※前回のヴェルディの記事はこちら(42節・大宮戦、2-0)
※前回の千葉の記事はこちら(42節・長崎戦、1-3)
<ヴェルディスタメン> ※()内は42節のスタメン
- 42節で出場停止だった深澤がスタメン復帰。
<千葉スタメン>
プレーオフ出場の4クラブのうち、3つが「オリジナル10」のクラブという運命の悪戯となった今季。
1回戦から必然的に直接対決が起こるのは避けられずという状況で、ぶつかったのは、J2歴が最も長い2クラブであるヴェルディと千葉となりました。
ヴェルディは2009年、千葉は2010年から、以降昇格出来ずという経歴。
ほぼ同じ長さ「J2沼」に沈む事となっていますが、その内情を軽く振り返り。
ヴェルディが初の降格となったのは、それより前の2005年の事で、当時の主力選手の一人だったのが現千葉監督・小林慶行氏。
降格という事態を受け、立ち上がったのがクラブレジェンドであるラモス瑠偉氏で、ファンファーレ付きで2006年から監督に就任。
しかし補強策(具体的には、永井秀樹氏再獲得により「ベテラン選手の放出」との矛盾が発生)が反発を招き、小林慶氏はじめ主力選手の大量離反を招く事となったのが崩落の序章に。
そして肝心のラモス氏の監督としての技量も疑問符が付くもので、それでも昇格を目指したために大補強を敢行する事となった2年間。
何とかJ1復帰を果たしたものの、その2008年(監督は柱谷哲二氏に交代)もシーズン途中に度々選手が入れ替わり。
身の丈経営の理念を忘却した結果、最降格を経て待っていたのは経営危機という具合に、文字通り降格=転落がイコールとなってしまいました。
以降建て直しに奔走し、小規模な中でのやり繰りを余儀なくされる事に。
一方の千葉、そのヴェルディの混乱期と同時期に、退潮著しいなか親会社の中で革新が。
旧古河電工からJR東日本へと経営の主導権が移ったものの、そのすぐ後にJ2降格となったのが2009年の事であり。
そしてヴェルディ同様「直ぐに昇格を」と焦ってしまったのがケチの付きはじめで、かつヴェルディとは異なり潤沢な資本を持っていたのが拙かったか。
毎年場当たり的なチーム編成となり、成績的にもPO出場→昇格出来ずという事を繰り返し。
最近はその資本の部分でも息切れしたのか、大補強も行えずJ2でも停滞する事となり。
経緯は違えど、「限られた資源の中でサッカースタイルを煮詰める」指向に落ち着いたのが良かったでしょうか。
今季からその方向に転換した(と思われる)のは千葉ですが、既にそうならざるを得なかったヴェルディも、その間は伝統のポゼッションスタイルを愚直に貫くといったスタイル。
そこに「強いチーム」としての肉付けを加え、呪縛を解かんとしている真っ只中。
J1への渇望感が勝るのはどちらか、といった戦いの結末の行方は果たして。
かくしてヴェルディのホーム(味の素スタジアム)ながら、千葉サポーターも大量に詰め掛け、世紀の一戦という雰囲気を創出してのキックオフとなりました。
持ち味のハイプレスの通り、ハイテンションぶりを入りから見せ付ける千葉。
前半2分風間のボール奪取からの攻撃、ヴェルディのゲーゲンプレスもいなして前進の末に、呉屋のポストプレイが林のチャージで反則となりフリーキックに。
左ワイドの位置からのキックで当然クロスを選択し、キッカー田口の中央へのクロス、ドゥドゥの頭を越えた奥で佐々木が脚で合わせにいき。
触れたかどうか不明ながらもそのままゴールに突き刺さり、千葉が先制かと思われたその刹那、主審の笛が鳴りオフサイドで無効に。
どうやらドゥドゥと佐々木の間に居た風間が対象となった(他の2人は映像で見る限りはオンサイド)ようで、プレーに関与したと判断されてしまい。
千葉の攻撃のスピード感は凄まじく、それを齎しているのは夏の補強で加わったドゥドゥ。
左サイドで裏抜けの脅威を与えつつ、日高とのポジショナルな崩しも出来るという、攻撃面ではまさに一騎当千な存在であり。
9分、左スローインをドゥドゥがポストプレイののち、繋ぎを経て日高の裏へのロビングに走り込み。
そして入れ替わりからシュートにいくという、彼のスピードが活きる攻撃となりましたが、稲見と交錯してしまい撃てず。
反則の笛も鳴らず、ドゥドゥ自身もこの後1分以上倒れ込む事となるなど踏んだり蹴ったりの結果となります。(ドゥドゥは起き上がりピッチ外→復帰)
ドゥドゥ復帰の直後には、ヴェルディも染野が田口との交錯で痛み、ピッチ外→復帰と同じ轍を踏み。
やはり大一番故に、デュエルの激しさも凄まじく。
