ぶらりドリブルの旅

ひたすらサッカー観戦がメイン

TV観戦 天皇杯 第102回JFA全日本サッカー選手権大会準決勝 ヴァンフォーレ甲府vs鹿島アントラーズ

2022-10-07 16:01:35 | サッカー視聴記(2022年その他)

<甲府スタメン> 3-4-2-1
GK 河田
RCB 須貝 CCB 浦上 LCB エドゥアルド・マンシャ
RWB 関口 DH 石川 DH 山田 LWB 荒木
IH 長谷川 IH 宮崎
FW 三平
<鹿島スタメン> 4-4-2
GK クォンスンテ
RSB 広瀬 CB 関川 CB 三竿 LSB 安西
RSH 樋口 DH ディエゴ・ピトゥカ DH 名古 LSH アルトゥール・カイキ
FW 土居 FW 鈴木

前回の天皇杯の記事ー 準々決勝・福岡vs甲府

苦しみながらも勝ち抜いて来た下位カテゴリのクラブ相手に、巨大な壁として立ち塞がる鹿島……というのは一昔前の話でしょうか。

ここ数年は国内タイトルとは無縁で、今季も優勝の可能性はこの天皇杯を残すのみ。
それだけならばまだしも、秋口から就任した岩政大樹監督の口から「常勝軍団の看板は降ろしていい」という旨のコメントが放たれるなど、何処と無くタイトルへの執着が失われつつある現状の鹿島。
ポゼッションスタイルに取り組んでいる最中(この日も放送席で幾度も語られていた)との事ですが、それは前年途中までにアントニオ・カルロス・ザーゴ氏が取り組んで頓挫した道でもあり。
結局そこに回帰してしまうのならば、ザーゴ監督のまま続けていた方が良かったのでは無いかという疑惑も生まれてしまうものですが、ともかく目の前に迫ったトーナメントを戦うしかないのが現場。
既にJ1クラブを3つ撃破する快挙を成し遂げており、更なる上積みを図る甲府相手に、そんな守りの精神状態ではいかに名門・鹿島といえど呑まれてしまうのではという不安を抱えながらのキックオフだったでしょうか。

その相手の甲府も、天皇杯を勝ち上がってきた代償は決して小さくありません。
前回の福岡戦の直後、中2日で挑んだ35節・大宮戦は、大幅なターンオーバーを余儀なくされた末に下位相手に完敗(0-3)で終わってしまい。
そこからリーグ戦では敗戦を続け、それを修正せんとフォーメーションも4バックへと弄る(4-1-4-1)など四苦八苦。
リーグ戦は残り3戦という段階で、未だ降格の可能性を残して挑む事となったこの準決勝。
それでも歩みを止める事は許されず、リーグ戦の前試合(39節・栃木戦、0-1)から1人入れ換えのみ(ウィリアン・リラ→三平)という、ほぼベストメンバーのスタメンを選択。

「勝利のためなら何でもやる」というのが、傍らからの鹿島のイメージ。
しかしその意識にナイーブになっていたのか、甲府は立ち上がりからラフプレーへの傾倒が目立ち。
特に鹿島・鈴木と対峙する事が多かった須貝は、彼を腕で止めに掛かるシーンが目立つなど、リーグ戦で裏を突かれる事が多い自身の弱点を隠すかのようにそんなプレーに染まってしまっていたでしょうか。

前半8分、鹿島のパス回しに対し今度は宮崎が鈴木に対してアフターチャージし反則。
これで右サイドからのフリーキックを得て、放り込みの体勢を作ったという所で審判団にトラブルが発生。
無線機の異常が起こったらしく、どうにかカバーせんと4人で協議を始め、一旦再開の運びとなったものの再度中断とせわしなく動き回る事となってしまいます。
結局5~6分程時間が費やされ、スタジアムの熱気も逸らされたような形になって再開。

鹿島は事前の情報の通り、以前よりボールポゼッションを高め、最終ラインから攻撃を組み立てていく立ち回りを貫き。
しかしそのままの状況では甲府ディフェンスの前に中々ボールを前に運べず、それをカバーするのが鈴木のポストワーク。
どんな場所にも降りて来てボールの出し入れを務めるその姿は、2020年の磐田・ルキアン(現福岡)がフェルナンド・フベロ氏の下でプレーしていたスタイルを彷彿とさせます。
しかしこうしたギャップを作らなければボールを運べないというのが、いかにも岩政監督が就任して日が浅いチームという現状を醸し出している風でもあり。
そして鈴木が下がる事により前線の火力が不足する、という表裏一体の欠点も付いて回る事となります。

