<両軍スタメン>
- 愛媛ホームだが、↓とは逆のコートで前半スタート。
残り4試合で、とうとう昇格リーチまでこぎ着けた愛媛。
同時に優勝にもリーチで、勝利かつ2位・鹿児島の敗戦でJ3優勝の栄冠を手にするという今節。
以前にも述べた通り、1点差勝利が大部分を占める厳しい戦いを続けてきた今季。
その躓きは開幕節の岩手戦での大敗(1-5)とは良く語られる通りですが、13節・YS横浜戦の逆転負け(2-3、福田にハットトリックを喰らう)も正直精神的にくるものがあったでしょう。
それでもブレる事無く、昇格争いをリードする位置を保ち続け。
ここに来て4連勝と、ブーストのように2位以下のクラブを突き放して王手を掛けるに至りました。
そんな状況でのこの試合、同県の今治を相手にした「伊予決戦」で締められる事となるのか。
そのダービーの最初の決戦を前年観た際は、かなり今治の方にチーム力の差が傾いているような内容でしたが、現在の状況は逆転。
やはりどれだけ時間を掛けても、最後に立っていた方が勝者だという事を如実に表している感があり。
試合が始まると、昇格争いの渦中で後の無い今治がハイペースを掛け。
夏の補強で加わったヴィニシウスAのポストワークを利用して攻め上がり。
しかしそれは同時に、愛媛ディフェンスの激しいチャージによりフラストレーションも高めてしまう事に繋がります。
前半5分、右スローインのボールを収めにいったヴィニシウスA、小川のチャージを受けてロストし再度スローインに。
するとロングスローに備えて中央に戻る小川に対し、激しくヒートアップし詰め寄る一幕が発生するという具合に、早くも緊張状態に。
このヴィニシウスAをはじめ、千葉・土肥など補強を敢行した事(に加え、ドゥドゥをはじめとした個人昇格)により、前半とは異なる顔ぶれの前線となった今治。
監督交代も敢行する(高木理己氏→工藤直人氏)等、昇格チャンスを何とか掴まんとする立ち回りを見せていますが、残り試合的にかなり厳しいという現状であり。
10分にはゴールキックでのロングフィードから、ヴィニシウスAフリック→Mヴィニシウスドリブルという、それらが噛み合っての攻め上がりでコーナーキックに持ち込み。
そして2本目の右CK、中央へのクロスを千葉が前へ落とし、ヴィニシウスAが体勢を崩し低い位置でヘディングシュートを放ったもののオフサイド。
13分には反則を受けたのち素早いリスタートで再開、ミドルパスを収めたヴィニシウスAが千葉とのパス交換を経て右奥へ切り込んでクロス。
クリアされるも、彼と入れ替わるようにFWの位置に居たMヴィニシウスが左で拾い継続、ここからクロス攻勢を仕掛けます。
そして4本目のクロスは、目先を変えて下口が右サイド手前から入れる形となり、ニアで三門がフリックで合わせた先でMヴィニシウスが脚から跳び込みましたが僅かに合わず。
一方の愛媛、大一番でのプレッシャーか、攻撃では硬さが見られ中々好機を作れず。
ワンサイドに人数を掛けてのパスワークから、薄くなった逆サイドを突きたいというやり口は以前から変わらずも、サイドを変える事が出来ずに序盤は難儀します。
17分にゴールキックからショートパスでの繋ぎ、GKに戻されたのち辻が右へフィードを通し。
そして森下が裏へ一気にロングパスを通さんとしますが、エリア内に松田が走り込むもGKセランテスに抑えられ繋がらず。
22分には左サイドでこぼれ球を回収、今治のゲーゲンプレスに遭いディフェンスにこぼされるも、それにより再度繋いだ事で右へ展開する隙が生まれ。
そして曽根田が入れ替わりから前進せんとするも、山田に倒されてしまい好機とはなりません。(反則無し)
今治のハイペースは尚も続き。
ビルドアップの段階で下口が偽サイドバック的に位置取る、前線に運ぶと左サイドハーフの新井がボールサイドの右に寄って来るなど、流動性を高めてのポジショニングも絡め好機を量産していきます。
それでも先程のクロス攻勢よりは、得点期待値の高いポケットを突く方を優先させる攻撃を重視。
24分に右サイドを三門・Mヴィニシウスのワンツーで前進し、Mヴィニシウスがワイド→ポケットへのスルーパス。
