フライブルク戦終了後、マイスターシャーレを掲げる香川とドルトムントの選手たち
ブンデスリーガの全日程が終了した。第32節にドルトムントの優勝が決まったこともあり、上位陣にとって、最後の2節はやや気が抜けた感は否めなかった。それでも残留争いは最後までもつれ、ドイツメディアの関心もそちらに注がれた。
最終節に16位ケルンと17位ヘルタ・ベルリンが入れ替わり、古豪ケルンが自動降格してしまうという波乱もあった。もっともケルンはスポーツディレクターをつとめたフィンケがシーズン途中で去り、監督解任劇もあるなど、お家騒動的な見苦しい状態が続いており、メディアの視線も厳しいものがあった。ポドルスキーのアーセナル移籍も決定しており、来季はガラっとカラーの変わった戦いを見せてくれるだろう。
さて、今季ブンデスリーガで活躍した日本の3選手についてまとめておきたい。
まず、もっとも成長を見せたのは後半戦からシュツットガルトに新加入した酒井高徳で間違いない。コートジボワール代表のボカがアフリカネーションズカップで欠けたことから、1月中にチャンスがまわってくるかと思われたが、この時は指揮官のおメガネに叶わなかった。だが、2月11日の第21節ヘルタ戦に左サイドバックで先発出場すると、最終節まで連続フル出場を果たした。
これまでの日本人選手に比べ、圧倒的なチームへの適応力、コミュニケーション能力を見せ、ごく自然にプレイしている。まるで昔からこのチームにいた選手かのように、味方を叱咤、鼓舞し、スタッフや選手とともに喜びをぶつけ合う。同僚の岡崎慎司は「日本でのプレイはあまりよく知らなかったけど、こっちでは本当によくやっている。周りの選手だって、サイドバックがやりやすいようにと考えてプレイしているわけではないのに、その中で、攻撃の際のストロングポイントも本当によく出している。もしかしたらこっちのほうが向いているタイプなのかもしれない」と、感心しきりだ。
ミックスゾーンでの取材対応も礼儀正しく、物言いもハキハキしていて分かりやすく、ピッチ内外で高い評価を得ている。最終節ボルフスブルク戦でも2アシストと、逆転勝利に貢献した。
続いて高評価だったのは細貝萌だ。アウフスブルクのクラブ史上初の1部昇格に貢献した昨季よりも、今季はさらに中心選手としプレイ。前半戦は相手の布陣によってサイドバックなども経験したが、最終的にはボランチに落ち着いた。チェルシーに移籍を果たしたブレーメンのマリンや、シャルケのラウル、ドルトムントの香川真司ら、相手の攻撃の中心選手へのマンマークを命じられることもあったが、見事なまでに自由にさせなかった。ドローに持ち込んだホームのドルトムント戦では、キッカー誌のベストイレブンにも選ばれている。
もっともこのアンカー的なマンマーク、本人はお気に入りではないようで「もっと攻め上がりたかったりする気持ちを抑えて、ボールをさばくことと相手の攻撃の芽をつむことに徹した」などと、憮然とした表情で話すことも多かった。だが、後半戦のチームの安定した戦いぶりは細貝の活躍なくしてあり得なかった。1シーズン、ここまではっきりとチームの中心として過ごしたことは、彼にとっても財産になるだろう。監督の退任がすでに決まっているアウフスブルクに、細貝も残留しないことを早くも公言している。次の行き先は保有権を持つレバークーゼンになるのか、それとも……。
そして、なんといっても香川真司だ。1年目の活躍を遥かに越え、文字通りチームを優勝に導いた。苦しんだ前半戦は、ゴール前に入れない分プレイスタイルを広げ、今では中盤からの決定的なパスも彼の持ち味の一つとなった。13得点9アシストという数字以上にチームに貢献している。6日に発表されたビルト紙の今季のベストイレブンにも文句なく選ばれている。
ドイツ国内での注目度も高いことから、あいかわらす去就に関しては連日何かしら報道されている。日本のメディアに対しての発言もドイツメディアで取り上げられ、大きな話題になった。最終節当日には、「試合数時間前にできたツイッターのアカウントで、マンチェスター・ユナイテッド入りを明言した」などという英文の怪文書も出回った。もちろん本人は、これに対して「言っていないです」と断言している。12日のドイツ杯決勝が終わるまで去就については口にしないとしており、まだ先は読めない。
今季は尻上がりに調子を上げる日本人選手が多く、序盤に比べて華やかな印象でシーズンを締めくくった。来季はさらに数人の日本人が加わるのが決定的、とされている。ブンデスリーガで日本人がある程度通用することはもはや周知の事実。すでにドイツでの期待は高まっている。(スポルディーバ Web)