安呑演る落語

音源などを元に、起こした台本を中心に、覚え書きとして、徒然書きます。

「明日の記憶」に愕然

2006年06月30日 | どうでもいいこと
今日までの映画のタダ券があったので、観にいった。

若年性アルツハイマー
なんじゃこりゃ!
おれのことか?

出産、授業参観、運動会・・・・
仕事に託けて行ったことはない
昨日の昼飯なに食べた?
あの女優の名前が・・・・・

観ている間に4回涙が出た
観終わって昼時分、食欲がわいてこない

誰もが通ることなのか?
遅いか早いかだけなのか?
自分、家族、親類、友人、同僚、、、、、
その時おれはどうする?どうしたらいい?なにができる?
ツマラナイ映画を観てしまった

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強情灸

2006年06月29日 | 落語
甲: 「おーい、どうしたい?」
乙: 「やいやいッ、うちの前黙って通るねえ。やい、寄ってけやい、こンちきしょう。ここンとこ、鼻の頭ァ見せなかったじゃねえか、えゝ? おい、どこィもぐってたんだよ?」
甲: 「おれかァ、うん。おらァ、峰の灸すえに行ったンだ」
乙: 「え、峰の灸を? へえェ、この野郎ァまた大変なものをすえに行きゃァがったなァ。実ァ、おれもすえようと思ってたンだ。なンてったって、熱いッて評判だからナ。そいつを、てめえに先(セン)を越されちまったなァ悔しいなァ。だけこもよ、熱いったって、大したこたァあるめえ、えゝ? どうでえ?」
甲: 「大した事ァあるめえじゃァねえや、大した事ァ、あるよ」
乙: 「ほう、あるかい・・・・・」
甲: 「あァ、あらァな」
乙: 「で、熱いのか?」
甲: 「あァ、熱い。おめえなンぞ、そんなとこへいくンじゃないよ、え、恥ィかきに行くようなもんだ。とても、おめえになんぞ、すえられっこねえ」
乙: 「そんなかい?」
甲: 「そうさァな」
乙: 「うゥん、そいじゃァこっちィ上がって、その話しをしねえな、え、聞いてやらァな、うん。どんなに熱いったって、おめえ、たかが灸じゃねえか」
甲:「たかが灸だって・・・・・おめえ、それがいけねえてンだ。誰だってす思わァな、たかが灸だってなぁ・・・・・。
ところが、そいつをおめえ、すえられてみなよ、え、こんなちっちゃな灸だから、何でもねえと思うが、サッと火ィ点けられるてえと、その熱さなンざァおめえ、気のちっせえ奴なンざ、キャーッと悲鳴をあげて、とび上がってョ、えゝ? 天井こわして、どっかィ行っちゃた奴がある」
乙: 「てえと、ずいぶん熱いンだなァ」
甲: 「熱いのなんのって・・・・・、そいつをナ、おれがすえて来たといってンだ、どうでえ」
乙: 「本当か?」
甲: 「本当かァ? かァア?かァア? 冗談言っちゃァいけねえ、べらぼうめッ」
乙: 「じゃ、こう人ァ・・・・・空いてンだろ?」
甲: 「それが混んでんだよ。なァ、体にきくてえから、みんな行くんだ。えゝ? あそこへ行ってみるてえとナ、ウーッと熱がって、苦しんでいるのを見ると、やっぱりすえそびれんだな、うん。だから、たまっちゃってしょうがないから、番号ですえるようになってんだよ、うん。
 おれの番号てえのを、ひょいと見るてえと、への36番だ。“これはどのあたりだ?”って訊くてえと、“ケツの方だ”てえから、なんとかならねえかとグズグズ言ってるてえとナ、前の方にナ、女がいるんだよ。年の頃ァ、うん、20と・・・・・ろうだ4,5だナ、いい女だったぜ」
甲: 「そんないい女かァ?」
乙: 「いい女だァ。頭のてっぺんから足の爪先まで、こうスーッとなってやがってな、おめえ・・・・・」
甲: 「よだれなんぞたらすねえ」
乙: 「まァ、隙のでえ女てンだな、ああいうなァ・・・・・隙間のあるのは、鼻の穴ぐれえのもんだ、うん。その女がナ、おれの方を見やァがってナ、
“あなたは、お急ぎでございますか”   と、こう訊くからネ、
“えゝ、ちょいと急ぐんですがネ”
“そうでございますか。あたくしは先ほどから、番が来てるンでございますが、みなさんのおすえになっておりますのを見ておりますと、熱そうなので、ついすえそびれているンでございますョ。もし何でしたら、あなたさまのと、あの、お札ァかわりましょうか”    っていやァがる。えゝ?
“そりゃァすみません、じゃァ、かわっておくンなさい”
 てんでナ、かわってもらったから、すぐおれの番になっちゃったンだ」
甲: 「うまくやりゃァがったな、この泥棒ァ」
乙: 「なンだい、おいッ、泥棒てえなァねえだろ。それからおらァ、すえるとこィ入えってったんだ」
甲: 「おめえがかい?」
乙: 「あゝ。するってえと、中にもョ、こっちに8人、こっちに7人ばかり、ズーッと待ってる奴があるんだよ、つまらねえ面ァしてる奴がよォ」
甲: 「おめえの面の方が、よっぽどつまンねえ」
乙: 「でナ、その真中を、おれが手拭いを、こう持ってナ、
“ごめんなさいよ、ごめんなさいよ、えゝ、ちょいとごめんなさいよッ”
 と、スーッと入えってゆくてえと、みんなの目が、おれのうしろをズーッと見てやがンだ。えゝ、そいからナ、みんながなんか言ってやがる。
“この人ァ、我慢できますかなァ”
“さァ、どうでしょうかなァ”
 なんて言ってやがる。えゝ? そいつが耳ィ入えったから、癪にさわちゃった。なァ、そこでおらァ、すえるとこへスッと行って、クルッとけつゥまくって、あぐらァけえて、パッと肌ァぬいで待ってるてえと、すえる野郎が出てきやがった。
“えー、このお灸はお熱うございますが、体のためなンでございますから、どうぞ我慢なすってくださいまし。
どうかすると、(急に声を強めて) えー、途中でおやめになるかたがございます。がまんしていただけましょうか”
 こういやァがる。
“なんだい、そりゃァ”
“へえ、灸でございます”
“なにォいってやがンでえ。え、どれだけ熱いかしンねえが、たかが灸じゃねえか。べらぼうめィ、背中で焚き火をするわけじゃあるめえ”
 って、こうおれがいったもンで、みんなァおどろきゃがったぜ、ウン。
“どういうふうにすえるんだい、え、数ゥそういってくれよ”
