サウジなど、他の勢力も関係している。
>今回は書ききれなかった、パレスチナ和平交渉との関係もある。それらは次回
>に、有料記事で書くつもりだ。
>
>【続く】
>
>
>
>この記事はウェブサイトにも載せました。
>http://tanakanews.com/130828syria.htm
>
>
>
>●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
>
>◆サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変
>http://tanakanews.com/130823egypt.php
>【2013年8月23日】イスラエルがパレスチナ問題を解決したいならサウ
>ジアラビアと話をつけねばならない。イスラエルは、パレスチナ国家の創設を
>認めるから、アラブ諸国がイスラエルとの関係を敵視から協調に転換するよう
>誘導してくれとサウジに頼み、サウジは、その件を了解するから、代わりに米
>欧のプロパガンダをいじってエジプトのクーデターを支持するように誘導して
>くれとイスラエルに頼んだのでないか。
>
>◆終戦記念日に考える
>http://tanakanews.com/130816japan.php
>【2013年8月16日】戦前の日本は、どこの国にも従属していなかった。
>敗戦は日米の国力差から見て仕方がなく、敗戦直後の対米従属もやむを得ない
>ことと考えられるが、米国が日本に自立した防衛力を持つよう促した1970
>年代以降も、日本が官僚独裁を維持するために対米従属を続け、日本人が世界
>のことに無知な状態に(意図的に)しているのは、明らかに国益を損ね、日本
>人の精神をねじ曲げている。日本の対米従属は、自主独立を好む米国の精神に
>も反する。戦没者たちは、自国が対米従属の国になったことをあの世で嘆いて
>いるだろう。首相が英霊に謝罪するとしたら、それはまず自国が卑屈な対米従
>属を続けていることに関してだろう。
>
>◆国際情勢の夏休み
>http://tanakanews.com/130814world.php
>【2013年8月14日】イランの大統領がアハマディネジャドからロハニに
>代わった。アハマディネジャドは過激な言い方を得意とし、発展途上諸国の反
>米主義の国際運動を率いる存在だったが、ロハニはもっと現実的で穏健なやり
>方を好む人とされる。アハマディネジャドは、今年3月に死去した南米ベネズ
>エラのチャベス前大統領と親しく、2人は途上諸国(非同盟諸国)の反米国際
>運動を率いていた。この2人が去ったことで、途上諸国の反米運動を率いる国
>際的な政治家がいなくなる。運動が下火になるかもしれない。

田中宇「ブッシュ再選のために食い止められたイラク総攻撃」

2019年11月21日 | シリア

田中宇「ブッシュ再選のために食い止められたイラク総攻撃」(2004年5月8日)のキーワード

 

「イラク統治のやり方をめぐる、アメリカ中枢における、タカ派(ネオコン)と中道派の対立

暫定政権の首脳ポストに誰を就任させるか」

「マハディ・ハフィド」(現イラク統治評議会・計画担当相)

「米軍は、ファルージャのゲリラを潰すどころか、ゲリラをイラクの正規軍の一部として容認し、サダム時代の将軍を司令官に据えて米軍は撤退するという意外な新戦略を打ち出し、実行している」

米軍はファルージャから総撤退する様相を見せている」

「『ファルージャ防衛軍』を構成するのは、米軍が前日まで戦っていた武装市民のゲリラ組織である。」

「以前から国防総省は、大統領にもきちんと説明せずにイラクでの占領を進めていた」

「米軍はイラク人をわざと怒らせ、イラク人のなるべく多くを「反米テロリスト」と呼べる範疇の存在に押しやることで、イラク戦争を長期化し、戦火をシリアやサウジアラビアなど中東全域に広げ、40年続いた米ソ冷戦並みの長い『文明の衝突』を、世界を巻き込んで実現しようとする戦略を持っていたように見える」

「ブッシュ大統領は、11月の選挙までに『イラク戦争を成功させた』と言える状態にする必要がある」

「CIAは以前から、新生イラクで旧イラク軍やバース党の幹部らを活用すべきだと主張」

『旧イラク軍を復活させ、その指揮をCIAがとる』というCIAの構想が実現」

「911後に急速に肥大化した国防総省は、CIAの諜報担当としての権限と、国務省の外交権限の両方を奪取しようと画策し、かなり成功していた」

 

 


 

 

「東長崎機関」のイラク関連INDEX (*Yahooの検索によれば、この機関を説明するキーワードとして、「戦場ルポ。国内外の旅。登山。海外事情。軍事の実体。 北朝鮮の秘蔵写真。自由人集団「 東長崎機関」活動報告。日本の水先案内人。. あっ!とおどろく放送局」とある)

http://www.higashi-nagasaki.com/iraq_index.html

 

上記HPを見ながら、また、これまで取り扱ったイラク関連のインターネット情報に接して、最近読んだ立花隆『言論の自由VS.●●●』(文藝春秋、2004年)の記述を思い出した。(以下、ここから一部抜粋)→

 

「週刊誌には、たしかに少々野卑なところがある。少々やりすぎと思われるところもある。ホントかねと思わずマユにツバを付けたくなるような話もある。しかし、各種週刊誌の内部ないし周辺で長年仕事をしてきた経験からいうと、三流週刊誌はいざ知らず、メジャーな週刊誌がウソ、デタラメをでっち上げてのせることは基本的にない。この世界はそれほど甘くないのだ。取材段階、執筆段階で何度も経なければならない二重、三重のチェックをウソ、デタラメがくぐり抜けることはまずない。▽///////////週間文春の場合、たまにある、ホントかねと思う話でも、担当者に聞いてみると、たいてい、『ウソのようだけどホント』の話なのである。事実は小説より奇なりで、この世の中、信じ難いほど『ウソのようなホント』に満ち満ちているということを、私も週刊誌の現場にかかわってきた人間としてよく知っている。▽この世の中は、タカラヅカの舞台のようにきれいごとで満ち満ちた世界ではなく、頭がおかしいとしか思えない人々が山のようにいて、信じ難いほど薄汚いこと、卑劣なこと、ワイセツなこと、ウソ、デタラメが日常的におきている場である。▽ジャーナリズムの世界には、きれいごとの世界ばかり追いかけて、高尚な議論をするのを得意とする大新聞の社説ライターのような人々もいるが、逆に、きれいごとの世界を見ると、裏を返してみたくなり、世界の実相を表現するのにいちばんぴったりの表現は、やっぱりシェークスピアの、『キレイはキタナイ、キタナイはキレイ』(「マクベス」)であることを現実報道で示すことに熱中する週刊誌記者のような連中もいるのだ。▽ジャーナリズムの仕事の真髄は、シェークスピアのこの一言にあり、なかんずく、『キレイはキタナイ』のほうにある。」(立花隆『言論の自由VS.●●●』(文藝春秋、2004年)pp.163-165)

 

 

 

 

 

 

写真

 

かねてからISIS支援疑惑が囁かれてきたトルコが12月3日に北イラクに「侵攻」、これを受け各所から「第3次世界大戦勃発の危機か」との声が上がっています。しかし『田中宇の国際ニュース解説』ではその説を否定し、トルコがISISを見限った可能性があると指摘しています。

イラクでも見えてきた「ISIS後」

12月3日、トルコ軍が北イラクに「侵攻」した。トルコ軍は、150人の歩兵と25台の戦車からなる部隊で、国境を越えてイラク国内を120キロ進軍し、北イラクの大都市モスルから北東に20キロ離れた町バシカ(Bashiqa)の郊外にある既存の基地に入った。モスルとバシカは、昨年からISIS(イスラム国)が占領しており、トルコ軍が入ったバシカの基地は、ISISが占領するバシカの市街地のすぐ外にあり、クルド自治政府が統治する地域だ。

● Turkey Refuses to Withdraw Its Troops From Northern Iraq Despite Ultimatum

トルコ政府によると、バシカの基地には今年3月からトルコ軍兵士が駐屯し、ISIS(イスラム国)と戦うアラブ人やクルド人の軍勢(民兵)を訓練してきた。今回は、訓練要員を増派したのだという。トルコの野党系メディアによると、バシカの基地にはすでに600人ほどのトルコ軍が駐留している。トルコ政府は「イラク政府も今回の越境進軍を了承している」と発表したが、イラク政府は「何も知らされていない」と反論し、トルコ軍にすぐに出ていくよう命じた。トルコ政府は、イラク政府の命令を無視して軍を駐留している。

● Iraq’s foreign minister warns Turkey anew

● Turkey Refuses To Withdraw Troops From Iraq, Threatens To Slap Sanctions On Russia

トルコ軍が駐屯した地域には、ISISがモスル近郊の油田で産出した石油を、タンクローリー車の隊列を編成してイラク・トルコ国境に送り出してきたルートがある。以前の記事に書いたように、ISISが国境まで持ってきた石油は、イラクのクルド人が持ってきた石油と混ぜ、トルコの商人(トルコやイスラエルの諜報機関の代理人)が買い取り、トルコの地中海岸のジェイハン港まで運んでタンカーに積み、イスラエルのタンクを経由する「石油ロンダリング」を経て国際石油市場で売られている。

● 露呈したトルコのテロ支援

トルコのエルドアン大統領の息子(ビラル・エルドアン)がこの取引で利益を得ており、それがエルドアンやトルコの与党AKPの政治資金、トルコ諜報機関の活動資金になっていると、トルコの野党が指摘している。この石油取引では、ISIS、トルコ政府与党、イスラエルが儲けている。トルコ軍がモスルの郊外に進軍した真の理由は、ISISが石油を送り出すルートをトルコ軍が防衛し、エルドアンやAKP(やイスラエル)が石油で儲ける態勢を保持するためでないかと疑われている。

● Did Turkey just invade Iraq to protect Erdogan’s ISIS oil smuggling routes?

● Turkey’s First Son enjoys dinner with leaders of ISIS

ISISの占領地はイラクとシリアにまたがっている。トルコ当局は対シリア国境を経由して、イラクだけでなく、シリアでもISISを支援してきた。だが、10月からシリアに軍事進出したロシア軍が、トルコからISISへの補給路を空爆で潰している。このため、トルコは対シリア国境からのISIS支援をあきらめ、対イラク国境からのISIS支援の補給路を強化する意味で、今回の北イラクへの軍事進出(増派)を実行した、とも考えられる。

● Turkey defends ground troops in Iraq as war escalates

● Erdogan to Resist US Pressure on Closing Turkish Border to Daesh

● Russian military reveals new details of ISIS-Turkey oil smuggling

(NATOの一員であるトルコが、シリアやイラクで、テロ組織であるISISを支援するのは、シリアやイラクの政府の了承を得ていない国際法違反の行為で、テロリストを助けている点でも違法だ。対照的に、ロシアのシリアへの軍事進出は、シリア政府の要請に応たえた合法的なもので、残虐なテロ組織であるISISを退治する点でも世界的に賞賛されるべき行為といえる。だがマスコミは、いろいろな濡れ衣をロシアに着せ、むしろロシアを批判する論調を出し続けている)

● 勝ちが見えてきたロシアのシリア進出

● Russian jets destroy Isis oil convoy after Putin accuses Turkey of buying oil from jihadist group

イラク政府は、トルコ軍に撤退を求めたが無視され、NATOを通じてトルコと同盟関係にある米国にも、トルコに出ていくよう言ってくれと要請したが、ほとんど無視されている。イラク政府は、ISISを潰すふりして実は支援している米軍に出ていってもらい、代わりにISISを本気で潰してくれるロシア空軍にイラクに駐留してもらうことを検討していると表明している。もし今後、ロシアがイラク政府の要請を受諾し、露軍機がシリアだけでなくイラクも空爆する展開になると、露軍機が北イラクのトルコ軍基地を空爆したり、トルコ軍が北イラクで露軍機を撃墜したりする事態になり、トルコつまりNATOとロシアとの「第3次世界大戦」に発展する懸念がある。

● `Great partners': Pentagon rejects Russian evidence of Turkey aiding ISIS

● Baghdad says would welcome Russia strikes in Iraq

● 敵としてイスラム国を作って戦争する米国

● 露呈するISISのインチキさ

世の中には洋の東西を問わず「第3次世界大戦」の勃発を予測したがる人がけっこういて、この手の分析は、そういった人々に好まれる。だが事態を詳細にみていくと、この分析と矛盾する事実がいくつも出てくる。

1つは、ロシアがイラク政府の要請に応え、シリアで行っている空爆をイラクに拡大する可能性が低いことだ。それは、単にシリアの内戦がまだ終わっていないのでイラクの空爆を後回しにしているということではない。シリアは、ロシアが軍事進出してISISやヌスラ戦線を退治することで、アサド政権が継続するかたちで内戦が終わって安定が復活し、ロシアが成功裏に軍を撤退して凱旋できる政治的なシナリオが事前に見えていた。だがイラクは、ISISを退治した後のスンニ派アラブ地域を安定化できる政治的シナリオが見えていない。軍事行動は、戦闘終結後の安定への政治的なシナリオが存在していないと成功しない。そのことを、米国のタカ派(軍産、ネオコン)はわざと無視し、日本の「軍事おたく」は理解しないが、政治の水面下で動く諜報界出身のプーチンは理解している。

● 負けるためにやる露中イランとの新冷戦

● シリア内戦を仲裁する露イラン

イラクの政府と議会と軍は、シーア派が握っている。彼らは、イラク国家の統合維持を主張し続けるが、少数派であるスンニ派クルド人(それぞれ人口の1~2割。シーア派は6割)に財政資源をわたさず冷遇し続け、スンニやクルドが中央政府を敵視してイラクの国家統合が崩れる結果を招いている。イラクのシーア派は、国家統合維持によって全イラクの利権を掌握したいが、見返りに利権の一部を地元のスンニやクルドに分配して仲良くやっていく気がない(クルド人も宗教はスンニ派イスラム教徒なので「イラクのスンニ派」というとクルド人も入ってしまうが、ここでは「スンニ派アラブ人」を「スンニ派」と呼ぶ)。

イラクは16世紀来、オスマントルコからフセイン政権まで、少数派のスンニ派が多数派のシーア派を支配する政治体制だった。米国は03年にフセインを倒す一方、スンニ派に「フセインの残党」「アルカイダ」のレッテルを貼って弾圧し続けた。米国はイラクを「民主化」し、多数派のシーア派が政権を握り、イランの隠然支配下に入った。イランは、イラクのシーア派を傘下に入れることしか関心がなく、イラクの国家統合が崩れて3分割してもかまわないと思っている。昨年6月、ISISが台頭してモスルやキルクークといった北イラクのスンニ派の大都市を相次いで攻略した時、イランの傘下にあるイラク政府軍は、戦闘せず守備を放棄し、敗走(部隊を解散)した。こんな感じだから、イランは、イラクの統合を維持する合理的なシナリオを描かず、配下のイラクのシーア派政治家が、クルドやアラブから利権を剥奪するのを黙認している。

● イラク混乱はイランの覇権策?

スンニとクルドのうち、クルド人は以前から自治組織や軍隊(ペシュメガ)を持ち、しかも指導層がイランと親しい。クルドは、シーア派主導のイラク政府と互角に戦う政治力がある。問題は、真に冷や飯を食わされているスンニ派だ。ISISは、シーア派によるスンニ冷遇策の上に、イラクを占領していた米国(軍産)の「強敵を意図的に作る好戦策」が重なって生まれてきた。軍事的にISISを潰しても、政治的にイラクのスンニ派が安定して生活できるシナリオを描いて具現化しないと、第2第3のISISやアルカイダが出てくる。ロシアはイランの事実上の同盟国であり、イランにやる気がないのにロシアが出ていくことはない。

● 隠然と現れた新ペルシャ帝国

しかしISISは、シリアとイラク(スンニ派地域)にまたがっている版図のうち、シリアから追い出されようとしている。ISISを潰すなら、シリアを放棄してイラクに退却していくこれからの時期が好機だ。これを逃すと、ISISはイラクだけで再起を図り、イラクのスンニ派に安定化のシナリオがないことに便乗し、延々と存続し、地元民を残虐に支配し続け、欧州などでテロを続ける。ISISは地元の子供たちに捕虜の処刑や拷問を手がけさせ、殺戮と過激な教えを刷り込み、すべての子供を兵士(テロリスト)として育てている。あと10年も放置されれば、イラクのスンニ派の全員が立派なテロリストとして成長する。その後で安定化策のシナリオを立てても遅すぎる。シナリオを立て、ISISを潰し、イラクのスンニ派地域を安定させる策を始めるとしたら、今しかない。

● The ISIS papers: leaked documents show how Isis is building its state

トルコ軍が今回、北イラクの町バシカの基地に駐留軍を増派したことは、よく見ていくと、ISISに対する支援策ではなく、逆に、まさに上に書いた「ISISを潰し、北イラクのスンニ派地域を安定させる策」なのかもしれないと思える点がいくつもある。その1つは、トルコ軍のバシカへの増派が「スンニ派のイラク人民兵団を軍事訓練し、ISISと戦って勝ち、モスルを奪還できるようにすること」を目的としている点だ。トルコ軍はバシカ基地で「ハシドワタニ」(Hashid Watani、国家総動員部隊)という名前の民兵団を、今年3月から訓練している。この民兵団は、クルド自治政府に支援され、クルド地域とISISの支配地の間にあるバシカの基地を拠点とし、モスルなどISISの統治下から逃げてきたスンニ派の若者や元警察官などの参加を得て拡大している。

● Turkish soldiers training Iraqi troops near Mosul: sources

ハシドワタニを率いているのは、モスル市があるイラクのニナワ県の元知事だったアシール・ヌジャイフィ(Atheel al-Nujaifi)だ。ヌジャイフィは、オスマン帝国時代からモスルを統治していた名門一族で、知事として統治するニナワ県を昨年6月にISISに奪われて逃走を余儀なくされ、クルド人自治区にかくまわれ、亡命先のクルドの首都アルビルで、ニナワ県を中心とする北イラクをISISから奪還してスンニ派アラブ人の自治区にする構想を提唱した。シーア派主導のイラク政府軍が戦わず敗走し、故郷のニナワ県をISISに奪われた以上、もうシーア派は信用できず、ニナワ県を奪還したらイラク政府と別の自治区を創設した方が良い、というのがスンニ自立構想の趣旨だった。

● Mosul governor calls for fragmentation of Iraq

● Atheel al-Nujaifi – Wikipedia

ヌジャイフィが自治区の構想を発した背後には、クルド自治政府がいた。クルド人は、自分たちと同様に、シーア派主導のイラク中央政府から冷遇されているスンニ派がISISを追い出して自治政府を構築することを支援し、クルド人とスンニ派が力を合わせてシーア派の中央政府に対抗し、イラクを従来の中央集権制から、名実ともに完全な連邦制へと移行させたいと考えている。それまで、スンニ派を代表できる勢力は、アルカイダかフセイン政権の残党しかおらず、いずれもクルド人が組みたい相手でなかった。

クルド自治政府は、イラク北部のアルビル、スライマニヤ、ダフークの3県を領域としているが、その西側のニナワ県の一部(シンジャル、バシカなど)や、もう少し南のキルクーク市にもクルド人が住んでいる。キルクークは昨年6月、ISISが攻略をしかけ、シーア派主導のイラク軍が遁走した直後、電撃的にクルド軍が市街地を占領し、それ以来クルド自治政府が統治している。キルクークには油田、バシカには未開発の石油鉱脈があり、自治政府は、クルド人が住んでいることを理由に、それらの地域も自分たちの版図に吸収したいと考えている。それらの地域を含めたクルド地域とスンニ地域の境界線(「トリガー線」 Trigger Line と呼ばれている)の向こうまでISISを追い出すのが、クルド自治政府の戦略だ。クルド軍は11月、トリガー線のクルド側にある町シンジャルを、ISISから奪還している。

● Iraq’s dangerous trigger line – Too late to keep the peace?