走り込んだヴィニシウスAのシュートが放たれるも、サイドネット外側で惜しくも決められず。
押し込まれる愛媛。
時間が経つとともに徐々にペースを上げていき、33分には今治の最終ラインに対しハイプレスを掛けるも、照山に対する石浦のアタックは完全に奪いきれず。
パスを眼前でブロックしたものの下口に拾われ継続となり、左サイドを運ばれる(その後戻して作り直し)という具合に、依然として今治優勢に見えた試合展開。
しかし34分、クリアボールを繋ぎ左サイドを運んでいきCKを獲得、ショートコーナーを経てのクロスは実らずも二次攻撃。
その最中に森下が楠美にスライディングで倒され反則となり(楠美に警告)、絶好の位置での直接FKへと好機は移り変わり。
中央やや右寄りという位置からで、敵味方双方入念に壁を作る中、時間を掛けられて蹴られたキッカー茂木の直接シュート。
これが愛媛初のシュートであり、枠内を襲ったこのボールをGKセランテスがセーブと、折角の好機はモノに出来ず終わります。
徐々に愛媛が押し込んでいく中、カウンター狙いへと切り替えを見せる今治。
41分にはその通りの好機が訪れ、Mヴィニシウスロングパス→ヴィニシウスA前方へポストプレイと素早く運んだものの、千葉には繋がらず実りません。
すると愛媛が再び直接FKの好機を得たのが44分で、曽根田のカットインが山田に倒されての反則で、右ハーフレーンからのFK。
これをまたも茂木が狙ったものの、壁を直撃して今度も決められず。
結局前半はスコアレスで終わり。
ハイペースを貫いたような今治でしたがゴールは奪えずと、その懸念が膨らむ後半の展開が予想され。
他方、1時間前のキックオフとなっていた鹿児島の試合が終了し、0-2で琉球に敗北。
これで愛媛に今節で優勝の可能性が生まれる事となりました。
そして後半のキックオフ、愛媛ボールをすぐさま遮断した今治、前半同様のハイペースで仕掛け。
やはり消耗しきらないうちに決めたいという意思が表れていたでしょうか。
しかしその最中に転機が訪れ、後半2分に敵陣でボールポゼッションを高めんとする今治に対し、プレスバックした松田が楠美からボール奪取。
これでペースを反転させると、逆に愛媛がボール保持から好機に繋げ、左~中央での繋ぎを経て右サイドへ展開という得意手での攻撃。
シュートには繋がらずも尚も右スローインから継続し(この時点で3分)、谷本のエリア内中央への横パスを受けた石浦、ループシュートでゴールを狙いましたが惜しくも左へと外れ。
着実にゴールに近づく愛媛、そして続く4分でした。
森下のロングパスが跳ね返されるも、セカンドボールをさらに深澤がダイレクトでロングパス、これに走り込んだ松田が市原との競り合いを制して収めに成功。
そして左からポケットを突いた茂木のクロスが上がると、ヘディングで合わせてゴールネットを揺らしたのも松田でした。
流れを逆転させるディフェンス・ロングボールの収め・クロスのターゲットとほぼ全てをこなした松田、エースの名の通りの働きで大舞台での先制点を叩き出しました。
この際に着地際で楠美と激突し倒れ込み、不安視されましたが無事に起き上がり。
一方今治サイドは、楠美がそのまま交代となったのみならず、(シュートの際に)松田と競り合った市原が倒れた楠美の脚に激突してしまい2人倒れ込む事態となり。
楠美に代わって土肥が入り、市原(と松田)はピッチ外→キックオフ直後に復帰と、慌ただしく巻き直す事となりました。
10分には再び、中盤で反則を受けたヴィニシウスAが、(笛の後もプレーを続けんとした木村に対し)ヒートアップする一幕も発生してしまい。
今治は一気に流れが悪くなったという感じで、15分には最終ラインでの繋ぎでパスを受けた下口がスリップし、スライディングで確保しようとした所を山口を倒してしまい反則という絵図に。
その直後にはプレッシャーにいったヴィニシウスAが小川にアフターチャージをしてしまう等、中々冷静さを保てないシーンが続きます。
そして流れを変えるべく17分に2枚替え、千葉・ヴィニシウスA→松本・阪野へと交代した今治。
これによりMヴィニシウスがFWにシフトすると、直後のゴールキックでのロングフィード、阪野を越えてエリア内へ流れるボールにMヴィニシウスが猛然と走り込み。
