あすかパパの色んな話

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度胸満点の高卒ルーキー釜田佳直、快進撃の秘密。~名伯楽も認める楽天18歳右腕~

2012年07月19日 20時33分29秒 | コラム

星野監督から「最後まで勝負をつけてこい」と送り出され、プロ初完投で3勝目を挙げた。

「ウチの監督、日曜日は機嫌がいいんです。釜田(佳直)が投げると負けませんから。大した高卒ルーキーですよ」

 楽天の米村理コーチが明るく言った。今年の12球団の高卒ルーキーは38人。そのうち交流戦終了時まで一軍で生き残ったのはわずか3人、その一人が釜田だ。初勝利を挙げた5月27日以来、日曜の登板では釜田に負けがついていない。

 6月17日の巨人戦では、強力打線を5安打1失点に抑えプロ初完投で3勝目。高卒新人として巨人戦初登板での完投勝利は、'87年の中日・近藤真一以来、25年振りの快挙となった。

 そんな釜田にとって楽天の先輩・田中将大は特別な存在だ。'06年夏の甲子園決勝、駒大苫小牧・田中と、早実・斎藤佑樹の投げ合いをテレビ観戦していた中学生の釜田は、延長再試合が決まると、居ても立ってもいられず石川から甲子園に向かった。再試合を観戦後、その足で監督のところに出向き、「投手の方がカッコいいし、銭になりそうだから転向させてください」と申し出たという。以来、投手で甲子園を目指し、金沢高のエースとして3年の春夏連続出場を果たした。

ドラフト指名時、担当スカウトに「何故、1位じゃないんですか」。

楽天からドラフト2位指名を受けたときも、「何故、1位じゃないんですか」と真顔で担当スカウトに聞いた度胸の持ち主。星野仙一監督はかつて、“プロの投手に必要なのは、怖いもの知らずの強気の姿勢と負けず嫌いの根性、それに少々の運”と語っていたが、釜田はそのすべてを持ち合わせている。指導する佐藤義則コーチはこう語る。

「普通の新人であれば球速を気にするが、釜田は違った。田中のトレーニング法や調整方法ばかりを知りたがっていた」

 佐藤はエース田中に“優勝するために投手の駒が必要だから色々教えてやってくれ”と頼んだ。釜田の快進撃を支えているのは田中直伝のスライダーである。

「簡単に自分のものにしているのは、あいつが身体の使い方や鍛え方を学んでいるから。単なる18歳じゃない。俺たちは30歳くらいで考えたことだよ」と佐藤はその姿勢を評価する。そんなことからコーチ陣の間でついたあだ名は“とっちゃん坊や”。釜田はしみじみと言う。

「2位指名でも入った球団が良かったから、今があるんです」

 やっぱり、出来すぎの言葉を吐いた。(Number Web)



【プロ野球】中村紀洋、戦力外から掴んだ8年ぶりの球宴に懸ける思い

2012年07月19日 20時26分40秒 | コラム

ファン投票によって、8年ぶりのオールスター出場を果たした中村紀洋

2004年以来、8年ぶり8度目のオールスター出場を果たした中村紀洋(横浜DeNA)。ファン投票での選出は、実に10年ぶりのことだった。

「オールスターはもう難しいだろうと思っていましたけど、元気な姿を見せられる機会をいただきました。ファン投票で入れていただいたみなさんに、豪快なスイングを見てもらいたいです」

 オールスター明けの7月24日に39歳となる男の言葉に実感がこもる。振り返れば、オールスター出場の足跡が、中村の激動の野球人生を伝えている。

 4年連続オールスター出場(99~02年)の時期は、近鉄『いてまえ打線』の顔として球界を代表する打者にまで上り詰めた絶頂期。00年には本塁打、打点の二冠に輝き、01年も打点王を獲得し、リーグ制覇に貢献。年俸も5億円を超えた。しかし02年オフ、メジャー挑戦を表明し、ニューヨーク・メッツと契約寸前までいくも破談。ここからすべての歯車が狂っていった。

 一転、近鉄に残留したものの、ファンも周囲も反応は冷ややかだった。そこに故障も重なり、不本意な成績のまま、05年にポスティングシステムでロサンゼルス・ドジャースへ移籍するも、チャンスをものにすることができず、わずか1年で帰国。さらに翌年、古巣・近鉄と合併したオリックスに入団したが、故障をめぐる見解の相違から1年で自由契約となった。

 07年には育成選手からの再出発となった中日で復活を果たし、日本シリーズでもMVPを獲得したが、08年オフに国内FA権を行使して楽天に移籍。しかし、在籍した2年間で結果を残せず、10年オフに再び戦力外通告を受けた。

そして昨年、「育成でもいいから野球を続けたい」とひとりで練習を続けたが、4月、5月と時は過ぎ、さすがにここまでか……と思われた。しかし6月、横浜から獲得のオファーが届き、首の皮一枚で野球人生がつながった。それでも期待された一発は、交流戦でソフトバンクの杉内俊哉(現・巨人)から放った代打アーチの1本のみで、さすがに力の衰えを感じさせた。しかし、本人の思いだけは違っていた。

「『使ってさえもらえれば、もっとやれる』と、いつも言っていました」

 そう語ったのは、息子のたび重なる挑戦を見守り続けてきた父の洋二氏だ。その言葉通り、今シーズンは中畑新体制の下でスタメン出場の機会を掴むと、7月19日現在、打率.295(リーグ3位)、8本塁打(リーグ9位)、42打点(リーグ4位)と結果を残し、得点圏打率.352はリーグトップ。4月15日の巨人戦では西村健太朗から通算10本目となるサヨナラホームランを放ち、これは清原和博の12本、野村克也の11本に続く歴代3位。持ち前の勝負強さも健在だ。

 何度も崖っぷちに立たされながら、「絶対、誰かが見てくれているはず」とバットを置くことはしなかった。そんな息子について、洋二氏は次のように語る。

「とにかくアイツは野球が大好きなんです。自分には野球しかないとわかっているから、簡単に辞めるわけにはいかない。本当にその思いひとつでここまでやってきたんだと思います」

 子どもの頃、テレビを見る時も手はバットを握っているか、グラブがはめられていた。寝る時も、枕元にバットを置いているから、朝起きると「こんなところに置いとったら危ないやろ!」と母親によく怒られた。しかし、翌日も翌々日も同じことが続き、やがて誰も何も言わなくなった。