● Exxon Moving into Seriously Disputed Territory: The Case of Bashiqa

従来の行政区分では、それらの地域がスンニ派の地域に入っている。従来の力関係では、クルドの拡張戦略は、スンニ派からもシーア派からも反対され、公式なものにならない。だが、状況は昨年のISISの登場で一変した。統治していたニナワ県をISISに奪われ、無力な状態でクルド地区に亡命してきたヌジャイフィは、クルド自治政府の拡張戦略にとって好都合な存在だった。ヌジャイフィがモスルやニナワ県をISISから奪還するには、クルドの軍隊(ペシュメガ)の力を借りざるを得ない。ペシュメガは、ISISに負けない力を持っている。

クルド自治政府は、ヌジャイフィに対し、もしシンジャル、バシカ、キルクークといった地域を、クルド地域に編入することを了承するなら、残りのニナワ県など北イラクをISISから奪還し、スンニ派の自治区にする軍事政治運動に協力すると持ちかけたのだろう。その結果として、ヌジャイフィのスンニ自治区構想が提唱され、ニナワ県を奪還するためのスンニ民兵団として、クルド軍(ペシュメガ)の傘下に、ハシドワタニが結成された。

● Former consul Yilmaz: Does Turkey know its next move in Mosul?

トルコにとってクルド人は、分離独立をめざす警戒すべき勢力であるが、トルコ政府は以前から、イラクのクルド人自治政府と良い関係を保っている。トルコのクルド人組織(PKK)と、イラクのクルド自治政府(KRG)との間は、完全な同盟関係でない。自治政府は、PKKが対トルコ国境に近い自治区内の山岳地帯に隠れ家を造り、そこを拠点にトルコを攻撃することを容認してきたが、同時にトルコ軍が自治区内に越境侵攻し、PKKの拠点を攻撃することも容認してきた。2013年には、自治政府がPKKとトルコ政府の交渉を仲裁し、PKKがトルコ国内の拠点を完全に引き払ってイラク側の自治区内に撤退し、二度とトルコに越境攻撃をしかけない代わりに、トルコ軍はイラク側に侵攻せず、トルコ国内のクルド人の自治拡大を実施する停戦合意が締結され、今年までそれが有効だった(トルコのエルドアン政権が今夏、選挙に勝つための宣伝策として、停戦を破ってPKKへの空爆を再開した)。

● Kurdistan Workers’ Party – From Wikipedia

● クルド独立機運の高まり

イラクのクルド自治政府(KRG)は、イラク政府との協約を破り、自治区内やキルクークの石油を、イラク政府にわたさず、トルコ経由で独自に輸出して資金を得ている。これは法的に「違法な密輸」で、トルコとKRGの関係が良くないと継続しない。この密輸は、トルコとKRGの両方にとって儲かり、トルコ側ではエルドアン政権の政治資金になっているので、両者の関係は悪くならない。クルド自治区で最も活発に活動して儲けている外国勢はトルコ企業で、自治区はトルコとの経済関係がなければやっていない。自治区との関係はトルコ経済にとっても重要だ。KRGで独裁的な権力を握るマスード・バルザニ議長と、トルコで独裁的な権力を握るエルドアン大統領はここ数年、親密な関係を保っている。

● What is the difference between the PKK, PYD, YPG, KRG, KDP, and the Peshmerga?

バルザニは、昨年6月、亡命してきたヌジャイフィ知事を擁立し、ISISからモスルやニナワ県を奪還してスンニ派の自治区を作るとともに、クルド自治区の領土拡張を実現する策を開始した後、この計画をエルドアンに売り込んだと考えられる。トルコ軍が、クルドのペシュメガと、スンニのハシドワタニを軍事訓練し、クルド・スンニ連合軍がISISを打ち負かしモスルやニナワ県を奪還すれば、奪還した領域はトルコの影響下に入る。

● Turkish troops go into Iraq to train forces fighting Isis

エルドアンは、バルザニと親しかったが、同時に、最近の記事に書いたように、ISISもこっそり支援していた。トルコ政府は、ISISが強い状態である限り、バルザニのモスル奪還策に消極的だったが、欧米がISISへの敵視を強め、ISISが潰されることを見越したのか、今年3月から、バシカの基地にトルコ軍を派遣し、ペシュメガとハシドワタニに対する軍事訓練を開始した。これまでにペシュメガとハシドワタニの双方で1,000人ずつ、合計2,000人がバシカでトルコ軍の訓練を受けている。

● Why is Turkey stirring the Iraqi cauldron?

● 露呈したトルコのテロ支援

バシカは、従来の行政区分だとスンニ派地域のニナワ県に入るが、住民の多くはクルド人で、クルド自治政府が編入したいと考えている地域だ。バシカから南西に行き、チグリス川をわたった対岸にある人口200万人のモスルは、イラクで最大のスンニ派の都市なので、クルド人が統治するわけにいかず、スンニの領域にとどまる必要がある。モスルをISISから奪還する主体は、クルド軍でなく、スンニ派の軍勢でなければならない。クルド自治政府は、自分たちの傘下でヌジャイフィ知事にハシドワタニを結成させ、それを押し立ててクルド軍がモスルの奪還戦を展開し、トルコ軍がそれを支援するかたちにする必要があった。

● Bashiqa – From Wikipedia

● Turkish military to have a base in Iraq’s Mosul

トルコ政府は昨年12月、外相がイラクを訪問した際、ISISを打ち負かしたいスンニ派勢力に、トルコ軍が軍事訓練を施すことについて、イラク政府から了承を受けたと主張している。クルド自治政府も、それが事実だと言っている。イラク政府は否定している。だがイラク政府は、今年3月にトルコ軍が最初にバシカに進駐した際、何も反対しなかった。軍事訓練に関する曖昧な合意が、昨年末にトルコとイラクの政府間で結ばれていたと考えられる。

● President Barzani: Erbil will remain neutral in Iraq-Turkey row over troops

イラク政府にとって、スンニ派がISISと戦うために軍事訓練を受けるのはかまわないが、スンニ派とクルド人が組み、トルコの本格支援を受けてモスルをISISから奪還し、イラク政府の命令に従わないスンニ派の自治政府が樹立され、スンニとクルドが力を合わせてシーアに楯突くようになってイラクの3分割が進み、北イラクがイラクからトルコの影響下に移動してしまうことは我慢できない。昨年末の段階で、イラク政府はそこまで読めなかったのだろう。今年3月、ヌジャイフィが率いるスンニ派軍勢ハシドワタニが、クルド軍と一緒にバシカ基地でトルコ軍の訓練を受け始めた後、事態の本質をようやく悟ったイラクのシーア派は、自分たちが多数派を握るイラク議会で、ヌジャイフィの知事職の剥奪を決議した。

● Iraq: Nineveh governor sacked following ISIS advances

トルコは従来、ISISがモスル周辺の油田から産出した石油を、トルコ国境までタンクローリーでISISに持ってこさせ、そこでクルド自治区から届いた石油と混ぜて外部にわからないようにして、トルコの港まで運んでタンカーで輸出している。もし今後、ハシドワタニがモスル周辺をISISから奪還しても、ハシドワタニは親トルコだから、産出された石油はISISの時代と同様、トルコに運ばれるだろう。ISISが潰れても、トルコの儲けは減らない

● 露呈したトルコのテロ支援

スンニ派軍(ハシドワタニ)がモスルを奪還し、ISISやアルカイダといったテロ組織を追い出してまともな政府ができると、イラクのスンニ派地域は安定しうる。シーア派主導のイラク政府は、スンニ派地域にまともな政府ができてまっとうな権利を主張することを嫌がっている。だが、イラク政府の背後にいるイランは、イラクが安定することの方を重視し、くちではイラク政府の味方をするだろうが、実際の動きとして、ハシドワタニのモスル奪還を支持するだろう。

ロシアも、すでに述べたようにイラクが安定化のシナリオを持つことを希求しており、モスル奪還を支援しそうだ。その前提として、ロシアとトルコが、11月24日の露軍機撃墜以来の対立を解くことが必要だ。イランは先日「トルコとロシアの仲が悪いままなのは良くない。イランが両国間を仲裁しますよ」とトルコに提案した。ロシアもイランも、モスル奪還計画について何もコメントしていないが、水面下ですでにいろいろな動きが起きているかもしれない。外部者であるクルド人がモスルを攻略するなら、国際支持が得られにくいが、クルド人がモスル市民であるスンニ派のハシドワタニを擁立してモスルを奪還するので、国際支持が得られやすい

● Iraqi Sunnis accelerate push to make their voices heard

● Like Kurds, Sunnis in Iraq Want Direct US Arms Shipments to Fight ISIS

● Iran ready to help resolve Turkey-Russia tensions: First VP

トルコ軍のバシカへの越境増派に関して、米欧では「ISISへの支援策だ」という批判的な分析が多い。だが私は、増派について、トルコがISISとの関係に見切りをつけ、代わりにイラクを安定させるハシドワタニやクルド自治政府によるISIS掃討作戦を支援することにしたのだと分析している。クルドのバルザニ議長は、12月9日にトルコを訪問し、エルドアンを支持していると表明した。

● Iraqi Kurd leader meets Erdogan as PM defends deployment

その前日の12月8日には、ドイツのシュタインマイヤー外相がクルド自治区の首都アルビルを訪問し、クルド軍に武器支援を行うと発表した。中東からの難民の流入に苦しむEUの盟主であるドイツも、イラクの安定を強く望む勢力の1つだ。独外相はアルビルに行く前にバグダッドに行き、イラク政府を説得している。米国の議会も、イラク政府を経由せず、直接クルド自治政府に武器を支援できるようにする新法を検討しており、12月2日に下院外交委員会が法案を了承し、本会議に送った。これらの動きは、クルド軍がスンニ派軍(ハシドワタニ)を押し立ててモスル奪還に動き出す日が近いことを感じさせる。

● Germany to provide more military support to Kurds in fight against IS

● House panel votes to directly arm Kurdish forces against ISIS

11月12日に行われた、クルド軍がISISからシンジャルの町を奪還した作戦は、きたるべきモスル奪還の前哨戦であるとみられている。シンジャル奪還戦では、米軍機が数日前からシンジャルに立てこもるISISを激しく空爆し、クルドの地上軍がシンジャルに侵攻したときには、すでにISISの軍勢が逃げた後で、地上軍どうしの戦闘なしに無血開城された。ISISは、石油を買ってくれていたトルコの言うことを聞くだろうから、トルコがクルドに恩を売るために、ISISに対しシンジャルを放棄しろと勧めたのかもしれない。また、クルド軍やハシドワタニがいずれモスルを攻略するときには、シンジャルの時と同様、先に米軍が空爆を実施する可能性もある。

● November 2015 Sinjar offensive From Wikipedia

● クルドとイスラム国のやらせ戦争

ISISは間もなくシリアから追い出され、イラクだけが版図になるだろう。イラクでもいずれモスルが奪回され、ISISの占領地域は縮小する方向だ。モスルが奪還されると、残るはさらに南のスンニ派地域であるアンバル州(ラマディ、ファルージャ)だけになる。トルコがISISを見捨てる傾向が続くと、ISISが報復としてトルコで自爆テロを頻発するかもしれない。トルコは、これまでISISを支援していた関係で、国内にISISの要員が無数にいる。イラクが安定化するシナリオが見えてきたが、その具現化には、まだ多くの紆余曲折がありそうだ。

image by: Orlok / Shutterstock.com

 

『田中宇の国際ニュース解説』

国際情勢解説者の田中宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の解説記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。

 


[CML 017834] 田中宇氏「シリア虐殺の嘘」とアムネスティ見解

2019年11月21日 | シリア

[CML 017834] 田中宇氏「シリア虐殺の嘘」とアムネスティ見解

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2012年 6月 17日 (日) 21:18:19 JST

 


みなさまへ    (BCCにて) 松元

シリア情勢を読み 解くために、すでにバルセロナの童子丸開さんの投稿から
(私も幾度か)、チョスドフスキーの論考およびグローバル・リサーチ誌の記事
などを紹介してき ましたが、ジャーナリストの田中宇氏が6月13日付でご自身の
サイトに「シリア虐殺の嘘」という論考を公表しています。

■田中宇サイト:「シリア虐殺の 嘘」

http://tanakanews.com/120613syria.htm


田中宇氏は、インデペンデント、ナ ショナル・レヴューなどの英米独各誌に拠
りながら、シリアのアラウィ派に焦点を当てて、「虐殺はシリア政府軍がやっ
た」とする日本をふく む欧米メディアおよび国連監視団の断定に、強い疑義を
呈しています。

例えば、「とはいえ、事態をよく見 ると、実はホウラで村人らを虐殺したのは
シリア政府軍でなく、反政府勢力の方である可能性が高い。虐殺で殺された村人
の多くは、アサド政 権と同じアラウィ派イスラム教徒だった。シリア軍の幹部
の多くはアラウィ派であり、政府傘下の民兵組織のシャビーハも上層部はアラ
ウィ派 である。欧米日マスコミは、シャビーハやシリア軍がホウラの村人を殺
したのだろうと書き立てたが、内部の団結が強いアラウィ派が、同じア ラウィ
派を殺すはずがない。」

そして、「半面、反政府勢力は、サ ウジアラビアに支援されたスンニ派のイス
ラム主義勢力(いわゆるアルカイダ)で、アラウィ派やシーア派を敵視し、宗教
上異端なので殺して も良いと考える傾向が強い。殺された村人の中にはシーア
派もいた。政府軍が殺したなら、戦車砲や迫撃砲で家ごと破壊される形になって
いる はずだが、殺され た村人は至近距離から撃たれたり、のどをナイフで掻き
切られたりしている。これは、アルカイダなどサウジ系イスラム過激派が異端者
を殺す ときの典型的なや り方だ。虐殺の動機は、政府軍より反政府勢力の方に
強い。」と推論する。

さらに、『反政府勢力は、殺された 人々を携帯電話などで動画撮影し「政府軍
に殺された人々の画像」としてインターネットにアップロードした。彼らが犯人
であるなら、非常に 周到で巧妙な自作自演の犯行ということになる。』と述べる。

 そうして結論として、「もし、度 重なる虐殺を挙行しているのがシリア政府
軍や政府系民兵であるとしたら、国際軍の早期介入やアサドの退陣を求める米欧
やシリア反政府勢力 の主張は妥当だ。だが逆に、虐殺を挙行しているのがシリ
ア反政府勢力であるとしたら、反政府勢力が自分で殺した村人たちの映像を撮っ
て ネットで世界に流して「政府軍の犯行だ」と騒ぎ、それに呼応して米欧政府
がアサドに退陣を求め、国際軍をシリアに侵攻してアサド政権の転 覆を狙うと
いう、巨大な国際犯罪になる。」と断じている。

