安呑演る落語

音源などを元に、起こした台本を中心に、覚え書きとして、徒然書きます。

 千早振る

2011年12月03日 | 落語
千早振る

金公: こんちわ! 先生! 先生居るかい? おぅ、先生! 大変だ、おい
先生: なんだ、なんだ、なんだ、大きな声だなぁ。 えぇ? おまえか? こっちへ入ってこい、こっちへ。
どうしたんだ、なにがあったんだ。いいからこっちへ入って、そこへ座んな
金公: あ、居た。よかった・・・いえ、あっしはここでいいんです
先生: まぁまぁ、落ち着かないから座んな
金公: ここでいいんですよぉ
先生: いいから、遠慮しないで座んな
金公: いえ・・でも・・・そうすか、じゃぁ、座らせてもらいます
先生: どうしたんだ、なにがあったんだ
金公: 実はね、あっしぁ、夜逃げをしなくちゃなんねんですよ
先生: 夜逃げ? おもしろそうだね、それは・・・いや、あたしはね、他人が夜逃げをする話が一番好きなんだよ。んんんん、そうかそうか、丁度今退屈をしてたんだ。んん、で、どんな話だ?面白そうだな
金公: 喜んでる場合じゃないんですよ。実はね、あっしんとこに居るでしょ、ほら、可愛い女の子が
先生: えぇ?・・・知らんなぁ
金公: 知らない?・・・・そんなことぁないよ、しょっちゅう遊びに来てたじゃないですか
先生: 遊びに来てたのは知ってるが・・・・・・・・可愛い女の子ぉ?・・・・・知らんなぁ
金公: 知ってるでしょ、あっしんとこの可愛い・・・
先生: いや、女の子が居るのは知ってるけどなぁ・・・・可愛いってのは知らない
金公: あっ、そんな・・・・・いや、そんなことぁいいんだ。その女の子がね、悪い遊びを覚えちまってね
先生: 悪い・・・あぁ、それは困ったな。流行っているようだからな・・・歌い手だとか相撲とか自称サーファー・・・
金公: 違う違う違う、そうじゃなくて、ほら、前に札を並べてね、でみんなで取りっくらするやつ
先生: あぁ、花札か
金公: そ、花札・・・それぁあっしがやるやつ。そうじゃなくって、ほら、一人だけ仲間はずれんなってなんとかの~ってぇと、はいって取りっくらする・・・
先生: あぁ、かるただ。百人一緒というやつだ
金公: 百人一緒ってんですか
先生: そう、京都ぉの方の小倉山に百人集まって『さぁ、みんなで歌を詠みましょう』ってンで出来たやつだ
金公: あ、そうなんすか。で、歌をこしらえた中に、いい男ってのがいるでしょ・・・なんてぇましたっけ、え~と、ほら、
先生: あぁ、いい男な・・・いい男ときたらこの人しかいないだろ・・有名な人だな、あぁ、なにしろこの、歴史に名を残そうというぐらいなもんだ。あぁ、もうその辺を歩いてる子供だって知ってる。大変な人だよ
金公: へぇ、なんてぇ人でしたっけ
先生: あれは、なんとか言う人だろ? ・・・あれは、確かねぇ・・・なんとかの・・なんとかと言うひとだな
金公: あぁそう、あの、浅草の先にね造ってる・・・そう、スカイツリーのあるとこの駅、何てましたかね
先生: あすこは・・・押上だな
金公: そ、押上さん・・ちゃうちゃう、それは地下鉄でしょ。そうじゃなくって上走ってる東武線の方は?
先生: あっ、そっちか。そっちは・・・そう、業平橋だ
金公: それそれ、その業平さん業平さん
先生: そうそうそう、いい男が業平のようだ、いい女のことは小町のようだなんてこと言うがな、どうした?