91年にドラフト4位で近鉄に入団してからは、強烈なプロ根性で戦い抜いてきた。入団1年目に打撃フォームの改造を首脳陣から迫られたが、頑(かたく)なに拒否。「打てるか打てないか、一度でいいから一軍に上げてください」と直訴し、巡ってきたチャンスで見事な一発を放った。それから若手の指導に定評があった水谷実雄氏の猛練習に耐え抜き、一気に頭角を現したのが90年代半ば。

 筋肉の裂ける音が聞こえるほどの肉離れを起こしても、患部をテーピングでグルグル巻きにしてバットを振り続けた。足の指を骨折した時も、スパイクの先を切り取って痛みを和らげ試合に出続けた。

 そんな中村が挑む8年ぶりのオールスター。近鉄時代から時間の許す限り球場へ足を運んできた両親は、「もちろん観戦します」と声を弾ませた。第1戦が行なわれる京セラドームは、かつて中村が頂点を極めた思い出の球場。当時を知るファンの前で、どんなプレイを見せてくれるのか。

「ヒットじゃつまらないでしょうから、全打席ホームランを狙って、思い切り振っていきたい。以前、オールスターで3試合連続ホームランを打ったこともあるので、今回も3試合連続で打てるように頑張ります」

 万感の思いを秘め、8年ぶりの夢舞台に立つ中村の豪快なフルスイングを堪能したい。(スポルディーバ Web)


【プロ野球】クローザーを苦しめる「統一球」と「3時間30分ルール」

2012年07月18日 19時20分49秒 | コラム

右ひざの故障によって一時、戦線離脱した日本ハムの守護神・武田久

今シーズンもここまで(7月15日現在)防御率1点台が7人、さらに前田健太(広島)、杉内俊哉(巨人)がノーヒット・ノーランを達成するなど、昨シーズン同様に『投高打低』の傾向は続いている。しかしその一方で、苦戦を強いられているのがクローザーたちだ。

 ヒジの手術により今季絶望となった久保裕也(巨人)と林昌勇(ヤクルト)。また、ファルケンボーグ(ソフトバンク)、武田久(日本ハム)、ラズナー(楽天)、藤川球児(阪神)らは、ケガによって戦列を離れた。残されたクローザーたちも、中日の岩瀬仁紀を除けば、守護神として芳しい成績を残していない。今年、多くのクローザーを苦しめている理由とは何なのだろうか?

「いちばんの理由は、勤続疲労でしょう」と語るのは、野球評論家の山田久志氏だ。

「毎年50~60試合以上も投げていればどこかに負担がかかり、故障してもおかしくない。藤川なんて、これまで何もなかったのが不思議なぐらい。そして統一球が導入されたことも、まったく無関係ではないでしょう」

 山田氏によると、統一球は従来のボールに比べ滑りやすく、これまで以上にボールを強く握るためリリースの瞬間、ヒジや肩に負担がかかるという。これに長年の勤続疲労が重なり、今年になって体が悲鳴を上げたというのだ。

 また、同じく野球評論家の与田剛氏は、これらの理由に加え『3時間30分ルール』を挙げる。ちなみに『3時間30分ルール』とは、昨年起きた東日本大震災による電力不足問題の節電対策として設けられた「3時間30分を過ぎれば新たな延長回には入らない」という特別措置ルールである。これがクローザーに与えた影響とは何なのか?

「例えばホームゲームの場合、9回表や10回表の守りで同点や1点リードされている場面でも、これ以上延長に入らないと判断すればクローザーを投入するケースが増えた。つまり、これまで勝ち試合限定で投げていたクローザーが、負け試合であっても登板するようになったということです。さらに統一球の導入によってロースコアの試合が増え、それも登板過多の原因につながっている」


ケガや不調もあって、どのチームの絶対的な守護神の確立に頭を悩ませている

そしてもうひとつ、『3時間30分ルール』でクローザーを悩ませるのが、「準備の難しさ」だと与田氏は言う。

「これまでの延長12回までだと、どういう場面で出ていくのか、ある程度予測できたと思います。しかし、時間との勝負になると展開が読みづらい。私もクローザーの経験がありますが、いちばん苦労したのが準備です。体も気持ちも100%の状態で、はじめて力が発揮できるもの。それだけ登板のタイミングというのは非常に大きな問題なんです」

 時間との戦いになれば延長に入るのか、入らないのかもわからない。そうした状況での準備は、想像以上の負担を強いることになるという。当然、このままではクローザー受難の時代はこれからも続いていくだろう。これらの解決策はあるのだろうか? 与田氏は言う。

「監督、コーチをはじめ、首脳陣にとってはすごく難しい問題だと思います。長い目でシーズンを戦っているとは思うのですが、目の前の試合は何としても勝ちたい。でも、それでは選手は壊れてしまう。だから、連投は2試合までとか、2点差以上は投げさせないとか、何か自分たちのルールを作るべきです」

 そして最後にこう付け加えた。

「マイナーリーグのあるメジャーと違い、日本のプロ野球は絶対的な人数が少なすぎます。ひとりケガをしたからといって、すぐ次の選手というわけにはいかない。それはチームだけの問題にせず、野球界全体で取り組んでいくべきだと思いますね」

 投手分業制となって久しいが、クローザーは常にチームの命運を握っている。それだけにどのチームもクローザーの確立に知恵を絞り、時間を費やしてきた。もちろんこれからも、そうした姿勢は変わらないだろう。ただ、これからは育て上げるのと同じぐらい、クローザーを守ってほしいと切に願う。(スポルディーバ Web)


【高校野球】ドラフト候補が目白押し。今年の東北は日本一面白い!