シリアをめぐる大国間の構図を田中 宇氏は、次のように見る。

「シリアの反政府勢力は、米欧やサ ウジに支援されている。米欧やサウジが、
アサド政権を転覆するため、反政府勢力を使って虐殺し、アサドに濡れ衣をかけ
ている構図になる。 米国は、イラクに大量破壊兵器の濡れ衣をかけて侵攻し
た。その後はイランに核兵器開発の濡れ衣をかけて経済制裁している。そして
今、シリ アに虐殺の濡れ衣をかけて政権転覆しようとしている。これらの現状
を見る限り、今の中東の国際政治においては、米欧よりも露中の方がまと もで
あり、正義である。「露中のせいでシリアの問題が解決しない」と米政府は言う
が、これは放火魔が「消防士がいるので家がよく燃えな い」と言っているのと
同じだ。米欧は、マスコミを使って濡れ衣を「事実」として人々に信じ込ませ、
善悪を歪曲している。日本や米国では、 米欧より露中の方が正しいと言うと、
それだけで袋叩きにされるが、袋叩きにする側は、プロパガンダを軽信するうか
つな人々である。」

しかしながら一方で、国際人権監視団を自称する アムネスティ・インターナ
ショナルは、6月14日付 の国際事務局ニュースで「シリア:今も続く、武装勢力
による人道に対する罪」を公表。その中で『アムネスティはシリア北部での状
況を調査するこ とができた。そして、「シリア政府軍と民兵は、重大な人権侵
害および人道に対する罪と戦争犯罪に相当する重大な国際人道法違反に責任 が
ある」と、結論づけた。』と述べている。

具体的には、「シリア最大の都市で あるアレッポでは5月最終週に何度 か、制
服姿の治安部隊と平服の民兵のシャビハが、平和的 にデモを行なっている人び
とに対して実弾を発砲し、子どもたちを含む抗議者や通行人たちを殺傷するの
を、アムネスティは目撃した。これらの地域での侵害行 為は、当該地域だけの
ことではなく、5月25日のホウラでのシリア軍による攻撃など他の地域でも広く
報じられている。国連によると、49名の子どもたちと34名の女性を含む108名が
ホウラで殺された。」と表現されている。

アムネスティは、「70ペー ジ」におよぶ「この報告書は、シリア当局が民間人
たちに対 して執拗かつ広範で残忍な攻撃に携わっていること を示す、さらに詳
細な証拠を提供しています。」と述べてはいるが、チョスドフスキー氏や田中宇
氏が検証していることには、まったく立ち入らない。アムネス ティ危機管理上
級顧問のドナテラ・ロベラ女史の発言だけでは、国際的に報道された断定や国連
の報告を鵜呑みにしている感は否めな い。

アムネスティの結 論は、次のようなものである。人権を盾にした米欧側の国 際
的宣伝機関と言われても仕方がない。イラク開戦前に果たした 役割を想い起こ
させるものだ。

「報告書の中でアムネスティ・インターナショナルは安保理に対し、改めてシ
リアの状況について国際刑事裁判所(ICC)検察官に 付託し、シリア政府への武
器流入を止めるためにシリアに対する武器禁輸措置をなすよう要請している。ア
ムネスティはとくにロシア と中国政府に対して、シリ ア政府へのすべての武
器、弾薬、軍事・治安・警察についての装備・訓練・人員の供給を直ちに中止す
るよ う求めている。アムネスティはまた安保理に対し、国際法の下での 犯罪の
命令もしくは実行に関わっているかもしれないバシャール・アル・アサド大統領
たちの資産凍結を実行するよう要請している。アムネスティはシリア当局 に対
して数多くの勧告をしてきた。もしそれらが実行されるなら、現在起きている人
道に対する罪もしくは戦争犯罪に相当する広範な 違反行為を減らすことがで き
るだろう。」

■シリア:今も続く、武装勢力によ る人道に対する罪

http://www.amnesty.or.jp/news/2012/0614_3141.html?mm=1

原発問題同様、私 たち市民の眼力が試されている。

田中宇氏:トルコの露軍機撃墜の背景

2019年11月21日 | シリア
政治
2015年11月28日 11:45(アップデート 2016年10月27日 03:16)短縮 URL
2362
でフォローする

ロシアの戦闘機Su-24がトルコ軍に撃墜されて以降、ロシアとトルコの関係は、プーチン大統領の言葉を借りれば、故意に袋小路に追い込まれている状態だ。なぜトルコはそうする必要があったのか。ロシアを悪者に仕立て上げることが、トルコにとって便利なのには理由がある。

元共同通信社記者で、現在はフリージャーナリスト・国際情勢解説者として活躍する田中宇(たなか・さかい)氏は、トルコが今回、ロシア軍の戦闘機を撃墜した真の理由は、領空侵犯を脅威に感じたからではないと指摘している。以下、田中氏のニュースサイト「田中宇の国際ニュース解説・世界はどう動いているか」より、「トルコ露軍機撃墜の背景」全文を引用する。同サイトhttps://tanakanews.com/では情報源のリンクも合わせて閲覧することができる。

トルコの露軍機撃墜の背景

11月24日、シリア北部のトルコ国境沿いを飛行していたロシア軍の戦闘機が、トルコ軍の戦闘機から空対空ミサイルで攻撃され、墜落した。露軍機は、その地域を占領する反政府組織(アルカイダ傘下のヌスラ戦線と、昔から地元に住んでいたトルクメン人の民兵の合同軍)を攻撃するために飛行していた。地上ではシリア政府軍が進軍しており、露軍機はそれを支援するため上空にいた。露軍機のパイロット2人は、墜落直前にパラシュートで脱出して降下したが、下から反政府組織に銃撃され、少なくとも一人が死亡した(パラシュートで降下する戦闘機の乗務員を下から射撃するのはジュネーブ条約違反の戦争犯罪)。他の一人は、反政府組織の捕虜になっているはずだとトルコ政府が言っている。

 

トルコ政府は「露軍機が自国の領空を侵犯したので撃墜した。露軍機が国境から15キロ以内に近づいたので、何度も警告したが無視された。撃墜の5分前には、撃墜するぞと警告した」と言っている。ロシア政府は「露軍機はずっとシリア領内を飛んでおり、トルコの領空を侵犯していない」と言っている。

 

トルコ政府が国連に報告した情報をウィキリークスが暴露したところによると、露軍機はトルコ領内に17秒間だけ侵入した。米国政府(ホワイトハウス)も、露軍機の領空侵犯は何秒間かの長さ(seconds)にすぎないと発表している。トルコとシリアの国境線は西部において蛇行しており、トルコの領土がシリア側に細長く突起状に入り込んでいる場所がある。露軍機はシリア北部を旋回中にこのトルコ領(幅3キロ)を2回突っ切り、合計で17秒の領空侵犯をした、というのがトルコ政府の主張のようだ。

領空侵犯は1秒でも違法行為だが、侵犯機を撃墜して良いのはそれが自国の直接の脅威になる場合だ。露軍機は最近、テロ組織を退治するシリア政府の地上軍を援護するため、毎日トルコ国境の近くを旋回していた。露軍機の飛行は、シリアでのテロ退治が目的であり、トルコを攻撃する意図がなかった。そのことはトルコ政府も熟知していた。それなのに、わずか17秒の領空通過を理由に、トルコ軍は露軍機を撃墜した。11月20日には、トルコ政府がロシア大使を呼び、国境近くを飛ばないでくれと苦情を言っていた。(2012年にトルコ軍の戦闘機が短時間シリアを領空侵犯し、シリア軍に撃墜される事件があったが、その時トルコのエルドアン大統領は、短時間の侵犯は迎撃の理由にならないとシリア政府を非難した。当時のエルドアンは、今回とまったく逆のことを言っていた)
トルコが今回、露軍機を撃墜した真の理由は、17秒の領空侵犯を脅威に感じたからでない。真の理由は、シリア領内でトルコ政府(諜報機関)が支援してきたトルクメン人などの反アサド勢力(シリアの反政府勢力)を、露軍機が空爆して潰しかけていたからだった。トルコ側が露軍機に警告したのは「トルコの仲間(傀儡勢力)を爆撃するな」という意味だったので、空爆対象をテロ組織とみなす露軍機は、当然ながら、その警告を無視した。

 

2011年のシリア内戦開始以来、トルコは、シリア北部のトルコ国境沿いの地域に、反アサド勢力が安住できる地域を作っていた。アルカイダやISISなどのテロ組織は、この地域を経由して、トルコ国内からシリア各地に武器や志願兵を送り込むとともに、シリアやイラクで占領した油田からの石油をタンクローリー車でトルコに運び出していた。もともとこの地域には、トルコ系の民族であるトルクメン人や、クルド人が住んでいた。トルクメン人はトルコの代理勢力になったが、クルド人は歴史的にトルコから敵視されており、トルコ軍はクルド人を排除しようと攻撃してきた。

 

9月末の露軍のシリア進出後、露軍機の支援を受け、シリア政府軍やシーア派民兵団(イラン人、イラク人、レバノン人)の地上軍がシリア北部に進軍してきた。シリア北部では、東の方でクルド軍が伸張してISISやヌスラをたたき、西の方でシリア政府軍などがヌスラやトルクメン人をたたく戦闘になり、いずれの戦線でも、トルコが支援するISISやヌスラ、トルクメン人が不利になっている。ISISやヌスラは純然たるテロ組織だが、トルクメン人はもともと住んでいた少数民族でもあるので、トルコはその点を利用して最近、国連安保理で「露軍機が、罪もないトルクメンの村を空爆している」とする非難決議案を提出した。

実のところ、シリア北部のトルクメン人は、トルコから武器をもらい、テロ組織のアルカイダ(ヌスラ)に合流してシリア政府軍と戦っている。ロシアの認識では、彼らはテロ組織の一味だ。シリア内戦の終結をめざして11月に始まったウィーン会議でも、シリア北部のトルクメン人について、ロシアはテロ組織だと言い、トルコはそうでないと言って対立している。この対立が、今回のトルコによる露軍機撃墜の伏線として存在していた。

シリアでは今回の撃墜が起きた北西部のほか、もう少し東のトルコ国境近くの大都市アレッポでも、シリア政府軍がISISやヌスラと戦っている。さらに東では、クルド軍がISISと対峙している。これらのすべてで、露シリア軍が優勢だ。戦況がこのまま進むと、ISISやヌスラはトルコ国境沿いから排除され、トルコから支援を受けられなくなって弱体化し、退治されてしまう。トルコは、何としても国境の向こう側の傀儡地域(テロリストの巣窟)を守りたい。だから17秒間の領空侵犯を口実に露軍機を撃墜し、ロシアに警告した。

先日、ISISの石油輸出を阻止するロシア提案の国連決議2199が発効し、露軍や仏軍が精油所やタンクローリー車を空爆し始め、ISISの資金源が急速に失われている。ISISがトルコに密輸出した石油を海外に転売して儲けている勢力の中にエルドアン大統領の息子もおり、これがエルドアンの政治資金源のひとつになっているとトルコの野党が言っている。トルコはシリア内戦で不利になり、かなり焦っている。

9月末の露軍のシリア進出後、トルコは国境地帯をふさがれてISISを支援できなくなりそうなので、急いで世界からISISの戦士になりたい志願者を集めている。9月末以来、イスタンブールの空港や、地中海岸の港からトルコに入国したISIS志願兵の総数は2万人近くにのぼっていると、英国のガーディアン紙が報じている。

今回の露軍機撃墜に対し、米政府は「露トルコ間の問題であり、わが国には関係ない」と表明している。だが、実は米国も関係がある。撃墜された露軍機のパイロットを捜索するため、露軍はヘリコプターを現地に派遣したが、地上にはアルカイダ系のテロ組織(形式上、穏健派とされるFSAの傘下)がおり、やってきたヘリに向かって小型ミサイルを撃ち、ヘリは何とかテロ巣窟の外側のシリア軍の管轄地まで飛んで不時着した。この時、テロ組織が撃ったミサイルは、米国のCIAが「穏健派」の反アサド勢力を支援する策の一環として贈与した米国製の対戦車砲(TOWミサイル)だった。テロ組織自身が、露軍ヘリに向かってTOWを撃つ場面の動画を自慢げに発表している。この動画は、米国が「テロ支援国家」であることを雄弁に物語っている。

トルコはNATO加盟国だ。NATOは、加盟国の一つが敵と戦争になった場合、すべての同盟国がその敵と戦うことを規約の5条で義務づけている。そもそもNATOはロシア(ソ連)を敵として作られた組織だ。戦闘機を撃墜されたロシアがトルコに反撃して露土戦争が再発したら、米国を筆頭とするNATO諸国は、トルコに味方してロシアと戦わねばならない。これこそ第3次世界大戦であり、露軍機の撃墜が大戦の開始を意味すると重大視する分析も出ている。ロシアとNATO加盟国の交戦は60年ぶりだ。

ここ数年、米欧日などのマスコミや政府は、ロシア敵視のプロパガンダを強めている。NATO加盟国のトルコの当局は、ロシアと対決したら世界が自国の味方をしてくれると考えているだろう。だが、私の見立てでは、世界はトルコに味方しにくくなっている。今回の露土対立は、世界大戦に発展しにくい。

ISISやアルカイダの創設・強化は米軍の功績が大きい。米国は、ISISやアルカイダを敵視するふりをして支援してきた。ロシアとISISとの戦いで、米国主導の世界の世論(プロパガンダ)は「ISISは悪いけどロシアも悪い」という感じだった。だが、先日のパリのテロ以降、それまで米国のマッチポンプ的なテロ対策に同調していたフランスが本気でISISを退治する方に傾き、国際社会の全体が、ロシア主導のISIS退治に同調する傾向になっている。ISISへの加勢を強めているトルコと裏腹に、世界はISISへの敵視を強めている。

その中で、今回の露軍機の撃墜は、露土戦争に発展すれば、ISISやトルコよりロシアの方が悪いという、善悪観の逆転を生むかもしれない。トルコはそれを狙っているのだろう。だが、ロシアがうまく自制し、国際社会を「やっぱり悪いのはISISだ」と思わせる方向に進ませれば、むしろISISやアルカイダを支援してロシアに楯突くトルコの方が「テロ支援国家」で悪いということになる。

フランスなどEU諸国はすでに今秋、トルコが国内にいた大勢のシリア難民をEUに流入させ、難民危機を誘発した時点で、トルコへの不信感を強め、シリア内戦を終わらせようとアサドの依頼を受けて合法的にシリアに軍事進出したロシアへの好感を強めている。今後、トルコがNATO規約5条を振りかざして「ロシアと戦争するからEUもつきあえ」と迫ってくると、EUの方は「騒動を起こしているのはトルコの方だ」と、ロシアの肩を持つ姿勢を強めかねない。露軍機が17秒しか領空侵犯していないのにトルコが撃墜したことや、トルコがISISを支援し続けていることなど、トルコの悪だくみにEUが反論できるネタがすでにいくつもある。難民危機も、騒動を扇動しているのはトルコの方で、ロシアはテロ組織を一掃してシリアを安定化し、難民が祖国に戻れるようにしようとしている。これらの状況を、EUはよく見ている。

米国の外交政策立案の奥の院であるシンクタンクCFRの会長は「ロシアを敵視するトルコの策はISISをのさばらせるだけだ」「トルコはかつて(世俗派政権だったので)真の意味で欧米の盟友だったが、今は違う(エルドアンの与党AKPはイスラム主義だ)。形式だけのNATO加盟国でしかない」と、やんわりトルコを批判し「ロシアのシリア政策には良いところがけっこうある」とも書いている。
トルコは、国内で使用する天然ガスの6割近くをロシアから輸入している。エネルギー総需要の2割がロシアからの輸入だ。こんな状態で、トルコはロシアと戦争に踏み切れない。ロシアは、軍事でトルコを攻撃する前に、契約の不備などを持ち出してガスの供給を止めると脅すことをやるだろう。

それよりもっと簡単な報復策を、すでにロシアは採り始めている。それは、これまで控えていた、トルコの仇敵であるシリアのクルド人への接近だ。露政府は最近、シリアのクルド組織(PYD、クルド民主統一党。クルド自治政府)に対し、モスクワに大使館的な連絡事務所を開設することを許した。シリアのクルド組織に対しては最近、米国も接近している。米軍は50人の特殊部隊を、PYDの軍事部門であるYPDに顧問団として派遣し、ISISとの戦いに助言(もしくはスパイ?)している。シリアのクルド人自治政府に発展していきそうなPYDに、すでに米国が接近しているのだから、ロシアが接近してもまったく問題ない。困るのはトルコだけだ。

 


シリア政府は内戦で化学兵器を全く使っていない?

2019年11月21日 | シリア

シリア政府は内戦で化学兵器を全く使っていない?

