小林繁の訃報にふれて

2010年01月18日 08時48分24秒 | Weblog
小林繁氏の訃報に驚きました。

私が小さい時から野球バカの環境におかれ,
自然に自分も野球バカ道を歩むことになった話は
何度か書いてきた。
(’08,9,29「野球狂の詩」参照)

江川卓との三角トレードで小林が阪神に入団した時,
私は小学6年生だったかと思うのだが,
子ども心にも非常に衝撃を覚えた。
家族中が阪神ファンだったこともあり,
一途に「江川憎し」「小林は悲劇のヒーロー」
という,世間と全く同じ意識にどっぷりハマっていた。

また,彼らのヴィジュアルも大きく手伝っていたと思う。
小林は細身で男前。
江川は大きな顔と大きな耳。
そりゃぁ,どう見ても小林に分があったわな。

それに人間というものは,こういうはっきりした勧善懲悪ストーリーが
大好きなのだと思う。
弱い方に肩入れする,っていうか・・・
忠臣蔵なんて最たるもののように思う。

今から思うと「なんちゅう小学生女子やねんッ」と思うのだが,
その電撃トレード直後,新聞で小林が連載していた
(もしかすると,記者が書いてまとめていたのかもしれないが)
「男は泣かない」
という手記を,毎日スクラップしてノートに貼り,
何度も何度も読み返していた。
ね,変な小学生女子でしょう。

小林は阪神へ移籍直後,なんと22勝もあげ,
そのうち巨人からは8連勝もし,沢村賞まで受賞する,
という,小説や映画でもここまでならないほどの出来過ぎの活躍ぶりもあり,
「小林=ヒーロー」「江川=ヒール」
という構図は不動のものとなった。

しかし,私も大人になるにつれ,思いは少しずつ変わっていった。
江川の人となりが,彼の引退後の活動や言動でわかるようになるうちに,
「この人ってそんなに悪い人でもないんじゃないの」
という気持ちが大きくなっていった。

なんというか,非常にクレバーでユーモアもあり,
野球以外のことにもいろいろと造詣が深く,魅力的な人なのだ。

結局のところ,小林のみならず,江川もまわりの巨大な力に飲み込まれていった
被害者の一人なのである。
絶対巨人へ入りたい!!と駄々をこねまくった,
という人ではないのかもしれない。

数年前に黄桜のCMで小林と江川が共演するという大胆な企画があった。
今朝もワイドショーでそのCMを取り上げていて,久々に観た。
なんちゅうか,自然と涙が出た。
特に小林のコメント,
「二人ともしんどかったよな。」
にグッときた。
(これは台本ではなく,アドリブなのだそうだ。)
小林は決して「悲劇のヒーロー」と言う地位に溺れることがなかったのだ。
あの渦中の時も,その後もずっと。
自分だけがしんどいのではない,江川だってしんどかったのだ。
このことは,二人だけにしかわかりえないことなのだ。

あの騒動後,二人ともいらぬことは語らず黙々と自分の仕事をしていた。
それすらも,小林は「寡黙な男の中の男」とされ,
江川は「何を言われても動じないふてぶてしい男」とされていたが,
どちらも男の中の男だ!

周りがどんなふうに騒いでも,
自分のなすべき仕事をただひたすら黙々とこなす。
シビれます。
私も,そういう人になりたい。

御冥福を祈ります。合掌。
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2 コメント

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あなたという人は・・・・・ (会長)
2010-01-18 13:01:52
あさひさまの筆力が冴え渡る
記事でした。
あなたは正真正銘の「おっさん」です。
しかも野球狂の。

江川投手といえば
オールスターで9人連続三振の記録が
かかった2ストライクからの最後の1球に
直球を投げればいいのに
カーブを投げて
ゴロに仕留めてしまった場面を思い浮かべます。
詳しくはわかりませんが
解説者が これが江川らしい部分だと
嘆いていました。

小林投手はどうしても
さんまがその独特の投球フオームのモノマネをしていたことを思い出してしまいます。

いずれにしても若すぎる死です。
ご冥福をお祈りいたします。

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おいッ (あさひ)
2010-01-18 17:07:53
褒めとるんかーいッ
けなしとるんかーいッ
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