夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

個別・特殊・普遍の論理⑤  心と身体

2007年04月22日 | 哲学一般

個別・特殊・普遍の論理⑤  心と身体

概念論の研究

これらの概念としての精神、普遍的な精神は、さまざまな人種の精神として特殊化されてゆく。アフリカ大陸や赤道直下という地理的な気候的な制約を受けて、アフリカ人種には、無邪気な快活性と同時に激しい興奮性といった特有な精神的な特徴を形成することになったし、シベリアやモンゴル平原に生活するモンゴル人種は、その実利的な精神に強固な家族制度と家長的な国家制度を発達させてきた。一方、同じアジア人としても、人種的にはコーカサス人種であり、赤道直下の熱帯、亜熱帯地方に暮らすインド人は、途方もない空想力と抽象的な精神を発達させて、数学や天文学に秀でるとともに、また一方で、カースト制度という政治国家を形成するという精神的な特徴を備えている。

近代において、世界史的に大きな意義をもちえたのは、ユーラシア大陸の西部に位置するコーカサス人種であり、特にヨーロッパ人である。これらの人種が近代現代世界において果たした精神的な意義は、国家制度や法律、宗教、芸術などから科学技術にいたるまで、人類の歴史に及ぼしたその影響は他の人種とは比較にならないものがある。それらは現代世界を実際に観察すれば、自明の事実として認められるだろう。

彼らの精神的な特徴は、何といっても、精神を精神として局限まで発展させることにより、精神の自然からの完全な自立を果たしたことである。そして、それによって、人類にはじめて、自由という観念に明確な自覚をもたらした。

精神の区別はこのように特殊な区別へと進展してゆくが、それら人種や民族の特殊な精神は、さらに職業や家族の生活様式を通じて、さまざまな個人の気質や性格、才能へと個別具体的な個人の精神へと無限に形成されてゆく。そして、すべて個人の個別的な精神には、人種や民族の精神的な特徴が刻印されおり、その影響から免れることはできない。この意味で、すべての個人は民族と時代の子なのである。人類の精神の発達過程の領域においても、宗教や国家の領域と同じように、この個別――特殊――普遍の三重の論理は、貫かれているといえる。この弁証法的な過程を通じて、精神の生は自己の認識を発展させてゆく。

 

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