2012年07月12日 17時38分36秒 | コラム

今年のドラフトで1位指名が確実視されている花巻東のエース・大谷翔平

今年の「東北」はすごい! その証拠に、6月に行なわれた東北大会はおそろしく面白かった。この秋、ドラフト1位確実の逸材がいる。来年の全国クラスがいる。個性派がいる。職人がいる。普段は、見過ごされがちな地域だが、今年は違う。ひょっとしたら、いま日本一面白い地域かもしれない。

 今年のドラフトの目玉、花巻東のエース・大谷翔平(3年/193センチ 86キロ/右投左打)がいるから、レベルが上がったのだろうか。特に今年の岩手は、逸材が目白押しだ。

 春の県大会も、東北大会でも花巻東を倒した盛岡大付には、まず左腕のエース・出口心海(=でぐち・しんかい/3年/183センチ 80キロ/左投左打)がドーンと構える。スライダー、フォークを交えながら、130キロ後半の速球をカウント球にも勝負球にも使って、打者のヨミを外してくる。本格派でありながら頭脳派。手の焼ける投手だ。

 その出口を援護する打線は、おそらく東北ナンバーワンの強力打線。いや、全国でもトップクラスと評したほうが現実に近いだろう。1番を打つセカンドの千田新平(3年/172センチ 68キロ/右投左打)は小技も利くが、甘い球なら軽々スタンドに放り込む長打力も兼ね備えた驚異の核弾頭。3番・センターの佐藤廉(3年/183センチ 80キロ/右投右打)と、4番・サードの二橋大地(3年/178センチ 81キロ/右投右打)の長打力は圧巻。佐藤の140メートル級の飛距離と、二橋の破壊力と勝負強さは一見に値する。下級生にも、強肩と強靭なリストを持つショートの望月直也(2年/180センチ 74キロ/右投右打)、狙ってスタンドへ運べる菜花大樹(1年/176センチ 70キロ/右投左打)が6、7番に控え、下位打線にもうひとつの「クリーンアップ」を形成する。

 また、一関学院の鈴木匡哉(3年/178センチ 75キロ/左投左打)と佐野洋樹(3年/180センチ 76キロ/右投右打)のバッテリーだって負けちゃいない。鈴木は成瀬善久(ロッテ)になれる資質を持つ左腕。一方の佐野は、高校時代の城島健司(阪神)のような「オレを見てくれ」的なムードと押しの強さが妙に魅力。強肩と全身の連動でフルスイングできる打撃は、すでにプロのレベルに達している。

 大谷の存在感に隠れがちだが、花巻東にも光る素材は何人もいる。なかでも注目したいのが、ショートを守るリードオフマンの大沢永貴(3年/168センチ 70キロ/右投左打)だ。相手投手の立ち上がりのファーストストライクを強烈にピッチャーに弾き返し、オールローボールで好投を続けていた投手の唯一の失投をスタンドに放り込むなど、試合の流れを一気に変えられる選手だ。

青森には昨夏、今春のセンバツと2大会続けて「全国準Ⅴ」の光星学院。「東北の雄」とも称される強豪には、キャッチャーの田村龍弘(3年/173センチ 77キロ/右投右打)とショートの北條史也(3年/177センチ 75キロ/右投右打)のプロ注目のふたりを筆頭に、高い技術と勝負強さを兼ね備えた選手が居並び、全国でもトップクラスの破壊力を持っている。

 青森にはもうひとり、入学直後は光星学院の北条よりも注目を集めていた青森山田のショート・京田陽太(3年/181センチ 75キロ/右投右打)がいる。チーム内に不祥事があって必ずしも野球に集中できる3年間ではなかったかもしれないが、好素材であることに変わりはない。

 守備で魅せるのが、秋田商のショート・柳田一樹(3年/168センチ 68キロ/右投右打)。派手なことはしない代わりに、守備範囲に飛んできた打球をさばく精度は高校生離れしている。無駄な動きが一切ないコンパクトな身のこなしで捕球すると、鋭いスナップスローで一塁に送球される。ぜひとも球場で見てほしい選手だ。

 山形では、酒田南の会田隆一郎(3年/184センチ 86キロ/右投右打)と下妻貴寛(3年/186センチ 85キロ/右投右打)の大型バッテリーが、ここに来て調子を上げてきた。会田はフォームを見失い一時はどん底状態だったが、今春の東北大会で復調の兆しをみせた。頑健な体躯と強肩で早くからプロも注目していた下妻は、一見横着に見えるほど落ち着いた態度がいい。1年の時から注目を集めていたふたりだが、まだ甲子園の経験はなし。最後の夏にどんな結果を見せてくれるのか楽しみだ。

 今やすっかり甲子園の常連校となった福島の聖光学院。1番から長打力のある打者が並ぶ強力打線は健在だが、なかでも2年生スラッガー・園部聡(2年/181センチ 80キロ/右投右打)に注目したい。下半身主導による全身の連動で豪快に振り抜き、ミート力、選球眼とも文句のつけようなし。「一塁手じゃ厳しいかも……」という声もあるが、中村剛也(西武)のように和製大砲としてプロでも大きな仕事ができる選手と見ている。

 近年、聖光学院以外からなかなか逸材が出なかった福島だが、今年は久しぶりに公立の星が現れた。光南のエース・佐藤勇(3年/181センチ 75キロ/左投左打)は、140キロ前半の速球とスライダー、カーブで真っ向勝負する本格派左腕だ。順調に勝ち進んでいけば、準決勝で聖光学院と対戦する。そこで福島ナンバーワン投手の呼び声が高い聖光学院・岡野祐一郎(3年/178センチ 73キロ/右投右打)との投げ合いは見ものだ。

 光星学院が2大会続けて準優勝に輝くなど、東北勢悲願の大旗まであと一歩に迫ってきている。さらに今年は、プロ注目の逸材が目白押し。それだけに「今年こそ」の願いは、いよいよ現実味を帯びている。(スポルディーバ Web)


【高校野球】今年の東海地区は2年生にとんでもない逸材がズラリ!

2012年07月10日 20時22分22秒 | コラム

今春のセンバツでも好投したプロ注目の左腕、愛工大名電の浜田達郎

東海地区といえば、昔から「野球どころ」である。毎年、ザックザックと音がするほど大量の人材を輩出して、誰から見て回ろうと頭を痛めるほどだった。ところがここ数年、「量」において心細い状況が続いている。

 とりわけ愛知。3年前には中京大中京が夏の甲子園を制し、「愛知健在!」をアピールしたかに見えたが、一方で「テッペン」の存在を追いかけるべき「第二勢力」の迫力に欠けていた。こうした傾向は昨年、今年も続いている。東邦、享栄、愛知啓成、大府、豊川、至学館。今年は愛産大工業も評判がよく、こうした「第二勢力」の底力に期待したい。

 そして今年の「テッペン」は、やはり愛工大名電だろう。センバツ8強の原動力となったエース・浜田達郎(3年/183センチ 85キロ/左投左打)は、実績でいえば全国トップクラスの左腕。外角の制球力に、140キロ前後の速球とスライダー、スプリットとの緩急はすでにプロのレベルに接近しており、完成度は高い。あとは本人がどういう投手を目指し、どう取り組んでいくのか。

