安呑演る落語

音源などを元に、起こした台本を中心に、覚え書きとして、徒然書きます。

お化け長屋

2015年08月03日 | 落語
お化け長屋

熊: ねえ杢さん、なんで怒ってんの家主(オオヤ)ァ、あんなに・・・・・
杢: 空家のことよ・・・・・
熊: ああ、あれかい。へーえ家主ァ、あれ見たのォ?
杢: そう、ほら、あそこに、うちに置いとくと邪魔ンなる荷物をみんなで入れといたろう、お前も放り込んだろう
熊: そうなんだよ、家に置いとくと邪魔なんだけど捨てられないしね、何かまた役にも立つだろうしさ。
家に入れると六畳が四畳半、四畳半が三畳になっちまうしさ・・・・・
杢: で、家主がさ、『誰が空家へこんな物を放り込んだんだ』 っていうから、『あたしは知りませんが・・・・・。
じゃ、ひとつ調べて、置いた人にそれぞれ引き取らせますから・・・・・』 ったら、有無もいわせねえ。
『いいや、入れた奴は、俺のほうで調べ上げて、そこから空家の家賃の割り前を取る』 ってこういう
言い方をしやがる。嫌な言い方じゃァねえか、そうだろう
熊: ちょいと物置代わりにしたけれど、こうこうこうで、人が引っ越してくるよってことになりゃァ、そんな物は
捨てるなり、家ン中へ戻すなりして、すっかり綺麗にして渡すのは当たり前じゃねえか。それを頭ごなしに、
ああいう言い草ってのは、嫌だね。あの家主ってのは・・・・・
杢: そうそう。今度ばかりでないよ、あいつは。そういう奴だよ
熊: 嫌な奴だね・・・・・で・・・・・どうするの?
杢: 嫌な奴だよ、あの野郎は。本当だよ。でね、長屋ァ、借りに来ないようにしちゃおうってんだ
熊: 出来たらそうして貰いてえよ。あれ一軒でも空いてるとね、むこうも家賃を、上げるの、どうのって言い難い
だろ。全部ふさがっちまうと、家主のいいなりにならなきゃァなんでえ、ってこともあるからさ。
ふさがらねえ方がいいんだな
杢: でね、あすこォ借りに来たらね、家主の家、教えんな、俺ンとこ教えろ。家主の家は遠方でござんす。
で、この杢兵衛ンとこ行きゃァ、話が一切わかると、ここの差配人だと、こういっとけ。いいかい家主は
遠方、差配人で話がわかる。杢兵衛さんとこへ行きな、ここで話がわかると・・・・・。そうすりゃァうまーく
俺が丸めて、借りねえようにしちゃうから。万事任しといてくれ
熊: あっそう、いいとも。じゃァみんなにそう言っとかァ・・・・・
杢: そうしておくれ
A: 少々伺いますが・・・・・
熊: なァに?
A: あのォ、お長屋・・・・・
熊: ああ、長屋。あ、長屋ね、知ってるよ。このすぐ・・・・・
A: あのォ、空き家が・・・・・
熊: うん、あるよ
A: で、家主さんの家を・・・・
熊: ああ、そう、そうか。借りにね。うーん、そうですか。家主さんの家はチイッと遠方なんだよな
A: ああ、そうですか。どの辺り?
熊: いやいや、わざわざ行くには及ばねえんだ。この先にね、ケヤキの木が見えンだろ。そこを入ってった
ところ、二軒目の右っ側にね、差配人がいるよ、杢兵衛さんて。古いよ。仇名が古狸の杢兵衛ってね。
そこ行きゃわからァ
A: あ、そうですか。どうもありがとうございます
A: 御免ください。少々伺います。古狸の杢兵衛さんのお宅はこちらですか?
