■GKに川口、FWに矢野を選出
W杯メンバー発表会見に臨む岡田監督(中央)、JFAの原技術委員長(左)、大仁副会長
登壇者:
大仁邦彌(日本サッカー協会副会長)
原博実(日本サッカー協会技術委員長)
岡田武史(日本代表監督)
大仁 ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の初戦まで、1カ月ちょっととなりました。日本代表は今回で4回連続の(本大会)出場となり、日々、期待と興奮が高まってまいります。本日、これから岡田監督より発表されます日本代表メンバーの決定で、いよいよ臨戦態勢が整うことになります。これから本大会、できる限りのいい準備をして、初戦で最高の戦いを展開してほしいと思います。南アフリカの舞台に立つ、選ばれたメンバーは、日本全国のサポーターやファンの熱い思い、そして国民の大きな期待をしっかりと受け止め、ベストを尽くして戦ってほしいと思います。ぜひとも皆さんの絶大なご声援をよろしくお願いいたします。
原 今回のW杯は南アフリカで開催されるということで、なかなか現地まで来て応援するというのは難しいかもしれませんが、現地まで来てくれるサポーターの皆さんは現地で大きな声を、そしてテレビで応援してくださる皆さんはテレビの前で、大きな声援をお願いします。その声援が、監督以下、選手にも必ず届くと思っています。
先ほど大仁副会長からお話がありましたように、今回で日本代表は4大会連続のW杯出場ということになります。W杯に出場し続けて、そして挑戦し続けること、それが日本のサッカーにとって大事なことだと考えております。昔、わたしが岡田監督とともに現役だったころ、W杯に出るというのは本当に夢でした。あのころはW杯はただ「見る」大会だったと思います。今は(日本が)W杯に出ない大会は知らないと、そういう世代の選手もいます。今回、岡田監督以下、日本代表を応援してもらって、みんながひとつになって、最高の結果を出すために全力で戦い切っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
最後になりますが、全面的に協力していただいたJリーグ、そしてJリーグ各クラブ、メディアの皆さん、さらにこういう厳しい状況の中でも支えて下さっているキリングループさま、アディダスジャパンさまをはじめ、日本代表の各スポンサーさま、放送局の皆さま、そして何よりも日本サッカーを愛し、応援してくださるファン、サポーターの皆さまに心からお礼を申し上げます。
岡田 それでは南アフリカのW杯を戦う23名を発表させていただきます。GK、楢崎、川島、川口。DF、中澤、闘莉王、今野、岩政、駒野、長友、内田。MF、中村俊輔、遠藤、中村憲剛、稲本、阿部、長谷部、本田、松井。FW、岡崎、玉田、大久保、森本、矢野。以上の23名です。
■矢野にはフィジカル、スピード、運動量を期待
岡田監督はリーダーシップを期待して、第3GKにベテランの川口を選出した
――23名を決めた今の率直な感想は?(以下、代表質問)
いよいよ、あとは本大会に向けて最高の準備をして、戦いにいくんだというスッキリした気持ちです。
――今回の23名を決めた選考基準は?
チームが目標に向かって勝つために、どういうメンバーがいいか。いろんなシチュエーションを想定して、どういうタイミングでどういう状況だったらどういう選手がいいのか、ということで決めました。そういう意味では、力のある選手を上から23名選んだというわけではありません。
――GKに川口を選んだ理由は?
川口には第3GKという非常に難しいポジションの中で、彼のリーダーシップ、この中で選手から一目置かれる彼の存在というものが、この大会を戦っていく上でどうしても必要だと考えて、彼を選出しました。
――DFでは岩政が選ばれたが、DF陣の選考ポイントは?
それぞれいろんな状況に合わせて使い分けていきたい。今までは(センターバックに)闘莉王、中澤の4バックでやってきましたが、彼らがもしけがというときには、ほかのやり方も考えなければならないということを想定しました。それとともに、われわれが勝ち点を取るということを考えると、最後に(相手に)パワープレーをされる可能性がある。そういうことに対する対応。いろんな状況を想定して、このメンバーを選びました。
――MFについては?
先ほどと一緒で、こういう状況になったら、どの選手が生きるだろうかと考えてきた上で、できるだけその役割がダブらないように、いろんな状況に対応できるように、ということでこのメンバーを選びました。
――石川、小野、小笠原が外れた理由は?
わたしとしては、今この23名を発表したと。ここに名前がなかったJリーガーはたくさんいます。選ばれた選手に対してコメントはできますが、外れた選手のコメントは避けたいです。
――FWで矢野を選んだ理由は?
