終電で帰る途中、携帯をみると留守電にメッセージが入っていた。
再生すると、
「弟です。これを聞いたら連絡ください。」
何なんだろうと、家の駅に着いてから実家に電話した。
弟が出た。
なんかいつもと調子が違う。
「何?」
「なんだか最近ノイローゼ気味で、薬もらって生活してるんだ。」
「え?!」
弟は絵を描いたり、何か作ったりして、職は持っていない。
学生時代の大半を海外で過ごし、去年帰国した。
日本に帰ってきてから1年が経って、仕事もせずに(たまにバイトをしていたようだが)実家にいる。
最近自分でアトリエを造った。
親が持っている離れのようなところを改造して、掃除して制作に必要な機材を揃えて、これから本格的に制作活動に専念しようとしていたところだった。
それがなにやら最近、近くの高速の音、改造車のマフラーの音、工事をしている音、などの音が無償に気になるらしい。
だかが自分を殺しにくるのではないかという恐怖感に襲われるのだという。
こんな経験はしたことがなく、病院に行ってみた、というわけだ。
待ち合い席でも、地震のように視界がぐらぐら揺れたと言う。
「医者はなんて?」
「よくわからないから、とりあえず薬を飲んでみて様子をみようって。」
すぐに薬か。
弟の声はいつもと調子が明らかに違っている。
どこか浮ついているというか、力が無い。
なんだか宙を見て話をしているかのような声だった。
なんでもかんでも薬を飲ませるというやり方が、私は気に入らなかった。
「あまり飲んじゃだめだよ」
中毒になることを恐れたから、そう忠告しておいた。
でも、なにかいやなことがあると、気を紛らわそうとして飲むのだと言う。
今朝も両親がつまらないことで揉めていて、頭が混乱してきたから、麻酔薬のようなものを飲んで寝たという。
小さい頃から弟は神経質なところがある。
些細なことも、すべて受け入れてそれを自分の中で消化するという性格だ。
それが時に爆発して、私は包丁を向けられたことがあった。
家庭内の諸事情で、私も小さい頃からやたらと周りを気にしたりする性格だが、それは長女だからという理由を盾にしてなんとか切り抜けようとしてきた。弟はそんな私を知って知らずか、もっと気を使うような生活をしていた。
なんでも私と比べられていたのがストレスになっていたようだし。
帰国後、周りなんか気にしないで、我が道をいくんだ!と気を張っていた弟だが、最近はそうでもなくなってきているという。
ずっと田舎の小さな社会で暮らしていて、突然海外で生活することになり、青春時代の大半を過ごして帰国。
そんなもんだから、生活のギャップにまだ対応しきれないでいるようだ。
友達は仕事や家庭を持ったりで、相談できる相手もいないようで、なんだか寂しそうだった。
さすがに姉として複雑な思いもしたが、そこはやはり姉として対応したつもりだ。
もっと毅然として生活しないと駄目なのだろうか。
冷蔵庫の音が気になって眠れないので、今度外に出すのだと言う。
両親があまりにも放任主義なので、どう思っているのかわからないが、ちょっとした問題だろう。
わたしも仕事で一時ノイローゼ気味になったころがあるので、なんとなくわからないでもないから、話を聞いているとつらかった。
今仕事が辛い中、そんな身内の話を聞くと、いたたまれなくなってくる。
これから夏本番になろうというのに、なんだか心の中は霧の中のようだ。
ゆとりを持ちたい。
再生すると、
「弟です。これを聞いたら連絡ください。」
何なんだろうと、家の駅に着いてから実家に電話した。
弟が出た。
なんかいつもと調子が違う。
「何?」
「なんだか最近ノイローゼ気味で、薬もらって生活してるんだ。」
「え?!」
弟は絵を描いたり、何か作ったりして、職は持っていない。
学生時代の大半を海外で過ごし、去年帰国した。
日本に帰ってきてから1年が経って、仕事もせずに(たまにバイトをしていたようだが)実家にいる。
最近自分でアトリエを造った。
親が持っている離れのようなところを改造して、掃除して制作に必要な機材を揃えて、これから本格的に制作活動に専念しようとしていたところだった。
それがなにやら最近、近くの高速の音、改造車のマフラーの音、工事をしている音、などの音が無償に気になるらしい。
だかが自分を殺しにくるのではないかという恐怖感に襲われるのだという。
こんな経験はしたことがなく、病院に行ってみた、というわけだ。
待ち合い席でも、地震のように視界がぐらぐら揺れたと言う。
「医者はなんて?」
「よくわからないから、とりあえず薬を飲んでみて様子をみようって。」
すぐに薬か。
弟の声はいつもと調子が明らかに違っている。
どこか浮ついているというか、力が無い。
なんだか宙を見て話をしているかのような声だった。
なんでもかんでも薬を飲ませるというやり方が、私は気に入らなかった。
「あまり飲んじゃだめだよ」
中毒になることを恐れたから、そう忠告しておいた。
でも、なにかいやなことがあると、気を紛らわそうとして飲むのだと言う。
今朝も両親がつまらないことで揉めていて、頭が混乱してきたから、麻酔薬のようなものを飲んで寝たという。
小さい頃から弟は神経質なところがある。
些細なことも、すべて受け入れてそれを自分の中で消化するという性格だ。
それが時に爆発して、私は包丁を向けられたことがあった。
家庭内の諸事情で、私も小さい頃からやたらと周りを気にしたりする性格だが、それは長女だからという理由を盾にしてなんとか切り抜けようとしてきた。弟はそんな私を知って知らずか、もっと気を使うような生活をしていた。
なんでも私と比べられていたのがストレスになっていたようだし。
帰国後、周りなんか気にしないで、我が道をいくんだ!と気を張っていた弟だが、最近はそうでもなくなってきているという。
ずっと田舎の小さな社会で暮らしていて、突然海外で生活することになり、青春時代の大半を過ごして帰国。
そんなもんだから、生活のギャップにまだ対応しきれないでいるようだ。
友達は仕事や家庭を持ったりで、相談できる相手もいないようで、なんだか寂しそうだった。
さすがに姉として複雑な思いもしたが、そこはやはり姉として対応したつもりだ。
もっと毅然として生活しないと駄目なのだろうか。
冷蔵庫の音が気になって眠れないので、今度外に出すのだと言う。
両親があまりにも放任主義なので、どう思っているのかわからないが、ちょっとした問題だろう。
わたしも仕事で一時ノイローゼ気味になったころがあるので、なんとなくわからないでもないから、話を聞いているとつらかった。
今仕事が辛い中、そんな身内の話を聞くと、いたたまれなくなってくる。
これから夏本番になろうというのに、なんだか心の中は霧の中のようだ。
ゆとりを持ちたい。