杢: 何だい。変なのが来やがったねえ。古狸の杢兵衛だって言いやがる。陰じゃァよく言われているってことは
聞いてるがね。面と向かって、面ァ掴まえて言われたのは初めてだよ。
 ハイハイ、ああ、いらっしゃい、私が杢兵衛ですが・・・・・。何です? お長屋ね、はいわかりました。
今、ご案内してもいいけど、行かなくてもわかりますよ。間取りでしょ。同じだよ、うちと。あなたがそこに
いるところが二畳のたたきになってて、部屋ァ四畳半と六畳。ええ。三坪ばかりの庭がついていますよ。
縁側もあってね。日当たりはいいやね。また、夏は涼しいしね。悪くないよ
A: ああ、そうですか。間取りなど結構でございます
杢: で、造作なぞはすっかり入ってんだ。すぐ住めますよ
A: はあなるほど、結構でござんすな。で、あのォ、敷金なぞは?
杢: ああ、敷金ね。あんなものは出て行くときに返すもんだから、いりません
A: じゃ、お家賃がお高い・・・・?
杢: ああ、家賃。・・・・・家賃ねえ・・・・・まァ、いくらかでも入れてくれりゃァそれで充分だし、払わなくてもいいよ。
本当に住んでいただけるんなら、こっちからいくらかあげようか・・・・・
A: ・・・・・あの、お家賃が・・・・・
杢: そう。要らないんだ
A: 何かわけがあるんですか?あるんでしょうねえ・・・・・
杢: まァ、あンだろね、ありますよ。だいいちね、あんた、こんな世知辛い世の中に、あれっだけのものを貸して
家賃が要らないてんだよ。ああ、わけがある。あるよ、あるヨォ・・・・・
A: はぁ・・・・・?
杢: あのね、こんな事ンなるくらいなら、なぜ、引っ越してくるまえに一言いってくれなかったんです・・・・・
なんてね、私も恨まれるのは嫌だから話をするがね。話はしますが、そこでは話ができない。もっ、もっ・・・・
・・・これへ、お上がりなさい、お上がりィ・・・・・
A: お邪魔します
杢: 今を去ること三年ばかり前、あすこにね、年のころ三十二、三のおつな後家さんが住んでました。綺麗な
人手ねえ、色香があって瑞々しくって。そらまあ、女がひとりで住んでるとねえ、世間はうるさいや。
“男やもめにうじが湧く”が、“女やもめに花が咲く”って。全くでね。何のかんの言い寄るのが居たねえ。
仲人まがいの口を利くのも居りゃァさ、“暮らし向き一切私が面倒みます”とか、中には“家賃ぐらい私に
持たせて下さい・・・・”のと、何のかんの、と言ってるのを、私の耳にも入ってたし、見てもいるが、堅い人
でしたから、“亭主は一度で懲りておりますから”・・・・・てんで、これっぽっちも浮いた話は、なかったんだ。
ところが世の中好事魔多し。全くだ。何のこともないこの無事な後家さんのところへ、花嵐時分だ、ある
雨風の激しい晩に泥棒が入ったよ。荷物 “ドッコイショッ” と背負い込んで逃げようと、振り返ってみた
後家さんの寝乱れ姿に、泥棒がムラムラっと、きたってェやつだ
A: 悪いやつですなァ
杢: 荷物降ろすてェと、いきなり覆い被さるように重なって、胸元へてをグイッと差し込んだ。気が付かない
訳はない。“ハッ” と目ェ開けてみりゃァ、雲つくような大の男(オノコ)。“どろぼう~” と、大きな声を出
さなきゃァ済んだのかも知れないが、叫ばれりゃ泥棒も人の子。我が身が可愛い。懐に持っていた匕首を
抜くってェと、逃げる後家さんの肩先へ斬り付ける。“ギャッ” てェのを、髻(タブサ)ァ掴んで、引き摺るように
抱え込んで、グイッと乳の下。これがいわゆる致命傷。“ギーッ” といったがこの世の別れ。
死んじまったよ
A: はあ・・・・・
杢: 泥棒はどっかへ隋徳寺、いまだに捕まらねえ。世の中どういう仕組みになってんだか、私ゃ分かりません。
でね、早起きの後家さんがその日に限って起きてこない。“おかしいな、ゆんべ灯が入ってたのを私は見た”
“私も”・・・・・てんで・・・・・、ではどうしよう。