“さようでございます。えー、16ッつふた側・・・・・32すえるんでございます”
“なンでえ、それッきりかい? ふーん、何だい、それだけかい。じゃァ、一ッぺんにすえてもらおうじゃねえか”
 って、こうおれがいったンだ。ここンとこを、おめえよォくきいとかなくちゃいけねえよ。“いっぺんに、すえてくれッ”
てえとこをなァ・・・・・。ひとつでも熱いって、とび上がっちゃうところを、おめえなァ、いっぺんにすえようてンだ。
“そんな乱暴なことをして、よろしいンですかな”
 と、そういうから、
“あー、おれのからだだァッナ、すえてくれッ”
 と、こういってやったンだ、なァ。まさかすえやァしめえと思ってよォ、ウン。
“さいでございますかァ”
 ってやがて、その野郎もまた、人のいうことォ、やに信用する野郎だよ。え、おれの背中へこう、百草ァくっつけ始めやァがった。ウ、うん、そうなりゃァ、こっちもしょうがねえや、え、まな板の鯉だ。どうなるもンかと思って、え、手拭いをこう、グッとしぼっておいて、股の間へ、こうグーッと・・・・・(両手の指の間に、ねじった手拭いをはさんで)斜(ハス)の構えンなったなァ。いいかっこうだってそういったよ、え、先の羽左衛門に似てるって・・・・・。そんなこたァかまわないけど、こうみンなが目ェ丸くして、見てやがる。するってえと、線香に火ィつけやがって、
“え、よろしいですか?”
“いいよッ”
“へ、さいですか”
 ってえと、そいつが馴れてやがって、早えンだ。え、ひとつでさえ、とび上がっちゃう奴ォ、32もおめえ、いっぺんに火ィつけたんだから、その熱さてなァおめえ・・・・・おらァ、背中に爆弾が落っこちたのかと思ったよ。
 そいでナ・・・・・もう、どうもこうもしようがねえンで、おらァグーッと我慢してたんだ。な、今更ンなって、表へ逃げて行かれるかッてンだ。カチカチ山の狸だよ。そんなこたァできねえから、がまんしているてえと、不動さまねてえに、火ィ背負っちゃってウウン・・・・・てえのを、まわりを大勢が取り巻いて、いろんなことをいってやがる。
“なんてまァ、この人ァ、我慢強い人なんでしょう”
“こういう人が男の中のおとこですなァ”
 なンてんでネ。おらァ、写真に撮っときゃァよかったとおもってンだ。
 おれによォ、さっき番号とっかえてくれた女なンぞは、みんなの間から、背伸びィしておれの顔ォ見て、ニッコリ笑いやがって、
“まァ、この人ァ、なんて我慢強いンでしょうねえ、本当に男らしいわァ。あたしだって、いつまでも独り身じゃいられないンだから、こういうような人を、わが亭主に持ちたいものだわねえ・・・・・”
乙: 「そう言ったのか?」
甲: 「なんて、思ってやァしねえかと思って・・・・・
乙: なんだよォおいッ、いやな野郎だなこいつァ。え、これっぽっちの灸をすえて来やァがって・・・・・。
そんななァ灸じゃァねえぜ、えゝ? おいッ、百草ァ持って来いッてんだ、こンちきしょう!
 なんでえ、豆粒みてえな灸をすえやがって、熱いの熱くねえのって、ヘッ、わらわせるンじゃねえや。あゝ?
おれの灸のすえかたてえのを、よっく見とけッ!
 百草ァな、みんなこうやって・・・・・(両手をいっぱいにひらいてもみほぐしながら) 散らかしちゃうんだ、なァ、こうやって・・・・・こうやってすえるンだ、よく見とけ!・・・・こう・・・・・(左手をグーッと出して、直角に曲げて、その太いところを右手で叩いて) 腕の上へナ、こう・・・・・(右手で百草をつかんで、山のようにして) 盛るンだよ、なァ、こうやって・・・・・(さらに盛って) なァ、どうだァ」
甲: 「なんだい、おいッ、アイスクリームみてえなものをこしらえやがって・・・・・。のっけておくだけかい?」
乙: 「のっけとくだけじゃァねえやい、これに火ィつけるから、灸てンだ。なァ、よく見とけ、線香でつけるゥ? 
おれなんざァ、(扇子を火箸の態で、火鉢の炭をつかみ、フーと吹いて) これッ、炭でつけるンだ。灸てえ奴ァ、皮ァ焼いて肉を焼くンだ。なァ、こうやって・・・・・(右手の扇子で煽ぐ) 熱くもなんともねえ」
甲: 「まだ火がまわってねえからだよ。わかった、あやまるからもうよしなよ」
乙: 「てやんでェ、こんな、灸なンぞ、ふん、笑わせやがらァ、ンとうにィ・・・・・これぽっちの、灸すえて、熱いのなんの
って、おめえ・・・・・おれなんぞナ、裸ンなってナー、腹ン這いになってナ、え、背中でもってナ、堅炭(カタスミ)を起こしてナ、なんか、ウーン、煮られたって、タハーッ、おどろかねンだァな、ウーン、おれはナ・・・・・
(と、精一杯熱いのをこらえてる表情)
 なンでえ、こんな、灸なんぞ、ンとうにィ・・・・・ウー、ウーン。えー、おい、石川五右衛門てえ人、知ってっかァ?
石川五右衛門てえ人ァ、釜ゆでンなったンだ。釜ゆでったって湯じゃねえ、油だぞォ。グツグツ煮えたぎった油ン中ァ入えって・・・・・衣もつけずに・・・・・え、ニッコリ笑って、ウー、辞世を詠んだンだ、知ってるか?
“石川や・・・てんだ、ナ、石川や、浜の真砂は、つきるとも、なー・・・・・、我泣きぬれてカニとたわむる”
 てンだぞッ、えゝ? てめえなんぞ、そういうこたァ、知るめえ、アーッ!五右衛門ぐれェになると詩だって盗まァ。
うー、ツツッ・・・・・。な、八百屋お七を、見ろい、八百屋お七ィ・・・・・。火あぶりだァ、ふンとにィ・・・・・。ウーン、アー・・・・・。小娘が火にあぶられながらニッコリ笑ったって・・・・・何をいやァがる、え、たかがこれっぽっちの灸じゃねえかッ、てめえなんざァ、べらぼうめッ、うはは・・・・・。
 (我慢しきれなくなって、泣き声で) なんだってンだ、ウゥー・・・・・、灸なんて・・・・・、トホホホホ・・・・・、これっぽっちの灸、すえやがって、あヮヮ・・・・・、八百屋お七ィ・・・・・火あぶりィ・・・・・、タッハッ八ハッは・・・・・、石川五右衛門・・・・・熱ッ・・・・・石川五右衛門・・・・・・ワーッ(たまらず百草を振り払い) あー、冷たッ」
甲: 「なにを言いやがる。石川五右衛門がどうしたい?」
乙: 「いやー、石川五右衛門は熱かったろう」