2018年4月18日   田中 宇


 2011年からのシリア内戦では、化学兵器による攻撃が何度も行われている。ウィキペディアによると、直近のドウマの化学兵器攻撃(劇)までで、合計72回、化学兵器が使われた。このほか、国際機関のOPCWやUNHRCの報告書にだけ載っているものもある。13年3月19日にカンアルアサル(アレッポ郊外)のシリア政府軍基地に対して反政府軍がサリン入りの手製ロケット弾を撃ち込んだ攻撃、15年8月21日にマレア(Mare'a、アレッポ郊外)の住宅地にISがマスタードガス入りの砲弾を50発以上打ち込んだ攻撃など、4件は反政府勢力の犯行だとされている。 (Use of chemical weapons in the Syrian Civil War From Wikipedia

 今年4月7日のドウマの攻撃劇など、白ヘルメットなど反政府側が「政府軍が化学兵器で攻撃し、市民が死んだ」とウソを喧伝しただけで、実際の化学兵器攻撃が行われていないものもいくつかある。「政府軍が化学兵器で攻撃してくるのですぐ逃げろ」とウソを言って住民を避難させ、そのすきに空き巣に入るといった事案もあった(14年4月29日のアルタマナなど。国連報告書S/2016/738の54ページ#13)。塩素やサリンが散布されて死傷者が出ているが、政府軍と反政府勢力のどちらがやったのか、OPCWが確定できなかったものも多い(現場調査に入れない、証言が人によって食い違っている、物証がないなど)。 (S/2016/738) (シリアで「北朝鮮方式」を試みるトランプ

 だがそれらの「反政府側が犯人」「反政府側がウソを喧伝したが化学兵器攻撃はなかった」「誰が犯人か不明な化学攻撃」を除いたものの多くについて、シリア政府軍が化学兵器を使ったと、OPCWやUNHRC、欧米マスコミが「断定」している。マスコミは、白ヘルが捏造した動画などを鵜呑みにして大々的に報じてきた。対照的に、OPCWは犯人(化学兵器使用者)を断定するのに慎重だが、最近になるほど米英の圧力を受け、政府軍犯人説へと飛躍しがちだ。UNHRC(国連人権理事会)は、OPCWの調査結果を使い、慎重なOPCWが犯人を断定できない事案に関して「大胆」に政府犯人説を断定する傾向だ。 (UNHRC : Report of the independent international commission of inquiry on the Syrian Arab Republic

 シリア内戦の化学兵器攻撃事案で、国際政治的に重要なのは3件ある。(1)13年8月21日のグータ、(2)17年4月4日のカーンシェイクン、(3)今年4月7日のドウマ、の3つで、いずれもシリア政府軍の仕業と喧伝されている(実はすべて濡れ衣だが)。(1)は、当時のオバマ大統領に対し、軍産やマスコミから「米軍がアサド政権を倒すシリア攻撃に入るべきだ」と強い圧力を受け、濡れ衣で開戦したイラク戦争の愚を繰り返したくないオバマが、ロシアに問題解決を頼み、今に続くロシアのシリア進出への道筋をつけた。(2)は、17年4月6日のトランプ大統領によるシリアへのミサイル攻撃につながったが、後で、シリア政府軍の仕業と断定できる根拠がない(濡れ衣攻撃だった)と、ティラーソンやマティスが認める事態になった。(3)は、中東大戦争や米露世界大戦(もしくは多極化)への瀬戸際状態を引き起こしている現在進行形だ。 (ミサイル発射は軍産に見せるトランプの演技かも) (無実のシリアを空爆する) (シリア空爆策の崩壊

 私は、今回の記事の題名どおり、シリア内戦の72回以上の化学兵器使用のなかで、シリア政府軍が化学兵器を使って攻撃したと確定的に言える事案が一つもないのでないか、と考えている。シリアのISアルカイダは、サリンや塩素ガスを持っている。政府軍が通常兵器で攻撃してくるのに合わせて、それらの化学兵器を手製のロケット砲や手榴弾などの形式で発射し、住民に被害が出ると、その場で撮影(もしくは仲間内で演技して事前に制作)した動画をアップロードし「政府軍が化学兵器で攻撃してきた」と喧伝し、それを受けて米英で、ISカイダを支援する軍産の一味であるマスコミと当局が「アサドの仕業」を「確定」することを延々と繰り返してきた、というのが私の見立てだ。 (進むシリア平定、ロシア台頭、米国不信

 サリンは、トルコの化学企業からトルコの諜報機関が原料を入手してシリア反政府勢力に渡していた。トルコは、16年にISカイダを見捨ててロシア側に転じており、その前後から反政府側のサリン在庫が減り、代わりにプールの浄化剤を転用して造した塩素ガスの使用が増えた。サリンや塩素ガスによる攻撃は、手製の小型ミサイルや手榴弾によって行われている。いずれも政府軍でなく、民兵団(テロリスト集団)である反政府勢力の手法である。 (Saraqib chemical attack - Wikipedia) (Ashrafiyat Sahnaya chemical attack - Wikipedia

 米英軍産と傘下のアルカイダがグルになり、13年8月21日のグータの化学兵器攻撃の濡れ衣をシリア政府にかけた後、ロシアの仲裁で、シリア政府はそれまで持っていた(がシリア内戦で使っていなかった)化学兵器を、米露の検証のもと、すべて廃棄した。シリアが持っている化学兵器を全廃してしまえば、もう米英もシリアに化学兵器攻撃の濡れ衣をかけられないと露シリアは考えたのだろうが、それは甘かった。 (ロシアのシリア空爆の意味) (シリアをロシアに任せる米国

 シリア政府が化学兵器を廃棄した後、シリア内戦での化学兵器使用は、むしろ増加した。ウィキペディアに載っている化学攻撃の回数は、グータの攻撃の前の1年間が17件だったが、その後の1年間は27件だった。化学攻撃の濡れ衣で非難されるのがいやで化学兵器を破棄したシリア政府が、その後の化学攻撃をやるはずがない。これらの27件や、その後現在までの30件近くの化学攻撃は、すべて反政府側が政府に濡れ衣をかけるためにやったものと考えられる。 (Use of chemical weapons in the Syrian Civil War From Wikipedia

 15年秋からは、ロシア軍がシリアに進出した。これで、反政府勢力に対するシリア政府軍の優位は確立した。アサド政権は、内戦終了後もシリアで政権を維持できる可能性が高まった。国際的なイメージ改善がアサド政権の目標の一つになった。化学兵器の使用は、国際イメージを悪化させる。ロシアの支援を受けて軍事的に優勢になったシリア軍は、軍事戦略の面でも、化学兵器を使う必要が全くなくなった。だが、15年秋以降も、シリアでは10回以上の化学兵器による攻撃があった。これらがシリア政府軍の仕業であるとは考えられない。 (いまだにシリアでテロ組織を支援する米欧や国連

▼3大案件は反政府側が犯人だった可能性が特に強い

 以下、シリア内戦で化学兵器が使われたとされる個別の案件について考察する。まずは、上記した3大案件から。

(1)13年8月21日のグータ。アルカイダが占領するダマスカス近郊のグータ地区の2箇所に、サリン入りのロケット砲が撃ち込まれた。ちょうど国連の化学兵器調査団が同年5月の化学兵器使用について調べるためにダマスカスに着いた直後のタイミングで発生した。タイミング的に、アルカイダが政府軍に濡れ衣を着せるためにやった感じだ(シリア政府は、国連調査団の現地調査の要請をすぐ了承した。シリア政府が犯人なら、現地調査の了承を遅らせるはずだ)。事件後すぐ(アルカイダの「上部機関」である)米英の政府やマスコミは、シリア政府軍の仕業だと断定し始めた。 (Ghouta chemical attack From Wikipedia) (United Nations Mission to Investigate Allegations of the Use of Chemical Weapons in the Syrian Arab Republic - Final report

 UNHRCは、報告書(A-HRC-25-65_en、18-19ページ #127-131)で、13年8月21日のグータと、13年3月19日のカンアルアサルという、2件の化学兵器攻撃で使われたサリンの物質的な特質(markers、hallmarks)が共通しており、犯人(使用者、化学兵器保有者)が同じである可能性が高いと書いている。UNHRCは、このサリンは質が高く、こういったものを作れるのはISカイダのような民兵団でなく、シリア政府など国家機関だけだという理由で、2つの事件はすべて政府軍の仕業だと断定している。 (A-HRC-25-65 : Report of the independent international commission of inquiry on the Syrian Arab Republic

 だが、すでに書いたように、アルカイダはトルコの諜報機関(という国家機関)からサリンの原料を供給されていた。事情を知らないトルコの警察が、シリアに運び込まれる途中のサリン原料をシリア国内で見つけて取り締まろうとして、諜報機関と悶着する事件も以前に起きている。 (Turkish Whistleblowers Corroborate Story on False Flag Sarin Attack in Syria) (2 Turkish Parliament Members: Turkey Provided Chemical Weapons for Syrian Terrorist Attack

 今年1月のロイター報道によると、OPCWは、上記のグータとカンアルサルだけでなく、2017年4月4日のカーンシェイクンの化学兵器攻撃で使われたサリンも、他の2件と物性が同じであるという調査結果を出した。ロイターは、このサリンがシリア政府軍の所有物であるという前提で報じている。だが、グータとカンアルサルとカーンシェイクンが、同じサリンを使った、同一勢力による攻撃であるという、OPCWやUNHRCも認める「事実」をもとに考えると、むしろ3つの化学攻撃は、いずれも反政府勢力の仕業である可能性の方が高い。

https://www.reuters.com/article/us-syria-crisis-chemicalweapons-exclusiv/exclusive-tests-link-syrian-government-stockpile-to-largest-sarin-attack-sources-idUSKBN1FJ0MG Tests link Syrian government stockpile to largest sarin attack (Ghouta chemical attack - From Wikipedia

 その理由の1つは、13年3月カンアルサルの攻撃が、シリア政府軍の基地に向かって反政府勢力(アルカイダ)がサリン入りの手製のロケット弾を飛ばしてきた事案だったからだ。この攻撃の直後、シリア政府は国連に、反政府勢力が化学兵器を使ったので調査し確定してほしいと要請し、8月に国連の調査団が現地を調査した。反政府勢力は、化学兵器を使ったのは政府軍だと反論した。13年8月の国連調査団のシリア入国の直後、グータで、サリン入りのロケット弾が撃ち込まれる化学攻撃が起きた。

 国連調査団は、カンアルサルでサリンが使われたことは認定したが、誰がサリンを使ったかについては、シリア政府の主張を裏付ける証拠が不十分であるとして、使用者不明のままとした。だが、国連の調査委員会の一員だったカルラ・デルポンテ(国連戦争犯罪担当主任検事)は13年5月に、化学兵器を使ったのは反政府勢力だとの判断を発表した。これに対し、米英などが鋭く反発し、翌日には調査委員会が「まだ何も結論は出ていない」とする声明を発表した。要するに、ふつうに考えると反政府勢力が犯人なのだが、そう表明することは米英が反対するのでできない状況だった。米英・軍産が、アサド犯人説以外の主張する人に大きな政治圧力をかけて黙らせ、アサド犯人説を「結論」にしてしまう今の構造が、13年5月の時点ですでに隆々と繁茂していたことが見て取れる。 (Khan al-Assal chemical attack -Wikipedia

 13年3月のカンアルアサルの化学攻撃は、反政府勢力(アルカイダ)の仕業で、それを米英軍産がシリア政府軍の仕業という結論に歪曲した。アンアルアサルと同じサリンが使われた、13年8月のグータと、17年4月のカーンシェイクンの攻撃も、アルカイダの仕業だったことになる。これらの3件とも、米英軍産が結論を歪曲し、人類はアサド犯人説のウソを信じ込まされている。

 (2)17年4月のカーンシェイクンの攻撃。反政府勢力は「政府軍がヘリコプターからサリンを入れた樽型爆弾を住宅に落とした」と主張している。政府軍ヘリが樽型爆弾をアルカイダの地元司令官の武器庫つきの家に落としたのは事実のようだ。政府軍側は「樽型爆弾は化学兵器でなく通常の火薬しか使っておらず、政府軍の攻撃に合わせてアルカイダがサリンの入った手製の砲弾を撃ち、それを政府軍のせいにした」と主張している。その他、政府軍に空爆された司令官の家の武器庫にサリンが保管されており、それが空爆時に散布されたという説もある。OPCWは、犯人を特定していない。 (REPORT OF THE OPCW FACT-FINDING MISSION IN SYRIA REGARDING AN ALLEGED INCIDENT IN KHAN SHAYKHUN, SYRIAN ARAB REPUBLIC APRIL 2017) (Khan Shaykhun chemical attack Wikipedia

 (3)今回のドウマの案件。最近、欧米記者として事件後に初めてドウマの現地入りしたロバート・フィスクが、地元の人々が皆、4月7日に化学兵器が使われた事実はないと言っていることを確認した。事件当日、ドウマの病院に担ぎ込まれた人々は、通常兵器の爆弾の噴煙による呼吸困難をわずらっていたが、誰も化学兵器の被害を受けていなかった。だが、突然白ヘルの一行が病院にやってきて「化学兵器が使われた」と叫びながら、相互に水を掛け合い、その光景をビデオに撮って帰っていった。ロシアの主張どおり、4月7日のドウマでは化学兵器が使われておらず、米英は、白ヘルによるウソを(意図して)鵜呑みにしている。 (Robert Fisk visits the Syria clinic at the centre of a global crisis) (Famed War Reporter Robert Fisk Reaches Syrian 'Chemical Attack' Site, Concludes "They Were Not Gassed"

 シリア内戦の無数の化学兵器使用事案に関して、OPCWが報告書で「シリア政府軍が犯人(使用者)だ(ろう)」と結論づけているのは、私がいくつかの報告書をざっと見た限りで、国連に出した報告書「S/2016/738」に載っている、14年4月21日のタルメネスと、15年3月16日のセルミン、14年4月18日のカフルジータの3件だけだ。これらの件では、いずれも政府軍がヘリコプターで樽型爆弾を反政府支配地に投下している。反政府側は「樽型爆弾に化学兵器が入っていた」と言い、政府側は「通常火薬が入った樽型爆弾を落とす際、反政府側が化学兵器(塩素)入りの手製のロケット弾や手榴弾を撃ってきた」と言っている。 (Third report of the Organization for the Prohibition of Chemical Weapons-United Nations Joint Investigative Mechanism

 ウィキペディアの表によると、反政府支配地への樽型爆弾投下後の塩素ガス被害という、同種類の案件が、14年春から15年春にかけて22件起きている。OPCWは前出の報告書 S/2016/738で、このうち8件について調査・分析している。政府軍の通常火薬の樽型爆弾投下に、時間的・場所的に、うまく合わせて反政府側が塩素弾を撃てた案件はOPCWの結論が「政府軍が犯人」になり、それ以外の案件は「犯人不明」になっている。OPCWは、反政府側が政府軍を陥れるために政府軍の通常爆弾の攻撃に同期させて化学兵器を撃った可能性を(意図的に)無視している。ウィキペディアも同様だ。この無視を勘案して再検討すると、これらの全ては、犯人が政府軍でなく反政府側の可能性の方が高い。 (Use of chemical weapons in the Syrian Civil War From Wikipedia

 OPCWは、15年の報告書(s/2015/908、140-141ページ)で「政府軍がヘリで化学兵器(塩素)入りの樽型爆弾を落とした」という前提で、地元の(反政府側の)人々の証言と、現場で採取した爆弾の破片をもとに、こんな構造の塩素弾の樽型爆弾だったというイラストを載せている。これを見ると「化学兵器使用の犯人は政府軍だ」と思ってしまう。だが考えてみると、反政府勢力の証言をもとに、想像力をたくましくして破片を組み合わせて「復元」すれば、通常火薬の樽型爆弾を、化学兵器の樽型爆弾に化けさせることが十分に可能だ。このイラストは、政府軍犯人説の証拠にならない。 (OPCW : s/2015/908

 ロシアも参加するOPCWは一昨年まで、UNHRCや米英マスコミに比べ、犯人探しの結論を出すことに慎重だった。そのため、OPCWが政府軍が犯人だと結論づけた案件は(OPCWの報告書の束を私がつらつら読んだ範囲では)、私が反駁した上記の3件しかない。それと上記の15年報告書のイラストぐらいだ。だが、これらの慎重なOPCWが出した結論ですら、容易に反駁されうる。シリア内戦でアサドの政府軍が一度でも化学兵器を使った可能性はかなり低く、国際社会から好かれたいとずっと思っているアサド政権のイメージ戦略から考えて、化学兵器を一度も使っていない可能性の方が高い。


シリア内戦の終結、イランの台頭、窮するイスラエル

2019年11月21日 | シリア


シリア内戦の終結、イランの台頭、窮するイスラエル
2017年9月18日   田中 宇
 シリア内戦は、終わりかけているのに、報道でそれが知覚しにくい、終わりがあいまいな戦争になっている。15年秋にロシア軍がアサド大統領のシリア政府軍を支援するために参戦して以来、ロシアとイランに軍事支援された政府軍が、IS(イスラム国)やアルカイダなどイスラム過激派(テロリスト)の反政府勢力に勝ち続けてきた。反政府勢力は、米国やサウジアラビア、トルコ、イスラエルなどに軍事支援されているが、露イランに支援された政府軍や、米軍に支援されたクルド軍(YPG)に勝てず、退却し続けている(米国は、表でYPGを支援しつつ、裏で米諜報界がテロリストをも支援している)。 (The West might hardly believe it, but it now seems the Syrian war is ending – and Assad is the victor)

 天王山だったアレッポも昨年末奪還され、ラッカも今夏、事実上奪還された。ISカイダが政府軍と戦い続けているのは、シリアの東部と南部の一部の地域だけになり、残りの地域では退治されたか停戦・武装解除されている。反政府勢力は負け続けているが、裏にいる米国が負けを認めず、諜報界の一部門である米マスコミも反政府勢力の敗北、アサドと露イランの勝利を報じない。そのためシリア内戦は、アサド側が勝って終結した感じが強まっているのに、終わったことになっていない。私はこの2年間に、シリアの内戦終結や「内戦後」について何度も書いている。 (内戦後のシリアを策定するロシア) (シリア内戦がようやく終わる?) (勝ちが見えてきたロシアのシリア進出)

 シリア内戦が、アサド露イラン(とクルド)の勝ちで終わりつつあるのは確かだ。今後テロリスト側が盛り返して政権転覆することはない。敗北の事実を米国側が認めないのは、悔しいからでなく、米国の傘下の勢力のいくつかが、敗北の準備をする時間を必要としているからだろう。シリア各地で政府軍に投降したアルカイダとその家族が、トルコに支援されつつ、トルコ国境近くの町イドリブ周辺に移住しており、それが敗北の準備の一つだ。トルコ自身、自国と接するシリア北部にクルド人自治区ができることに対する抵抗や準備、交渉を必要としている。 (Syrian rebels in talks with U.S. about surrender in Aleppo, evacuation)