 じゃァ、というんで長屋連中立会の元に、雨戸をこじ開けるようにして、あんた、中を見たァ。ああぁぁぁあ、
いま思っても身の毛がよだつ。血の海ン中で後家さんが虚空を掴んでェ・・・・・見なくていいのを見ちゃって
ねえ。肉の塊。血の海。
私は・・・・・なに、私ばかりじゃねえ、あの現場ァ見た者は二、三日喉へ何も通りゃしねえ。
 泣いてても始まりませんわ。長屋中で弔いは懇ろにして・・・・・。
 新しくしましたよ、ね、畳を、襖を、張り替え、また、入れ直して貸しに出す。すぐ借り手が来るんだ。
現にお前さんも来てるをなァ。ところが三日ともたねえ。四日と居やしねえ。残らず逃げるように居なくなる。
はて、おかしいな、何なのだろう。聞いても答えてくれない。嫌がるのをたって聞いてみたんだがね、
お前さん、居なくなるのも道理だ。引っ越して来て一日、二日は何でもねえんだ。いいかい、三日、四日
たったある雨のシトシト降る晩なぞがある・・・・・
A: はい
杢: 宵の内は賑やかだが、夜が深々と更けわたる。あたりはシィーンとするね・・・・・
A: あのォ・・・・・お話しはだいたい・・・・・わかりました。私、そういう話はごく苦手なので、これでもう失礼を・・・・・
杢: 何処やらの寺で打ち出すか、遠寺の鐘。陰に篭って物凄く、ボォーン~と鳴るとな・・・・・
A: ・・・・・もうこの辺で結構です。止めてください。私はあのォ、そういう話を聞くと、夜分一人で便所へ行けなく
なるような性分で。この辺で・・・・・
杢: 仏壇のリンが、ひとりでに “チンッ” と鳴る。“ちーん” てんじゃないよ。“チンッ” と鳴る。四畳半と六畳
との間の襖が音もなくツツ、ツ、ツ、ツツツツゥーと開くとね、サラサラ、サラサラッと髪の毛が唐紙に当たる
音。ふっと見ると、その殺された後家さんの幽霊がそこに、翠の黒髪おどろに乱すと、乳(コレ)から下(コレ)へ
血みどろ、血まみれ。細ーい手をだすとねえ、『あなたァ、よく越しておいでだねえ』 と越してきた人の顔を
見て、『ニタニタッ』『ケタケタッ』 と笑う。冷たい手で越してきた人の顔を、スーッと撫でる・・・・・
A: うわーーっ!!
杢: あ、驚いた。大きな声して居なくなっちゃった。驚くほどの話じゃねえよ。臆病な野郎だね。何だいこりゃァ、
忘れて行きやがった。財布だ。おいつの財布だ、中に結構はいってらァ。こいつは有難えな
熊: どうしたい。杢さん。青い顔をしてすっ飛んでったけど、喧嘩?
杢: 喧嘩じゃねえ。ははっ、大笑いよ。・・・・・いや、あのね・・・・・あの家借りてえったから・・・・・
熊: そう、だからいわれた通り杢さんとこに俺が行かせたんだがね
杢: そうか、でね、そこで怪談噺を一席やったんだ
熊: ヘェー、どういう風に・・・・・
杢: いえね。あすこへ年頃三十二、三のおつな後家さんが住んでたが・・・
熊: 後家さんなんて居なかったぜ。あすこに居たのは死んだ糊屋の婆さんだぜ
杢: 噺だよ、はなし。でね、花嵐時分のある雨風の激しい晩に泥棒が入ったてんだ。おまけにその泥棒に
殺された。その恨みがな、新しく越して来た人に出るったんだ、噺は上手く出来てんだろ。引っ越してきて
一日、二日は何でもないが・・・・・三日、四日経ったある雨のシトシト降る晩なぞがある。宵の内は賑やか
だが・・・・・夜もォ・・・・
熊: いいよ、俺にやったって仕様がねえ
杢: そうだけど、ま、こんな具合にやったんだよ。冷た~い手を出して、越して来た人の顔を撫でる・・・・・
ってえとこで、雑巾があったから、それで野郎の顔をスーッと撫でたらね、『ギャッ』 て飛んで、逃げちゃっ
た。・・・・・で・・・・・財布を忘れていったよ。中にいくらか入ってる。どうだい、鮨でもつまもうよ・・・・・
熊: ヨォ、有難えな。じゃァちょいと頼みに行ってくらァ、俺の好きなもの取っていいかい?