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乳搾り

2006年06月25日 | 小噺
爺: お嬢さん、どうだい?東京よりも田舎で過ごすのは、いいもんだろゥ。
嬢: はい。おじいちゃんのうちにお世話んなって、いろいろと、体験できて幸せです。
爺: おォ、そうかいそうかい。あァ、そりゃあ良かった。
嬢: おじいちゃん、今朝もそうなんですけども、朝早く、おじいちゃんとこの、牛の乳搾りやってみたんですけども、やっぱり、初めてだったせいか、ミルクが少ししか出ませんでした。
爺: なに? うちの? 牛の、乳しぼ・・・あァ、そうかいそうかい、少ししか出なかった。
ァそりゃあそうだよお嬢さん。オスだからナ。
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間抜けな泥棒

2006年06月21日 | 小噺
落語の方に出てまいります泥棒はと言うと、間抜けな泥棒と相場が決まっておりますが・・・・・

かみさん:ちょいと、おまいさん。起きとくれよ。ちょいと、おまいさん。
亭主  :ぷあ~。えっ?何だい。何だい、こんな夜中に。
かみさん:なんか台どこの方で、ガタガタいってるじゃァないか。
    泥棒が入ったんじゃァないかい。
亭主  :えゝ?台所でェ?   ほんとだ。なんか、ガタガタいってやンな。
    でも、台所に泥棒が入るわきゃァないよ。ねずみかなんかじゃねえか?
 *仕方がないので泥棒、、、
泥棒  :チュウ。チュウチュウ。
亭主  :ほら、ねずみだよォ
かみさん:だけど、おまいさん、ねずみにしちゃァ少し、音が大きくないかねェ
亭主  :そう言われてみりゃァそうだな。じゃァ、猫かな
泥棒  :ニャーオ
亭主  :ほら、猫だよ
かみさん:猫ったてもっと大きいよ
亭主  :じゃァ、牛かなぁ
泥棒  :んも~
亭主  :ほら、牛だよ
かみさん:牛にしちゃァ、音がへんじゃないかい?
亭主  :じゃァ、キリンかな
 *キリンとなると泥棒、鳴き声ができません。仕方がないから表へターっと
かけだしまして、あとから亭主が追っかけてくる。
逃げ場に困った泥棒、近くにありました大-きな古池へ飛び込むってェと
杭につかっまて頭だけ出してまして、、、
亭主  :おい、おっかァ、ちょいとそこの竹竿を取ってくれ。ェえっ、ぃゃ、
    杭のところに何か動いてるんだよ。ちょいとこの棒でもって確めてみようじゃねえかナ。こんちきしょ、てめえは泥棒か、杭か?泥棒か、杭か
* ってえと泥棒
泥棒  :クイッ! クイ、クイッ!
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試し酒

2006年06月17日 | 落語
 ご酒というものはなにかにつけて用いられますが、お好きな方は百薬の長、お嫌いなかたは命をけずる鉋だなんてえますな。これァまァどちらへ軍配をあげてよろしいですか・・・・お世辞のないところ、召し上がらなきゃァいちばん間違いがないんですが、どうもそういうわけにまいりません。まァ、ほどに召しあがっとく、これがいちばんよろしいようで・・・・。ですが、どうもお好きなかたは、その度を超します。そういうところから体をこわしたり、間違いを起こすなんてえことンなってまいりますな。