 愛工大名電の野手では、故障明けだったセンバツで素晴らしいプレイを連発したショートの佐藤大将(3年/173センチ 73キロ/右投左打)。小柄な選手だかパワーは抜群で、気持ちの強さもいい。高校から即プロへと進んでほしい選手だ。

 愛知からもうひとり、「隠し玉」的存在として注目しているのが、長身のアンダースロー・岩津の山田将司(3年/189センチ 79キロ/右投左打)。長いリーチをくねらせて、地面スレスレから投げる球筋はボールの高さの判断が難しく、打ち損じを誘う。一発勝負の夏、強豪校からしてみれば早い段階で当たりたくない投手だ。

 三重には愛工大名電の浜田と互角の素質を持った本格派左腕が最後の夏に挑む。松坂のエース・竹内諒(3年/179センチ 77キロ/左投左打)は、1年の時から投打に注目を集めていた逸材で、当時はまだ細かった体も懸命のトレーニングで別人のような筋力を身に付け、コンスタントに140キロをマークするまで成長した。さらに注目したいのがバッティング。ボールをとらえるタイミングのよさ、ヘッドが立った振り出しからの美しいスイング軌道で、外野の間を弾丸ライナーで抜いていく。

三重にはもうひとり「投」の逸材が潜む。ただし2年生。それが菰野(こもの)の浦嶌颯太(=うらしま・そうた/2年/182センチ 83キロ/右投右打)。彼をはじめて見たのは、まだ入学間もない昨年春の東海大会。そのピッチングを見た瞬間、「(作新学院時代の)江川だ!」と思った。稀代の本格派がすぐ思い浮かんでしまうほどの重量感あふれる体躯と球威。ベンチ上のスタンドから見ていると、ホームベース上でストレートがホップしているように見える。楽しみは来年も続くが、早く全国の舞台で見てみたい豪腕だ。

 浦嶌のバックを守るショートの辻東倫(=つじ・はるとも/3年/180センチ 76キロ/右投左打)の長打力と強肩も高校生離れしている。この先、股関節とひざの柔軟性がさらにアップすれば、プロでもショートのレギュラーを獲得できる素材だ。

 岐阜にも愛工大名電の浜田と並び称されていた左腕がいる。市立岐阜商の秋田千一郎(3年/181センチ 80キロ/左投左打)だ。しかし、今年の春は制球力に苦しんだ。ユニフォームがはち切れんばかりの筋肉が、かえって投球動作の自由を奪ってしまったのか。フォーム全体の躍動感やバランスが戻ってくれば、本来のスピード、ボールの質は十分に全国クラス。長打力、スイングスピード超高校級の「打」も兼備しており、最後の夏に復調を願っている。

 静岡なら静岡高のセンター・中澤彰太(3年/177センチ 80キロ/右投左打)の強肩と俊足は全国でもトップクラス。特に、いつでもカットできる高さで70~80メートル投げられる肩は「猛肩」と称したい。また、右中間、左中間の打球であっという間に三塁へ到達する「快速」。将来、プロでレギュラーを獲得するだけでなく、チームの中心選手として活躍が期待できる逸材。

 最後に、静岡の「隠し玉」をふたり。

 2年生ながら、すでに「県下ナンバーワン投手」と評されている聖隷クリストファーの鈴木翔太(2年/180センチ 75キロ/右投右打)。柔軟性と力強さを兼ね備えたフォームから、140キロを超すストレートにスライダー、フォーク。なによりストレート、変化球ともホームベース上での勢いが素晴らしい。虎視眈々と甲子園出場を狙っている。

 そしてもうひとりは、菊川南陵のスラッガー・大田圭利伊(2年/188センチ 90キロ/左投左打)。実はまだ2年だが、他校に1年通ってからの再入学なので、公式戦は今年の夏が最後となる。名前は「けりー」と読み、お父さんがナイジェリア人。一塁手を守る大田だが、均整のとれた体躯としなりの効いたアクションで、実に器用なグラブさばきでショートバウンドも難なく吸収してしまう。そして何といっても、注目すべきは長打力。変化球待ちのタイミングでも咄嗟にストレートに反応し、詰まり気味のインパクトなのに、軽々と右中間最深部まで持っていってしまう。そのスイングスピードだけでも多くの人に見てもらいたい、とんでもない「逸材」である。(スポルディーバ Web)


【高校野球】ピークは数年後。将来性豊かな実力派が揃う北信越

2012年07月10日 20時19分15秒 | コラム

今春のセンバツに出場した地球環境のエース・漆戸駿

野球に関して、北信越という地域は一見地味に思えてしまうが、松井秀喜(レイズ)を筆頭に、小松辰雄(元中日)、今井雄太郎(元阪急)、川藤幸三(元阪神)など、個性的で実力派の選手を数多く輩出している。

 さて、今年はどうだ。現時点で知名度はなくても、将来的に叩き上げのしぶとい生命力を持った選手になりそうな逸材が揃っている。

 石川には、入学当時から大型左腕として注目され、今年最終学年を迎えた星稜の森山恵佑(3年/186センチ 80キロ/左投左打)がいる。制球に苦しみなかなか試合を作れない状況が続いているが、高校生離れした球威が魅力。時間をかけてじっくり育てていきたい大器だ。

 また野手では、入学してすぐに「1番・ショート」の大役を任された野球センス抜群の遊学館・谷口一平(3年/172センチ 71キロ/右投左打)と、変化球も難なく芯で捉えてしまう超高校級のバッティング技術を持つ金沢のセンター・中村優作(3年/172センチ 72キロ/左投左打)。現段階でバッティング技術に関しては、全国でもトップレベルのふたり。この先、さらにスイングスピードを上げていけば、プロでも3割を打てる資質を持つ。最後の夏にどんな結果を出すのか、注目したい。

 富山で注目を集めるのは、高岡第一のショート・森本龍弥(3年/183センチ 84キロ/右投右打)。三遊間深くから一塁に矢のような送球ができる強肩と、ライナー性で120メートル飛ばせる長打力。北信越ではトップクラスの大型ショートに成長した。まだまだ伸びしろがあり、これからどれだけの技術を身に付けていくのか、非常に楽しみな選手だ。

昨年の春と夏、すでに2度の甲子園を経験している日本文理(新潟)のエース・波多野陽介(3年/176センチ 72キロ/右投右打)は、持ち味のスライダーがさらにキレを増してきた。コンスタントに130キロ後半をマークする真っすぐと、スライダーという絶対的武器を獲得したことで投球に余裕ができ、ますます攻略困難な投手に。さらに、入学時は波多野以上の評価だった田村勇磨(3年/178センチ 72キロ/右投右打)も、この春以降に巻き返しをはかり、強力な二枚看板が完成した。

