ようこそ里山へ 茨城笠間・青葉って永遠

茨城県笠間市。観光と陶芸の町の知られざる宝。穏やかな里山と田園は心の原風景。庭と山川草木、体感する旬の言の葉たち。

大谷石再生の記②

2011-08-08 06:26:31 | 茨城の復興・石の現場から
 今日は、震災復興現場の話題、少し堅いお話、石工事のレポートです。
もともと庭以外の分野の仕事を承ることが多い青葉でしたが、この震災後、さらにその傾向が強まっています。
一体何が専門なのか、プロのあるべき姿など、現場で深めんとする日々が続いております。

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 まず、我が家の大谷石の現状からご報告いたします。
庭の縁、震災で塀が無くなりましたので、だいぶ、見晴らしが良くなっています。
キキョウの花と背丈の高いシオンの間から、わずかに一段残った塀の痕跡が見えます。

我が家では、塀を再生する予定はありません。
田んぼの緑を楽しむためにも、これからも塀は無用と感じます。
この塀を施工した時代と現在では、人々の考えもだいぶ変りました。
景観への意識や、防犯のあり方など、今、塀の存在意義が問われております。

 当時なぜ、この塀を作ったのでしょうか。
実はこの塀は、素人さんの、見よう見まねの仕事です。
木材関係の商売をしていた父が、不景気で従業員さんが暇になった時、仕事のつなぎに作ったものなのです。
その割には、まずまずの仕上がりでしたが。

もう一つ、大谷石構造物である蔵につきましては、プロの達人の仕事でしたので、無事でした。
半分が盛り土の軟弱地盤なのですが、マツ杭を打ち込んで補強、基礎も建屋も、プロの仕事は万全でした。
基礎の親方は、既に故人となられましたが、本物の基礎屋さんでした。
下ごしらえも仕上げも、地道で手堅い、プロの仕事です。

 プロと素人、その違いとは、一体何なのでしょう。
この震災を通じて、いつもながらの問いを、さらに強く意識します。
自称プロはいくらでもいますが、自分自身が本当にプロたりうるか問い続ける仕事が大事です。

はじめは、庭師に大谷石修復の依頼が来るのというのが不思議でした。
現場に答えがあるだろうと行って見ますと、驚きの連続です。
解体や修理というものは、工事の実態がもれなく確認できます。

設計者や施工者の、その工事に取り組む姿勢、心の中身までがわかってしまう。
現場に立ち会ったすべての仲間が、同様の結論に至るのが常ですから、身が引き締まります。
現場と現物が、すべてを語りますから、修理というものは、本当に情報の源泉なのです。

 私は、震災前までは、大谷石修復のプロではありませんでした。
しかしながら、石の加工・施工のプロスタッフとともに、あるべき修理の方向を決め、実行させて頂きました。
いろいろなプロが必要です。
なぜ壊れたのか、どうすべきか、現場とお施主さんとの通訳をするプロとしてお役に立てれば幸いです。

 末尾の大谷石塀の写真は、震災後に修復させて頂いたものです。
塀というものは高いほど危険ですから、低くして再生するのも一案です。
段数を一段低くして、きちんとした施工で積み上げました。
目地の接合面を彫り、モルタルを食い込むようにし、カスガイも使用して修復しましたから、大丈夫です。
全面解体しませんから、コスト的にも安心です。

低い塀というものは、なかなかお洒落な印象があります。
お施主さんのお父上、卆寿の大旦那さんが今も自らお手入れしているモチノキの生垣も引き立つようです。
防犯上も、見通しが確保された方がむしろ有利な時代です。

安心が必要な時代、現場で何が起こっているのかを関係者に公開すれば、安心に近づきます。
現場では、信じられない光景に出くわすこともあります。
でも、それを隠してはいけませんし、パニックを起こさないことも大事。
一つひとつの「事象」の現実と、誠実に向き合うことが、安心と信頼への唯一の道と感じます。

 悪いのは大谷石ではなくて、悪者にしてしまった人間の至らなさです。
石を生かして、石も人も幸せな安心を目指していきたいものです。




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