金公: えぇ、その業平さんがこしらえた歌があるでしょ、歌が
先生: ある。これがばかに有名な歌だなぁ、もうなにしろね、耳に残るよ。一度聞いたら忘れられないという、
もうその辺を歩いてる子供だってよく知ってる
金公: えぇ、なん、何ていいましたっけ
先生: あれなんとかいうんだよなぁ・・・あれは確かね、何とかの~、何とかかんとか何とかで~何が何して何と、やらかな~というかな? と、いう・・・・
金公: えぇえぇ、あ、そう、千早振る 神代も聞かず 竜田川 唐紅に 水くぐるとは
先生: おぉ、そうそうそう、よく知ってるじゃないか
金公: よく知ってますよ。家のやつが、のべつ言ってるからこっちも覚えちゃったんですけどねぇ、
さっき、野郎学校から帰って来ると荷物も何も背負ったまんま、あたしの顔を睨みつけるように、
『おとっつぁん、この歌の訳はどういう訳なんだろう』 と、いきなり親を脅しにかかるんですよ
先生: お前、娘におどされてる
金公: そうじゃぁありませんか、こっちはねぇ、ぼんやりしていたんですよ。だからね、『おとっつぁん、今、
お前の相手をするわけにはいかない。はばかりに行こうという心持だから、ちょっと待て』 って、
あっしぁ、はばかりへ逃げ込んだんですよ。
ぁあ、もうこっちはね、息を殺してはばかりん中でじぃっとしてましたよ。
ぇえ、こっちがね、相手にしなけりゃそれでいいんだぃ、相手ぁ子供でござんすからそのうち、諦めてうちへ帰ぇっちゃうと思ったんですけど・・よく考えたら帰らない、あれ、うちの子だもんですからね。
・・・あれ、嫁に行くまでうちに居るんですよ。はばかりで歳とるのかなって思いましたよ
先生: 何を馬鹿なことを言ってんだよ
金公: もう、臭くってしょうがねぇんでね、出たら出たで野郎がそこに控えてますから、しょうがねぇんで、
はばかりの窓を破って、今、ここへ逃げてきたんです
先生: お前、今なんつった? はばかりの窓から逃げてきた?・・・お前、裸足で来た
金公: ぁあ、ハイ
先生: ハイは、ないだろお前、犬猫じゃあるまいし、裸足でずかずかと、他人の家の座敷に上がるやつが
あるかい
金公: あるかいって、あたしゃ外でいいつったんですよ・・・遠慮しねぇで上がれって、先生がそう言ったんすから
先生: いくら・・ぁあ・・この足跡お前だろ。あたしゃこういう足跡があるところでこういう話をするのは嫌だから、そこにバケツと雑巾があるだろ・・・そうそうそう、綺麗ぇにしろ綺麗に・・そうそうそうそう、雑巾固く絞れよ、固~く絞ってな・・畳は目なりに拭け、目なりに、ずーっと。 不精しないで、長火鉢もどけてその下もツーっとこう綺麗にしてな・・・そうそうそう、そしたらな、戸を開けて隣の部屋も
金公: 行ってません! 
先生: なんか、あっちから来たような気がするから、そうそうそう隣の部屋のな、床の間の花瓶をずらしてその下もよーくな、そいからな、床柱下から磨いてけ、ズーと、そいでな、ゴミは裏庭に掃きだして、風を通すから少ぉしだけ開けとけよ。よしよしよし・・あー、水新しいの汲んで来い。
そいでな、雑巾綺麗にゆすげ、そしたらなキュッと絞れ、キューッと固く絞ってな、水はその辺にバッと撒いていいから・・・ぁあ、そしたらな、バケツを逆さにして、絞った雑巾をバケツの上んところへ、こう掛けて、日当たりのいいところへ出して、帰れ
金公: ぃや、ちょっと待ってくださいよぉ・・・あっしゃぁここへ掃除に来たわけじゃねんすから
先生: お前、何しに来たの?
金公: だから、歌のわけを訊きに来たんですよ
先生: ・・・・・えっ、このあたしに歌のわけを訊きに来たの?
金公: そうですよ、先生、知らないことはないんでしょ?
