夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』序論についての説明 一[知覚について]

2019年06月11日 | ヘーゲル『哲学入門』

 


Erläuterungen zur Einleitung

§ 1

Die Gegenstände sind das Besondere, was sie sind, durch ihre Bestimmung; ein sinnlicher Gegenstand z. B. durch seine Ge­stalt, Größe, Schwere, Farbe, durch den mehr oder weniger festen Zusammenhang seiner Teile, durch den Zweck, zu dem er gebraucht wird u. s. f. Lässt man nun die Bestimmungen von einem Gegenstand in der Vorstellung weg, so heißt man dies: abstrahieren.

Es bleibt ein weniger bestimmter Gegenstand oder ein abstraktes Objekt  übrig. Nehme ich aber in der Vorstellung nur eine einzelne solche Bestimmung heraus, so ist auch dies eine abstrakte Vorstellung. Der Gegenstand, in der Vollständig­keit seiner Bestimmungen belassen, heißt ein konkreter Gegen­stand. Abstrahlte ich von allen Bestimmungen, so bleibt mir bloß die Vorstellung des ganz abstrakten Objekts übrig. Wenn man sagt: Ding, so meint man wohl etwas Bestimmtes, aber man spricht von etwas ganz Unbestimmtem, da es unser Ge­danke ist, der ein wirkliches Ding zu dieser Abstraktion eines bloßen Dinges macht.

 

序についての説明

第1節[知覚について]

すべて対象とは、その/規定/を通して存在するものであり、特殊なものである。一つの感覚的な対象は、たとえば、その形体、大きさ、重さ、色彩によって、その部分の強くか弱くか結び合わされている固さによって、また、それらの使用される目的などによって存在するもので、いずれも特殊なものである。もし、人がその表象のうちにおいて、その対象からそれらの規定を取り去るとき、人はこのことを/捨象する/と言う。

そこにはわずかに規定された一つの対象が、あるいは/抽象的な客体 /が残されている。しかし、もし私が表象の中から、このようなただ一つの規定のみを取り出すとすれば、これもまた一つの/抽象的な表象 /である。
その規定において完全であるような対象は、/具体的な/対象と呼ばれる。もし私が/すべての/規定を捨象するなら、そこには私に全く抽象的な対象の表象が残されるだけである。

人が、//というとき、そこでは確かに人は何か規定されたものを/思い浮かべて/いる。しかし、人がまったく無規定な何かについて語るときに、そこで一つの現実の物を、一つの単なる物をこの抽象なものに変えてしまうのは私たちの思考である。

 

 Die sinnliche Wahrnehmung  ist teils äußerliche, teils inner­liche. Durch die äußerliche nehmen wir Dinge wahr, welche räumlich und zeitlich außer uns sind und die wir zugleich von uns unterscheiden. Durch die innerliche sinnliche Wahrneh­mung bemerken wir Zustände teils unseres Körpers, teils unserer Seele. Ein Teil der sinnlichen Welt enthält solche Ge­genstände und ihre Bestimmungen, wie z. B. die Farben, denen das Sinnliche zu Grunde liegt und die eine geistige Form erhal­ten haben.

Wenn ich sage: dieser Tisch ist schwarz, so spreche ich erstens von diesem einzigen konkreten Gegenstande; zwei­tens, das Prädikat schwarz, das ich von ihm aussage, ist ein all­gemeines, das nicht mehr bloß von diesem einzigen gilt, sondern mehreren Gegenständen zukommt.Das Schwarze ist eine ein­fache Vorstellung. — Von einem eigentlichen konkreten Gegen­stande wissen wir unmittelbar. Das unmittelbare Bewusstwer­den ist die Anschauung.


感覚的な知覚は、一方では外的であり、他方では内的である。
外的な感覚的知覚によって、時間的にも空間的にも私たちの外にあって、そして同時に私たちから区別される物を、私たちは知覚する。内的な感覚的知覚によって私たちは一方では私たちの身体を、他方では私たちの精神の状態を自覚する。感覚的な世界の一面は、このような(身体や精神の)対象を含んでおり、そして、それらの規定は、たとえば色彩のように、感覚的なものにその根拠があり、そして精神的な形式をすでに含んでいる。
「この机は黒い」と私が言うとき、私は最初に、この単一の具体的な対象について語っている。次に、私がそれについて表現している述語の「黒い」は一つの普遍的なものであり、それはもはやただ単にこの単一のものにだけに通用するのではなく、むしろそれ以上のさまざまな対象について当てはまるものである。黒は一つの単純な表象である。⎯ 一つの実際の具体的な対象については、私たちは直接的に知る。直観とは直接的に知ることである。

 

Eine allgemeine abstrakte Vorstellung hingegen ist eine vermittelte  Vorstellung, weil ich von ihr ver­mittelst einer andern weiß, nämlich durch die Abstraktion oder das Weglassen anderer Bestimmungen, die im Konkreten damit verbunden sind. — Eine konkrete Vorstellung wird analysiert, indem man die Bestimmungen auslegt, die im Konkreten ver­einigt sind. Die intelligible Welt erhält aus dem Geist ihren In­halt, überhaupt reine allgemeine Vorstellungen, z. B. Sein, Nichts, Eigenschaft, Wesen u. dgl. m.

 

それに対して、一つの普遍的で抽象的な表象は、一つの/媒介された/表象である。なぜなら、私はそれについては、他の表象を介して、すなわち、抽象することによって、あるいは、具体的なものにおいて、それと結びついている他の規定を省略することによって、知るからである。⎯ 一つの具体的な表象が/分析される/のは、具体的なものの中で結びついているさまざまな規定を人が分解することによってである。知的な世界はその内容を、ふつう純粋に普遍的な表象は、たとえば、存在、無、個性、本質などといったものは、精神から受け取る。

 

私たちの認識作用の最初の段階である知覚について分析する。知覚の対象は「物」である。現実の「物」はさまざまに規定された具体的なものであるが、その物からあらゆる規定を捨象してしまうと、そこには単なる、カントのいわゆる抽象的な「物自体」が残されるだけである。現実の具体的なものは、主語(主体)として私たちの意識の対象であるが、私たちの意識、精神はその知覚作用において、その述語において、さまざまに分析する。たとえば、一つの「物」である「塩」は、それは「白く」もあり「辛く」もあり、結晶体としては「立方体」でもある。

分析は悟性作用によるものでもあり、活けるものを分断して判断することである。

私たちの意識とその対象である「物」との弁証法的な関係を分析した精神現象学の「知覚」の段階について記述したものである。

 

 

 

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