子どもの底力

2010年08月22日 13時57分31秒 | Weblog
私が仕事をしているのは某音楽教室。

6,7歳のクラスが昨日あった。
この5月から進級したクラスなので,
今,保護者からの自立をはかっているところ。
自立させる,というのは言葉で書くのは簡単だけれど難しい。
小学生になったからと言って,急に突き放しても,
子どもたちは何をどうしてよいかわからない。
だからと言って,いつまでも手とり足とりやっているのでは,
ずっとただ口を開けてエサを待つひな鳥のような子になってしまう。
毎年,進級させるたび,
最初の半年くらいは,かなり手間ひまがかかるのである。

そんな中,土曜日のこのクラスはなかなかいい具合に自立が進んでいるなぁ,と感じる。
私の投げかけにいろいろ考えをめぐらせながら,
自分の力であれこれ考えようとしている。
また,宿題に出していないことでも,自力でやってみよう,
という子もちらほら見え出してきた。

もしろん,それはムードメーカー的な存在の子がいるかいないか,
ということでもずいぶん助けられる。
このクラスには失敗しようが何しようが,
どんどんチャンレンジしてくれるKくんとM香ちゃんという子たちのおかげで,
他の子たちも徐々に触発されていっている。
子ども達どうしで育ち合っている,とでもいうか。

しかし,そんな中,いつもみんなの陰に隠れ気味の女の子がいる。
M子ちゃんという子。
彼女はみんなよりもひとつ年下。
そして体格もかなり小さい。
でも,お母さんの努力で,レッスンでやったことをきっちりと
お家で復習してきてくださるし,滅多にお休みもしないし,
母子二人三脚で頑張ってついてきてくださっている。
いや,三人四脚かな。
おばあちゃんも相当練習につきあってくださってるからなー。
本当に有難いことです。

余談だが,M子ちゃんのお母さんは土屋アンナに似ていて,
正直言うとかなり派手で初めてお会いした時は私は一瞬ひるんだのだが,
内面はとても几帳面で一生懸命なピュアなかたというのがわかって,
とても好感を抱くようになった。

さて,M子ちゃんは,自分の意思をなかなか表さない。
レッスンでもM子ちゃんの声を聞くことはあまりない。
もちろん歌を歌う声は聞くが,他の子のように私に何かを
話すことは全くと言っていいほどない。
私は何かM子ちゃんに質問する時でも,「うん」か「ううん」で
答えられる質問か,二者択一で答えられる質問しかしないようにしていた。
と言うのも最初むりやり答えさせようとしてひどくM子ちゃんが困ったので。

でも,いつもニコニコと楽しそうに参加してくれているので,
無理矢理しゃべらせることもないかな,と思っていた。
その子,その子のレッスンの楽しみ方ってあると思う。
M子ちゃんみたいに,他の子がやんややんやと話しているのを
じっと見ているのが楽しい子もいるのだろうと思う。

このクラスに進級してからみんなそれぞれ意欲的になってきて,
先程書いたように宿題に出してないところまで積極的にやってくる子どもも
ちらほら出てきた。
子どもというのは偉いもので,そういう仲間の姿を見て触発される。
週を追うごとに
「私,ここも弾いてきた!」
「僕,ここも歌ってきた!」
という発言が聞かれるようになってきた。
でも,そんな中,M子ちゃんだけは,まだ無言でニコニコと
お友達をみつめる側だった。

昨日のレッスンの中盤頃,歌のレッスンにさしかかったとき。
エレクトーンのまわりに子ども達を集めてさぁ,歌おうか,
と思ったその時,
「ワタシ,これ弾けるよ。」
と誰かが言った。

ん・・・・・?
今の声,聞きなれない声・・・
えーーーーーーーーーッ
M子ちゃんーーーーーーーー!!!!!
今,しゃべったの,アナタですかーーーーーー!!!!!

私,他の子ども達,後ろで見守るお母さん方,みんな一瞬「シン」となった。
ミウちゃんがしゃべったーーーーッ
ミウちゃんがしゃべったーーーーッ
と,私はまるで,ハイジが
「クララが立ったーーーーッ
 クララが立ったーーーーッ」
と叫んでいるかのように,心の中で叫んでいた。

歌唱の曲は弾いてこなくともよいし,そもそもそのような宿題は出さない。
しかし,この場合はスルーできない!!

「M子ちゃん!ほんと!これ,弾いてきたの!?
 お歌を歌ったら,弾いてみたくなったのかな?」
というと,M子ちゃんはまたいつものM子ちゃんに戻り
ただ,こっくりとうなずくだけだったのだが,
その顔は明らかにいつものM子ちゃんとは違っていた。
ややコウフン気味に頬が赤くなっている。
エレクトーンに座らせ(というか,小さいからよじのぼってる感じ)
弾いてもらった。

♪レソーシラ,レソーシラ,シドレシソラーレソー♪

M子ちゃんが小さな手で,それでもしっかりと弾いた。
おぉ・・・とみんなの声が漏れ,拍手喝采。
リーダー格の男の子,Kくんも「シドレシソのところ,すごくスムーズだった!!」
と,褒めちぎってくれた。

私は後ろで見守る土屋アンナを見た。
アンナも,その派手なメイクの目をまんまるに開けて
驚いている。
でも,本当に嬉しそうに顔をくしゃくしゃにしている。

いいなー,やっぱり子ども達のグループレッスンっていいなー。
心底そう思った。
仕事がうまくいかないときは,もう投げ出したくなってしまうこともたくさんあるし,
きれいごとばかり言ってられない時だってたくさんある。
でも,やっぱり,子ども達の底力ってすごい!!
そういう一瞬に立ち会えた幸せを噛みしめて,またレッスンを頑張ろう,
と思うことができた。

暑い夏のレッスンのひとコマでした。

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