※前回の大分の記事はこちら(38節・ヴェルディ戦、0-1)
※前回の群馬の記事はこちら(41節・千葉戦、1-2)
<大分スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 下平隆宏監督の今季限りでの退任が決定。後任は未定だが、前監督・片野坂知宏氏の就任が決定的との一部報道あり。
<群馬スタメン>
シーズン前に大胆……かどうかはいささか不明ながらも、リプランディングという名の方針転換を発表した群馬。
その成果は1年目で早くも表れ、組織立った戦いを貫いた結果、クラブ史上初と言っても良い昇格争いに絡む事となり。
残念ながら失速して果たせなかったものの、この試合に勝利する事によって、勝ち点60の大台に乗せるか否かという最終戦。
半信半疑だったこの政策、ならびに大槻毅監督の手腕も、明確なメッセージならびにスタイルで結果を出したとあり万々歳の一年に。一部で物議を醸したマスコット変更は結局破談になったようですが
翌年は新たな練習場も完成予定という具合に、浮上の機運は依然として高く。
そんな広がるクラブ規模を経て、今季物足りなかった得点力をどう肉付けしていくのかが本気で昇格を目指す壁となる事でしょう。
最終戦の相手は、他方目標である昇格を達成できず、(下平監督の)政権終了も内定しているという大分。
序盤は好調かつサッカーの内容も良好だったものの、本格的な昇格争いのなか次第にそれを失ってしまい。
そして昇格どころかプレーオフ出場すら果たせずと、前年から下降線というシーズンに。
そんな曲線の到達点であるホーム最終戦は、不調ぶりを感じさせない入りとなりました。
序盤から左サイドを徹底的に攻め、藤本の奥への切り込みのみならず、左肩上がりのシステムで高く上がる高畑にスムーズにパスが通るのが起点となり。
それに味付けを果たすのが左インサイドハーフの弓場で、ビルドアップの段階から高めの位置を取る事により群馬の右サイドを下げる役割。
つまりはピン止めという作業で、ワイドの2人を存分に活かす下地を作り上げていました。
前半5分、弓場のそのオーバーラップにより下がった群馬を突き、高畑→藤本と経由する左サイドアタック。
ここからクロスを左右連続で上げる攻撃の末に左コーナーキックを得ると、キッカー保田のクロスが手前でディフェンスに当たるも、中央で長沢が合わせ。
コースが変わった事により肩で合わせる格好となったこのシュートが、ゴールバーを叩く惜しいものとなり。
これを幕開けとして、ひたすら群馬ゴールを脅かし続ける流れを得た大分。
12分には右から野嶽縦パス→長沢収めてポストワークという中央→左への展開で、例によって高畑→藤本と経由ののちポケット奥まで切り込む藤本。
そしてマイナスのクロスが流れた所、渡邉のダイレクトパスを経て保田の強烈なシュートが放たれるもGK櫛引がセーブ。
15分に今度は香川の持ち上がりが起点となり、高畑が奥からクロスを上げると、上がっていた弓場がファーサイドでヘディングシュート。
これもGK櫛引がセーブと、守護神の凌ぎに頼らざるを得ない状況を強いられる群馬。
何とか攻撃機会を得て一息付きたい群馬ですが、お馴染みの3バックへ可変してからのビルドアップも、それに対し大分3トップが絞って各人に対応。(当然ボランチへのパスコースは切られる)
何度か左ワイドで持った杉本がそのまま自陣でカットインと、大胆な動きを経ての繋ぎが大分の意表を突くといった程度で、アタッキングサードまで運ぶ道筋を中々得られず。
そんな流れ故に、必然に見えた大分の先制点は24分。
敵陣で保田のボール奪取からの繋ぎで、一旦戻して右サイドから隙を窺う体勢を作り。
ペレイラ・保田がパス交換を繰り返す事で、保田に付いていた平松が僅かに前に出た所を、ペレイラのパスからその背後を保田が持ち上がりと見事にそれを突き。
そして野嶽のクロスが上がり、長沢がヘディングシュートで仕留めるという綺麗な締めでゴールに辿り着きました。