杢: いいさ、いいとも・・・・・。で、借りに来たら、どんどんこっちィ寄こしな
熊: 分かった
八: おーい、おい、ちょいと来い。おいおいおい
熊: はァ、何です?
八: ちょっくらものを聞くがよォ
熊: 何です?早口でよくわからないんで・・・・・
八: ちょっくらものォ聞くがよ・・・・・
熊: そうですか
八: 何が 『そうですか』 だ、青瓢箪。あすこにある家借りてやろうと思ってよ。どこだ、大家の家は?
大家の家はどこだってんだ。おい、はっきりしろ!
熊: 何だ、はっきりしろとは・・・・・
八: 大家の家はどこだってんだよ、兵六玉
熊: ああ、大家の家ね、大家の家は遠方ですよ
八: 遠方? 何だ、その遠方ってのは。遠方って処に住んでんのか? えッ。遠方何丁目ってのか?
熊: 遠いんだよ
八: どう遠いんだ。日本に居ねえのか? 外国(ゲエコク)か?
熊: げえこく?
八: エゲレスか、オロシャか、ポルツガルか
熊: そんな処じゃねえ。ちょいと遠い・・・・・ん
八: 遠くてもいいよ。お前代わりに行って来い
熊: 嫌だよ、私は
八: じゃァ、どうすりゃァいい
熊: そこまで行かなくても話しは分かります。この先にね、差配人が居るよ。杢兵衛さんて、長屋で一番古い
んだ。仇名が古狸の杢兵衛ってね。そこへ行きゃァ分かるよ
八: 古狸の杢兵衛? その野郎は馬鹿だろ
熊: 別に馬鹿じゃァありません
八: 馬鹿だよ、馬鹿に決まってらァな。こんな小汚え長屋に住んでて古狸なんて言われて喜んでる奴ァ、
馬鹿もいいとこだ。嫌だねえー
熊: そんな悪く言うなら、借りなきゃァいいじゃねえか
八: 借りなきゃァいいってえけど、そうもいかねえんだよォ。借りたかァねえよ、こんな処は。借りたかねえけどな、
仕様がござらぬわけがあらァね。出来たんだよ。たまらねえよ。いい女だぞォ。昼間よくって夜がいいんだ。
たまらねえよ、アッハハハ。いいか俺は親方ン処に居候の身だよ。女が出来たからってそこに連れ込む
訳にはいかねえだろ。で、よォ、俺がここに居るだろ。居るたって、チョイト飛び石。梯子に使っているだけ
だい。で、俺が居ると、女が来るよ、『アラよっ』 ってんで来るんだ。いい女だぞ。この野郎、井戸端か
なんか会って、変な目付きしやがると、承知しねえぞ
熊: 何を言ってんだ。馬鹿だね。見やしねえよ、そんなもの。のろけてりゃァ世話ねえ。行ってきな
八: ああ、有難よ
えーと、あ、ここか。おおっ、居るかあーっ。おーい、狸は居るか、杢は居ねえかー。おい。狸モクゥー
杢: 狸モクだってやがら。変な奴が来やがったね。・・・ハイ、私が杢兵衛だが、何です?
八: ああ、お前が杢兵衛? ははァん。面白いね、お前の顔。笑っちゃうね、お前の顔は。アッハハハ。
面白いね、笑うね、お前の顔は・・・・・
杢: 大きなお世話だよ。何だい?