 米国にとって、アルカイダやトルコよりもずっと重要な自国傘下の負け組は、イスラエルだ。イスラエルは1967年の中東戦争でゴラン高原をシリアから奪い、現在まで占領している。占領地ゴラン高原の端に、シリアとイスラエルの(事実上の)国境がある。シリア内戦中、イスラエルは、この国境のシリア側にいたアルカイダを支援し続け、自国とシリア政府軍の緩衝地帯として機能させてきた。だが昨年から、イラン傘下の勢力(レバノン出身のヒズボラと、イラク出身の民兵団)が、ロシア軍の軍事支援を受けつつ、イスラエル国境から数キロのところまで進出してきた。これはイスラエルにとって大きな脅威だ。 (The Reason For Netanyahu's Panicked Flight to Russia)

 イランとイスラエルは仇敵どうしだ。米国の外交戦略の立案過程を牛耳るイスラエルは、米国を通じ、米傀儡だったイラクのサダム・フセインをけしかけてイラン・イラク戦争を起こしたり、イランに核開発の濡れ衣をかけて制裁したりしてきた。対抗してイランは、イスラエルの北隣のレバノンの武装勢力ヒズボラや、南隣のガザの武装勢力ハマスなどを軍事支援してきた。2012年に米国の扇動でISカイダがシリア内戦を起こした後、アサド政権から軍事支援を頼まれたイランは、当初から、イスラエルに隣接するシリアとレバノンを、内戦後、イランの影響圏にして、イスラエルに脅威を与えることが内戦参加の目標だった(レバノンは90年代からシリアの影響圏)。 (The True Story Of How War Broke Out In Syria)

 内戦の前半期、イランが加勢してもアサド軍は苦戦し、そのままだとISカイダに政権転覆されそうだった。だがそこで、オバマの米政府が、内戦終結のために露軍がシリアに進出するよう、ロシアのプーチンを説得してくれて、アサドとイランは露軍の支援を得て、見事に挽回できた。露軍は、米諜報界がISカイダ支援する補給路を次々と空爆して壊した。(オバマは、イランに対する核の濡れ衣を解く一方、イスラエルにいろいろ意地悪してくれた、イランの隠れた恩人である)。ロシアと米国に助けられて、イランとアサドはシリア内戦に勝ち、イランは今年初めから、シリア南部のイスラエル隣接地域に傘下の民兵団を展開した。 (ロシアのシリア空爆の意味) (イランとオバマとプーチンの勝利) (Russian Intervention in Syrian War Has Sharply Reduced U.S. Options)

▼イスラエルが中東和平の努力をしなかったので米軍がシリア南部の進駐をやめた感じ

 イラン傘下のヒズボラやイラク民兵団は、昨年末に北部の大都市アレッポをISカイダから奪還する戦いが終わった後、シリア南部のイスラエル近傍に進駐してきた。同地域には、イスラエルが支援するアルカイダ系の反政府勢力が展開しており、それを退治するためにイラン系の勢力が進駐した。イラン系民兵団は、ロシア軍の空爆支援を受けつつ、イスラエルが支援してきたアルカイダを退治し始めた。脅威を感じたイスラエルは、2月以降、シリア南部のイラン系の軍事拠点を空爆し始めた。加えてイスラエルは、ロシア(米露)に対し、シリア南部からイラン系の勢力を追い出してほしいとか、シリア各地に作られている「安全地帯(戦闘禁止区域)」を、イスラエル国境近くのシリア南部にも設けてほしい(イスラエルが支援するアルカイダの壊滅を防ぐため)とか要求し始めた。

 ロシア(米露)は、安全地帯の設置に了承した。だが、安全地帯の停戦状態を監視する役目をイラン系の民兵団に与え、イラン系が「官軍」で、イスラエルが支援するアルカイダが「賊軍」の役回りで安全地帯を作る計画になった。それを聞いたイスラエルは、そんな安全地帯ならいらないと言って、急に反対する側に転じた。この安全地帯構想は、米露が話し合って決めており、イスラエルはロシアだけでなく米国にもしてやられたことになる。 (IS SYRIA BEING PARTITIONED INTO ‘DE-ESCALATION’ SAFE ZONES?)

 安全地帯の構想に頼れないとわかったイスラエルは、シリア南部のヒズボラなどの拠点を空爆す実力行使を続けた。これに対し、ロシアは今年3月、イスラエルに猛烈に抗議し、これ以上、イスラエルがシリアを領空侵犯して空爆を続けるなら、地対空ミサイルをシリアに配備している露軍がイスラエル機を撃墜するかもしれないと警告した。アサド大統領は、イスラエルの領空侵犯に警告を発したロシアに感謝の意を表明した。 (Syrian Envoy: Russia Has Told Israel Freedom to Act in Syrian Airspace Is Over) (Assad: Russia has ‘important role’ in preventing Israel-Syria clash)

 ロシアに頼んでもらちがあかないと考えたイスラエルは、トランプの米国に対し、シリア南部に軍事駐留してくれと頼み始めた。露イランとイスラエル・アルカイダ連合の一触即発の対立現場に入っていくことを危険と考えた米軍は、5月初旬、シリア南部の中でも、イスラエルの近傍でなく、反対側の、イラク・シリア国境の地域(アルタンフ)に、ヨルダンから2千人の軍勢で越境侵入して駐屯した。IS退治が名目だったが、その地域にISはいなかった。 (US, UK, Jordan deploy troops, tanks in southern Syria: Reports)

 米軍が駐屯したシリア・イラク国境の町アルタンフには、イランからイラクを経由してシリア南部に入る道路が通っており、駐屯には、イランの補給路を断つ意図があった。露軍やイランの軍勢は、アサド政権から要請されてシリアに進出したが、アサドを敵視する米軍は、許可を取らず国際法違法の状態で侵攻して駐留した。

 米軍がアルタンフに駐留した時期は、トランプが5月下旬にサウジやイスラエルを歴訪し、イスラエルに中東和平(西岸入植地の凍結・撤退)をやらせる見返りに、サウジとイスラエルが和解してイランを共通の敵とする同盟関係を構築する案を開始した時期と一致している。イスラエルがサウジと和解するために必要な中東和平の推進をする見返りに、トランプが米軍をシリア南部に派兵するという合意があった感じだ。だがその後、中東和平は全く進展していない。イスラエルのネタニヤフ政権は、和平反対の右派勢力に取り囲まれたまま、スキャンダルまで次々と起こされて身動きがとれない。 (よみがえる中東和平) (Criminal Indictments Loom Large for Israeli PM)

 トランプは、中東歴訪から2か月たっても中東和平が進まないため、7月下旬、CIAに対し、シリア反政府組織(アルカイダ)に対する支援を打ち切るよう命じた(CIAは「穏健派の反政府勢力」を支援していることになっていたが、反政府勢力の中に穏健派などおらず、ISかアルカイダしかいない)。シリア南部で、イスラエルのために、アサドやイランの軍勢と戦っていたアルカイダは、CIAから供給されていた武器や資金を絶たれ、戦えなくなった。彼らは、戦線を離脱して、ヨルダンに越境避難するか、トルコが元アルカイダの兵士や家族の面倒を見てくれる北部のイドリブ方面に逃げるか、投降してアサドの政府軍に鞍替えするしかなくなった。 (Trump’s Syria Muddle) (Trump Ends CIA Program Of Funding Terrorists In Syria; Will Things Actually Change?)

 7月から8月末にかけて、米国やサウジアラビアの外交官らが、米サウジの支援を受けていたシリア反政府勢力の代表たちに対し、内戦における敗北を認めてアサド政権と和解するよう、説得して回った。米政府は表向き、アサドを絶対許さない姿勢をとり続けていたが、交渉の現場では、もはやアサド政権を倒せないことを認めていた。 (Pentagon Confirms Its In-House Rebels Defected to the Syrian Army) (US, Saudis urge Syria opposition to accept Assad’s political role: Report)

 8月末には、シリア南部の対イラク国境の町アルタンフに駐留していた米軍が、シリア政府軍とイラン系民兵団に、国境検問所を明け渡した。イランからイラクを通ってシリアに至る幹線道路が再開され、アサド政権とイランやヒズボラが勢いづいた。9月上旬には、アルタンフの米軍が撤収し、ヨルダンに出て行くことが発表された。シリア南部は、米軍が立ち去り、アサドとイランの軍勢が、ロシアの空爆支援を受けながら守っていく地域になった。CIAは、サウジやヨルダン政府と連名で、シリア南部に残っている反政府勢力に対し、ヨルダンに撤収するよう命じた。 (Iraq, Jordan officially reopen vital trade route on border) (US Orders South Syria Rebels to Retreat Into Jordan)

 こうした流れの中、8月末から9月初めにかけて、ロシアや国連、米国の元シリア大使(Robert Ford)、英国の著名な中東ウォッチャー(Robert Fisk)らが相次いで「シリア内戦の終結」「アサドの勝ち、ISカイダの負け」を宣言した。国連のシリア担当特使(Staffan de Mistura)は「反政府派は負けを認めねばならない」と宣言した。 (Syrian Rebels Need to Accept That They Didn’t Win War) (Former Obama Ambassador to Syria: Iran Is in Syria to Stay)

 北部も地中海岸もレバノン国境沿いも戦闘が終わり、反政府派が武装解除されている(東部はデリゾールにISが残っているが、陥落は時間の問題だ)。南部の戦闘終結、米軍撤退は、まさにシリア内戦の終結になっている。米国中心の国際マスコミの多くは、こうしたシリア内戦の新展開を曖昧にしか報じていない。 (Saudi Arabia and Israel Might 'Directly Intervene' in Syrian Conflict)

▼戦争にも和平にもならないイスラエルとイラン

 米軍とその傘下の反政府勢力がシリア南部から撤退した力の空白を、イランとその傘下のヒズボラなどシーア民兵団が、急速に埋めている。イスラエルは、味方をしてくれていた米軍や反政府勢力(アルカイダ)にシリア南部を去られてしまい、その空白を仇敵のイランやヒズボラに埋められ、脅威が急増している。ヒズボラなどイラン系勢力は、ゴラン高原のイスラエル国境から5キロのところまで進駐してきている。ヒズボラは、シリアのためにゴラン高原を武力で奪還すると宣言し、血気盛んだ。 (Israel Held Secret Talks With US, Russia to Object to Syria Ceasefire)

 イスラエルにとっての脅威が急増したのは、米軍を撤退させ、アルカイダ支援を打ち切ったトランプの米国のせいだ。しかし、そもそも米軍が今年5月、シリア南部に駐留したのは、イスラエルが中東和平(西岸入植地撤退)を進めてサウジと結束してイランに対抗する約束で、それを加勢するための米軍の呼応策としてだった。ネタニヤフが入植地を撤退せず、トランプとの約束を反故にしているのだから、米軍がシリア南部から撤退しても、イスラエルは文句を言えない。(イスラエルのメディアは最近、サウジの皇太子が秘密裏にイスラエルを訪問したと報じたが、根拠のないガセネタだろう) (Breaking News of Saudi Crown Prince's "Secret" Visit To Israel Brings Embassy Scramble)

 ネタニヤフは8月末、米国とロシアを訪問し、自国の窮地を何とかしてくれと頼んだが、ほとんど収穫を得られなかった。米国は、トランプ政権中枢からスティーブ・バノンが追放されるなど権力闘争のまっただ中で、上の空の対応しかしてくれなかった。ロシアはイスラエル国境沿いに少数のロシア軍顧問団を派遣することに同意したが、これは兵力引き離しの軍勢でなく、事態を監視するだけだった。イスラエルは徴兵制を強化するなど、有事体制を急いで構築している。9月に入り、ヒズボラを仮想敵とする大規模な軍事演習を行った。9月12日には、イスラエル軍機がシリアに領空侵犯し、ヒズボラの武器庫などを空爆している。シリア軍は、ロシアから買った地対空ミサイル(S200)を撃って対抗した。 (Israel to Simulate War With Hezbollah in Largest Military Exercise in Decades)

 事態は一触即発になっている。イスラエルと、シリア・イラン・ヒズボラが、いつ全面戦争を始めてもおかしくない、と考えられないこともないが、私はそう考えない。戦争にはならないと思っている。その理由は、イスラエルがシリアに戦争を仕掛けたら、強大なロシア軍を相手にすることになるからだ。ロシアは、シリア政府に頼まれてシリアを守っており、イスラエルが攻めてきたら反撃する。ロシアは、シリアに、イスラエル全土をもカバーできるレーダー機能を置いている。イスラエル軍の動きは、すべて事前にロシアに筒抜けだ。これでは戦争できない。今の政治状況から考えて、イスラエルが露イランアサドに戦争を仕掛けたら、米国は中立を保つ。イスラエルは味方を得られず、06年の対ヒズボラ戦争よりもっと悪い条件で停戦せざるを得なくなり、弱体化を露呈してしまう。 (ヒズボラの勝利)

 逆に、イランやヒズボラの方からイスラエルを攻撃する可能性も高くない。今の中東において、パレスチナ人を苦しめるイスラエルは悪者になり、ISカイダを退治したイランやヒズボラは正義の味方になっている。イランやヒズボラは、戦争でなく、この政治的優位を生かした外交的な問題解決を探っているはずだ。

 イランで、シリア進出を担当しているのは、事実上の軍隊である「革命防衛隊」で、彼らは公営企業の運営などイラン国内に巨大な経済利権を持ち、その儲けをシリアやイランでの影響力の構築につぎ込んでいる。最近、革命防衛隊の拡大を快く思わないリベラル傾向のロハニ大統領は、革命防衛隊の腐敗を摘発するかたちで経済利権を削いでいく動きを行なっている。そして、革命防衛隊の最高司令官であるイランの指導者ハメネイ師は、自分より下位にいるロハニ大統領による腐敗摘発の動きを了承している。ハメネイ自身が、防衛隊は大きくなりすぎたと考えているわけだ。これからシリアでイスラエルと戦争する気なら、ハメネイが防衛隊の摘発を了承するはずがない。イランは、イスラエルと戦争しようとしていない。 (Iran cracks down on Revolutionary Guards business network) (Iran cracks down on Revolutionary Guards business network)

 イランとイスラエルは、戦争しそうもないが、和解もしそうでない。しばらくは、にらみ合いが続く。だがその間にも、イランの影響力は拡大し続ける。イスラエルは90年代、バラク首相の時代に、ゴラン高原を返還してシリアと和解することを模索していた。その構想は、00年のアサド父の死去によって潰えたが、ゴラン高原を返還してシリアと和解する利得自体は今も変わっていない。パレスチナ問題とうまく切り離せれば、イスラエルがゴラン高原を返還してシリアやイランと和解することが、長期的にあり得る。


いまだにシリアでテロ組織を支援する米欧や国連

2019年11月21日 | シリア

いまだにシリアでテロ組織を支援する米欧や国連

2018年3月7日   田中 宇


 シリアの首都ダマスカスの東郊外に「東グータ地区」(Eastern Ghouta)がある。この地区は、シリア内戦の早い段階からアルカイダ(ヌスラ戦線)傘下のイスラムテロ組織(Jaysh al-Islam)の支配地だった。彼らは米国やサウジアラビアからの支援を受け、アサド政権がいるダマスカスの市街地に向けて無差別な砲撃を続けてきた。この地区で最近、ロシア軍に支援されたシリア政府軍が、アルカイダと激しい戦いを続けている。米国や英仏の政府代表やマスコミは「アサド軍と露軍が無実の市民を空爆し、国連機関などによる人道支援物資の搬入も阻止している。これは人道上の犯罪だ」と、露シリアを非難している。マスコミも露シリア批判を喧伝している。だが、これらの非難は濡れ衣だ。 (Ghouta Is An Aleppo Redux To Save "Assad Must Go") (Siege of Eastern Ghouta - Wikipedia

 東グータ地区は、ダマスカスの中心街から5キロほど東にあり、ダマスカスの市街地と、その東側に広がる砂漠との間に位置する。砂漠を百キロあまり東に行くとヨルダンやイラクとの国境で、サウジにも近い。国境地帯(アルタンフ周辺)には、ISが台頭した後の2014年から、米軍の特殊部隊がシリア政府の許可を得ずに基地を作って進駐している。シリアにいるアルカイダやISの兵士(テロリスト)の多くは外国から来ており、ヨルダンからシリアに入り、砂漠を超えて東グータや、ユーフラテス川沿いのラッカに向かう。国境地帯に駐留する米軍は、ISカイダのテロリストたちに武器や物資、移動手段を与える「テロ支援」をしてきた。 (Ending America’s Disastrous Role in Syria byJeffrey D. Sachs) (Al-Tanf (US base) From Wikipedia

 ロシアがシリア政府軍を加勢するため参戦すると、16年からISカイダが負けて支配地が縮小していった。ラッカなどユーフラテス川沿いを支配していたISや、ホムス周辺を支配していたアルカイダ(ヌスラ)勢力は、露アサドやイラン系、クルドの軍勢などに負け、アルタンフのヨルダン国境地帯に退却した。国境地帯にはルクバン難民キャンプがあり、ISカイダの兵士はそこで米軍に支援されて形勢を立て直し、まだISカイダが強い東グータやシリア南部の戦線に転戦した。 (Russia says Nusra terrorists ‘recovering strength’ in US-controlled zone in S Syria) (Syria Rukban From Wikipedi

 このように、米軍による支援体制があるため東グータのテロ組織は強く、シリア政府軍は、首都のすぐ脇にあるこの地域をなかなか奪還できなかった。ISカイダが支配していたシリア国内の他の地域が政府軍側に奪還されていくなか、いまや東グータはシリアで最後のISカイダの拠点になっている。 (Russia Warns US To "Stop Playing With Fire" In Syria, Immediately Leave Area It Controls) (Daesh not over, US relocating it: Iran’s Zarif

 東グータにおいて、アルカイダはダマスカス市街地を砲撃し続け、シリア政府軍はアルカイダの拠点を空爆・砲撃する戦闘が続いてきた。アルカイダは東グータの病院や住宅街に立てこもってそこから政府軍を攻撃し、政府軍が病院や住宅街を攻撃すると、アルカイダの意を受けた地元の「人道団体」(白ヘルメットなど)が「シリア政府軍が病院や住宅街を攻撃して無実の市民を大量殺害した」と喧伝し、米欧マスコミがこれを鵜呑みにして、アルカイダ側の動きを書かず、シリア政府だけが極悪であると報じた。国連はシリア非難決議を出した。 (Al Nusra, White Helmets may be plotting chemical weapons attack in Syria, military warns) (進むシリア平定、ロシア台頭、米国不信

 白ヘルメット(White Helmets、シリア民間防衛隊)など、シリアの人道団体は、実のところISカイダの傘下なのに「内戦下でアサドの政府軍に攻撃された人々を救援する勇敢な正義の味方の地元市民の団体」であると喧伝され、欧米や日本の軽信的で善良ぶりたい間抜けな市民たちが献金を出してきた。「善良」な彼らは実のところISカイダに献金していた。 (How a Syrian White Helmets Leader Played Western Media) (Syria's White Helmets struggle with budget shortfall

 また、政府軍の戦闘機が東グータなどでアルカイダの支配地域を空爆した直後、アルカイダがあらかじめ用意してあった化学兵器の物質(塩素やサリン)をその地域に散布し、住民に被害が出る状況を作った上で、被害を受けた住民の動画を撮影してインターネットに流し「政府軍が化学兵器を使った」と喧伝し、米欧マスコミがこれを鵜呑みにして、アルカイダ側の策略を書かず、シリア政府だけが極悪であると報じた。国連はシリア非難決議を出した。こうした「濡れ衣攻撃」は、東グータだけでなく、内戦下のシリア全土で何度も行われてきた。 (シリア虐殺の嘘) (軍産複合体と正攻法で戦うのをやめたトランプのシリア攻撃

▼シリア内戦での化学兵器使用はすべてISアルカイダのしわざなのにアサドに濡れ衣を着せ続けるマスゴミ

 2013年8月、東グータで化学兵器が使われ、地元住民が死傷した。米政府はすぐに「アサド政権がサリンを使って市民を攻撃した」と発表した。米政府内や議会で、当時のオバマ大統領に対し、シリア政府に対し報復の軍事攻撃をせよという圧力がかかった。マスコミや「専門家」の多くは「アサドの政府軍のしわざ」と断言したが、中には「被害を受けた市民の症状を見ると、政府軍が持っている化学兵器によるものでない」という者もいた。オバマは、シリア政府軍のしわざと断定できないとの態度を途中から取り、やろうとしたシリア空爆を直前でやめた。 (無実のシリアを空爆する) (米英覇権を自滅させるシリア空爆騒動

 オバマは、米軍による空爆をやめる代わりに、アサド政権と親しいロシアに問題解決を頼んだ。ここから、今に続くロシアによるシリアへの軍事進出の流れが始まっている。米軍は、シリア内戦を解決するふりをして裏でISカイダを支援して内戦をひどくするばかりだったが、ロシア軍は本気でISカイダを空爆し、アサドの政府軍がISカイダを退治するのを助けた。シリアにおいて、米軍は極悪であり、ロシア軍は正義である。 (シリアをロシアに任せる米国

 オバマからシリア内戦の解決を頼まれたプーチンは、ISカイダを空爆するだけでなく、シリア政府軍が持っていた化学兵器を全て廃棄させた。2013年に東グータで化学兵器を使ったのは政府軍でなくアルカイダだったが、これと別に、シリア政府軍は化学兵器を保有していた。ロシアは、米国や国連も誘い、アサドに化学兵器全廃を了承させ、廃棄作業を完了した。14年以降、シリア政府は化学兵器を保有していない。 (Syria says it has no chemical weapons) (Destruction of Syria's chemical weapons

 ところがその後も、シリアでは塩素系などの化学兵器が使われ、使われるたびに、地元の白ヘルメットなど(アルカイダ系の)人道団体が「アサドの政府軍のしわざだ」と主張し、米欧などのマスコミはそれを鵜呑みにして「アサドがまた化学兵器で市民を殺戮した」と喧伝し、国連や欧米政府はアサドを非難し、間抜けな欧米日の市民が白ヘルメットや難民支援団体(=アルカイダ支援機関)に献金するという馬鹿げた事態が何年も続いた。アサド政権が化学兵器を全廃したことは無視された。 (Envoy to UN: Syria Cannot Use Chemical Weapons Because It Has None

 最近では「北朝鮮が2016-17年にシリア政府に化学兵器製造用の資材をひそかに中国企業経由で輸出していた」という非公開の「報告書」も、米英諜報界が国連に提出されている。しかし現実を見ると、シリア政府は米国などがかけてくる化学兵器使用の濡れ衣から逃れるために2013-14年に保有する化学兵器を米露に預けてすべて廃棄してもらっており、その後ひそかに再び化学兵器を作る政治的な利得がまったくない。米国などは、シリア政府がひそかにサリンなどを作っていると主張しているが、濡れ衣であり、確たる根拠がない。無根拠であることは最近、トランプ政権のマティス国防長官やティラーソン国務長官も認めている。シリアは化学兵器の製造などしていない。「北朝鮮がシリアに化学兵器用の資材を中国経由で輸出していた」という話は、北朝鮮、シリア、中国という「米国の敵」たちに濡れ衣を着せるための捏造だろう。 (U.N. Report Links North Korea to Syrian Chemical Weapons) (Mattis Threatens Military Action Over Syria Gas Attack Claims, Then Admits "No Evidence"

 それまで米軍に支援されたISカイダが優勢だったシリア内戦の形勢が逆転し、露軍に支援されたシリア政府軍が優勢になった転換点は、第2の大都市であるアレッポ(東アレッポ)を、政府軍が2016年末に奪還した時だった。このときISカイダ側は、住民を「人間の盾」にして東アレッポに立てこもり、露アサド側が住民が避難できるよう、時間を区切って停戦しつつ脱出路を用意した。だがISカイダ側は、脱出しようとする住民を射撃して脱出を不可能にし、戦況を膠着させた。欧米マスコミはいつものとおり「露アサド軍が住民を射撃して脱出を不可能にした」と事実と正反対を報じた。(今回、東グータで同じことが起きている) (シリアでロシアが猛攻撃

 米国の差し金で国連が東アレッポに「人道支援物資」を送り込んだが、物資を差し入れると、それは窮しているISカイダに対する軍事補給物資になってしまっていた。そのため露アサド側は物資の搬入を制限した。これまた欧米マスコミは、いつものとおり「露アサドが、市民を救うための人道支援物資の搬入を阻止している」と喧伝した。(今回、東グータで同じことが起きている) (ロシアのシリア空爆の意味

 これに対し露アサド軍は、ISカイダに猛攻撃を加えつつ、住民だけでなくISカイダの兵士たちもアレッポから脱出して、テロ支援諸国である米トルコが世話をしてくれるイドリブに移動させてやると提案し、ISカイダと裏で交渉した。露アサド軍の攻撃に困窮したISカイダは、最終的にイドリブ移動案に同意し、無数のバスが用意され、ISカイダとその家族がイドリブに移動し、一般市民は無傷な西アレッポに移動した。露アサド側の、この解決方法は「アレッポ方式」と呼ばれるようになった。今回、東グータで同じやり方がとられている。 (アレッポ陥落で始まった多極型シリア和平

▼米覇権勢力による濡れ衣戦争がひどくなっても全然見えてこない欧米日の人々

 アレッポの奪還後、露アサド軍は、東部のユーフラテス川沿いのIS占領地や、シリア南部のヨルダン・イスラエル国境沿いのアルカイダ占領地を奪還していった。シリアでのISカイダの大きな占領地は、ダマスカス近郊の東グータだけになった。ユーフラテス川沿いから撤退したISは、米軍に助けられつつ、東グータに移動してアルカイダに合流した(2者は本質的に同じ勢力だ)。今年2月、露軍の支援を受けつつ、シリア軍が東グータの奪還戦を開始し、アルカイダへの攻撃を強めた。 (Russian bombers clear the way - 10,000 Syrian soldiers begin large scale offensive in Damascus) (Syria militants in US seeking CIA dollars to ‘confront Iran’s influence’

 ロシアは、東グータでもアレッポ方式を試みた。アルカイダ側に対し、避難路を作ってやるから戦線を放棄して撤退せよと提案した。ロシアはアルカイダに対し、撤退する先を指定したはずで、それは今回もイドリブなのかもしれないが、どこなのかは報じられていない。米軍から補給を受けたアルカイダは、今のところロシアの提案を拒否し、市民を人質にしたまま、ダマスカス市街地への砲撃を続けている。 (Syria slams Western silence on fatal terrorist attacks against Damascus civilians

 露アサド軍は、東グータから市民が逃げ出せるよう避難路を用意し、停戦時間帯も設けたが、アルカイダが避難路を狙い撃ちするため市民が逃げ出せない状態だ。これに対し、欧米マスコミはいつものとおり「露アサドが避難路を狙い撃ちするので市民が逃げ出せない」と、歪曲報道につとめている。 (Syria Militants continue shelling humanitarian corridor from Eastern Ghouta — defense official) (Syrian army forces secure humanitarian corridor in Eastern Ghouta

 国連は、東グータに「人道支援物資」を搬入しようとした。搬入物資の中に、アルカイダの負傷兵の手当に使いうる医療品が含まれていたため、アサド政権はそれらを留め置いた上で搬入を許した。これも「アサド政権は人道支援を妨害している」と喧伝されている。国連人権理事会は、英国の提案で、アサド政権が東グータで人道上の戦争犯罪を犯していると決議したが、これは全くのお門違いだ。むしろ国連人権理事会の方が「テロ支援組織」と化している。 (U.N. rights body to hold debate on Ghouta on Friday at Britain's request) (UN aid convoy suspends mission in Eastern Ghouta amid shelling

 東グータを奪還すると、アサド政権はシリア国内のテロリストの大きな支配地を全て奪還できたことになり、内戦終結、やり直し選挙、国家再建へとつなげられる。アサド政権は内戦後のやり直し選挙に備え、内外での評判を良くしておきたいはずだ。アサド政権は、東グータでアルカイダとの戦闘と無関係に市民を殺戮するはずがない。 (UN says aid convoy not going to Syria's Ghouta as planned) (UN says Syrian actions in Eastern Ghouta may amount to crimes against humanity

 東グータでは今回、シリア政府軍機がアルカイダの支配地域を空爆した直後、同じ地域で塩素系の化学兵器の被害に遭う市民が多数出た。これに関して欧米マスコミはいつものとおり「シリア政府軍機がまた化学兵器を使った」とする報道を流した。ロシア軍は諜報活動によって事前に「アルカイダが塩素系の兵器をばらまき、それをシリア政府軍の犯行に見せかける濡れ衣作戦をやりそうだ」と警告を発していた。アルカイダが何度濡れ衣攻撃をやっても、それに(故意に)騙され続けるのが欧米マスコミの極悪さだ。 (Chlorine attack reported in Syria after Russian warning

 国連安保理では、米英仏が東グータでの停戦を提案した。だが全面停戦するとアルカイダが形勢を立て直してしまう。ロシアは全面停戦に反対し、アルカイダの支配地を停戦から除外する修正案を通したが、ここでも「ロシアは停戦に反対し好戦的だ」と歪曲喧伝されている。真に好戦的なのは、アルカイダをこっそり支援してきた米英仏の側だ。 (Putin Protects Assad Again) (Russia's patience with Ghouta militants not indefinite: Putin

 東グータでの露アサド側に対する欧米や国連からの非難は、アレッポで行われた濡れ衣・歪曲的な非難と全く同じだ。シリア内戦では、何度も何度も同じ種類の濡れ衣・歪曲が繰り返され、欧米マスコミは性懲りもなく歪曲報道を繰り返し、欧米日の「善良=軽信的」な市民たちは何度も簡単に騙されている。 (Ghouta is an Aleppo Redux to Save “Assad Must Go”

 だが、最終的にアレッポがシリア政府によって奪還されたように、いずれ東グータからもアルカイダは退却し、シリア内戦は終結に向かう。アサド軍は、東グータでアルカイダに占領された地域の25%を奪還した。今後、この比率が50%、75%、90%と増えていき、シリア最後のISカイダの大きな拠点である東グータが奪還される。 (Militants agree to allow civilians to leave Ghouta: Russia) (Syria government retakes over a quarter of rebel enclave, says monitor

 濡れ衣・歪曲による戦争は、第2次大戦以降、米英覇権勢力(軍産複合体=深奥国家)が世界支配の手法としてやり続けてきたことだ。冷戦終結まで、その手法は割とうまくいっていた。ベトナム戦争では(未必の故意的に)失敗したが、日独との戦争では大成功した。しかし、90年代のコソボ戦争から未必の故意的な失敗が目立つようになり、01年の911事件、03年のイラク戦争、その後のリビアやシリアでの戦争、イラン核問題など、濡れ衣や歪曲がどんどん露骨になり、「裸の王様」の物語的に、見てみぬふりをするのが困難になってきている。それでも人類は平然と見てみぬふりを続け、濡れ衣や歪曲はさらにひどくなっている。 (歴史を繰り返させる人々

 この件については、もっと深い分析が必要だ。毎回、報じられていることが濡れ衣・歪曲なのだと説明するだけで延々と書かねばならず、深い分析まで到達できない。濡れ衣・歪曲を指摘する人自体がほとんどいない。それを指摘すると「権威ある専門家」にしてもらえないからだろう。

 

 

 


ISISが新品のトヨタ製のトラックを大量に持っているのは

2019年11月21日 | シリア

田中宇さんの記事を載せます。

ほんとにこの通りなんだと思うが・・・。日本人の何%が気づくやら・・・。




 米国防総省は、ISISが新品のトヨタ製のトラックを大量に持っているの
で、ISISがそれらをどこから得たのか不審に思い、日本のトヨタ自動車に、
心当たりがないかどうか尋ねた。テロ支援者の濡れ衣をかけられかねないト
ヨタは「全く心当たりがない」と急いで答え、この件は「迷宮入り」しそうに
なった。その後、実は、米国の国務省がアサド政権打倒策として昨年「穏健派」
のシリア反政府勢力(FSA)に公費で買い与えてシリアに送り込んだ大量の
トヨタ車が、そっくりISISにわたっていたことが明らかになった。そも
そもFSAは、シリア国内に勢力をほとんど持っていない亡命組織だ。大量の
トラックがシリア国内に届いた瞬間にISISかアルカイダの手に落ちること
は事前にわかっていたはずだ。


 刑法の用語で「未必の故意」というのがある。プロは、自分の仕事の基本的
な部分について長年の訓練を重ねており、プロがあまりに基本的な失敗をする
ことは、絶対失敗したくないのに失敗したのでなく、失敗するかもしれないと
うすうす感じていたのにそのままにして失敗した「うすうすの故意」だという
見方だ。未必の故意は「故意」に近い罪が適用される。米国が、テロリストに
わたる可能性が高いのに大量のトヨタ車をシリアに送り込んだのは、未必の故
意(もしくは故意)のテロ支援である。米国は少なくとも「未必のテロ支援国
家」である。サウジなど湾岸アラブ諸国の対米不信が強まることが明らかなの
にペルシャ湾から空母を撤退したのも、未必の故意の戦略失敗だ。米国の軍事
外交(や経済)戦略は、この手の未必の故意的な失策に満ちている。失策は
01年の911事件後に増え、最近さらに急増している。


 ロシアのプーチンは、露軍がシリアに地上軍侵攻することはないと断言して
いる(地上軍はシリア政府軍と、イランやヒズボラなどシーア派が担当する)。
露軍シリア進出の「アフガン化」の懸念はなくなった。プーチンは、露軍の
シリア進出は、今春から夏にかけてISISなどに負けて崩壊しかけていたア
サド政権を軍事支援して蘇生させ、アサドをシリア国内で有利な立場に戻した
うえで、アサドと反政府各勢力の間で、内戦終結と国内安定に向けた政治交渉
を再開するのが目的だと言っている。シリアを安定させるには、プーチンが提
案した方法が最も早道だ。ロシアは世界平和に貢献し、米国は世界平和を壊し
ている。国際マスコミは、善悪を歪曲している。BRICSや欧州の多くの人々
が、すでにそれに気づいている。米国の人々も、いずれ気づくだろう。対米
従属の官僚独裁に洗脳されてきた日本人の大多数は、最後まで気づかないかも
しれない。

 

 

 

 


ロシアのシリア調停策の裏の裏

2019年11月21日 | シリア

ロシアのシリア調停策の裏の裏

2017年2月3日   田中 宇


 今回も複雑多様な中東情勢。まずは本文執筆前の要約。アスタナ会議でシリア和平を仲裁したロシアが、驚きのシリア憲法草案を出した。クルドに自治付与の連邦制、クルド語とアラビア語の並列で母語に。イスラム法の優位を否定、大統領は権限縮小のうえ再選禁止。米国がイラクに押し付けた憲法に似た欧米風。アサド政権も、アラブなイスラム主義者も、イランもトルコも猛反対。これはたたき台です、最終案はシリア人全体で決めてくれと弁解しつつ対案を歓迎するロシア。シリア人や中東諸勢力が欧米型の案を潰して乗り越えるのを欧米に見せつけるのがロシアの目的??。 (Russia offers outline for Syrian constitution) (Sputnik Obtains Full Text of Syrian Draft Constitution Proposed by Russia

 ロシアは最近、シリアをめぐってイランと対立(を演出)している。ロシアがアスタナ会議に米国勢を呼ぼうとしたらイランが猛反対。露トルコが、ヒズボラなどシーア民兵を標的に「すべての外国軍勢力のシリア撤退」を要求したが、シーア側は激しく拒否。アサドに代わりうる亡命アラブ人指導者(Firas Tlass)をアスタナに招待したロシア。アサド・イラン・ヒズボラ対、ロシア・トルコ・サウジ・米国・イスラエルの対立構造か?。しかし、シリア現地の治安維持権はアサド・イラン・ヒズボラが掌握しており、たぶん変更不能。「国際社会」を代表してアサドイランを弱める役回りを演じて「うまくいきません」と示すのがロシアの意図??。 (Russia's knockout game in Syria

 イランのミサイル試射を機に、イラン敵視を強めるトランプ政権。イラン敵視の主導役をネタニヤフに丸投げして押しつけるトランプ。それらにつきあうロシア。しかしロシアは裏で、タルトスの露軍基地の百年租借契約をアサドと締結。テヘランでは露イラン外交515周年の友好イベント。ロシアは、アフガン、コーカサス、天然ガスなどについてもイランとの協調が不可欠。露イランは齟齬するが敵対しない、できない。ロシアのイラン敵視は、米イスラエルにつきあう演技。非現実的な構想に拘泥し失敗した以前の米国と対照的なロシアの現実主義。親クルド親イスラエル反イランなトランプのシリア安全地帯構想も、ロシアの動きと連動している。要約だけでどんどん長大化。毎回うんざりな中東。以下本文。

▼ロシアとイランは協調するふりして対立??。対立するふりして協調??