ボールは支配するものの決して良好とはいえない。
そんなチーム状況を指し示すような鹿島の攻撃を尻目に、甲府はしっかり守りつつ相手の隙を伺うサッカー。
しかし普段のリーグ戦では主体的な攻撃を繰り広げているチームなので、それはカウンターと同意義という訳では無く。
20分、ゴールキックから短く繋いで右サイドで前進、鹿島の速いプレッシャーを受けつつも逆サイドで展開。
一旦は荒木のクロスが跳ね返されるも拾って継続、緩いパスワークを経て長谷川の縦パスで変化を付け、受けた三平のシュートが綺麗にゴールネットを揺らしたもののオフサイドでノーゴール。
このシーン以外にシュートは皆無だった(公式上オフサイドで取り消しなので実質ゼロ)ものの、相手に番狂わせの可能性は十分突き付ける事が出来たでしょうか。

33分にようやく記録上の初シュートを放った甲府(長谷川がエリア内中央からシュート・枠外)ですが、その間にパスミスから危機を招いたり、カウンターから鈴木のミドルシュートが炸裂(枠外)したりとJ1相手に苦戦は隠せず。
鹿島はいけるという手応えを感じたのか、36分にこの日初めて3枚での最終ラインでのビルドアップを取り始め。
そしてサイドバックを前に行かせる事で、3-1-6というような形を取る攻撃時の布陣。

しかしその矢先の37分でした。
甲府は最終ラインから右で前進する姿勢を経て、一旦戻したのちに最後方の浦上から一気にロングパス。
これが綺麗に鹿島最終ラインの裏を取った宮崎に渡り、そのままGKと一対一に持ち込み、クォンスンテを右にかわしてからシュートを放った宮崎。
大金星への道筋となるべき先制点を挙げました。

押し込む姿勢を見せた途端、ビハインドとなってしまった鹿島。
その狼狽ぶりは、以降ひたすら裏狙いのロングパスに終始する攻撃に表れ。
その消極的姿勢を甲府は見逃すはず無く、強まるプレッシングに対しビルドアップもままならなくなります。
そしてアディショナルタイムに突入するかという所で好機を作る甲府、最終ラインから鹿島のプレスをかわして攻め、右サイドでリーグ戦ではお馴染みの須貝・関口の二段構えでの前進からクロス。
合わずに流れるもエリア内左で荒木が拾い、浮き球でマイナスのクロスが入れられた所に長谷川が合わせ、鹿島・三竿のブロックでこぼれた所を宮崎が追撃のボレーシュート。
2点目か、と思われましたが今度はGKクォンスンテがセーブ。
前述の審判団のトラブルで長くなったAT、その後鹿島もシュートチャンスを作ったものの、流れを覆すには至らず。
1-0と甲府リードで折り返す事となりました。

挽回したい鹿島、ハーフタイムで交代カードに手を付け。
土居・名古→エヴェラウド・仲間へと2枚替え、樋口がボランチへと回る布陣変更も絡め、勝負を賭けにいきました。

先に好機を作ったのは甲府で後半3分、右サイドを須貝がドリブルで長く運んだ末に、エリア内でパスを受けた長谷川がシュート。
ブロックされてCKを得るも、そこからカウンターを招きかけた所で、カイキのドリブルを腕で止めてしまった荒木が反則・警告を受け。

甲府の流れを堰き止めた事で、以降ひたすらボールを握る展開へと入る鹿島。
しかしそのパスワークは右サイドに偏り、しかもエヴェラウドというターゲットを得た事が、皮肉にも早めのクロスへと傾倒していく意識を生んでしまいます。
甲府の守備はその右サイドアタックを防がんと、鹿島右SB広瀬に対しては宮崎がチェックにいく体勢を作り、数的不利を作られないような立ち回り。

ここから鹿島のポゼッションスタイルの日の浅さが露呈する事となったでしょうか。
シャドーが広がる事で、甲府の前線の五角形の内部を容易に使える体勢が出来上がったはずでしたが、鈴木もピトゥカも右サイドでのプレーばかりが目立ち。
相手ボランチを困らせる位置でボールを受けるシーンを増やせれば、また違った結果になった気がしてなりません。
11分には右サイドからの前進で鈴木がボールを受け、対峙する甲府・マンシャが外を切りにいった事でエリア内が空いたという場面がありましたが、鈴木の判断は手前からのクロス。(クリアされる)
ここでエリア内に切り込むという判断が出来ないのも、普段の落とし込みが足りていない風に感じました。
14分には再びの右サイドアタックですが、広瀬に対し宮崎が行かなかった事で数的優位となり、甲府はマンシャが左へ釣り出され。
そして戻しを経てピトゥカが中央へと流れミドルシュート(ブロック)という好機。
相手のプランAが崩れた時にはこうしたフィニッシュに持っていけていたので、やはり能動的な崩しの形が不足、といった鹿島の攻撃だったでしょうか。