先生: ・・・・・チョットはばかりへ
金公: あ、だめですよ、先生・・・それ、あっしがやったんだから、だめだめ、ちょっと教えてください
先生: ・・・・・ばあさん、あたし忙しかったな
金公: うそぉ。さっき、退屈だって言ったじゃないですか。あっ、先生も本当は、歌のわけわからねぇんじゃ・・・
先生: ばか、おまえ・・・わかるよ、そう言うこというとなぐるよ・・・・・わかったよ、わかったよ、わかった、
じゃ、じゃ、じゃ教えてやりゃぁいいんだろ、教えてやりゃぁ・・・・・どんな歌だった
金公: だから、千早振る 神代も聞かず竜田川 唐紅にみずくぐるとわ、と
先生: あぁあぁ、わかった。これはどうってことないこういう歌はね、難しく考えると、難しくなるんだな。
これね、つまり、千早振るという、な、で、千早振るとくると、ここをちょっと間を開けて、神代も聞かずとなるな、でまた少し隙間があって、た・つ・た・が・わ、ね、で、ぴょんぴょんと間があって、か・ら・く・れ・な・い・に・み・ず・く・く・る・と・わ、となるな
金公: いえそれ、バラバラにしただけですからねぇ。そんなことぁどうでもいいんですよ。
その歌の中ぁちょっと訊きてぇんですよぉ、訳を教えてくださいよ
先生: うるさいねぇ、お前は。今、一生懸命考えてんだから
金公: 何を考えてんですよ。考えなくたって知ってることを言ってくれりゃ
先生: うるさいねぇ、お前は、ぎゃぁぎゃぁ言うんじゃない。あたしも色んな考え方あるんだから。
今、頭ン中探してンだから、あああ、思い出した、えーっとこれね、あ、ちょっと待てよ、お前なんだな、竜田川って、これ、川の名前だと思うか?
金公: え、それ、川の名前なんですか?
先生: お前、怒るぞ、お前。あたしが川の名前だと思うかぁ?な、思うか?とこう上がったんだ。
そこでまたお前が、川の名前なんですかぁ?と上がったら、どこまでも上がっちゃうだろ。
普通は、思うかぁ?と訊いたら、思いません↓とか、思います↓と下がるだろ・・・・
金公: でも、わからねぇから訊きに来たんで・・・じゃ、どうすりゃいいんで
先生: お前は、川の名前だと思えばいい
金公: あそうすか・・・じゃぁ、思いました
先生: そこが畜生のあさましさ 
金公: ぃや、思えって言ったから思ったんですよ・・じゃ、なんなんです?
先生: これはお前、竜田川というのは相撲取りの名前だ
金公: 相撲取りぃ? 聞いたことない名前ですよ
先生: 今の相撲じゃないもの、ずっと昔、戦前、ズーッと昔。
この人は強い人だったな。田舎では負け知らずだ。で、江戸へ出てきて相撲取りになったが、江戸の相撲にはそんなのがゴロゴロ居るな。そこで、断ち物をしてな・・・
金公: あ、あたしの爺さんもやってましたよ。茶断ちとか塩断ちとか
先生: 馬鹿野郎、相撲取りが塩断ちしたら相撲を取れないだろ。そうじゃぁない、男が一番つらいもの、女を断って、一生懸命に修行した。その甲斐あって三年で立派な大関になったから、ま、金さんも安心しな
金公: いえ、別に心配してませんけどね
先生: お前、薄情なやつだな。ある日のこと、ご贔屓に誘われて、吉原の夜桜見物、まぁまぁ、今までの竜田川なら断るところだがな、もう立派な大関になった、願ほどきの意味もあると、吉原の大門をまたいだのが丁度夕間暮れ時だぁ。
金公: へーーえ、でっけぇ人だったんですねぇ・・大門またいで通ったんですか
先生: 馬鹿かおまえは。あすこまたいだ大男を見たことがあるか。そうじゃない、くぐることを俗にまたぐと言うんだよ。当時のことだ、まぁ吉原は大変な賑わいだ、その中にな、花魁道中というのがあるんだ。
菅垣という三味線の音にのって次から次に花魁が出てくる。三番目に出てきたのが、当時、あの里で全盛を誇った千早太夫
金公: 千早太夫・・そんな人がいたんですか?
先生: あぁあ、こらお前、いーーーーーーい女だった
金公: 大分力入ったんすねぇ。そんなにいい女ですか
先生: ああ、いーーーーーーーーーーい女。竜田川その女を見てぶるぶるっと震えたな
金公: はぁはぁ、インフルエンザで?