主: まァゆっくりしてきなさいよ。えゝ?いえ、あアたの来ンのを楽しみにしてたんだよ。いますぐ支度をするからさ・・・・ねェ
近江: いえ、そうしてらンないんですよ。まだ二、三軒まわりたいと思いますから・・・・
主: そんなこと言うもんじゃァない。今日はうちだけにして、また明日てえ日があるんだから・・・
近江: いえ、本当に・・・・今度あがりましたときにゆっくりご馳走ンなります。それにもう、あたくしここンとこあんまり飲みたいと思わなくなりましてねェ
主: ・・・・おかしいねェ、あんなに飲んだ人が・・・・
近江: いえ、それがどうも・・・・いえ、やらないことァないんですけども、毎晩お仕着せが・・・・その、一本残ることがあります
主: へェえ、おかしなもんだなァ。あんなに飲んだのにねェ・・・・いえ、あたしァ毎晩だ。どうも相手がいないと寂しくてねァ・・・・まァいいだろう。すぐ支度するから・・・・
近江: いえ、本当に・・・・それにまた、表に待たしてございますから・・・・
主: あ、だれかお連れさんがいたのかい・・・・じゃァその人もこっちィはいってもらって、一緒に・・・・
近江: いえいえ、呼び込む者(モン)じゃァありません。うちの下男でございますから
主: あ、お供さんか。じゃァ、まァいいだろう
近江: いえ、ほんとうにね、このつぎあがったときにあたくし・・・・(ふと思い出した態。身をのりだして) お酒といえば、いま表で待ってる男なんですがね、これァずいぶん飲みます
主: お供さんが
近江: えゝえゝ。こないだ まァあたしの床上げ。無礼講でもって、家中にのませまして、そのとき大きなものでがぶがぶやってましたが、ま、一向に酔った気配がありません
主: ヘェえ、そんなにのみますかい・・・・どのくらいのむんだね
近江: さァどのくらいのみますか、あたくしもきめて飲ましたわけじゃァありませんから、はっきりしたとこはわかりませんが、あれでまァ、一時(イチドキ)に五升は飲んだでしょう
主: 五升? ・・・・そりゃ間違いじゃァないか・・・・
近江: いえ、飲みます、あの男は
主: ・・・・五升も? ・・・・のめるもんじゃァないよ。それァ嘘だ・・・・
近江: いいえ、本当に飲むんです。その男・・・・
主: (うれしそうに) 逢いたいな、その人に・・・・こっちィ呼んどくれよ
近江: いえ、いけません。もう田舎もんで、礼儀もなんも存じませんから、失礼がありますと・・・・
主: いいや、そんなこと構わないよ・・・・ (下手へ) おいおい、近江屋さんのお供さんが表にいるそうだから、こっちィはいってもらいな・・・・(下手へ向きなおり) あゝもうあたしはねェ、田舎の人てえのは好きだよ。素朴で飾りっ気がなくてね・・・・よく旅行なんぞして田舎の人と話をする。いいもんだよ。なまじっか都会ずれしのしたなんてのァ困るよ・・・・結構、結構、いや、なんにも気にしないから・・・・(下手遠くを見て) あ、入ってきた。あの人かい
近江: そうなんですよ・・・・こっちィおいで
久造: (田舎なまりで) あんでえ・・・・いま表にいたら、女中さんがあんでもいいから入(ヘエ)ってこいちゅうもんだからね、そィからまァ入ってきただ。呼ばって、あんか用か
近江: なんだ、そこィつっ立って・・・・坐ンなさい。あすこにおいでンなるのがこちらの旦那さまだ。ご挨拶をしな
久造: (下手奥へちょっと振り返り、坐りなおして上がったこころ。軽く会釈をして) はじめまして・・・・うちの旦那(ダア)様からね、お前(メエ)らのことよく聞くだよ
近江: なんだ、おめえらとは・・・・どうも、こういうやつですから・・・・
主: いやァ、結構だよ、面白いよ・・・・いま、お前さんの話をしてたんだがね、名前なんていうんだい・・・・えゝ?
久造さん? おゥそうかい・・・・大変お酒が好きだってえが、そうかい
久造: いやァ別に好きではねえさ
主: 嫌いか
久造: いや、嫌いではねえ
主: じゃァ好きなんだろう。一時に五升も飲むてえが、本当か
久造: 五升? ・・・・五升ってどんな五升だ
主: どんな五升てえことァない。一升二升三升・・・・あれさ
久造: さァあ・・・・どのぐれえのめるもんかねェ。のんでみたことねえから、わかンねえな
主: ご馳走するよ、いま。のんでごらんよ。もしね、うまく五升飲めたら、お前さんに褒美としてお小遣いをあげよう、どうだい
久造: あれ、酒ごっそうンなって、そのあげくに褒美に小遣え貰えるですか・・・・あんだか気の毒なはなしだな、これァ・・・・どうすべえ、だァさま
近江: まァいい。じゃァご馳走ンなンなさい
久造: いいかねェ。・・・・じゃァご馳走ンなるべえかなァ
主: うん。その代わりお前、のめないときはどうするよ
久造: のめなかったらか? のめなかったら、おらがおめえさまに小遣えをやるか
主: いや、お前から貰ったってしょうがない・・・・のめないときはお前の負けだ。ま、ここで唄を唄うとか、踊りを踊るとかやってごらん
久造: はッはッは、だめだ。おめえ・・・・おらァ唄も踊りもあんにもできねえだもんねェ。あァ困ったなァ、これまァのめなければおらの負けだから・・・・じゃァこうすべえ。のめなかったらここでおめえさまと相撲とるべえ
近江: いやだよ、馬鹿なことを言って・・・・どうもこういうわからないやつですから・・・・こうしましょう。もしこれがのめませんときは、あたくし、あなたをどっかへ、二三日うちにご招待をします。ご馳走をします
主: 近江やさんが? あゝそう・・・・じゃ、話はわかったよ。じゃァ支度するから、ちょいとのんでみておくれ
久造: ちょっと待ってもらいてえ・・・・なんだい、だアさま・・・・おらァのめねえと、こちらのだアさまァどっけへ連れてって、なんか食わせるか
近江: なんだ、食わせるてえのは・・・・ご招待をする。ごっそうをする
久造 どのぐれえかかるでえ
近江: そんなことお前が聞かないでもいい
久造: 聞かねえでもいいって、おらだって かかりあいンなってるじゃねえか・・・・話ィしてくだせえ。えゝ?どのぐれえかかるだね
近江: そんな心配をそなくてもいいんだ
久造: 弱ったな、おらのめなきゃァおめえさま散財(サンゼエ)ぶつだな・・・・だアさま、ちょっくら待ってもらいてえ。おら、少しべえ考えるだよ
近江: 考える・・・・いいよ。お考えよ
久造: 表へ出て考えよ
近江: あゝ、どこへでも出て考えな。えゝ? あゝいい、待ってる待ってる。大丈夫だよ、うん
主: はッはッはッ、ごらんよ。主人思いだなァ。あアたが散財だってったら、顔の色を変えてとび出しちまった・・・・
