アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

公募美術団体展の選び方

2017-03-31 06:20:16 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
 公募美術団体へ一般公募で出品するならどの公募美術団体を選ぶべきか。もし油絵を描いている人なら、ほぼ選びたい放題だと言える。しかし選択肢はたくさんあるものの、いざどれがいいかとなると、その判断は非常に難しい。どれも似たり寄ったりに見えるし、ちょっとホームページを見たくらいでは違いがよくわからない。

 油絵でなく、水彩画や日本画、あるいは版画や彫刻となると、その選択肢は非常に限られるので、ある意味選びやすい。大抵の公募美術団体は油絵が主体となっていて、水彩や日本画、版画も受けつけるというのが通例だ。したがって一般応募者としては、審査する側が油絵はともかく他の画材の場合、ちゃんと判断できるのかという一抹の不安があるのは事実。

 もし私が油絵以外のことをやっているなら、例えば水彩画なら、水彩画だけの公募美術団体に一般公募で出品すると思う。同様に版画なら版画だけの、日本画なら日本画だけの、彫刻なら彫刻だけの団体にすると思う。その方が無難だし、自分たちの専門分野だけに審査員に見る目があるのは確実だ。

 さて、ここで油絵での一般公募に限って考えてみると、どの公募美術団体にするべきかの判断基準のまず第一歩は、応募作品が具象画なのか抽象画なのかということだ。一般的には具象画に軸足を置いた上で、抽象画も受けつけるという感じなので、抽象画で勝負したいなら、抽象画が多く展示されている団体を選ぶべきだろう。

 私も調べ尽くしたわけではないので何とも言えないが、ひょっとしたら抽象画のみの公募美術団体もあるのかもしれないから、もしあるなら、そこに出すのがいいと思う。しかしながら、具象画が好まれる日本において抽象画に挑むというとき、敢えて具象画傾向の強い団体に出して勝負するというのも悪くないと思う。

 あとは出品作の大きさだろう。基本的に公募美術団体は大作志向なので、最低でもF50号を要求されるのも珍しくない。また小品も受けつけるとか言っておきながら、実際はよほど出来が良くないと入選しないという場合があるので、小品での応募を考えている方は、ちゃんと小品部門があるところに応募するのがいい。

 では油絵の具象画大作(例えばF100号)での応募の場合は、どうしたらいいのだろうか。どこの団体がいいのか。この場合は、会場、つまり上野の東京都美術館がいいか、それとも六本木の国立新美術館がいいか、また会期はいつがいいのか、春がいいのか、秋がいいのか、こういったことで条件が絞り込まれてくる。

 しかしながらこれだけではまだはっきりしない。そこで支部組織があるかどうか、もしあるなら自分の住んでいる地域に支部があるかどうかが重要な要素となる。支部入会の利点は、支部は支部で、支部展というのを年に1回か2回開催しているので、ここへ一般応募すれば、よほどひどい作品でない限り入選する。また支部に入会し、支部会員になれば、支部展へ出した作品は必ず展示される。つまり支部に入ることで、確実に年1回か2回、自分の作品を発表できるのである。これは大きい。

 上野の東京都美術館や六本木の国立新美術館で行われる年1回の公募美術団体展は、本部主催の展覧会で本展と呼ばれるが、これは一般応募しても選外、つまり落選することがある。この本展に一般公募で入選を繰り返し、その公募美術団体に入会を許され、所属したとしても、支部に属する必要はないから、その気がない人にとっては支部があるとかないとかは関係ないと言えば関係ないのだが、自分の住んでいる地域に支部があると何かと心強い。困ったこと、聞きたいことがあるときに役立ってくれる。

 私自身は本展に一般公募で出品し、本部入会(会友推挙)になってから、支部へ入会した。別にこれもごくありふれたことである。私が先に支部へ入らなかったのは、当初はその気がなかったからにすぎない。

