アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

画題で一番難しいのは花

2015-12-16 06:46:53 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
 画題で一番難しいのは実は花である。よく人物が難しいというがこれは間違いである。西洋絵画史を見てみよう。人物画の名画はたくさんある。風景画然り。では花はどうだろうか。花の名画と言われても、ぱっと題名が出てこないし、そもそも花が上手かった画家として思い浮かぶのは、花のブリューゲルと、アンリ・ファンタン・ラトゥール、そしてマネぐらいじゃなかろうか。

 私の絵の先生がさらりと恐ろしいことを言った。
「花弁や葉は一枚一枚光の当たり加減が違うから、本来一枚一枚違う色で描かないといけない」

 この言葉に花を描くヒントがある。私はそれを理解した(随分長い間自問自答していたけれど)。別に何も難しいことではない。花弁や葉を一枚一枚違う色で描くのは非常に難しい。枚数が増えれば増えるほどその困難は増し、最終的には限りなく不可能に近くなる。だから枚数の如何に関わらず、そのようなことはする必要がない。やらなくてよい。これは巨匠の描いた花の絵をたくさん見ればわかることである。 

 これ以上言葉で書くと手垢のついた、薄っぺらな言葉になってしまう。とにかく疑問に思ったり、困ったりしたら、巨匠の作品に答えを求めるのがよい。そうすれば必ずそこに解答がある。

 花は画題としては確かにとっつきやすいが、手を出しやすい分(つまりどう描いてもそこそこの仕上がりになりやすい分)、奥が深い。そもそも何事も、一見簡単そうに見えるものほど奥が深いということになっている。

 何も人物画だけが存在や存在感を描くのではない。花だってそうである。「花を描いてこそ大家」みたいな言い方が日本ではあるみたいだが、それってどうなの? って思ってしまう。
 



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