だが、この勝負はあたしの勝ちだよ。いや、のめるもんじゃァないよ。一時に五升なんてえものが、第一入るわけのもんじゃない。いや、そりゃァあたしたちもねェ、夜明かしで何升開けたなんてエことはあるがねエ、それァ一時に入るもんじゃァない。これァまァあたしの勝ちだな・・・・まア飲めても飲めなくっても支度だけはしとこう・・・・(上手横へ)おい、あゝあゝ、いま聞いてのとおりなァ、お供さんにごっそうするんだから。あゝ・・・・あの、おおきなヤカンがあったろう。あれへ移しときな・・・・いや、燗することはない。冷(シヤ)のまんまでいいんだから、ああ・・・・あ、それから二階の違い棚へあたしが出して見てる盃があるだろう。あゝ、あの、桐の箱へはいった、・・・・あれ持ってきな・・・・近江屋さん、あたしは負けないと思うよ。だが、ま、万が一負けてだなァ、あの人にお小遣いだけてえのは興がないや。あアたァあたしをどっか招待してくれる、ごっそうをしてくれるてんだから・・・・こうしよう。もしあたしが負けたらねェ、あアたを箱根へ二三日ご招待をしましょう
近江: 箱根・・・・ありがとうございます。じゃ、是非その方にお供をさして・・・・
主: おい、なんだい、あアた行こうてえのかい? いや、あたしがごっそうンなろうと思ってンだから・・・・あゝ、持ってきた? 出してごらん、こっちィよこしな。(と、上手から大盃のこころで扇を開げたのを受取り)近江屋さんねェ、自分の物を褒めンのもおかしいがね、いまこれだけの物てえのァないよ、あゝ。塗りといい、蒔絵といい、結構なもんだ。ま、いろんな盃がある。『太郎盃』『二郎盃』これはまァ貝殻でできたようなもんだな。それから
『浮かむ瀬』なんて、これは面白い。まァ武術の極意から来ているかなァ。『とびこみ行けば浮かむ瀬もあり』
なんてえことをいうがね、まァ捨身ンなって飲めばのめないことはないてえかな。それから面白いのが『可盃』(ベクハイ)だ。これは盃のしたに小さな孔があいている。指をあてがって酒ェついでもらうン。全部飲んじまわなきゃァ下へ置けないよ。ねェ、漏っちまうもの・・・・下へ置けないとこで 『可盃』 だそうだがな・・・・これは裏に『武蔵野』と銘がある。武蔵野の原は広い、野が見尽くせない、のみつくせないという洒落だそうだがね、この盃でひとつ、飲んでもらおうと思うんだ・・・・(下手遠くを見て) あ、帰ってきた様子だよ・・・・おォおォ、帰ってきた・・・・あゝ、こっちィおはいり。どうした、考えたか
久造: いやァはァ、考げえました・・・・お待ちどうさまで・・・・
主: いや、別に待っちゃァしないよ。どうする、飲むかい
久造: のましてもらうべえ
主: おゥおゥ、支度がしてあるんだ。じゃァすぐやっとくれ
久造 はい。小さなもんではちびちびで面倒でなンねえからねェ、なんか大(エケ)えもんでやらしてもらうべえか。盥(タレエ)かなんかで・・・・
主: そんなもんでやンなくったっていい・・・・ここにこういういいものがある。さァ、これでやっとくれ(と、扇の盃を下手へ渡す)
久造: (それを両手で受取り) あれまァ、えかく大(エケ)えもんでまァ、きれいでねえか・・・・こんな大けえもんでこれ、何杯(ナンベエ)のんだらいいだ
主: 一升いりだ、それは・・・・五杯のむんだ
久造: あれ、こんなもんで五へえものむかね
主: ふッふ、ほれごらんよ、のめっこないよ。いまのうちにあやまっちまいな
久造: あやまっちめえなったっておめえ・・・・(と、盃の裏を返してみて) あははッ、飲めそうだ、これァ。揚げ底ンなってる・・・・
主: 揚げ底なんてのァない・・・・おい、お酌をしてやンな
久造: いやァすまねえな。あァたァ酌ゥしてくれるかね。じゃァお願えします、へい。(と、盃をさしだす。酒のつがれるのを見ながら) あれ、きれいだねェ、まァ、酒ェつぐと中の絵がきらきら きらきら浮いて見えるだよ、これァ・・・・ヘェえ、どうも、・・・・盛りあがってまァ・・・・ご馳走ンなります。(と、両手で持った盃へ口をよせてのみはじめると、ぐいぐいと、息もつかずに盃をあおって一気にのみほす) ふゥ、(と、大きく息を吐くと) 一杯(イッペエ)のんだ
主: のんだのァわかったよ。毒だなァ・・・・息もつかないじゃァないか
久造: ほんにまァ、夢中ンなってのんじまって、味もあんもわかンねえだよ。勿体(モッテエ)ねえことをしちまったァ。こんだ よく味わわしてのましてもらうべえ。さァ、酌してくだせえ。へい、どんどんついでくだせえ。
(と、前と同様酌をしてもらう) 中へこぼすぶんにはいくらこぼしても構わねえだからね、外へこぼしては勿体ねえだから・・・・へえへえ、へえ、どうも・・・・馬鹿だね、まァ、夢中ンなってのんじまって、勿体ねえ。ま、こんだ
よく味わうべえよ。(と、少しのんで顔を上げ)うめえ酒だね、まァ・・・・こんなうめえ酒、毎晩やってるですか・・・・
こんな御殿みてえな家ィはいってなァ・・・・こてえらンねえなァ、まァ・・・・こんなうめえ酒のんだことねえなァ、だアさま、こねえだうちで飲んだ酒、あれよくなかったぞ、あの酒・・・・こんだっからうちもこの酒ねすべえよ。
うめえ酒だよ。(と、のみ)こんなうめえ酒、だれがこしれえたか、だアさまご存知かね。(と、いくらか酔っている) ご存知ねえ?駄目だなァ、酒飲みがそんなこんでは・・・うちのだアさまも知らなかんべえ。覚えておきなせえ。
これ、あのねェ唐土(モロコシ)の儀狄(ギテキ)とかいう人がこしらえたそうですね。ときの王様にさしあげたところが、おのみンなって、結構なもんだ、結構なもんだが、拵(コシラ)えてはなンねえ。此れを呑み過ぎると身を滅ぼし、果ては国を滅ぼすことンなる。拵えてはなンねえッ・・・・なんて、えかく叱言(コゴト)ぶったそうですけどもねェ、馬鹿な噺だ、おめえ。こんな結構な物を飲ましてやって、そのあげくに叱言ぶって・・・・間尺に合わねえだよなァ。たんと飲むからいかねえだから・・・・控(ヒケ)え目にのんどけばいいだよ。内輪にのんどけばいい
だよなァ・・・・(飲み) だけど面白えもんだねェ、こうしておらに酒ェ飲ましてお互えに賭けェぶって、こちらのだアさまァ飲まずにいてくれればええ、さもねえとえれえ散財(サンゼエ)ンなるなんて・・・・あんな顔をしてるけど、腹ン中でどきどきしてるでえ、あははははは。いや、ほんとうにさァ・・・・間へへえっておら面白くてなンねえだ。
(と、のみ) ヘッヘッヘ、だめだねェどうも。味わうべえと思ってもぐいぐい ぐいぐいへえっちまうだからなァ、味わっていらンねえだよ。しょうのねえもんだ、まったく (と、残りをのみほす)
主: 驚いたねェ、ほんとに好きなんだなァ。酒の方から勝手にはいっていくようだ・・・・だが、お前から唐土の講釈を聞こうとは恐れ入ったなァ