先生: あー、お前覚えがないか、男というものはな、いい女に出会うと身体が小刻みに震えるってんだ。
まぁ、あたしも、長いこと震えてないがな。・・この震えが三日三晩止まらなかったという、大層なものだ。
世の中にこんないい女が居るものか。例え一夜でもいい、差しでみっちり話がしてみたいとお客様に話をするとな、ま、関取待っておくれと、お茶屋の女将から当の花魁のところへいったんだが、この竜田川がまぁ、相撲を取らせれば強かったがな、不細工。不男だ。日本一の不男。
なにしろその当時はな、不細工のことを竜田川と言った位それくらいの不男。・・・
ちょっと、竜田川、財布取って
金公: 竜田川じゃありませんよぉ・・・ったく・・・・それからどうなったんです  
先生: それからな、千早太夫の方も、ああいう里の女だから見得があってな、
『あちきは故あって、相撲取りはお客にはいたしやせん』 ズドンときた
金公: あらま、振られたの、それ・・・可哀想だねそれは。いいじゃねぇかね、顔なんか。
一生懸命頑張ってんだから・・・じゃ困ったね
先生: 困ったな。谷町もそれから考えてな、妹分の神代太夫、これもまあいい女だった。千早太夫にいくらか面差しが似ていたところから、この神代さんに話をしたんだが、
『姉さんの嫌なものは、あちきも嫌でありんす』 ズドンときた
金公: また振られたの? 二人とも? 可哀想にねぇ・・・・困ったね
先生: 困ったというよりは竜田川、真っ赤んなって怒ったな。
『そんなにお前たちは相撲取りが嫌いかー』 と怒っるとな、相撲をやめて豆腐屋ンなってな、で、相撲
金公: ちょっと待った、ちょっと待った! ・・・・あのね、豆腐屋が悪いわけじゃないけど、相撲取りから豆腐屋にならなくたっていいじゃないですか・・・・年寄株を買って親方になるとか、ちゃんこ屋ンなるって・・・
先生: いいじゃないかなったって、いいじゃないか・・・・・
えぇ? あぁ、そ、そう・・・竜田川の国の実家が豆腐屋だったン
金公: あぁ、国に帰ったんですか
先生: そうそう。帰ってみると豆腐屋とは名ばかり、傾きかけたみすぼらしい家だ。
で、父っつぁんおっ母さんに両手をついて、『今までの親不孝を重々お許しください』
おっ母さんが喜んだな。『あーあ、お前も、トオフの方からマメでよく帰ってきた』・・・  
金公: 下らない洒落だ。それが言いたかっただけでしょ、ったく。それからどうしました
先生: それからな、根が真面目な竜田川、力もある。一生懸命に働いて、三年もするとこんなに傾いていた豆腐屋が立っ派な店になったから、金さんも安心をしな
金公: いえ、別に心配してませんけどね
先生: お前薄情なやつだな。
金公: でも、先生の話はなんでも三年するとなんとかなりますね
先生: あーあ、人間、三年も辛抱して一生懸命やれば何でもなんとかなるな・・・
で、ある日のことな、竜田川が明日の支度をしていると、やせ細って、こう杖をついた女乞食が店の前に来ると、バッタリと倒れて蚊の鳴くようなささやかな声で
『申し訳ございません。三日ほど何も食べておりません。ご商売物の卯の花をいただきたい』
店先の桶にな、こう、山のようにおからをくれってんだ。 元より心の優しい竜田川、大きな手で
このおからをグッとつかんでこの女乞食にやろうとする、『ありがとうございます』 もらおうと見上げる、
♪見上げ見下ろす顔と顔・・・
金公: 何なんですか
先生: 『あ、あなたは』 『お、お前は』・・・あ、お前、この女乞食が只の女乞食だと思うだろ?・・・
金公: ・・・・・思いません↑
先生: 何で?
金公: 何でって、そうやって思わしといて、そこが畜生の浅ましさか何か言おうってんでしょ
先生: お前ねぇ、あたしがそんな男に見えるか?
金公: 見えます
先生: そこが畜生の浅ましさだ
金公: 何を言ってんですか。嫌だねぇ。じゃいったいこれは誰なんですか
先生: これはな、三年前に吉原で全盛を誇った千早太夫の成れの果て
金公: ちょっちょっちよっと待って、ちょっと待ってください、あのねぇ、相撲取りが豆腐屋ンなったのは許すよぉ、
まあ。三年前に全盛を誇った花魁がねぇ、乞食ンなんなくたっていいでしょ、乞食に
先生: なったっていいじゃないか・・・・あ、千早の実・・
金公: 実家が乞食とは言わせないよ
先生: ・・・・・なったっていいじゃないか、人間なろうと思えば何にだってなれる、中でも乞食は一番なりいい。
お前も明日っからおなり
金公: 嫌だよ、そんなの。ま、兎に角それからどうなったの
先生: そ、お前、この女に卯の花をやるか?