それでも押し込み続ける事で、CKも数多く獲得し好機を作る鹿島。
22分には例によって右からの組み立てを経て鈴木がクロス、ファーサイドでエヴェラウドがヘディングシュートを放つもGK河田がセーブして左CKへ。
そのCKでも、ショートコーナーからのピトゥカのクロスからエヴェラウドがヘディングシュート(GK河田キャッチ)と、投入されたヘッダーを活かし甲府ゴールを脅かし。
クロスのこぼれ球から三竿がミドルシュートを放つ(24分、甲府・浦上がブロック)など、クロス攻勢の副産物も目立ってきたものの、こうした直線的な攻撃は甲府自身もJ2で嫌という程見て来た成果でしょうか。(近年はJ2でも、主体的な崩しを展開するチームが増加傾向ですが)
ゴールを与える事無く守り続け、鹿島サイドとスタンドの鹿島サポーターに不安を与え続けるに至ります。(この日は甲府ホームという扱いながら会場は鹿島のホーム・県立カシマサッカースタジアム)

そして28分に甲府も交代カードを切り、荒木と三平に代えて野澤陸とウィリアン・リラを投入。
須貝が逆サイド(左ウイングバック)に回るというお馴染みの手を打つ吉田達磨監督。(最近は4バック故勝手が違いますが)

一方の鹿島も31分にカイキ→松村へと交代。
直後の32分に、左サイドでその松村が奥へとドリブルしてクロス、クリアボールを拾った鈴木がミドルシュート(枠外)という好機。
今までの右サイド偏重とは毛色を代えた攻撃に、状況打破の期待が掛かります。
しかしチームの硬直性は根強く、その後も右サイドアタック偏重は変わらない鹿島。

37分に甲府・リラの反則で鹿島のFKとなった所で、甲府は再度選手交代、山田・宮崎→松本・鳥海へと2枚替え。
そのFKは右サイド中盤という位置ながら放り込みを選択した鹿島、キッカー樋口のファーサイドへのクロスを関川が折り返すと、仲間がディフェンスに遭いながらもこぼれ球を強引にシュートしてゴールへねじ入れ。
同点弾に喜びを露わにした仲間でしたが、オフサイドを採られてしまいぬか喜びに終わってしまいます。
折角辿り着いたゴールも無効となり、いよいよ焦燥感が隠せなくなってくる終盤戦に。

その後、サイドハーフの位置を入れ替え松村が右・仲間が左となったり、41分の広瀬→キムミンテへの交代でフォーメーションも弄るなど試行錯誤を重ねる岩政監督。
<後半41分からの鹿島> 3-3-2-2
GK クォンスンテ
RCB 関川 CCB キムミンテ LCB 三竿
RWB 松村 DH 樋口 LWB 安西
IH ピトゥカ IH 仲間
FW 鈴木 FW エヴェラウド
三竿が兄(三竿雄斗・現大分)よろしく、左センターバックから高目の位置を取り攻撃に絡むなど、最後の攻勢を掛ける体制に。

しかしイレギュラーな布陣が災いしたか、逆に甲府の攻勢を生んでしまう事となります。
ボールカットから敵陣へと攻め込み、鹿島が何とかそれを凌ぐというまさかのシーンの連続。
44分には自陣でのミスを甲府・石川に拾われ、そのままリラに際どいシュートを放たれる(ゴール上へ外れる)機器も招き。

その流れを覆せぬままATへと入り、その後も甲府はリラのポストワークを絡め、巧くボールキープで時間を使う体勢へ移る盤石の試合運び。
何とかそれを断ち切った鹿島、キムミンテも前線に上がり文字通り最後の攻撃に。
しかし既に頼みはロングボールという状況で、エヴェラウド目掛けたロングボールがこぼれた所を、そのキムミンテが拾ってシュート。
運気に恵まれない中での乾坤一擲といったフィニッシュでしたが、GK河田のセーブに阻まれ同点にはなりません。

最後はリラがロングボールを収め、左サイドでボールキープの体勢に入った所でとうとう時間が尽き。
試合終了の笛が鳴り響くと共に、歓喜に沸く甲府メンバー・スタッフを尻目に、茫然自失といった鹿島サイド。
とうとう無冠で終わってしまった事態を受け、試合後もサポーターと相当揉める事となったようですが、それはまた別の話。

J2クラブの決勝進出は2014年の山形以来の快挙と、あと一つという所まで辿り着いた甲府。
例え勝利したとしても昇格出来る訳では無く、かつ来季はACLに挑むとなるとさらなる並行日程に悩まされる事となるでしょうが、ここまで来れば……という思いは何物にも代えられず。
果たして戴冠が浮上を齎すのか、あるいは束の間の栄光に終わるのか……という危惧はまだ早すぎるでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする