アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

「夢と色彩の変奏曲 永瀬義郎画集」

2016-10-07 06:16:43 | 美術書全般、美術番組
夢と色彩の変奏曲 永瀬義郎画集  ビッグ社 3900円

 長谷川潔は日本でも知られた存在になったが、永瀬義郎の知名度は依然として低いままだ。長谷川潔は西洋銅版画の失われた技法「マニエール・ノワール」を復活させたわけだが、永瀬義郎は従来のシルクスクリーンに手を加え、独自の「ナガセプリント73」という技法を編み出した。2人には交流があったらしく、「マニエール・ノワール」の復活には、永瀬義郎も関わっているらしい。

 さて、写真の画集は1981年に刊行された、事実上の自費出版物で、永瀬未亡人が編纂されたもの。画集としても機能するが、永瀬義郎自身のことも知ってもらおうと、対談や文章も掲載されている。だから画文集といったところか。現在では入手困難だろうが、永瀬義郎が好きなら是が非でも入手しておきたいところ。さすがに内容は濃い。

 大正時代にフランスに渡ったきり一度も帰国しなかった長谷川潔が日本での知名度が低いのは、ある意味ではやむをえないが、永瀬義郎はずっと日本にいたし、生前から評価のあった人である。にも拘らず、いくら本人が世間に知られるのを望まなかったとはいえ、未だにはっきり言って無名のままなのは問題。独自の技法を開発したのだから、その時点で最大級に評価されてしかるべきである。古今を問わず日本は埋もれている芸術家が多すぎる。

 長谷川潔の次は永瀬義郎だと思っているのだが、いや、もちろん長谷川潔は偉大だが、本命は永瀬義郎だと私は思っている。知らなかった方、名前だけでもぜひご記憶ください。

 付)もし永瀬義郎に興味のある方は、永瀬義郎オフィシャルサイトがあるので、まずは見てみてね。


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