 1月23日から26日まで、カザフスタンの首都アスタナで開かれたシリア和平会議は、シリアのアサド政権と反政府勢力が内戦終結後のシリアの再建について初めて話し合った画期的な国際会議だった。これまで米欧国連主催のジュネーブ和平会議があったが、主催者の米国がアサド打倒に固執してアサド政権を呼ばなかったので交渉として成立していなかった。アスタナ会議はロシア主導(露トルコイラン共催)で、非現実姿勢に固執する米欧国連を呼ばずに開かれた。ロシアが米国に頼らず、イランやトルコと一緒に、米国がやらかした中東の殺戮や混乱を収拾する、まさに米覇権体制の行き詰まり・崩壊と「多極化」を象徴する出来事だ。 (Syrian opposition member: United delegation for Geneva talks not under consideration yet

・・・というと「田中宇の多極化予測がまたもや的中!!」みたいな感じだが、実はそうでない。むしろ逆に、軍産対米従属な「専門家」が言うような「無極化」の事態が、一枚下で展開している(もう一枚下は、また違うのだが)。アスタナ会議には14派のシリア反政府組織が出席してアサド政権側と交渉したが、14派の多くは、シリアに進出した露軍に投降してロシアの傀儡となった反政府勢力だ。サウジアラビアが食わせている「リヤドグループ」や、欧米の傘下にいるSFAは、ロシアから招待を受けたが参加していない。Jaish al-Mujahideenは、指導者がアスタナ会議に参加している間に、シリア現地の部下たちがアルカイダに皆殺しされた。傀儡は弱っちい。 (Al-Qaeda Forces Wipe Out Syrian Rebel Faction Engaged in Peace Talks

 アスタナ会議は、トランプの米大統領就任を待って開かれた。だが、プーチンがトランプ陣営をアスタナに招待したとたん、共催国のイランが米国の参加に猛反対し、仲間割れを起こした。トランプ陣営は招待を断り、不参加だった。 (Plenty of ghosts at the table in Astana

 ロシアは、アスタナ会議のシリア反政府勢力をそれっぽいものにするため、英雄的な役者を呼ぼうとした。ロシアが呼んだのは、アラブ首長国連邦に亡命しているタラス一族(Tlass)だった。タラス家はシリアの多数派のスンニ派イスラム教徒のアラブ人(アサド家は少数派のアラウィ派イスラム教徒)で、オスマントルコ時代の知事の家系だ。先代の独裁者アサド父の時代に、タラス家の先代が40年近くシリア政府の国防相を務めていたが、父が死に、独裁者が息子の今のアサドに代わった後、辞めさせられた。タラス家の息子の一人は、今もシリア軍の将軍をやっているが、一族の本体は11年の内戦勃発後に亡命した。 (Astana floored by Russian pick as Assad successor

 ロシアの読みは、多数派のスンニ派で高貴で治安維持経験があるタラス家なら、少数派のアラウィ派のアサド家の代わりをやれるし、スンニ派も文句を言わないだろうというものだ。だがこれにはアサド大統領と、アサド家を押し立ててシリアを傘下に入れ続けようとするイランが強く反対している。アラウィ派は広義のシーア派で、イランと宗教的な親密さがある。アサド家と結束し、多数派のスンニの台頭(=民主化)を抑えるのがイランの戦略だ。

 イランは、シリアの東側にあるが、シリアの西隣のレバノンでもシーア派のヒズボラが政治軍事台頭している。イランは、シリアをレバノンへの通路として使い、ヒズボラをテコ入れしてレバノンまで支配したい(レバノンは従来サウジの影響下)。シリアの大統領がスンニ派のタラス家になると、こうしたイランの野望が阻まれる。イランにとって、シリア内戦は、ISアルカイダというスンニ派武装勢力と、イラン・アサド・ヒズボラというシーア派(反スンニ)系との戦いだった。イランは、15年秋にロシア軍が進出する前から、イラクイランアフガンのシーア派民兵団やヒズボラを動員してシリアに行かせ、多くの戦死者を出しながらISカイダと戦ってきた。あとから来たロシアやトルコが今さら何言ってんだ、絶対撤退しないぞという決意だ。

 アサドの政府軍とイラン系軍勢は、内戦によって、ISカイダだけでなく、シリアのスンニ派全体を民族浄化(=難民化)する目的があり、内戦前にシリアの人口の7割だったスンニ派が、今や5割前後に減ったとされる。減った分の人々の多くは、難民としてトルコや欧州に移動した。 (Russia’s choice for Syrian leader signals break with Iran

 スンニ派のトルコは、隣国シリアでスンニが追い出されてシーアの支配地になると困る。シリアの最大野党(反アサド)だったスンニのムスリム同胞団は、エルドアン大統領のトルコの与党AKPと思想的に近い。昨年、トルコはロシア敵視をやめてプーチンに擦り寄り、ロシアを反イランの方向に引っ張り始めた。トルコは、シリアにおいて、アサドイランの権力を削ぎ、スンニ派難民をシリアに帰還させつつ、シリアのスンニ派の力を増強したい。これは、サウジアラビアやイスラエルの意図と同じだ。

 アスタナ会議を共催したロシアトルコイランは、非米反米的な多極型世界を代表する3国同盟のように見えながら、実はバラバラで内紛だらけだ。ほらみろ、多極化でなく無極化だ、米国覇権にまさるものはない、ガハハハハ。対米従属論者の高笑い。とはいえ、米国覇権はトランプによって急速に破壊されている。高笑いはやけくその発露だ。 (Russia, Iran and their conflicting regional priorities

▼ほとんど誰も賛成しない憲法草案をロシアが出す意図

 米国の話をする前に、ロシアの動きをよく見ると、内紛的でもバラバラでもない。「多極化」のアスタナ会議を一枚めくると露トルコイランの内輪もめ的な「無極化」の様相だが、さらにもう一枚めくってロシアの動きをよく見ると、再び多極化の様相に戻る。ロシアは、イランやアサドと対立しているように見せながら、その一方で、イランやアサドと協調している。 (Syrian government disagrees with Russia on Kurdish autonomy

 ロシアは、シリアの地中海岸のタルトスに昔から海軍基地を借りているが、最近、アサド政権との間で、租借契約を49年延長した。その後も25年ごとに自動更新する契約で、実質的に百年以上続く契約だ。ロシアが本気でアサドを外そうとしているなら、アサドと基地契約を結ばないだろう。たぶんアサドは、選挙を経ながら、今後もかなり長く大統領であり続けるだろう。 (Syria Russia and Turkey hand Assad a ‘win-win’ scenario

 イランに関しても、ロシアとイランが一緒にやっているのはシリアだけでない。アフガニスタンでは最近、ロシアとイランが一緒になってタリバンに接近し、米国傀儡のカブール政権を追い出しにかかっている。中央アジア諸国やコーカサスでも、露イランの協調が不可欠だ。ロシアとイランは天然ガスの世界的産出国で、この点でも談合がある。

 最近、ロシアがシリアにおいて、シリア政府軍と、イラン系シーア派民兵団に対し、シリア国内での軍の移動を凍結するよう命じたとデブカファイルが報じている。話の真偽は不明だが、ロシア軍がシリアの制空権を握っているのは事実だ。ロシアの命令は効力がある。シリア政府は、自分の国なのに、軍の移動をロシアによって制限されている。ロシアがこんな命令を発するのは、最近トランプの米国がイラン敵視を強め、プーチンにもイラン敵視に協力してほしいと要請し、プーチンは米国にいい顔をして見せるために、シリアでのイラン系勢力(シリア政府軍含む)に「しばらく動くな」と命じた、という話らしい。ヒズボラは怒っている。 (Russia freezes Syrian, Iranian military movements

 ロシアは、イランを裏切って米国に擦り寄ったか、と思えてしまうが、よく考えるとそうでない。シリアにおけるイランの軍事行動を抑止できるのはロシアだけだ。米国は、ロシアに頼むしかない。ロシアはそれを見据えた上で「俺達ならやれるよ」と言っている。米議会共和党やトランプ政権は、ネタニヤフと組んで、イラン敵視を強めようとしているが、本気でイランを抑止するなら、米議会がロシアを敵視したままなのはまずい。ネタニヤフは、一昨年あたりから親ロシア姿勢を強めている。2月中に訪米するネタニヤフは、米議会に対し、イラン敵視を効率よくやるためにロシアの協力が必要だと説得する可能性がある。 (Report: Hezbollah Rejects Moscow-Ankara-Brokered Syria Ceasefire Deal Over Turkish Demand for Withdrawal of All Foreign Fighters

 トランプは、中東の管理を、ロシアとイスラエルにやってもらいたい。そこにつなげる動きとして、まずイラン敵視を再燃させ、それをテコに、米議会にロシア敵視を解かせつつ、中東管理の主導権を米国から切り離そうとしている。フランスなどEUは、オバマが実現したイランとの核協定を守ると宣言し、トランプの新たなイラン敵視に同意していない。欧米の方が仲間割れしている。 (Russia-Iran Cooperation in Syria Continues With the Same Pace - Iranian MoD) (Saudi defense minister, new Pentagon chief discuss Mideast in 1st conversation

 ロシアは、アラブ諸国に対し、シリアをアラブ連盟に再加盟させるべきだと提案している(内戦開始後に除名された)。この提案は「シリアはイランの傘下からサウジなどアラブの傘下に鞍替えすべき」と言っているのと同じで、イランを逆なでしている。 (Russia calls for Syria's return to Arab League

 しかし、すでに書いたように、ロシアが本気でイランと敵対することはない。シリアにおいて、ロシア軍がシリア政府軍やヒズボラを空爆することもありえない。空爆したら、ロシアの最重要目的であるシリアの安定を、自ら崩すことになる。ヒズボラなどシーア派民兵団は、ロシアや米トルコなどがいくら圧力をかけても、シリアから出て行かない。彼らは、命をかけて勝ち取った影響圏を手放さない(ロシアに譲歩して部分撤退ぐらいはやる)。ロシアの、イランやアサドに対する最近の敵視は、米イスラエルに見せるための演技、茶番にすぎない。 (Peace talks: How Iran and Russia may come to blows over Syria

 茶番と言えば、冒頭に書いたロシアのシリア憲法草案も、米イスラエルに見せるための噴飯物の茶番だ。草案は、クルド人に大きな自治権を与えているが、これはシリアの中でクルド人以外、ほとんど誰も賛成しない。トルコもイランも反対だ。イスラム法の優位否定も、シリアのほとんどの勢力が反対だ。大統領権限の縮小は、アサドを擁立するイランが反対だ。皆に反対され、ロシア外相は「これはたたき台にすぎない。最終案はシリア人全員で決めるのが良い」と言っている。 (Russian draft serves as ‘guide’ for final Syrian constitution – MoD) (Lavrov: Russia’s draft of Syria’s Constitution sums up proposals of government, opposition

 クルドの自治拡大や連邦制、大統領権限縮小は、シリアを弱くて分裂した国にしておきたい米英イスラエルが昔から言ってきたことだ。ロシアの草案は、米国がイラクに押しつけた憲法に似ているとシリア国内から揶揄されている。ロシアは憲法草案を出すに際し、米国の傀儡のように振る舞っている。だがこれも、良く考えるとロシアは、米国に対し「あなたがたが気に入るような憲法草案を作ってシリア人に見せましたが、猛反対されてうまくいきません」と言えるようにして、シリア人、特にアサド政権が、もっと従来の憲法に似たものを出して法制化する「現実策」に道を開こうとしている。 (Why did Russia offer autonomy for Syria’s Kurds?) (Syrian Kurds: ‘Signs of Full Support’ from Trump White House in Islamic State Fight

 英国は最近、アサドがとりあえず続投するのを容認すると言い出した。フランスや米国も、アサド政権のシリアに様子見のための議員団を派遣している。トランプも、エジプト大統領との電話会談で「アサドは勇敢だ。私は彼に直接電話したいが、今の(米国の)状況ではできない(よろしく言っておいてくれ)」と語ったという(トランプ側は一応発言を否定)。アサドは国際社会から再び容認される傾向だ。こんな有利な状況なので、誰から圧力をかけられようが、アサドは自分の権限の縮小を容認しない。 (Trump to al-Sisi: Syria’s al-Assad is a Brave, steadfast Man (Beirut Report)) (UK accepts Assad could run for reelection, marking shift in Syria policy

 ロシアは、中東での新たな覇権国として、とりあえず従来の覇権勢力である欧米が好むようなものを、憲法草案やイラン敵視などの分野でやってみせて、それがうまくいかないことを公式化している。いずれ「しかたがないですね」と言いつつ、イランやアサドがシリアを牛耳るという唯一実現可能な策を少しずつ肯定していくと考えられる。ロシアの今の右往左往は、こうした落とし所を見据えた上での動きだろう。 (Russia: Syrian draft constitution includes elements from Kurds and opposition) (Can Russian diplomacy end the Syrian War?

 イスラエルは従来、イラン敵視策の主導役を米国にやらせ、イスラエル自身は米国の後ろに隠れてきた。だがネタニヤフは最近、このような従来のリスク回避策を放棄し、米欧とイランの核協定の破綻や政権転覆を扇動する発言を強めている。イスラエルの上層部からは、こうしたネタニヤフの動きへの批判が出ている。トランプがイラン敵視をネタニヤフに任せる「敵対策の丸投げ・押しつけ」をやりそうだという私の分析の根拠は、このような最近の動きにある。トランプが、イスラエル右派とつながった若い娘婿のクシュナーをやたらと重用する異様さも、これで説明がつく。 (Israeli security establishment to Netanyahu: Don't touch Iran deal) (uspol For hardline West Bank settlers, Jared Kushner's their man

 このトランプのやり方も、米国の覇権放棄である。短期的に、イスラエルは米国を牛耳る感じになるが、長期的には、米国が抜けた後の中東において、イスラエルは単独でイランやイスラム世界からの敵意の前に立たされる。いや、正確には単独でない。イスラエルは、ロシアに頼ることができる。米国からはしごを外されたイスラエルがロシアにすがるほど、ロシアの中東覇権が強まる。私の最近の懸念は、これと似た構造として、トランプが、中国との敵対策を、日本の安倍に丸投げ・押しつけしてくるつもりでないかという点だ。これについては、もう少し情勢を見てみる。

 

 


ISISと米イスラエルのつながり

2019年11月21日 | シリア


ISISと米イスラエルのつながり
 
田中 宇

掲載月日:2015年2月22日

※ 本稿は読みやすく配慮したバージョンです。

 シリア南部とイスラエル北部の間にあるゴラン高原は、もともとシリアの領土だったが、1967年の中東戦争でイスラエルに侵攻され、それ以来、イスラエルは同高原の東側の9割の土地を占領している。ゴラン高原のイスラエルとシリアの停戦ラインには、停戦維持のため、1974年から国連の監視軍(UNDOF)が駐留している。 (Will Israel enter the Syrian civil war?)