金公: やるかったって、これ、三年前に振った女でしょ、何か悔しい、悔しいな、やらない
先生: やらないか? やらなきゃいい。お前もし、やるような了見ならお前もう出入り止めだから
金公: だからやりませんよ
先生: よくも三年前は恥をかかせてくれたってんでなぁ、竜田川、持っていた卯の花を地面にたたき付けた。
これがいけなかった。相撲時代の塩を撒く形と同じ、体が覚えていて思わずこの女をドーンと突いた。
相手は三日も食べていない女乞食。突かれた途端ビューーーンと飛んでった。幸い向こうに土手があったから良かった。土手がなけりゃどこまで飛んでったかわからない。そこにぶつかって、またビューンと戻ってきたな
金公: ゴムまりみてぇな女ですね
先生: そうそうそう、いくらかはずみながらな、店先に井戸がある・・豆腐屋だからいどがあったっていいだろ?
金公: いいですよ、いちいちあっしの顔を伺わなくても
先生: ん、井戸の脇に柳の古木が植わっている。これにすがってな、よろよろっと立ち上がったこの女だ、前非を悔いたんだろうなぁ、三年前はどうも申し訳ないという声こそ出さなかったけれども、天を仰いではらはらっと涙を流すと、この井戸の中にドブーン・・・と、身を投げたな・・・ポコポコポコポコ・・
ちゃちゃんちゃちゃちゃん、と
金公: へへっ、面白い話ですね。あっしゃぁ、こういう話好きなんですよ。と、この女の幽霊が夜な夜な井戸から恨めしいと出ます?
先生: 出ない。出ない
金公: ぃや、出るよ。こういう話は出るもん、絶対。これ、因縁話でしょ? 
先生: 出ない。終わったから、雑巾片付けて帰りな
金公: いえ、続きぃ
先生: 続きはない。終わりだよ、これで。わかったろ、歌の訳が
金公: え、え、え歌の訳ですかこれぇ・・・あんまり長ぇから別の話だと思ってましたよ、ど、ど、どうなって
先生: どうなってる?しっかり聞いておくれ、いいかい。一番最初、な、竜田川が千早太夫ンところに行ったろ?
そいで、話をしたけど千早太夫は振っただろ・・・千早振るだよ
金公: ぇえっ? 振るってこの振るですか、これ。で、そのあとどうなります?
先生: だから、妹分の神代太夫に話しをしたけど・・おまえ、『姉さんのいやなものはわちきも嫌でありんす』 
って、言うこと聞かなかったろ・・・神代もきかず竜田川だ
金公: なりますねぇ、これぇ・・・その先は?
先生: その先はおまえ、三年経って、女乞食に身をやつした千早太夫が来て、おからくれっておからやったか?
やらないじゃないか。・・・からくれない
金公: おーー、おからくれない? これ。おからをくれない? あらそう・・じゃ、終いンとこは?
先生: 終いんところは、井戸ンなかへドボンと身を投げれば、水くぐるンなるだろ、な、終わったから帰ンな
金公: あぁあ、そうかぁ・・・なってますね、本当に・・・千早振る 神代もきかず 竜田川 唐紅に水くぐるとわ・・・
あれ? ん?ん? ちょっちょと待ってください・・・なにこれ、とわって・・・なにこれ、神代もきかず竜田川 唐紅に水くぐるとわ、ね、なにこれ、とわって・・とわ!
先生: ん? とわ? あった?そんなの
金公: あったよ。ありますよ。何すかこのとわって
先生: あーいいよ、とわぐらい
金公: とわぐらいってことないんですよ、、とわの訳何すか? とわって、ね、とわって
先生: おまえうるさいな、お前は・・・わたしがここまで骨折ったんだよ・・・・・とわぐらいまけときなよ
金公: いえ、まけらんないすよぉ・・とわっていったい何なんすか、とわって、ねとわの訳を
先生: うるさいなぁ、もう・・・だからもう思い付かない
金公: 何が思い付かないですか。何なンすか・・・とわ! とわの訳! とわの訳!
先生: んーん、とわってのは・・・調べてみたら、千早の本名だった


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