 長野からは、今春のセンバツに出場した地球環境のふたり。エース・漆戸駿(3年/178センチ 77キロ/右投右打)の真っすぐはスピンが効いていて、スイングしたバットの上を通過する。高校生でこの球筋を持った選手はなかなかおらず、将来のプロでの活躍を予感させる。「4番・センター」としてチームをけん引する大滝勇佑(3年/182センチ 78キロ/右投右打)は俊足、強肩に加え、公式戦で長打を連発する勝負根性が面白い。

 そして福井は、福井工大福井の上野幸三(3年/185センチ 75キロ/左投左打)と菅原秀(3年/176センチ 73キロ/右投右打)の左右本格派が、センバツに出場した敦賀気比を苦しめそう。好調時はタテのスライダーで三振の山を築く上野に、この春メキメキ頭角を現し、主戦格に成長した菅原。どちらも大きな潜在能力を持った「これからの投手」。ぜひ甲子園の大舞台で見てみたい。

 最後に、2年生の逸材をひとりだけ。星稜のショート・北村拓三(2年/180センチ 75キロ/右投右打)は、来年のドラフトの目玉のひとりになれる選手と見ている。今年、亜細亜大に進み、春のリーグ戦からレギュラー格でプレイする兄の洋治とはひと味違うタイプ。俊足、強肩にスマートなプレイスタイルで、将来は巨人・坂本勇人のような中軸を打てる遊撃手になれる資質十分である。(スポルディーバ Web)


ブームは終われど格闘技愛は死せず。実は地方に根付いていた“格闘文化”。

2012年07月06日 06時14分59秒 | コラム

6月24日、イベントプラザ富山で行なわれた、『DEEP 野蛮人祭り』にてラストマッチを行なった地元、富山市出身のBarbaro44(写真・前列中央)。引退セレモニーには多くの関係者が集まり、引退に華を添えた。共にしのぎを削った北岡悟(写真・後列右端)も駆け付けた。

近年、日本格闘技界では地方興行が活発になっている。

 北海道の『BOUT』、愛知の『NAGOYA KICK』など定期シリーズが旗揚げ、名古屋では5月にK-1王者の名を冠した『ホーストカップ』も開催された。

 とりわけ地方進出に熱心なのは、DEEPの佐伯繁代表だ。

「47都道府県制覇」を目標に掲げ、大阪、名古屋といった大都市はもちろん静岡でも定期的に開催。また富山でのイベントも定着している。

 格闘技の場合はプロレスのような“地方巡業”ではない。主役となるのは、地元のジムで練習に励む選手たちである。彼らはこうした地方興行からキャリアを積み、後楽園ホール、そしてタイトルマッチを目指す。中にはUFC出場を目標にする者もいるはずだ。

“地域性ありき”の地方大会が地元選手の成長の場に。

6月24日、富山県・イベントプラザ富山で行なわれた『DEEP TOYAMA IMPACT~野蛮人祭り~』も、まずは“地域性ありき”のマッチメイクだった。ほぼすべての試合に地元ジム所属選手が出場。DEEPはMMAイベントだが、前半戦にはキックルールやキッズの試合も組まれていた。

 ジャンルを問わず、地元選手が経験を積む場所として機能しているわけだ。

 会場は街道沿いの倉庫を改装したとおぼしき展示スペース。場内ではTシャツなどのグッズだけでなく焼きそばとビールの売店も。

 いかにも地方、といった感じののどかな雰囲気。しかしここで行なわれる試合は、間違いなく東京での試合、さらには北米にもつながっている。

 若い選手にそう実感させてくれるのは、トップ選手の存在だ。この日、メインに登場したのはBarbaro44(バルバロフォーティーフォー)だった。

地元に愛され続けた格闘家、Barbaro44の引退式。

大会を運営するジム『クラブバーバリアン』の所属で、DEEPライト級の上位戦線で活躍。帯谷信弘、横田一則、菊野克紀といったタイトル経験者としのぎを削ってきた選手であり、現在UFCを主戦場とする小見川道大に勝ったこともある。

 今回は富山の格闘技シーンを引っ張ってきた彼の引退試合。日系ブラジリアンのLUIZに判定負けを喫してしまったBarbaroだが、興行のクライマックスはここからだった。

地域社会にしっかりと根付いた日本の“格闘文化”。

引退セレモニー。労いの花束や記念品を渡すためリングに上がったのは、実に21人。ジムの後輩、イベント関係者、スポンサー。東京からは、出稽古でともに汗を流した北岡悟も訪れた。地元にこだわりながら“中央”でも活躍したBarbaroならではの、そして地方興行ならではの引退セレモニーだったと言えるだろう。

 決して目立たない、大きなニュースにはならない地方興行での引退。しかしそれは、Barbaroと彼の仲間たちにとって最高の舞台だった。

 東京ではなく、五大都市でもない富山にも、格闘技を愛してやまない者たちがいる。ここで行なわれる試合は“世界”につながり、同時に“ここにしかないドラマ”もある。

 日本から格闘技ブームが去って久しい。しかし富山大会を見て感じたのは、この国には間違いなく“格闘文化”が根づいているということだ。(Number Web)



【プロ野球】「育てながら勝つ」。前期優勝、高津臣吾監督の次なる目標

2012年07月06日 06時08分07秒 | コラム

BCリーグ上信越地区で前期優勝を飾り、選手たちから胴上げされる高津臣吾監督

プロ野球独立リーグ、BCリーグ上信越地区で新潟アルビレックスベースボールクラブが前期優勝を決めた。今シーズン、選手兼任監督としてチームを率いる高津臣吾は、これまで何度も胴上げ投手を経験してきたが、意外にも自らが宙に舞ったのは初めてだった。

「長く野球をやってきましたけど、(胴上げされるのは)初体験なので、こういう経験をしっかりと味わおうと思ってベンチで待ってました」と、野球人生で初めての体験を笑顔で振り返った。