そのスタイル故に、シーズン中は後半に失速する試合が目立っていた千葉。
この日もそれが懸念されるハイテンションぶりで、勝利には先制点が必須。
18分にカウンターに持ち込むも遅らされ、一旦GKまで戻して再攻撃ののち、右サイドで田口の裏へのミドルパスに田中が走り込んでクロス。
この低いボールを呉屋が脚で合わせシュートするも、GKマテウスのセーブに阻まれます。
それによるCKからも田口がサインプレー気味にボックス内遠目へクロス、後方から高橋が走り込んでのヘディングシュート(枠外)と、絡め手も使って先制を狙い。
守勢のヴェルディも、あわよくば失点というシーンを招きながらも慌てる素振りは見せず。
この辺りは、39節の同カードでの大逆転勝利(3-2)の他、最終節のような「明らかに悪い内容でも勝ちきる」ゲームを演じている自信から来るものでしょうか。
次第に千葉は、見木の遠目からのミドルシュートが多発(25分と30分、いずれも枠外)するという、中々得点を奪えない流れを描く事となり。
また1トップの呉屋も、ヴェルディのタイトな寄せに難儀し、倒されては怒りを露わにするシーンが目立つなど暗雲を呼び寄せる結果となった感がありました。
そして迎えた34分、GKマテウスの鋭いフィードを染野フリック→山田右へ展開→中原と繋ぎ、敵陣でポゼッションに入るヴェルディ。
逆の左へ展開ののち、森田の縦パスから一転して中央での崩しを選択すると、染野のフリックから狭い局面で繋いだ末に中原がエリア内へ切り込んでシュート。
ゴール右へと突き刺さり、実質2点差となる先制点を齎しました。
千葉はリードされた事で、攻めのリズムは一転して悪くなりパスが繋がらず。
最低でもあと2点という状況に、焦りの方が先に立っていた事が伺え。
こうなるとヴェルディの思う壺で、41分にはCK攻勢に持ち込み(いずれも右CK、キッカーは中原)、1本目はクロスの跳ね返りから森田縦パス→深澤入れ替わって右ポケットからシュート。(風間がブロック)
2本目はクロスが直接ゴールを襲う軌道となり、GK鈴木椋がパンチングで凌ぎ。
時間を使いながらあわよくば追加点という、理想的な流れを作ります。
早めに追い付かんと、無理に縦パスを差し込む攻撃も目立ってきた千葉。
そしてそれが追い打ちをかける結果となり、44分に縦パス→フリックの流れを谷口がカットして一転ヴェルディの好機に。
中原→染野→齋藤と素早く縦に運び、左奥で溜めを作った齋藤のクロスが上がると、ファーサイドで合わせたのは森田。
パスワークに絡まずに最前線まで上がって来てのヘディングシュートと、ボランチらしくない働きでゴールネットを揺らします。
これで2-0と、俄然有利な状況を得たヴェルディ。
一向に好循環を生み出せない千葉。
アディショナルタイムには、低いロングパスが風間に通って好機かと思いきや、ハンドを取られてしまい不発となり。
結局2点差で折り返す事となりました。
何とか反撃したい千葉は、ハーフタイムで呉屋→小森へと交代。
判定にフラストレーションを溜めていた感がありありだったので、当然と言える采配だったでしょうか。
ヴェルディのキックオフで始まった後半ですが、戻しを経てのロングパスが誰にも合わず。
その後もタッチに逃げるようなロングパスが目立つなど、ボールを捨てるかのような振る舞いが見られた立ち上がり。
それに伴い労せずして攻撃権を得る千葉は、最後方の佐々木の長いパスで組み立て。
後半4分にはその低いロングパスを小森がポストプレイで繋ぐという具合に、積極的に降りて攻撃を流動化させる小森の存在で糸口を掴まんとします。
消極的に映るようなヴェルディは、6分に敵陣でボールカットした森田が右奥を突き、佐々木を股抜きしてカットイン。
エリア内を突いたものの日高に倒されて奪われる(反則無し)と、一転して千葉のカウンターに。
佐々木縦パス→小森ポストプレイを経て、受けたドゥドゥがドリブルで推進した末に、追い越してきた小森へスルーパス。
受けた小森が左ポケットからシュートを放つも、林のブロックで防がれゴールならず。
試合巧者という評価を得ているヴェルディですが、この日はフィニッシュで終わるシーンが少ないのがかえって仇となった感があり。
前半は何度も千葉に決定機を作られていた事もあり、PO独特の雰囲気と合わさって「ボールポゼッションで時間を使う」振る舞いが出来ずにいたでしょうか。
3得点を目指すべく、怒涛の攻撃を仕掛ける千葉。