八: 怒んなよォ。家を借りようってんだよ。お客さんだぞォ。今、そこに居た青瓢箪に屁ェひっかけたような
奴に聞いたら、おめンとこでもって話ィぶちゃァわかるってんで・・・・・
杢: ええ、わかりました、そうです。私でわかります。はい。お連れしてもいいんですがね、間取りがここと
同じです。あなたが居るとこが二畳のたたきの、四畳半の六畳。三坪の庭で日当たりは良いし・・・・・
八: ヨォッ、日当たりまでは要らねえよ。二人で住むにゃァ贅沢だ、今日日、結構なもんだ。造作はどう
なってんだよ、おい
杢: 付いてますよ
八: 付いてる? すぐ住めンの。おお、いいね。で、賃店よ。
杢: ち、賃店?
八: 店賃。家賃だよ。高えとこ言うと殴るぞ
杢: 高いも安いも別に、何もいってやしない・・・・・家賃・・・・・家賃ねえ
八: ハッキリしろ、何だい?
杢: 家賃は、まあ、この家に住んでくれれば、まあ、入れてくれりゃァそれでいいし、入れなきゃ入れない
でいいし・・・・・
八: 何だい、おい、入れなくてもいいって・・・・・要らねえのかい?
杢: ええ、そうです。本当に住んでくれるのならいくらかあげようか・・・・・
八: チョット待ってくれよ、おい。気でもふれてんじゃねえだろうな。間違いねえのか。住みゃァ店賃が
要らねえ? こっちにくれる? えゝ? おい。只? 本当か。そんな話が、あるってことは話しにゃ
聞いたけど、本当にあるとは思わなかったねえ。そうかい。じゃ頼むよ。すぐ引っ越してくるから。
ほかに渡すな。頼むぞ。ほかに貸すと、手前、ただじゃァおかねえよ、身体ァ動かなくなるよ・・・・・
杢: あなた、チョット待ちなさい。チョッチョッチョットあなた。チョット、ま、それはななた、あのォ、考えて
もご覧なさい。いいですか、この世知辛い世の中に、あれだけの家を貸してですよ、店賃が要らない
てんですよ。何かあると思わないかい?
八: お化けが出ンだろう?
杢: ・・・・・?・・・・・はあ・・・・・そうです・・・・・
八: いいじゃねえか。面白いよう。いいよォ
杢: いいようォって、あなた。今はそんなことをいってるが、引っ越して来て本当に出て来てどうのとなって、
こんなことなら越して来る前になんで一言いっておいてくれなかった、なんて言われると・・・・・
八: いわねえよ、俺は・・・・・
杢: いや、どうなるかわからないし・・・・・
八: わかってんだよ、お化けが出ンなァ、だからいいよ
杢: で、でも、あの、こっちへお上がり・・・・・
八: 早くしろいッ、この狸ィ
杢: いいますがねェ・・・・・あのォ・・・・・
八: 何をキョロキョロ見回してんだ。誰か居ンのか、ほかに・・・・・
杢: いえいえ、そうじゃない。つまり何んとなくまわりが怖い・・・・・。そこでは、お話が出来ない。どうか、これへ
上がって下さい。こっちへお上がり・・・・・お上がり・・・・・
八: 何をしてやがる、よォせよ、この野郎、変な手つきィすんな、熊がしゃけ捕ってるような恰好してやがって。
こん畜生め。ははァァ、先祖は熊か、ホラ、おい、座ったよ。さあ何か喰わせるのか
杢: 食べさせやしませんよ。・・・・・今を去ること三年前・・・・・
八: 古臭えこといいやがって、馬ー鹿。売れねえ講釈師みたいに、今を去ること三年前だってやがら・・・・・。
今を去るも何も、三年前なら三年前でいいじゃねえか。テキパキやれ
杢: ・・・・・そこに三十二、三の後家さんが住んでて・・・・・
八: よ、よ、よ、よ、よ、よ、いよゥッ、へへっ、後家。たまらねえね、いいね、うん。で、どうだい。面はどうだい。
えっ、ご器量の按配えは・・・・・
杢: きれいな人ですよ
八: 有難え。不器量のは嫌だよォ。よくなくちゃいけねえ。後家でいいとくると、たまらねえな。ど、ど、どんなん
だい。俺ァね、尻が“キュッ”と上がってんのが好きだ。そいで脚はあんまり太くねえ方がいいな。で、あのね、
顔は面長もいいけど、丸いのも・・・・・
杢: いえ、あなた、そう先を焦らないで下さい、順に話をしますから。あのね、きれいな人でね。瑞々しくって・・・・・
八: テヘッー?