蓋をする小川の後ろから足を伸ばし先っぽで触れるようにシュートしましたが、惜しくもゴール左に外れて同点ならず。
この訪れたワンチャンスを逃してしまうと、愛媛の攻勢を凌ぐ体勢を強いられ。
21分に左サイドで繋ぐ愛媛、今度は同サイドでやりきって茂木がカットインでポケット奥を取り、マイナスのクロスがニアサイドでフリーの松田へ。
しかし松田のシュートはミート出来ず流れ、尚も細かく繋いだ末に、エリア内でディフェンスに遭いながらの密集状態のなか谷本が抜け出し。
この絶好機で放たれたシュートもGKセランテスがセーブと、追加点を得られなかった愛媛。
その姿は、やはり1点差に留める神の力(?)が働いているかのようであり。
その直後に今治も、スルーパスで左ポケットを取ったMヴィニシウスのシュートをGK辻が足でセーブと際どい好機が生まれ。
何とか結果に繋がんと、24分に左スローインを素早く投げ入れて裏を突くなど、ハイペースを続けるものの実る事は無く。
31分に一旦攻撃が途切れるも、クリアボールを拾った谷本に対し松本が反則気味にボール奪取。
ここから右ポケットを窺いながら細かく繋ぎ、ワイド奥から下口のクロスが上がり、中央でMヴィニシウスが合わせたもののGK辻がキャッチ。
33~34分に双方ベンチが動き、今治は下口・三門→冨田・上原へと2枚替え。
これにより新井がボランチへ、山田が逆の右SBへシフトとポジションチェンジも激しくなり。
一方の愛媛は、殊勲の松田がお役御免となりベン・ダンカンを投入します。(同時に石浦→矢田に交代)
何とか絶好機を掴みたい今治。
39分にGKセランテスのロングフィード一本からその場面は訪れ、阪野のフリックに走り込んだ上原がシュート。
先程のMヴィニシウスを彷彿とさせる流れでしたが、GK辻のファインセーブでこれも決められず。
続く40分、愛媛のプレッシングをかわしての最終ラインからの繋ぎで、上原のスルーパスで裏を取った阪野がシュートするも、惜しくもオフサイド判定に引っ掛かり不発となります。
何度か訪れる危機を防ぎながら、「その時」に着実に接近していく愛媛。
45分にベテラン・森脇を投入し(谷本と交代)、7分と長くなったアディショナルタイムに向けて最後の踏ん張りに入り。
最早全員攻撃という感じで押し込む今治。
左からの冨田のクロス、そのままゴールラインを割るかという所で松本がスライディングで繋ぎ、山田を経由して右ポケットのMヴィニシウスへ。
そしてシュートが放たれるも山口がブロックで防ぎ、右CKというタイミングで残っていた交代カードを全て使う愛媛。(曽根田・茂木→深堀・大城)
新たなDFを投入と、5バックシステムで逃げ切りを図る、その前にCKの凌ぎ。
GKセランテスもターゲットに加わると、キッカー松本はそのセランテスの居る中央へクロス。
ここはクリアボールをさらに繋ぐも結局実らず。
その後再度訪れた右CKの際も、同じく上がって来たGKセランテスを狙ってのクロス。
今度はクリアボールを新井がミドルシュートにいくも、枠を大きく外して終わってしまいます。
尚も諦めずに攻め上がる今治、左サイドを冨田が前進するも、蓋をされた木村の粘りのディフェンスの前に止められ。
反則を受けて倒れるも、勝利を確信したかのようにうつ伏せのまま地面を叩く木村。
そしてFKで再開の直後、試合終了を告げる笛が鳴り響き。
愛媛が1-0で逃げ切り、J2昇格ならびにJ3優勝を確定させる勝ち点3を手にしました。
選手・スタッフ総出(+オ~レくん・たま媛ちゃん・伊予柑太)で歓喜の輪が作られた、愛媛のホーム・ニンジニアスタジアムのピッチ内。
J2復帰を果たしたのは大分・栃木・北九州(その後再降格)・群馬・熊本と、その数も膨らみつつありますが、来期以降はDAZN放映権料も無くなり更なる苦労が予想されるJ3リーグ。
その瀬戸際での昇格は、皮肉にも降格時(2021年)のスローガンだった「原点回帰」の精神の如く、(2014年以来)再就任した石丸清隆監督の下で成し遂げられる事となり。
再びJ2の道を歩み続けるには、接戦続きの現状からギアを一段上げる事が求められると思われますが、まずは喜びをかみしめるべきでしょう。