久造: あッはァ、なにもおめえ、恐れ入ることねえさァ、恐れ入れられたらおらの方が恐れ入るでねえ・・・・さァ、酌ゥしてくだせえ。(と、盃をさしだし) おらァえれえわけでもあんでもねえだよ。はたで聞いたのの請け売りだからね・・・・いやどうもすいましねえ (と、盃を引き寄せる)
主: だけどなんだなァ、そういうことを知ってるてえのはえらいよ
久造: いや、えらいことはねえさ、まァそう褒められてはけえって困るだよ。いや、おらァね、まったく子供のころからおれ、のんでたからな
主: おゥ、そうかい・・・・子供のころからなァ・・・・やっぱり芯から好きなんだなァ・・・・まァ世の中でなんてってもお前、酒がいちばん好きかい
久造: さァ・・・・そうでねえ。やっぱりおらァ金かなァ
主: あゝ、そういうもんかなァ。じゃァ一生懸命働いて、金をためて故郷(クニ)へ帰って田地田畑でも買おうでんだな
久造: いや、そんなしみったれた料簡はねえさ。まァおらためただけそっくり飲んじまうだァ
主: なんだい、おい・・・・やっぱり酒がいちばん好きなんだ
久造: はッはッは、そんなことンなるかな。まァおらの国じゃァ昔っから多く酒飲みのでたところだからね
主: どこだ、くには・・・・
久造: おらァおめえ、丹波だ。大江山てえ山があってな、酒顚童子てえのがすんでただよ。この野郎ァえかく飲んだね。えけえもんでがぶがぶやったからなァ・・・・あれおらの親戚だァ
主: 嘘をつけ
久造: はッはッはッはッはァ、そりゃ嘘だよなァ、そんなものが親戚にあってたまったもんでねえや。(と、ごくりとひとつのみこむたびに体をゆすりながらのむ。かなり酔っている) なんだかおら、いい心持ンなってきたァ、唄も踊りもあんにもできねえだけどねェ、まァおらァ文句ぐれえ知ってるだよ。
都々逸なんてのァええ文句があるねェ。 『お酒飲む人花ならつぼみ、今日も酒酒(咲け咲け)あすも酒』・・・・
なんて、うめえことを言うと思ってさァ。(と、のみ) 『雨戸たたいてもし酒屋さん、無理言わぬ酒頂戴ね』・・・・
なんてねェ、夫婦の情ですねェこれァ・・・・いいと思ってさァ・・・・また、のむと無理を言うやつがいるからねェ、しょうのねえもんだよ、まったく・・・・(のむ)『明けの鐘ごんと鳴るころ三日月形の、櫛が落ちてる四畳半』・・・・
なんの事(コン)だか知ンねえけども・・・・。(のむ) なかにゃァまずい文句もあるよ。『水に油を落とせば開く、音して(落として)つぼまる尻の穴』・・・・なんてね。(と、のみ) 『酒は米の水、水戸様は丸に水』なんてね。
『意見するやつァ向こう見ず』 だァ、はッはッはッはァ。(と、すっかり酔っ払って陽気に大声で笑い、そのまま口を盃へ。残りをのみほし) ふゥ、(と、息を吐くと) 何杯(ナンベエ)のんだかな
主: (すっかり驚いた様子で) 三杯さ
久造: あと何杯(ナンベエ)のむだい
主: あと二杯さ
久造: あと二杯(ニヘエ)か・・・・心細くなってきた・・・・
主: いやだよゥ、こっちが心細いよ・・・・近江屋さん、こりゃちょいと驚いたなァ。なんだか旗色が悪くなってきたよ。
いえねェ、昔ねェ、柳橋の万八なんてえ料亭でもって酒仙会という会があって、酒豪がみんな集まった。
のむ競争をしてね、まァ三つ組みの盃、これァ、二升何合かはいったが、これをのみほせたものがほとんどいなかったってン。それがもう、そうやって、三升のんじまって、四升目へ手がかかってンだから・・・驚いたなァ。
いや、だけどね、勝負の面白いのはこれからだ。よくあるやつだ、お蕎麦を自分が座った背の高さだけ食べるなんてんで、始めはするするするする入っていくがね、最後のこの、一枚。これでへこたれるということもある。
大福を百食うなんて、始めはばくばく行くんだよ。あとの二っつ三つがどうしても通らない。なんとかして食べちまおうと思うから、引っ張ってみたり叩いてみたり(と、大福を手で叩きつぶす形) どうやったって量(カサ)に変わりはないんだから・・・・えゝ? この人だって最後の一杯でへこたれるというやつだよ。なァこれからだよ、面白いのは・・・・(と、のんでいるところを驚き入って見つめ) 驚いたねェ、御覧なさい。かたまって、ぐいッ、ぐいッとはいっちまうんだからなァ・・・・鯨飲馬食なんてえがどうも驚いたもんだなァ・・・・うん、おゥ、ほら四升あけました・・・・最後の一杯、これでへこたれるてえやつだ
久造: (すっかり酩酊しているので体が定まらず、ふらふらと体を動かしながら盃をさし出して) さァ、酌ゥしてくだせえ。
どんどんついでこだせえ。こぼしたってなんだって構わねえだァ・・・・こぼせばおらァ畳ごとのんじまうだからな・・・・どんどんついでくだせえ・・・・へえどうも・・・・だアさま、でえじょぶだよおらァ・・・・へこたれねえだから。
あゝ・・・・だけどお互えに気ィ揉ましては気の毒だから早えとこ片ァつけるべえか。のむものはのむ、貰う物は貰うと・・・おら味わわずに一気にのんじめえばええだからね・・・じゃァ早えとこ片ァつけべえ。見ててくだせえ、だアさま、おら一滴(ヒトシズク)も残さねえだから。そっくりのんじまうだからね。見ててくだせえ、片ァつけべえ。(と、盃を口に持って行こうとして) ふゥ (と、ひとつ息を吐き、ちょっとためらうが) でえじょぶだよ。へこたれねえだから・・・・(と、のもうとして、また) でえじょぶだよ・・・・(今度は盃を高く上げて、口をつけると体をあおりながら、流し込むように一気に飲み干す。ぐッと肩を落として) どうだ、のんだろう
主: これァ驚いた。どこへはいっちまったかと思う・・・・いや、こりゃ恐れ入ったなァ・・・・近江屋さん、あたしの負けだ。さァ久造さん、こっちへおいで、さァこれ、約束のね、お小遣いだよ、さァさァさ、すくないがとっとくれよ。(と、ふところから財布のこころの手拭をとりだして、その中からいくらかを渡し) ねェ、久造さん、あたしお前にちょいと訊きたいことがあるがなァ
久造: なんだ、あとなんべえのむ・・・・
主: いいや、もうのまなくたっていい・・・・さっき考えてくるってって表へでたな、あれだ。なんかあるんじゃァないか。
こういうことをしておけばいくらでものめる。いくらのんでも酔わないなんて、なんかまじないがあるんだろう。
それをお前やってきたんじゃないか。それをあたしにちょいっと聞かしとくれ
久造: うあッはッはッはッはッはッはッ、あれァなんでもねえだよ。おらァ五升ときまった酒ェのんでみたことがねえだ。
心配でなんねえからな、そいから表の酒屋へ行って (と、下手奥を示し) 試に五升のんできたよ