 2011年から、シリアでイスラム過激派を中心とする反政府勢力が武装蜂起して内戦になった後、反政府勢力の一派であるアルカイダの「アルヌスラ戦線」が、ゴラン高原のシリア側でシリア政府軍を打ち破り、支配を拡大した。14年前半には、シリア北部でISIS(イスラム国)が支配を拡大したのに合わせ、南部のゴラン高原周辺はアルヌスラの支配地になり、14年夏には、イスラエルとの停戦ラインに沿った地域の大半から政府軍を追い出して占領した。アルヌスラは、国連監視軍の兵士を誘拐する攻撃を行い、国連は14年9月、監視軍を停戦ラインのイスラエル側に退却させた。 (Al-Nusra Front captures Syrian Golan Heights crossing)


ゴラン高原(薄い赤色で網がかかっている部分)
出典:グーグルマップ

「アルヌスラ」はアラビア語で「地中海岸地域(シリア、レバノン、パレスチナ、イスラエルにあたる地域)の闘争支援戦線」の意味で、アルカイダのシリア支部だ。兵力の多くは、もともとイラクのスンニ派地域で米軍と戦い、米軍撤退後、シリア内戦に転戦し、12年にアサド政権を倒す目的でアルヌスラを作った。米政府は同年末にアルヌスラを「テロリスト組織」に指定している。 (New Al Qaeda Video Shows Steady Advance along Israeli Border)

 ISISの前進である「イラクのイスラム国」は、もともとアルカイダの傘下にあり、アルヌスラの同盟組織だったが、13年4月に「イラクのイスラム国」がアルカイダからの独立を宣言した後、両者はライバル関係になったとされ、両者が戦闘したという指摘もある。しかし両者は、思想がサラフィ主義のスンニ派イスラム主義で一致し、アサド政権やシーア派、米欧を敵視しする点も一致している。 (al-Nusra Front - Wikipedia,)

 ISISとアルヌスラは、シリア内戦で、イラン(シーア派)傘下のシリア政府軍、イラク民兵、ヒズボラ、米欧に支援されたクルド軍などと継続的な戦闘に直面しており、相互に仲間割れして戦う余裕がない。両者は、敵対するライバルのふりをしているが実は味方で、対立する別々の組織を演じる策略をとっている可能性がある。

 米国の駐シリア大使だったロバート・フォードは最近「アルヌスラはISISと見分けがつかない組織だ」「シリア反政府勢力の中には似たような組織が多すぎる」「反政府勢力の大半は過激派であり(米欧が支援していることになっている)穏健派はほとんどいない」と指摘している。 (Former Ambassador Robert Ford Admits "Conspiracy Theorists" Were Right - Jihadists Are Majority Of Rebels)

 そんなアルヌスラが昨夏以来、シリア政府軍を撃退してゴラン高原西部を占領し、国連監視軍を押しのけてイスラエルと対峙している。アルヌスラはイスラエルを敵の一つに名指ししている。イスラエルとアルヌスラの戦争が始まるのかと思いきや、その後の展開はまったく正反対のものになった。

 国連監視軍が14年末に発表した報告書によると、イスラエル軍は、ゴラン高原の停戦ライン越しに、アルヌスラの負傷した戦士を受け入れてイスラエル軍の野戦病院で手当したり、木箱に入った中身不明の支援物資を渡したりしている。国連監視軍が現地で見たことを報告書にしたのだから間違いない。 (Report of the Secretary-General on the United Nations Disengagement Observer Force for the period from 4 September to 19 November 2014) (New UN report reveals collaboration between Israel and Syrian rebels) (UN reveals Israeli links with Syrian rebels) (UN Peacekeepers Observe IDF Interacting With Al Nusra in Golan)

 イスラエルが停戦ライン越しにアルヌスラを支援するようになったのは13年5月からで、それ以後の1年半の間に千人以上の負傷者をイスラエル側の病院で治療してやっている。イスラエル側は、シリアの民間人に対する人道支援と位置づけているが、負傷者はアルヌスラの護衛つきで送られてくるので、民間人でなく兵士やアルヌスラの関係者ばかりと考えられる。

 イスラエルのネタニヤフ首相は14年2月にゴラン高原の野戦病院を視察しており、これは政府ぐるみの戦略的な事業だ。国連監視軍は14年6月にも、イスラエルがアルヌスラを支援していると指摘する報告書を出している。 (UN Finds Credible Ties Between ISIS And Israeli Defense Forces) (Israel Is Tending to Wounded Syrian Rebels) (Report of the Secretary-General on the United Nations Disengagement Observer Force for the period from 11 March to 28 May 2014)

 ゴラン高原のイスラエル側とシリア側をつなぐ道路は、クネイトラという町(廃墟)を通る1本だけだが、この道は14年8月末からアルヌスラの支配下にある。イスラエルは、この道を通って、夜間などにいくらでもアルヌスラに支援物資や武器を送れる。クネイトラ周辺にいた国連監視軍は、アルヌスラに脅されてイスラエル側に撤退した。監視軍が見て報告書に書いたのは、イスラエルとアルヌスラの関係性の中のごく一部だけと考えられる。 (Syrian rebels, al Qaeda-linked militants seize Golan Heights border crossing)

 未確認情報で作り話の可能性があるが、ISISが米軍の輸送機C130を持っていて、それがイスラエルのゴラン高原の道路を使った滑走路に離着陸し、イスラエルから物資を受け取っているとか、同じC130がリビアまで飛び、リビアのイスラム過激派の兵士や武器を積んでキルクークやコバニの近くまで運び、劣勢だったクルド軍との戦闘を挽回したなどという話もある。 (Obama Leaks Israeli Nuke Violation Doc Before Bibi Visit)

 米軍は13年から、ヨルダンの米軍(ヨルダン軍)基地で、シリア反政府勢力に軍事訓練をほどこしている。アルカイダやISIS以外の「穏健派勢力」に訓練をほどこす名目になっていたが、かなり前から「穏健派」は、米欧からの支援を受けるための窓口としての亡命組織のみの看板倒れで、米軍が訓練した兵士たちは実のところアルヌスラやISISだった(米軍はそれに気づかないふりをしてきた)。シリアからヨルダンの米軍基地への行き帰りには、ゴラン高原のイスラエル領を通っていたと考えられる(他のシリア・ヨルダン国境はシリア政府軍が警備している)。 (Assad: US idea to train rebels illusionary)

 ヨルダン空軍のエリートパイロットがISISに焼き殺され、世論が激昂する中で、自国内で米軍にISIS訓練を許してきたヨルダンの姿勢を変えようとする動きが起きている。 (Did Jordan Train The ISIS Fighters Who Burned Their Pilot Alive?)

 イスラエルとシリアのゴラン高原の停戦ラインは、シリア内戦で米イスラエルがアルヌスラやISISを支援するための大事な場所になっている。昨年末以来、シリア政府軍と、それを支援するヒズボラやイランの軍事顧問団(要するに「シリア・イラン連合軍」)は、ゴラン高原の停戦ラインに近い地域をアルヌスラが奪還しようと、攻撃を仕掛けている。 (With Iran's help, Assad expands Golan offensive)

 シリア・イラン連合軍を食い止めるため、イスラエル軍は1月末に無人戦闘機をシリア領空に飛ばし、ゴラン高原近くのシリア政府軍の拠点を空爆した。ヒズボラ兵士や、イランから来ていた軍事顧問も殺された。イスラエルがシリア領内を空爆するのは非常にまれだ。シリア・イラン連合軍が優勢になり、アルヌスラがイスラエルに空爆をお願いした結果と報じられている。シリア政府は「イスラエル空軍は、アルカイダの空軍になった」と非難した。 (Southern Syria Rebels Ask Israel to Attack Army, Hezbollah Positions) (Assad: Israel is Al-Qaeda's Air Force in Syria)

 イスラエルがアルヌスラやISISを支援する経路としてゴラン高原の停戦ラインを使っているので、シリア・イラン連合軍が停戦ラインをアルヌスラから奪還しようと試み、それを防ぐためにイスラエル軍がシリア・イラン連合軍を空爆したのに、ワシントンポストなど米国のマスコミは「ヒズボラがイスラエルを攻撃しそうなので先制的に空爆した」と、わざと間違ったことを書き、読者に実態を知らせないようにしている。 (Hasbara happenings: US media again propagandises for Israel) (Tensions rise between Israel and Hizbollah)

 元米軍大将のウェスリー・クラークは最近、米国のテレビに出演し「ISISは当初から、米国の同盟諸国や親米諸国から資金をもらってやってきた。(親米諸国が支援した理由は)ヒズボラの台頭をふせぐためだった」と語っている。ヒズボラの台頭を最も恐れているのはイスラエルだ。クラークは複数形で語っており、イスラエルだけでなくサウジアラビアなどペルシャ湾岸産油諸国のことも示唆していると考えられる。 (General Wesley Clark: "ISIS Got Started Through Funding From Our Friends & Allies")

 サウジは以前、米国に頼まれて、シリア反政府勢力を支援していた。米国が10年にシリアのアサド政権を許すことを検討した時、サウジはいち早くアサドを自国に招待して歓待し、和解した。しかしその後、米国が再び反アサドの姿勢を強めたため、サウジも反アサドに転じた。サウジのシリア政策は、対米従属の一環だ。米国がアルカイダやISISを支援したから、サウジも支援した。しかしISISは14年11月、イラクとシリアを「平定」したら、次はサウジに侵攻し、メッカとメディナを占領すると宣言する動画を発表した。メッカの聖職者は、ISISを最大の敵だと非難し返した。 (Islamic State sets sights on Saudi Arabia)

 サウジ政府はその後、イラクと自国の千キロの砂漠ばかりの国境線に、深い塹壕や高い防御壁からなる「万里の長城」の建設を開始し、ISISが国境を越えて侵入してくるのを防ぐ策を強化した。今やISISは、サウジにとって大きな脅威であり、支援の対象であり続けていると考えられない。サウジは以前、米国に頼まれてISISに資金援助していたが、すでに今は支援していないと考えるのが自然だ。 (Revealed: Saudi Arabia's 'Great Wall' to keep out Isil) (War with Isis: If Saudis aren't fuelling the militant inferno, who is?)

 もしISISやアルヌスラがアサド政権を倒してシリアを統一したら、ゴラン高原を本気で奪還しようとイスラエルに戦争を仕掛けてくるだろう。サウジだけでなくイスラエルにとっても大きな脅威になる。だが米国やイスラエルは、アルヌスラやISISを支援する一方で、彼らがアサド政権を倒してシリアを統一できるまで強くならないよう制御し、彼らの間の分裂や、米欧による空爆も行い、シリアの内戦状態が恒久化するように謀っている。こうすることで、イスラエルは自国の北側に敵対的な強国ができないようにしている。 (敵としてイスラム国を作って戦争する米国)

 米国の上層部では、オバマ大統領が、自国の中東戦略がイスラエルに牛耳られ、馬鹿げたイラク侵攻を起こした体制からの脱却を望み、イラクからの軍事撤退を強行した。国防総省や議会など軍産複合体がイスラエルと同じ立場で、イラクからの軍事撤退に反対し、オバマが撤退を強行すると、次は過激派にISISを作らせて支援し、米軍が中東の軍事介入から脱却できないようにした。

 オバマは、軍産イスラエルが、シリアやイラクの混乱を恒久化するため、ISISやアルヌスラを強化しているのに対抗し、米軍の現場の司令官に直接命令して「ISISと戦うふり」を「ISISを本気で潰す戦い」に変質させようとしている。 (◆イスラエルがロシアに頼る?)

 イスラエルの軍司令官は昨秋、オバマの「本気に戦い」に反対を表明し「ISISは(米イスラエルの敵である)ヒズボラやイランと戦ってくれる良い点もある。ISISの台頭をもう少し黙認すべきであり、本気で潰すのは時期尚早だ」と表明している。 (West making big mistake in fighting ISIS, says senior Israeli officer)

 オバマは、軍産イスラエルの策動によってイランにかけてきた核兵器開発の濡れ衣が解かれ、イランが経済制裁を解かれて強くなり、ISISを潰せる力を持つよう、イランとの核交渉をまとめようとしている。すでにイランは、ISISと本気で戦う最大の勢力だ。イランがISISと戦うためイラクで組織したシーア派民兵団は10万人以上の軍勢で、兵力5万のイラク国軍よりずっと強い。 (Iran and west narrow gap in nuclear talks) (Pro-Iran militias' success in Iraq could undermine U.S.) (Iran eclipses US as Iraq's ally in fight against militants)

 こうした展開は、イスラエルにとって脅威そのものだ。ネタニヤフ首相は米政界に圧力をかけ、3月に訪米して米議会でイランを非難する演説を行い、オバマに圧力をかけようとしている。しかしこの策は、イスラエルが米国の世界戦略を隠然と牛耳ってきた状態を暴露してしまい、逆効果だ。米国のマスコミは、イスラエルに逆らった議員が落選させられてきた米国の歴史を報じ始めている。 (Benjamin Netanyahu Is Playing With Fire)

 オバマはイスラエルに報復する意味で、米国がイスラエルの核兵器開発に技術供与したことを書いた1980年代の国防総省の報告書「Critical Technology Assessment in Israel and NATO Nations」を機密解除して発表した。米国は、イスラエルが秘密裏に核兵器を開発していたことを正式に認めたことになる。 (US helped Israel with H-bomb - 1980s report declassified) (Critical Technology Assessment in Israel and NATO Nations)

 パキスタンで戦士の勧誘を手がけてきたISISの幹部が、パキスタン当局に逮捕され、自白したところによると、米当局はISISが一人戦士を勧誘するごとに、旅費などとして500-600ドルをISISに渡すことを繰り返してきたという。ISISやアルカイダは、米イスラエルが育ててきた勢力だ。 (Islamic State (ISIS) Recruiter Admits Getting Funds from America) (Islamic State operative confesses to receiving funding through US - report)

 イスラエルは米軍(米欧軍)が中東に駐留する状況を恒久化するため、米の軍産複合体はこのイスラエルの策に乗って米軍事費の肥大化を恒久化するため、ISISやアルカイダを操って跋扈させ、シリアやイラクを恒久的に内戦状態にする策を展開している。軍産イスラエルとISISやアルカイダは同盟関係にある。 (イスラム国はアルカイダのブランド再編)

 この事態を打破し、中東を安定化し、米軍が撤退できる状況を作るため、イランやアサド政権やヒズボラのイラン・シリア連合軍と、オバマは同盟関係にある。イランの背後にいるロシアや中国も、この同盟体に入っている。シリア内戦の解決策として最も現実的なのは、アサド政権と反政府勢力の停戦を大国が仲裁することだが、それをやっているのはロシアだ。米政府はロシアの仲裁を支持している。また中国は以前、中東の国際問題に介入したがらなかったが、最近ではイランの核問題の解決に貢献する姿勢を強めている。事態は、不安定化や戦争を画策する軍産イスラエル・米議会・ISISアルカイダ連合体と、安定化や停戦を画策するイラン露中・アサド・ヒズボラ・オバマ連合体との対立になっている。 (Kerry Supports Syrian Peace Talks in Russia) (China's foreign minister pushes Iran on nuclear deal)

 日本は先日、2人の国民がISISに殺された。戦後の日本人は、戦争を好まない民族だったはずだ。本来なら、ISISを本気で潰して中東の戦争を終わらせて安定化しようとするイラン露中・アサド・ヒズボラ・オバマ連合体の一員になってしかるべきだ。しかし最近の日本は、オバマの大統領府でなく、軍産イスラエル複合体に従属する国になっている(ドイツなど欧州諸国も同様だ)。

 ISISが日本人2人を殺すと脅迫した事件は、安倍首相が、ISIS退治に2億ドル出すと表明しつつ、ちょうどイスラエルを訪問している時に起きた。イスラエル政府は、ISISが日本人を殺そうとしていることを非難し、日本と協力してISISと戦うと表明した。しかしイスラエルは実のところ、裏でISISやアルヌスラを支援している。 (安倍イスラエル訪問とISIS人質事件)

 2人殺害の事件が起きるまで、日本のマスコミはISISについてあまり報じなかった。遠い中東で起きている複雑な背景の現象だから、報道が少ないのは当然だった。だが事件後、テレビは毎日必ずISISのことを報道する。これは911後のテロ戦争と同様、米国(軍産)主導の新たな国際体制を作ろうとする時のプロパガンダ策のにおいを感じる。

 軍産イスラエルは、自分たちが支援しているISISが日本人やヨルダン人や米英人やエジプト人らを次々と殺害し、世界がISISとの戦争に巻き込まれ、中東に軍事関与せざるを得ない事態を作ることで、911以来14年経って下火になってきた、テロリストが米国の世界支配を維持してくれる「テロ戦争」の構図を巻き直そうとしている。イスラエルは、オバマやEUなど、世界から敵視を強められている。それに対抗する策としてISISは便利な存在だ。

 安倍首相のイスラエル訪問は、安倍がイスラエル現地で会ったマケイン米上院議員ら、米政界の軍産イスラエル系の勢力からの要請を受けて行われた(イスラエルはパレスチナ問題で欧州に経済制裁される分の投資や貿易を日本に穴埋めさせたい)。安倍は軍産イスラエルに頼まれてイスラエルを訪問し、訪問とともにISISに人質事件を起こされ、軍産イスラエルの新たなテロ戦争に見事に巻き込まれた。日本は、ISIS人質殺害事件を機にイスラエルとテロ対策で協調を強めようとしているが、これは防火体制を強化する策を放火魔に相談するのと同じで、とても危険だ。

 今のイスラエルの危険さは、国際的に追い詰められている点にある。イスラエルは国際政治力に長けていて謀略の能力が高い。対照的に戦後の日本は、対米従属の国是をまっとうするため、国際政治や謀略の技能を自ら削ぎ、国際情勢に無知な、諜報力が欠如した状態を、意図して維持してきた。そんな無知な日本が、追い詰められた謀略国イスラエルに、のこのこと接近している。ひどいことにならないことを祈るしかない。