それは、10分以降ヴェルディが攻める隙を与えない程であり、逆に防ぎにいかんとして反則を膨らませてしまうヴェルディディフェンス。(14分にはポストプレイする風間を倒した谷口が反則・警告)
それでもフィニッシュは11分の風間のミドルシュート(GKマテウスキャッチ)ぐらいと膨らまず。
細かく繋いでポケットを突く、得点期待値の高い攻めを目指したものの、瀬戸際でのヴェルディの粘りが光る事にも繋がってしまい。
そして17分、燃料切れ故かドゥドゥと風間が退く事となります。(米倉・福満を投入、田中が右SH→左SHにシフト)
一方のヴェルディも20分に最初の交代、齋藤・山田→加藤・綱島へと2枚替え。
FW起用が板に付いてきた綱島、21分に千葉のロングパスをブロックするという前線の守備から好機を齎し。
左奥を突いた加藤のグラウンダーのクロスを合わせ、フィニッシュまで放った綱島。(佐々木がブロック)
フレッシュな前線により、専守という状況を覆します。
その後は中原の推進力によるカウンターのシーンも何度か見られ、千葉の後方を脅かし。
千葉は右サイドに米倉が入った事で、(彼に期待出来ない)突破では無くパスワークで前進する意識が強まり。
26分、田口が反則気味のチャージを受けながらもボールキープして右に叩いてから前進、米倉の手前からのクロスがブロックされるも尚も繋ぎ。
そして福満のスルーパスに抜け出す米倉、深澤のカットが入ったものの、エリア内へこぼれた事でかえって絶好のシュートチャンスに。
しかし放たれた米倉のシュートは右サイドネット外と、組織的な崩しも実りません。
31分に2度目の交代をする千葉、日高・田中→メンデス・椿へと2枚替え。(佐々木が左サイドバックにシフト)
攻撃の駒が次々と息切れしていくような入れ替わりで、時間も押し迫り早くゴールが欲しい状況。
そして33分、ヴェルディの攻撃が途切れ、こぼれ球を縦パスで繋いだのはCBの鈴木大。
これを福満フリック→小森と素早く運んでヴェルディの裏を突く事に成功。
エリア内中央から放たれた小森のシュートが、GKマテウスのセーブを掠めてゴールに突き刺さり、ようやくこじ開けた千葉。
残り時間は多くないながらも、希望の光を灯します。
千葉の失速癖が懸念されたものの、先程の深澤がカットしきれなかったシーン然り、ヴェルディの方がスタミナ面で不安が露わになってきた感があり。
セットプレーも多くなってきた事で、後方から田口中心の放り込みが多くなってきた千葉の攻撃ですが、それに対する守備も四苦八苦。
40分にはFKからの二次攻撃で、田口ロングパス→佐々木落とし→米倉でエリア内を突き。
ディフェンスに遭いこぼれた所を福満がミドルシュート(ブロックされCKに)と、形を作られながらも何とか凌ぎ。
この直後に深澤→平へと交代、左SBをテコ入れしたものの、それから直ぐに林が足を攣らせてしまう事態も生まれ。
田口に足を伸ばして貰いながら、プレー続行した林ですが、その2分後に再度倒れ込み交代となり。
これで奈良輪を投入し、平がCBへとシフト。
それだけでなく、綱島をCBへと回しての5バックシステム(3-4-2-1)を採り、文字通り逃げ切り体制へ移行しました。
なお奈良輪は最終ラインには加わらず、シャドーとして2列目の左に。(左ウイングバックは加藤)
千葉は43分に左CKから、田口ニアにクロス→鈴木大フリックと定番の流れを経て、佐々木のボレーシュートに綺麗に繋げ。
しかしふかしてしまい決められず、ビハインドのままとうとうATに。
鈴木大が前線に加わるパワープレイで、ひたすら後方からロビングを上げる攻撃に全てを託し。
GK鈴木椋のロングフィードを小森がフリック、浮いたボールをさらに米倉が落としと空中で繋いでいき、椿がダイレクトでペナルティアークからシュートを放ち。
しかしGKマテウスのセーブが立ちはだかり、スタミナ切れを隠せないヴェルディを押し込み続けるも最後の一刺しが物足りない結果となります。
その後は福満を下げたうえでメンデスも前線に加わり、2CBがともに上がるという総動員。
しかし最後までゴールを奪えず、ついに聴くのを避けたかった試合終了の笛が鳴り響く事となり。
ヴェルディが勝利で勝ち上がりを決め、泣いても笑っても後1試合。
決勝戦は国立開催という事でホームアドバンテージは薄そうですが、それでも順位でのアドバンテージは健在であり。
相手は清水とあり選手の力量差はハッキリしていますが、アイデンティティとなりつつある「良くない試合でも勝ちきる」力を発揮し、悲願の昇格に辿り着く事が出来るでしょうか。