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酒が弱い

2006年06月13日 | 小噺
 大変この、お酒の弱い方がおりまして、
「いまあたしはねェ、酒屋の前を通って来ただけで、こんなに酔っぱらちゃうんですよ」
「そうですか」
 って聞いてる人が真っ赤な顔をして・・・・。
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梅雨入り

2006年06月10日 | どうでもいいこと
 昨日関東地方は梅雨入りした。
今日は梅雨の中休み?で28℃まで上がるとのことで、お台場へ。
森下から急行バスに乗る。
バスは10人ほどを乗せ、20分あまりで到着。
すっきりと晴れず曇り模様のためか、土曜日の割には人が少ない。
 帰りは水上バスで浜離宮へ。
花菖蒲がまっさかり。
花菖蒲まつりということで、鏡花仙(だったかな)さんの江戸大神楽を
三百年の松の前でやっていた。


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縁起かつぎ

2006年06月09日 | 小噺
よく、縁起を担ぐ、なんてことを申しますが、われわれ噺家も、言葉の上で縁起を担いだりいたします。
例えば、「する」という言葉は我々あまり使いませんネ。「する」というのは、あまりいい言葉に使われません。
「興行を擦る」ですとか、あるいは「お金を擦る」なんてんで、ですから「する」という言葉を使わないで、どういうふうに置き換えるかと申しますと、「あたる」という言葉に代えます。
我々がこの落語塾にはいりまして、まず先生方から
 「いいかい、おまいさんは今日から塾生なんだから、『する』という言葉は使っちゃぁいけませんよ。
 『あたる』という言葉に代えなくちゃぁいけませんよ。」と言われるわけでございます。
あのー、「すり鉢」なんてありますがねぇ、あれ、我々の方では、「あたり鉢」と申します。
「すりこぎ」のことを「あたり棒」、「すずり箱」のことを「あたり箱」なんて申しますね。
よく、あの、居酒屋なんかで「するめ」のことを「あたりめ」なんて申しますけど、あれもみんなこっから出てるわけでございます。
ですから「する」という言葉は「あたる」という言葉に代えなくちゃぁいけない、なんて言われましてね。
こないだ、新しい塾生が「スリッパ」のことを「あたりっぱ」って言って、ひっぱたかれておりましたけども、あまり外来語は代えない方がよろしいようでございまして・・・
 また、花柳界の方にいきますと「おちゃ」という言葉を非常に嫌がりますね。
「お茶を挽く」なんて嫌な言葉でございます。
ですから「あがり」ですとか「おてばな」なんてぇなことを申します。
「あがりをひとつ」「おてばなをどうぞ」
こないだ、ちょいと判らないことがありましてね、皆さんも知ってると思いますけども、あの上野の隣の電気街の秋葉原。あすこを、あたくし歩ってましたら、ちょっと知ってる芸者さんに会いましたんで、、
「あーっ、おねえさん、これからどちらへ行かれるんです?」って言ったら、
「あっ、これから隣の駅の『おでばなの水』まで・・・
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原作本

2006年06月07日 | どうでもいいこと
先日映画のエキストラに行ったが、
映画と同名の原作本「しゃべれどもしゃべれども」を読んだ。

 二つ目の落語家が、吃りの従兄弟、黒猫のような女、大阪から転校してきた小学生、解説になるとしゃべれなくなる元野球選手の4人に落語を教える。
 4人はそれぞれ悩みをかかえ、話し方教室ののりで集まる。
落語塾に通う身としては、考えさせられる場面が多々あり、そんなのも含めて面白く、長編だがイッキに読んでしまった。
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ぼやき酒屋

2006年06月04日 | 落語
 えー、世の中にはいろいろと驚く事がございまして、こないだ新聞読んでましたら、地方でひとりで暮らして
たおじいちゃんがお亡くなりンなったんですね。で、この人ね、コンビニのおむすびばかり召し上がってたん
です。たまたまそこのコンビニというのは、防腐剤の入った水でもってお米を炊いてたんですね。
で、このおむすびばかり召し上がってたもんですから、このおじいちゃん、亡くなって三月経ってから発見
されたんですけれど、腐ってなかったそうでございます。
 皆様お気をつけ願いたいとおもいますが・・・・