彼の豊富な運動量とフィジカルの強さ。まあ、ドロー(引き分け)でいっているときに、彼を入れることでセットプレーの守備、そして前線での追い回し、またはカウンターアタックでの飛び出し(が期待できる)。粗さはありますが、フィジカル、スピード、運動量というものを期待して選びました。
■日本人らしいサッカーでベストを尽くす
――今まではメンバーを「70~80パーセント決まっている」と言っていた。100パーセント決まったのはいつか
最終的には今日の朝です。朝起きて、もう一度メンバーを見直して、自分に問い掛けて、「よし、これでいこう」と決めました。
――スタッフの会議では、メンバーを発表して情報を共有したのか
今日、11時というところを、みんな10時45分くらいに集まったので、その時点でこれはもう議論とかでなくて「決めた」とスタッフには伝えました。だから5分くらいで終わりました、ミーティングは。これ以上、議論することはなくて、僕のほうから一方的に言っただけです。
――メンバー選考で最も悩んだ部分は?
すべてのポジションで悩みましたし、何人かの候補でどっちにしようかということを非常に悩みました。どちらが上か下かなんて、誰にも決められないことだと思いますが、わたしの中で最終的には感覚的な面で「よし、こいつでいこう」というふうに決断しました。
――この23名でどんなサッカーを表現するか?
いつも言っているように、われわれ日本人がW杯で勝つために、攻守にわたりアグレッシブな、全員でハードワークする。そういうサッカーをやりたいと思っています。
――メンバー発表を楽しみにしていた全国民に向けて
今日、23名を発表しました。当然、けが人などで変更になる可能性もありますが、この23名をベースに、南アフリカで本当にいい結果、いい内容、日本人らしいサッカーをできるようにベストを尽くしていきます。ぜひ、応援していただきたいと思います。
■経験を積ませるために選んだ選手はいない
ロシアで新境地を開拓している本田について、「ものすごく大きな期待をしている」と語った岡田監督
※以下は、質疑応答
――所属クラブで負傷し、出場できていない川口を選んだ理由は?
今、けがで当面(プレー)できない選手は、稲本、玉田、川口だと思っています。けが人の状況はずっと追跡していまして、川口については練習試合もやっていますし、ほぼプレーは元のプレーに戻っていると。そういう意味で、次のナビスコ(カップ)あたりから出すつもりだという状況だったので、代表で集合するときには十分にプレーできると。
まずプレーの面ではそういうことを把握した上で、先ほど言いましたように、彼のチームにおける存在感、そして若い選手、経験のない選手を引っ張っていく力。今までチームキャプテンをしてきた彼なので、そういうことを期待しています。
――このFWの顔ぶれで、どうやって点を取っていくのか。また、直前合宿での一番の強化ポイントは?
点を取るならどんな形でもいいんですけど、当然われわれの武器であるセットプレーを大事にしていきたいですし、やはり早い攻撃というものが何回か出ていかないと、しっかり下がって守られたときに、カメルーン、オランダ、デンマークのブロックを崩すのはそう簡単ではないと思っています。その意味で、高い位置でボールを奪ったところからの早い攻撃というものを念頭に置いています。
これからの強化という面ですが、われわれにはいくつかの修正ポイントがあります。特にディフェンス面において、カウンターアタックに対する対処、カウンターアタックを受けない、あるいはロングボールに対する対処、そういうものをこの3試合(韓国、イングランド、コートジボワール)の中でチェックしていきたいと思っています。
――最近「ベスト4」という言葉が聞かれなくなったが、あらためて南アフリカで何を目指すのか。それから今回選んだ23名での実現の可能性は?
目標はまったく変えていません。ただ、その目標を達成するために、グループリーグを突破しなければならない。その中で一番大切なのはカメルーン戦だと思っています。その意味で、われわれはどんどん、そちらの方に頭が集中しています。そこから次のステップにいけると考えております。そしてこの23名で、われわれはそういうことを実現できると思っています。
――次の大会を見据えるといった、年代層を配慮した選考はあったのか?
残念ながら今回、そういう次の世代とか、経験させるためにということで選んだ選手は1人もいません。この大会で勝つために、何かしらの役割として必要な選手ということで23名を選んでいます。それ以外のサポーティングメンバーということで、経験をさせるメンバーを技術委員会と相談して、そちらのほうは経験をさせたいと思っています。
■本田の成長によって得点の可能性は大きくなる
――キャプテンは川口か中澤か? また副キャプテンは?
今、わたしの中には構想があります。ゲームキャプテン、チームキャプテンを分けることも考えています。ただ、まだ選手に発表する前に、ここで発表するのは妥当ではないと思いますので、選手に(合宿)初日に集まった時に話してから、お話したいと思います。
――岡田監督自身は2度目のW杯となるが、前回の経験を生かして「こういう部分をリベンジしたい」というものはあるか?