 高津が監督に就任し、最初に取り組んだことは、伸び伸びと野球ができる環境作りだった。これには、高校、大学時代の経験が大きく影響している。

「高校、大学の厳しい練習の中、どうやったら監督に怒られないか、どうやったら先輩に受けるかということばかり考えていた」

 自らが厳しい環境で野球をやってきたからこそ、選手には伸び伸びと野球をやらせてあげたい。萎縮せず、ミスを恐れないことで、より力が発揮できると考えているのだ。さらには、メジャーリーグでの経験も、少なからず影響しているのではと感じる。ただ、名球会にまで名を連ねる高津が、若い選手たちに、そこまで必要なのかと思うくらいの気遣いを見せる姿には、正直、驚かされた。

 前期、チームトップの7勝を挙げている阿部拳斗は、「『自分たちが狙っていることは、思い切りやってもらって構わない。それでミスしても何も言わない』と言ってくれるので、打者も投手も思い切りできますし、選手としてはやり易いです」と言う。途中で、高津監督から「調子にのるなよ~」のツッコミが入る中、活躍できた一番の要因を”環境”だと語った。

 しかし、ただやり易い環境を作るだけでは、選手の成長は望めない。そこで、高津が選手たちに伝え続けたことが、「1球バットを振って勉強、1球投げて勉強。全てにヒントがある。だから、まずは自分で考えて、考え抜いた結果、それでも解らない時には、聞きにきなさい」ということだった。

高校、大学時代、ずっと2番手投手だった高津は、どうすればマウンドに上がることができるのか、打者を抑えることができるのか、考えに考え抜き、厳しい境遇を自らの力で乗り越えてきた。プロ入り後も、一軍で投げるために、野村克也監督(当時)の考える野球を実践してきた。

 その考えは、しっかりと選手にも届いているようだ。

「考えてわからないことは、教えてもらっています。自分たちから聞きにいかないと、教えてもらえないので、積極的に聞きに行くようにしています。監督も、自分たちが積極的にいくというのを期待していると思うので……」と攻守の要である捕手の平野進也が話してくれた。

 高津は言う。

「考えることで、意志と意図が生まれる。チャンスに気付き貪欲に掴みにいけるか、チャンスを逃すか。最悪なのは、チャンスに気付きさえしないこと」
 
 誰よりも貪欲に自らの成長を追求し続け、チームの勝利に執念を燃やしてきた。そんな男が、勝利のために掲げた野球。それが、打者も投手も「つなぐ野球」だ。

 優勝のかかった福井ミラクルエレファンツとの一戦。3回表、先頭バッターがエラーで二塁に出塁し、無死二塁の場面。バントも考えられるケースで、9番の佑紀はヒッティング。センター前に運び、無死一、三塁とチャンスを広げると、続く1番の野呂がセンター前へタイムリーヒットを放ち、待望の先制点を奪う。さらに、無死一、二塁から打席に入った2番の平野もヒッティング。ファーストゴロの間にランナーがそれぞれ進塁し、3番の稲葉がレフトへの犠牲フライで1点を追加。続く4番の福岡がセンター前にタイムリーヒットを放ち、この回一挙3点を奪ってみせた。

 相手のミスから、ビッグイニングへつなげた、この場面こそ高津監督が掲げた「つなぐ野球」だった。特筆すべきは、優勝を決めるまでの31試合で、わずか7という犠打の数だ。これは、「投げていて、バントで1つアウトが取れると気持ちが楽になる。逆に、打ってこられるのは本当に嫌」という経験が根底にある。

 だからこそ、簡単にアウトは与えない。一死二塁よりも無死一、三塁を目指す、投手心理を知り尽くすからこその高津野球。メジャーリーグの大胆で魅力的なベースボールと、日本で実践してきた考える野球。自らが、経験してきた全ての野球を融合できた時に、高津野球は完成するのかもしれない。

 ただし、優勝を掴み取っても、まだまだ満足はしていない。高津は言う。

「打つ方に関しては、良くできていると思います。ただ、投手陣に関しては、もう一歩もう二歩足りないところがあるんじゃないかなと感じています」

 前期は、優勝を決めた試合までリーグトップの打率を誇った攻撃陣だが、一方で投手陣のチーム防御率は3.34。投手である高津としては、納得のいく数字ではなかった。

 ここからが、指導者・高津臣吾の腕の見せどころになってくる。

「NPBで若手を指導する以上に、教えるのが難しいかも知れない」と言いながらも、「難しい分、勉強になる。今は、それが最大のモチベーション」と、監督になっても向上心を忘れない。

 後期に向けて高津監督は何を考え、選手をいかに成長させていくのか。また、どんな新しい策でチームを勝利へと導いていくのか、興味は尽きない。

 さらに忘れてはいけないのが、高津は今も現役だということだ。マウンドで考え抜き、通算363ものセーブ数を積み重ねてきた男のラストシーズンと、選手とともに成長を続ける新人監督の姿を、ぜひ多くの人々の目に焼き付けてもらいたいと思う。

 最後に、高津からファンへのメッセージ。

「今年のアルビレックスの戦いは、本当に楽しんでいただける試合展開だと思いますし、サポーターの応援があって、選手が伸び伸び楽しんで野球ができていることは事実です。是非その声援を後期も、お願いしたいと思っています」(スポルディーバ Web)


甲子園で泣く選手は大成しない!?プロ入りした後の活躍を検証する。

2012年07月05日 06時25分26秒 | コラム

2009年夏の甲子園。6点リードした状態での9回表2アウト・ランナー無しから、高校野球史に残る怒涛の猛反撃をくらって降板した堂林翔太。極めて異例と言わざるを得ない、涙と反省の優勝インタビュー。

初めて聞く「価値基準」だった。

 ずいぶん前の話になる。プロ注目の高校生投手が、夏の甲子園で早々に負けたときのことだ。試合後、ある放送局の記者に「今、感謝の気持ちをいちばん伝えたい人は誰ですか?」と聞かれ、その投手は涙をこらえ切れなくなってしまった。

 よく見る光景ではある。うがった見方をすれば、テレビ取材でありがちな「泣かせるための質問」でもあった。

 すると、近くにいた記者が「幻滅した」と吐き捨てるように言った。いわく、「甲子園で負けて泣くようなヤツは、プロでも大成しない」と。

一流のプロ野球選手の多くが甲子園で涙を見せていない!?