 東京在住なら本展の搬入出も、自分でこなすことができるし、業者に委託してもその費用は安く抑えられるが、地方在住者なら業者委託せざるを得ず、またその費用も高くなる。東京在住者と比べ不利な、そんな地方在住者の味方となってくれるのが支部展である。地元で開催される支部展なら、家族や友人、知人にも見に来てくれと気軽に声をかけやすい。東京での発表と、地元での発表と、費用面では大変だが、なかなか贅沢な楽しみが用意されている。

 というようなわけで、支部のことも、どの公募美術団体を選ぶかの重要な要素となる。また支部では、皆近隣に住んでいるわけだから、交友関係も広がり、気の合う者同士でスケッチや美術館に行ったり、映画を見たり、酒を飲んだり、といったこともあるわけで、特に退職した方々には魅力的なはずである。

 最後に私自身の公募美術団体選びについて言うと、前に属した団体の経験を反面教師にし、とにかく会場は六本木(国立新美術館)ではなく上野(東京都美術館)で、会期は秋、出品作は小品も可であること(つまり小品部門があること)、そして支部は東京23区とそれ以外に分かれていること、といったことが条件だった。たまたまこの条件に合致したのが中央美術協会が主催する中美展だったわけだが、私が一般公募で初めて応募した年に、何と多摩支部がなくなっていたという、さすがにそこまではわかりませんでした。

 ちなみに前に属した団体はどうやって選んだのかというと、実は六本木の国立新美術館へ企画展を見に行ったときに、その団体のチラシが置いてあり、どこも同じだろうと思い、そこに一般公募で出すことにした、つまりまさに適当に選んだだけでした。だから余計にその団体をやめて別のところを探そうとなったときには真剣でした。インターネットで各公募美術団体のホームページを見て回りました。ホームページの見やすさも基準の一つでした(意外と見づらかったり、不親切だったりするところが多い)。

 あとは実際に応募してみて入選するのかどうか、入選したときに会場へ足を運んでみて自分がどう思うか。何か気にいらないなら、次からは出さないことにし、他をまた探すのがいいと思います。

 付)思いつくまま書いてしまった感じなので、ちょっと何だかまとまりのない文章になってしまい、申し訳ない。公募美術団体選びについて一度ちゃんと書いておこうと思ったのですが、何かの役に立ってくれれば幸いです。

 注)入選者名簿、会員名簿を悪用した展覧会詐欺には注意してください。こうした名簿は個人情報なので各自が管理して流出はさせないものなのですが、誰かが名簿を業者に横流しした場合に、これを使って電話をかけてきて、雑誌や新聞にあなたの絵を載せませんかと話を持ちかけてくる。実際の紙面には縮小されたとても小さな写真が掲載されるだけなので実質的には詐欺行為です。

 こうした電話がかかってきたら、話を最後まで聞かずに断ること。いきなり電話を切って一向に構いません。とにかく相手にしないこと。脅してくるなら即電話を切るべし。それで何も問題ありません。しつこく電話してくるならその都度、電話を切ればいいだけです。

 重要)私の家にもこうした電話がかかってきたことが何回もありましたが、その都度撃退していました。これは私が最初に出品していた日本アンデパンダン展は驚くべきことに、出品者名簿を受付で外部に販売していたので、それで漏れたという。今では考えられないことです。個人情報保護法の施行を受けて、ようやくこうした外部への頒布をやめたという経緯があります。ですから、たとえ無審査とはいえ、この日本アンデパンダン展だけはお薦めしません。決して出品しないように。

 ちなみにもう電話はかかってこなくなりました。たぶんこれからもないでしょう。だからはっきり、きっぱりと断るのが大事なのです。とはいえ普通はこうした電話はかかってこないのでご安心を。名簿が何らかの形で外部に流出した場合のみ起こります。

 
 蛇足)後味の悪い記事になってしまい、申し訳ない。嫌な世の中ですが、こうしたことがあるということで。


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