わたしは前回のリベンジのためにここに臨んでいるわけではなくて、日本というチームがどうしたら世界で通用していくんだろうということを考えて、常識というものを疑って、その中で勇気をもってチャレンジしていこうという形でやっています。前回大会のリベンジとか、そういうことはあまり考えておりません。
まあ2度目ということでプラスがあるとすれば、いろんなチームマネジメントの面で「こういう1カ月以上の戦いになると、こういうことが起こるんだな」とか「こういうことをしていかないと、サブの選手が練習もままならなくなってしまうんだな」ということは、いくつかあります。
――これから本大会において強豪国と戦うが、日本人がここだけは負けないというところがあれば教えてほしい
やはり日本の今のチームのいいところと言えば、やはり、表現が悪いかもしれませんが、ハエがたかるように何度も何度もチャレンジしていく、攻守にわたる運動量、切り替えの速さ、組織としてのまとまり、そういうものがわたしのチームの長所だと思っています。
――本田に期待する役割とプレーは?
本田はオランダからロシアに行って、かなりプレーが変わりました。本人とも話をして、そのポイントというものを聞きました。本人も自覚しているようです。その意味で、今の本田にはものすごく大きな期待をしております。彼が今、成長したおかげで、このチームには得点という意味で、可能性が非常に今までよりも大きくなった。そういう意味で、彼には得点に絡むプレーというものを期待しています。
――森本はこのメンバーの中で最も代表での経験が少ないが、彼には何を期待するか?
彼の特長はフィジカルの強さ、ゴール前での強引さ。そういうものを期待しています。スタートで出すかどうかはまだ決めていませんが、途中交代で出ても、ボールに向かっていく姿勢、またはボールを取る姿勢というところで期待しています。彼はランニングするコースが、下がってくるコースよりもボールに向かって走る量が長い選手です。これはうちのチームでも大きな大きなインパクトのあることだと思っています。
■メンバーから外した後も、ずっと川口を見てきた
――グループリーグ突破のための星勘定は? 以前はどの試合でも勝ち点を、と言っていたが
それはあまり変わっていないです。ただ、なぜ第1戦が大事かというと、(日本は)やはりまだ、アウエーでのW杯で1勝もしていない国。選手のメンタル面で、どこで勝ち点3を取ってもいいんですけど、やはりチームのメンタル面での状況を考えたときに、初戦で勝ち点を取らないと、チームがメンタル的にダウンするんではないかという懸念を感じています。
オランダは超一流だし、強いと思っています。しかし、勝ち点をまったく取れる可能性がないのかというと、可能性は低いかもしれないけれどあると思います。その可能性にチャレンジするのが、われわれだと感じています。
――カメルーン戦の前に3試合のテストの場がある。そこでは何をチェックするのか?
先ほどもちょっと話しましたが、今、われわれの修正点のポイントがいくつか挙がっています。今までの得点、失点を分析して、前からプレッシングしてやられたことは1点もない。しかし、取られた瞬間にポーンと裏に出されたときに、圧倒的なスピードの差で(やられている)。攻めているときは当然ラインが上がっていますから。そういう、いくつかの修正ポイントを、まず韓国との試合で1つ、2つチェックしたい。その状況によって、次の2試合のチェックポイントを検討していきたいと思っています。
――大久保を選んだ理由は? それからバックアップのメンバーは7名選んだうちの何名を連れて行くのか?(元川悦子/フリーランス)
大久保に関しては、けがとか、海外から戻ってきてなかなか彼の本領を出せない試合も多かったんですが、ここにきて本来の野性味というものが徐々に戻ってきたなという感じを得ています。やはりW杯で戦うときに、1対1のボール際で勝てなかったら、どれだけボールを回しても最後は崩せない。そういう中で、彼は一瞬のスピード、体の当たりの速さ、そういうものを持っている。そういうことで彼を選出しました。
それから若手のサポートメンバーと、登録メンバーの残り7名とはまったく別と考えてください。だから連れていくのは、この23名と、このあと技術委員会と相談して若手を4名くらい、ということになります。当然その中に、(予備登録を含めた)30名に入っている選手が含まれる可能性はあります。しかし若手で連れていくメンバー全員が30名に入っているかというと、そうでない可能性もあります。
――川口について、コンディションさえ整っていたら、以前からメンバーに入れようと考えていたのか?
彼については、まずレギュラーから外しました。で、彼と話し合って「それでもやっていけるか」ということで、サブで彼は代表にいました。そしてその後、メンバーからも外しました。その後、僕はずっと川口を見ていました。彼がどういうスタンスでプレーをするのか。そういう川口をずっと見ている中で、彼がけがをする前ですけど、彼がそういうものに耐えて、あくまで代表を狙ってくれるのであれば、最終的にそういう可能性もあるなと考えてはいました。ただ大きなけがをしたので、どうなるのかなと。ただプレーができさえすれば、その時の考えと変わりませんでした。
そういう意味で、最初から入れようと決めていたわけではありませんけど、彼のいろんな苦しい経験をした中での変化、そういうものを感じたので、最終的に入れることにしました。
――W杯後、監督の契約延長のオファーがあったら受けるか?
僕らの仕事は、そんな先のことまでは考えられないんですけど、おそらくやることはないと思っています。それ以上のコメントは控えさせてください。(スポーツナビ)