そのときは、そういうものかと思いつつも、そんな見方に抗う気持ちもあった。涙にもいろいろな種類があるし、あまりにも杓子定規に過ぎると思ったのだ。

 ところが、そのとき号泣した選手は、大学、社会人を経て何とかプロ野球選手にはなったものの、時代を経るごとに輝きを失い、今では高校時代のスケール感はすっかり影を潜めてしまった。わかりやすくいうと、ぱっとしないのだ。

 それからというもの、心のどこかで、そんな視点で選手を見るようになった。

 負けたとき、この選手は、どんな表情を見せるのか――。

 近年で、もっとも大量の涙を流した選手といえば、'09年夏、準決勝で敗れた花巻東の菊池雄星(西武)だろう。

 慟哭。

 そんな表現がぴったりなほど、菊池は激しい泣き方をした。

 結論を下すのは時期尚早ではあることは承知の上だが、菊池も、前評判からすると、ここまでは結果を出せていない。

 確かに、プロで一流と呼べる成績を残している選手の多くは、甲子園で涙を見せていない。

甲子園で負けた瞬間でさえ笑う……堂々とした選手。

'92年夏、2回戦で5連続敬遠を受けて敗れた星稜の松井秀喜(レイズ)の泰然たる態度は今や語り草になっているし、'95年夏、準々決勝で敗退したPL学園の福留孝介(元ホワイトソックス)も驚くほど淡々としていたと聞いたことがある。

 実際に目撃した例でも、東北のエースだったダルビッシュ有(レンジャーズ)は、2年夏('03年)に決勝戦で敗れた時はそれこそ号泣していたが、3年夏('04年)は3回戦で最後の打者になったものの、見逃し三振をした瞬間、笑みさえ浮かべていた。

 '06年夏、早実との決勝戦で敗れた駒大苫小牧の田中将大(楽天)もそうだった。斎藤佑樹の真っ直ぐに空振り三振を喫し、ゲームセット。そして、打席の中で、やはり笑っていたのだ。

 彼らが泣かなかった理由――。

 悔いがなかったから。感情を制御できていたから。甲子園はあくまで通過点で、もっと先を見ていたから。だいたいそんなところだろう。

 2つ目と3つ目は、プロで活躍するのに必要な資質だ。そういう意味では、泣いてしまう選手は、やはりプロ向きではないのかもしれない。

甲子園で号泣した堂林翔太が、いま活躍している理由とは?

しかし現在、甲子園で号泣した選手が大活躍している。今季、広島のサードに定着している堂林翔太だ。

 高卒3年目の野手で、ドラフト2位ということも考えたら、ここまでの働きは二重丸をつけていい。

 '09年夏、日本文理との決勝を戦い終えた中京大中京のエースだった堂林は、お立ち台で泣きじゃくっていた。

「最後まで投げたかったんですけど……情けないんですけど……すいませんでした」

 甲子園史上、優勝して謝った投手など堂林が唯一ではないか。

 その試合の堂林は、先発しながらも調子が今一つでいったんライトに回っていたのだが、9回表、10-4と大量リードしていたこともあり再びマウンドに上がった。ところが、再び打ち込まれKO。その後、リリーフがしのぎ、チームは10-9で何とか逃げ切ったが、堂林の乱調で、あわや優勝を逃すところまで追い込まれてしまったのだ。

 プロに入って、彼の性格はどちらに転ぶのか。

 密かに注目していた。

単に泣くだけでなく「とにかくよく泣く」堂林の凄さ。

堂林は練習試合などでもよく悔し涙を流していたそうで、追いかけていたあるスカウトが、そんな堂林の涙に「妙に惹かれた」と語っている記事を読んだことがある。

 つまり、そのスカウトは、堂林のそんな性格を好意的にとらえていたのだ。

 そうなのだ。冒頭で紹介した選手も、決して「軟弱」だったわけではないと思う。ただ、純朴ではあった。

 涙を弱さと捉えると否定的な見方になりがちだが、泣くということは激しさの裏返しでもある。純粋でも、とことん純粋であれば、それはエネルギー源になるのだ。堂林は、まさにそんな選手だった。

 だからこそ、入団してから2年間、まったく一軍での出番がなかった悔しさをバネにし、3年目、ここまでの成績を残せているのだ。

 そう言えば、勝って大泣きした選手がもうひとりいた。'06年夏、やはり全国優勝した早実のエース、斎藤である。

 斎藤は、試合が終わり、応援スタンドにあいさつに行こうとした瞬間、普段は無口な部長に「お疲れさん」と肩を叩かれ、感情が一気にあふれ出してしまったのだ。

 彼の涙も、やはり激しさの裏返しだった。

「甲子園で泣く選手=プロでは成功しない」――。

 この法則は、まったく的はずれではないものの、やはり絶対的なものでもないのかもしれない。(Number Web)



【EURO】総括!実力的にスペインと遜色なかったドイツ、ポルトガル

2012年07月05日 06時16分41秒 | コラム

今大会の最優秀選手に選ばれたイニエスタ

2008年ユーロ、2010年W杯に続き、スペインを超えるチームは現れなかった。スペインが強すぎるのか。周囲が停滞しているのか。両者の比重は4対6。他国の停滞がやや大きかったと僕は見る。

 打倒スペイン。その1番手と目されていたドイツが、準決勝でイタリアに敗れたことが今大会一番のハプニングだった。ドイツとイタリア。スペインにとってどちらが嫌な相手だったかと言えばドイツになる。イタリアよりドイツの方がスペインの穴を突きやすいサッカーをしていたからである。

 スペインの3FWは、両サイドが中央に入り込む傾向がある。両サイドをサイドバック各1人でカバーすることになる。その背後を唯一最大の弱点にしていた。サイド攻撃を得意とするドイツに「期待」を寄せたくなる大きな理由だった。
 
 大会前の下馬評でも、ドイツはスペインに迫っていた。本大会の初戦でスペインがイタリアに引き分けると、ドイツとスペインの関係は逆転。一躍ドイツは本命の座に祭り上げられた。だが、両雄の直接対戦は実現しなかった。イタリアにそれを阻まれてしまった。

 必然、イタリアへの「期待」は高まった。グループリーグの第1戦でスペインに1-1で引き分けた実績も輪を掛けた。内容もあわやの期待を抱かせる、上々の出来だった。イタリアは世の中の声援を受けながらスペインとの決勝対決に臨むことになった。
 
 一方で、準決勝から中2日で望むことになった、その試合間隔の短さが危惧された。これにワルシャワからキエフへの移動が加わる。イタリアサッカーが決勝で全開する姿は、そういう意味では想像しにくかった。

注目はイタリアの布陣にも集まった。

 スペインの布陣は4-2-3-1と4-3-3の中間型だが、実際には前にも述べた通り、3FWの両サイドが真ん中に入る癖があるので、実際には、4-2-3-1をベースに布陣を言い換えると4-2-(1-2)-1になる。イタリアは第1戦でこれに3-5-2で対抗した。