尚も苛烈に攻め続ける大分、28~29分には例に漏れない藤本の左での突破からのクロス(グラウンダー)、クリアされるも拾って尚も継続。
左サイドでの数多な繋ぎからの戻しを経て、ハーフレーンから渡邉エリア内へパス→弓場ポストプレイという崩しを経て、渡邉のエリア内からのシュートがゴールを襲い。
しかし左ポストを直撃と、今度は枠に助けられた群馬。
試合を支配されつつある群馬ですが、手をこまねいている訳では無く、何とか前線からのプレッシングで流れを断ち切りにいき。
しかしGK西川を絡めてのビルドアップを巧みに貫く大分。
2センターバックを維持したままで、ボール奪取どころか後ろに重心をやる事(それにより弓場の上がりを抑制する事)もままなりません。
そして37分、ここも右から野嶽縦パス→長沢ポストプレイという、もう一つの定例に沿った攻めから左サイドに渡って前進。
高畑→藤本で奥を取ってクロスが上がり、ファーサイドで弓場が合わせたもののミート出来ずタッチへと流れ。
しかし判定は何故か大分のスローインとなり継続し、右から渡邉が鮎川とのワンツーでカットイン、そのままポケットからシュート。
GK櫛引が辛うじてセーブするも、中央にこぼれた所を弓場が詰めてゴールネットを揺らします。
当然ながら釈然としない群馬サイドですが、全体の流れが判定までも味方になってしまったでしょうか。
追加点を得た大分、尚も40分に右奥に追い詰められてのビルドアップとなったものの、パス&ゴーでワイドに開いて受け直すペレイラの巧みな動きでプレッシャーを脱出。
その姿に、リーグ序盤の素晴らしいサッカー(5節・千葉戦の記事)が蘇ったという事を実感するに至りましたが、それが昇格の可能性が潰えた後なのが皮肉でもあり。
未だシュートゼロで終盤を迎えた群馬、ロングパスを交えての攻撃でようやく流れを作り。
そして45分、そのロングパスを合わせにいった川本が香川のチャージを受けて反則となり、良い位置での直接フリーキックに。
左ハーフレーンという横位置で、選手配置でクロスを匂わせながらキックを蹴ったのは川本で、壁に当たって右に逸れた結果CKに。
クロスの跳ね返りを天笠がダイレクトでエリア内へ送り、平松折り返し→杉本ボレーシュートと繋げましたが枠外に終わり。
最終盤に2本矢を放った群馬でしたが、結局2-0のまま前半終了となります。
ハーフタイムで早くも動く大槻監督、杉本→山中へと交代。
浦和ユース出身者の「大槻チルドレン」は、新潟に個人昇格した長倉が有名となりましたが、第一号はこの山中であり。
迎えた後半戦、2分に敵陣中央で平松がボール奪取し、左から攻めた末にその山中がクロス(クリアされる)と幸先良い入り。
5分にもGK西川のフィードの跳ね返しから、素早く前進して山中のクロスと、采配の狙いを見せ付ける攻撃。
課題であろう弓場の上がりに対しては、佐藤亮がピン止めされる事を強いられていた前半から、天笠が付いていく事で解消を図ります。
それでも盤石とはいかず、まず襲い掛かったのが判定。
5分に保田のドリブルを正面から川本がスライディングで止めにいったものの、チャージとなってしまい反則・警告。
やや厳しい判定に見え、続く6分に今度は中盤でパスカットした天笠がその勢いのまま長沢に倒されての反則で、長沢に警告が付き出され。
最初の判定が、そのままカードの基準になったかのような流れを描きます。
すると大分に流れが傾き、再び攻め続けられる展開に。
9分、ここでは高畑が長沢狙いへのミドルパスを選択すると、セカンドボールを拾って中央から執拗に急所へのパスを送る攻撃。
そして2度目のクリアを保田がダイレクトでミドルシュートし、中塩がブロックした跳ね返りを拾った弓場がさらにミドルシュート。
エリア内の渡邉に当たるも、その渡邉がダイレクトで3本目のシュート(城和がブロック)と、三連撃を何とか防ぐ群馬。
こうして後半も、多少群馬の攻撃を受ける事がありながらも良好だった大分。
しかし16分に交代カードを使用し、弓場・藤本→野村・梅崎へと2枚替え。
良かった2人を退かせた事で、勢いが削がれる結果となります。
まあそれも、最終節故の何らかの思惑が絡んでの采配かも知れませんが。
弓場の位置に入った野村ですが、以降ビルドアップでは保田の脇でのプレーが目立ち。
つまりはドイスボランチ気味になっての繋ぎのスタイルで、オーソドックスな反面読まれ易い状況となってしまったでしょうか。
以降攻撃権を得た群馬、それに合わせるようにベンチも動き17分に佐藤亮→北川へと交代。(FWに入り、川本が左SHに・山中が右SHへシフト)
18分に川本の右→左へのサイドチェンジから攻め込み、アタッキングサードでクロス攻勢。
その後右奥からのスローインとなり、一旦奪われるも山中が即時奪回し、こぼれ球を北川がダイレクトでクロス。
これを香川がブロックするも、右腕に当ててしまった事で反則の笛が鳴り響きます。
エリア内なのでPKとなり、腕を畳んでいたか否か微妙なライン故に、猛然と異議を唱えた香川ですが得られたのは警告のみに終わり。
ともかく絶好機を得た群馬、キッカーは北川が務めてゴール左へシュート。
反応したGK西川の手を掠めてゴールに突き刺さり、1点を返しました。
1点差となったものの、依然として大分優勢は変わらず。
形は多少変わっても、22分に最終ラインからの繋ぎで群馬のプレッシングをいなして前進、サイドチェンジを絡めつつ好機を迎え。
右から野嶽のクロス、長沢が合わせにいくもこぼれ球となり、梅崎がシュートするも酒井がブロック。
跳ね返りをさらに保田がシュートしますがこれも城和がブロックと、先程の三連撃のような怒涛の攻めを必死に防ぐ群馬。
こうした凌ぎをプラスへ変換したい所でしたが、その後大分のラフプレー気味のボールキープにより、再度判定に悩まされる事態となり。
ピッチサイドから大槻監督の異議が激しく響く中で、群馬の反則で途切れた事によりピッチ内は騒然。
そんな現場から離れた所でも、長沢と酒井がヒートアップした末に主審に止められるなど、サッカー以外の部分で熱くなってしまいました。
カードは出ずに収まったものの、このタイミングで大分は選手交代、既に警告付きとなっていた長沢を退かせ。(伊佐と交代・同時に渡邉→中川へと交代、28分)
その直後の29分、左から中塩縦パス→平松ドリブル→川本と素早く運ぶ群馬。
川本の低いクロスがニアサイドの北川に収まり、そのままシュートが放たれましたがGK西川のセーブに阻まれ。
その後CKを二本続けたものの、途切れると再び大分ペースに移り、ワンチャンスを逃した格好となります。
伊佐投入後は、彼狙いのロングボールの割合も増やし、攻撃機会を確保しに掛かる大分。
何とか反撃の流れを得たい群馬、35分に平松→高木へと交代。
以降攻め上がるもののフィニッシュには辿り着けない流れとなり、41分にCKを得たというタイミングで最後の交代。
川本・天笠→畑尾・武へと2枚替えし、投入された2人による2トップで、高木がボランチに回る事となり。(さらに北川が右SH・山中が左SHにシフト)
その群馬の采配を受けて、大分もそのCKが反則で終わったのちに最後の交代。(42分)
鮎川→羽田へと交代し、羽田がリベロの位置に入る3-4-2-1での5バックシステムへとシフトします。
以降もフィニッシュを放てない群馬に対し、攻めのペースを落としながらも群馬のプレッシングをかわしていく嫌らしいスタイルとなる大分。
そのままアディショナルタイムへと突入し、後は逃げきるだけという段階。
しかしそんな中でも、敵陣でのキープの最中に突如ペレイラが上がっていき、エリア内でパスを受けんとした場面も見られ。
野村がそれを見て送ったパスはズレてしまい繋がらずと、実りませんでしたがカウンターを浴びなかっただけ良しと言うべきか。
そんな危ういか微笑ましいかという判断に苦しむ場面も作りながら、無事に2-1のまま試合を終わらせた大分。
敗れれば群馬に順位で抜かされる所でしたが、何とか回避に成功しました。