主人: いらっしゃいまし。ささ、どうぞこちらへ
客: おー、大将、こんばんは(かなり酔った態で入ってくる) はっはァ、今日は寒いねー。
主人: お寒ゥございますねー。早速ですけど、お飲み物は何になさいます?
客: そうね、焼酎のお湯割りとね (店内の品書きを見ながら) あ、厚揚げをもらおうかな。
できた? 早いねどうも、へっへっへ、おれね、焼酎のお湯割りだいすきなんだ。(グラスを受け取り、少し飲む)
(タンと舌打)うまいねー。 こういうの飲むと風邪がぬけるね。ウーン、こないだ久しぶりにさァ、8度5分熱が出てさァ、うちのかみさんが心配してね、『あぁた、これ頭に乗っけておやすみなさい』ってんでね、あの四角
くて冷たいの、あれ、なんてえの? アイスノン?あ、そうそうそうそう。それタオルで巻いておでこン乗っけてねウー、そしたらね、何か明け方近くなって、何か顔中が生臭いんだよ。おかしいなぁと思ってこのタオルをほどいてみたら、これがね、なんとね、冷凍のイカのパック。・・おかげで顔中日本海。ねぇ、かみさんに文句付けたら、かみさん腹ァかかえて笑ってて『あら、ごめんなさい、あなた、暗くてわからなかった』・・・・
うそですよ。うちのかみさんはね、器量もいいし、気だてもいいけど掃除が下手。もぅ家中散らかりっぱなしなんだから。何にも知らない人がうち尋ねてくると『あー、ここはドンキホーテですか』ってえぐらい汚い。
(一口飲み)そのかみさんがめずらしく冷蔵庫を掃除してね、で、晩ご飯にあさりの佃煮が出てきたの。
で、おれがそれを食べてたら『あなた おいしい?』ってから、『あーなかなか旨いね』ってそう言ったら、
『あらそうゥ、まだ食べられるンだ』・・・・ やな台詞でしょ? おかしいなって思って、びんの脇ぃ見たら賞味期限が昭和63年て書いてあんの。  うちは冷蔵庫を10年前に買い換えてますよ。ということはこの佃煮は冷蔵庫二代に渡ってご奉公してんの。やだこんな佃煮の世界遺産みたいなのねェ。
 アー、来た来た厚揚げ厚揚げ、(と、厚揚げの皿を受け取り) おれね、厚揚げ好きなんだよォ。ほらほら、上にかつぶしが乗ってるでしょ。これね、上から醤油ゥをチュゥー・・・
主人: お客さん、お客さん。お客さん、それね、おソースですよ
客: えー? ソース? いやおれね、初めての店だから何がなんだか分かんないンだよ
主人: うちはね、頭の上が黄色いのがソースで、赤いのが醤油なんですよ。おなかんとこに書いてあるでしょ
客: 書いてあるっていってもね、ボトルが向こう向いてて「ス」の字しか見えなかったの!
主人: お客さん、「ス」が見えたらソースじゃないですか
客: そうとは限りませんよォ。もしかしたら「醤油デス」って書いてあるかもしれないんだから・・ね、いいのいいの、もうこれかけちゃう
主人: お客さん、食べられませんよ。新しいのとお取替えしますから
客: あーはっはっは、うまいこと言ってね、勘定倍にしようってんじゃないの
主人: んなことォありませんよ、それぐらいサービスさせてもらいますから
客: ほんとに? あーそう? じゃね、急いで一人前作ってね。そのあいだにオレこれ食べちゃうから
主人: ちょいと、いけませんよ、お客さん
客: いいよ、これくらいサービスしてよ、ねー、もーね、近頃年のせいか堅いもんがかめなくなっちゃってさー、こないだもキャラメル食べてたらガリッて音がすんだよ、ね。そしたら奥歯の金が取れちゃったの。
おれ歯医者と相性が悪いんだよ、今通ってる歯医者、近眼(チカメ)でね、あー、だめよ近眼の歯医者は、型とってね、中消毒して金かぶせる時にね、オレの口ンとこ顔ォ近づけてこんな形してんだよ。ねー。
こいつがそそっかしいから、オレの前歯にコーンと当てちゃったの。で、はずみでもってオレごくんて飲み込んでね、『先生、金飲み込んじゃいました』ってそういったら『あーそうですか、出たら持って来てください』
・・・・・三日後に出ました。それがこれ (と、口に指をかけ、広げて歯を見せる)
主人: あ、汚ねえ。汚いねお客さん
客: 汚かないよォ。自分の体から出てんだから、な、もう近頃なんにでも腹ァ立つねェ。
歌い手だってそうですよ、訳のわかんないのが多いでしょ? コブクロとか ゆずとか ケツメイシとか イナゴライダーとかねぇ。
えゝ? 昔の歌ァよかったなー。もう歌詞きいただけでね主人公がどんな人だかすぐ判るよ。
♪あたしばかよねー  おばかさんよねー
あーこいつはばかなんだなって すぐわかるでしょ
♪15、16、17と あたしの人生くらかったー
あー、ひょっとして貧乏?ってすぐわかる・・・・今の歌ァだめよ。ねー。 こないだアレ聞いた。あの、は、は、は、は、浜、浜崎あゆみ
主人: あぁ、あゆですか?
客: そうそうそうそう、近頃ふけちゃって鮒みたいな顔立ちだったけどね。あいつの歌で「モーメンツ」ってのがあって、それ聞いて驚いたよ?一番の歌詞がねェ、「心が焦げ付いて焼ける匂いがした」 じゃ、テフロンに変えたらどうだって話でしょ。ねー。ほんとよー・・・もっと驚いたのは、あのあの平井健ね
主人: あたし好きなんですよ 「のっぽの古時計」
客: そうそうそうそう、やせて、髭はやしてねェ、あいつのヒット曲にね、「瞳をとじて」てのがあんの、おれこれ聞いてビックリしたね。『瞳をとじて』・・閉じるのはマブタでしょ? ねェ?ひとみはとじませんよォ。
でまた、この一番の歌詞がすごいね、「朝めざめるたびに、君のぬけがらが横にいる」・・・・・
毎朝惚れた女に脱皮されてたら気味が悪い。蝉じゃないんだからねー。そこいくってえと昔の歌ァよかったね。
おれ好きなのはねェ、「月の法善寺横町」 
主人: あー、ありましたね、あれ、あたしも好きでしたよ
客: ねーあれいいよねェ文句が
♪包丁一本   歌うと目の前に包丁がスーと浮かんでくるでしょ? それをどうするのかナ
♪さらしに巻いて  それからどうなるの?
♪旅にでるのォもォ  なんのために?
♪板場の修業  昔の歌はね、こっちの疑問に答えてくれた。
今だめ、ほんと、なに聞いても腹が立つよ大将だってそうでしょう? いろんな客ゥ相手にしてるからストレスがたまるでしょう
主人: ンははっ、溜まらないと言ったら嘘んなりますけどねェ。
客: 言われっぱなしはダメよォ。たまには表ェ出て言いたい放題言って、ストレス発散するのが体には一番いいんだから
主人: ンははっ、こらァいいことォ伺いました。ところでお客さん、ご商売はなにをなさってるんですか?
客: おれェ? おれ居酒屋のあるじやってんだよ・・・・

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