 この場合、両軍のサイドアタッカーの数は各1人ながら、その位置はイタリアの方が高いことになる。サイドの攻防で優位に立ったのはイタリア。それが第1戦でイタリアが善戦した一番の理由だった。

 一方、準決勝でドイツに勝った布陣は、中盤ダイヤモンド型の4-4-2。決勝戦の3日前、イタリアは4-2-3-1のドイツに対して、スペイン戦とは異なる布陣で勝利を収めていた。

 この試合でイタリアは、表記上2トップの一角を占めるカッサーノが、絶えず左右に流れてプレイした。相手のサイドバックの背後に流れ、中盤ダイヤモンド型の4-4-2という布陣的には不足しがちなサイド攻撃を補う役割を果たしていた。そしてそれが功を奏した。先制点を奪ったシーンなどはその典型的な例になる。

 つまり、イタリアには選択肢が2つあったわけだ。ドイツ戦の流れ(中盤ダイヤモンド型の4-4-2)でいくか。初戦のスペイン戦(3-5-2)に立ち返るか。

 一方スペインは、準決勝のポルトガル戦で3FWの両サイドが、あまり真ん中に入り込まないサッカーを見せた。文字通り4-2-3-1と4-3-3の中間型でプレイした。試合が進み、メンバーチェンジを行なうほど、その傾向を強めていった。

 相手のポルトガルは強敵。サイドに穴を作りたくないとの思いが働いたからに他ならない。また、相手のポルトガルが、同様にサイドを固めてきたことも影響していた。3FWの左に位置していたC・ロナウドは、それまでは真ん中でプレイする傾向が強かった。その4-3-3の布陣の実際は、左の翼が短いサッカーだった。ところが、スペイン戦では一転、C・ロナウドは左のポジションを意識して守った。左右対称にこだわるバランス重視のサッカーをした。スペインもそれに従わざるを得なかったというべきだろうか。

 この事実と、準決勝でドイツを倒した流れから、イタリアのプランデッリ監督は中盤ダイヤモンド型の4-4-2を選択した。3-5-2ではきついと判断したのだろう。

 しかし、表記上では2トップの一角を占めるカッサーノは、決勝戦ではあまり左右に流れることができなかった。左右に流れるという行為には走力と体力が求められる。中2日、間もなく30歳を迎えるカッサーノに、これは酷な注文だった。前半終了とともに彼がベンチに下がった瞬間、イタリアの勝利は望みにくいものになっていた。

 ユーロの問題は、準決勝の第2戦を戦うチームが、決勝で日程的に極端な不利を被る点にある。この点を僕は大会前から指摘してきたが、結果的にはその通りになってしまった恰好だ。というわけで、大会後の印象は正直、いまひとつ晴れないものがある。

 だが、イタリアが中3日なら勝てただろうと言い切ることもできない。それでもスペイン優位は否めなかった。

 むしろもう一度見たいのは、スペイン対ポルトガル戦だ。0-0、延長、PK。終盤、サイドを厚くしたスペインが、ほんのわずか優勢に見えた試合だが、ほぼがっぷり四つ。ポルトガルの善戦を讃えたくなる。グループリーグで敗れたドイツ戦(0-1)にしても内容は互角。今大会で最もよいサッカーをしていたチーム。僕の印象ではそうなる。

 スペインの圧勝で幕を閉じたユーロ2012だが、実力的にはドイツ、ポルトガルもそれに遜色ないレベルにあった。「次回」が期待できるチームだ。だが、それに試合巧者ぶりを発揮したイタリアの4チーム以外は、どれもいまひとつという印象だった。2年前、4年前よりレベルを上げているチームは少なかった。例外はギリシャぐらいだった。

 中でも酷かったのはイングランドだ。ベスト8という成績だけを見ればギリギリ合格だが、内容に目を向けると、他国のことながら心配になる。いい選手がいないのだ。プレミアリーグは現在、スペインリーグと欧州リーグランキングで激しい首位争いを演じているが、代表チームの戦いに目を向けると、その不健全さが際立つ。自国の選手がリーグのレベルアップに貢献しているスペインと、外国人に頼っているプレミア。両者には著しい開きがある。

フランスも右肩下がりを示している。スペイン戦での負けっぷりは、かつての王者の威厳をもはや感じることはできない情けないものだった。アフリカ系の選手で固める弊害を見た気がする。フランスとは何か。少なくともフランス人らしい洒落っ気を、プレイの中に見いだすことができないのだ。

 負けっぷりという点で最も豪快だったのはオランダ。激戦のグループとはいえ、W杯準優勝チームの3連敗を予想した人はどれほどいただろうか。オランダらしいと言えばそれまでだが、新戦力が育っていないことも確か。過渡期を迎えている気がする。

 フランスとオランダ。しかし両者には決定的な違いがある。それは現地を訪れた観戦者の数だ。オランダは今回も、ドイツ、イングランド、アイルランドとともに、多くの観戦者を現地に送り込んできたが、フランス人の姿は対照的にごく僅かしか見かけなかった。出場国の中で最も少なかったといっても言い過ぎではない。これは前回のスイス、オーストリア共催大会でも目立ったが、その右肩下がりぶりは今回、いっそう顕著になっていた。

 その次に少なかったのはイタリア人。スタンドに応援団という集団を形成できない姿を見せられると、正直、優勝しそうなムードは湧いてこない。この準優勝で代表チーム人気は回復するだろうか。

 スペインはかつてフランス、イタリア以下だった。強そうなメンバーを揃えているのに勝てない原因は、その観戦者の数を見れば即、納得できた。それが前回あたりから急に数を増やし、今回は、優勝に必然を感じるほど多くの観戦者をウクライナ、ポーランドに送り込んできた。このスペイン人の変身ぶりには驚くばかり。これは永久のものなのか、一時的なものなのか。

 今大会の驚きを最後にもうひとつ。それはスタジアムの素晴らしさだ。どのスタジアムも急傾斜。見やすいのだ。モダンで快適。それがテレビでどれほど伝わったかは定かではないが、その場で繰り広げられているサッカーのレベルの高さ以上に驚かされた。ピッチの上の攻防を俯瞰で、 それこそ上から目線で眺めると、サッカーのゲーム性はより際立つ。この視点なしに、他の国が欧州の強者たちを倒すことは難しいのではないかと僕は思う。(スポルディーバ Web)