杢: 大きな声だネ。で、まあ、ひとりで住んでまして、後家さんだと、ナンノカンノとまわりでいろいろうるさくいう
人も居まして、俗にいう “女やもめに花が咲く” って・・・・・ね
八: ああ、わかる。目に浮かぶよ。見える。その通りだァ。女がひとりでいる。ましてきれいで後家とくりゃァ、
あたり近所は黙ってねえ。いうよう、いろいろなァ
杢: 仲人まがいの口を利くのもあれば、暮らし向き一切、中には店賃だけでも私が面倒みようの・・・・・
八: わかる。その通りだよ。いろんなことを言やがんだ。出せもしねえのに言ったりなんかしやがんだろ。
手前も一緒になって言ったんだろ。とても店賃は無理でござんすから、腰巻きぐらい洗いましょうとか、
何とか言いやがって、こん畜生。洗いやがったろ、助平狸・・・・・
杢: 話がし難いね、この人は。洗わないよォ。そういうことはしないよ、私は・・・・・。ま、『私は、亭主は一度で
懲りておりますから』・・・・・と、堅くくらしていて、浮いた話はこれっぽっちもなく、まあごく無事に・・・・・
八: 面白くねえな、堅えのもな、いいけどよ。何かねえのか、それでお終えか?
杢: いえ。俗に世の中好事魔多しと申しまして・・・・・
八: よォ、そう来なくっちゃァいけねえ
杢: あれは花嵐時分のある雨風の激しい晩に、あんた、その家に泥棒が入って・・・・・
八: 泥棒? 泥棒ォ。ンの野郎。俺がいたら捻っちゃうもに。残念だったなァ。で・・・・・どうしたい?
杢: 『ドッコイショッ』 と荷物を背負い込んで、ふと逃げようと、かみさんの寝乱れ姿に、泥棒がムラムラッと
きた
八: んふっふっふゥ。見て、こう。わかるよ。んふふーッ。ん~ん
杢: 肩なんか、揺すンなくてもいいよ。 荷物ゥ降ろすてェと、いきなり覆い被さるように重なって胸元へ手を
“グイッ” と差し込んだ
八: よォ、やりやがったね。おっぱいへ、手を? よォん、いいねえ。口惜しいね、で、何だろ、はなは嫌ぁ、
なんていっているうちに、揉み揉みされてると、だんだん、なァ・・・・・アアンなんていってな・・・・・
杢: あのネ、そういう話をしてるんじゃァないんだ。恐ろしい話をしてるんだよ
八: そうかい
杢: おかみさんが気が付かない訳がない。見ると雲つくような大の男。『ギャー』 と叫ばなければこんなことには
ならなかったかも知れない。叫ばれりゃァ、泥棒も人の子、我が身が可愛い。逃げにかかるおかみさんの
肩先を匕首で切りつける、『ギャーッ』 というのを髻(タブサ)ァ掴んで引き摺るように抱え込んでグイッと
乳の下。これが所謂致命傷・・・・・
八: この野郎、手前がやったな。やった奴じゃなきゃァそこまでァわからねえはずだ。この野郎!
杢: チョ、チョイと、待って下さいよ。話がやり辛いね、この人は。何も感じねえかと思うと変に乗ってきて、
嫌だなァ。私はやりませんよ。やらないけど、こうじゃないかと思うんだ
八: 思うんだって、この野郎ー、上手過ぎらァ・・・・・
杢: いえね、ま、とにかくそのまま、泥棒は隋徳時で・・・・・
八: 捕まんねえのか?
杢: 捕まりませんよ。どうなってんのか
八: よくねえぞ。捜せ、捜せ、手前もこんな処に座ってねえで捜すんだい
杢: いやっ、ま、そういうことじゃないんだ。それで、とにかく、いつも朝早い人が起きて来ねえ?・・・・・
八: 起きて来る訳ねえ、死んでんだから
杢: うーん、こっちはそう思わないから・・・・・
八: そうかよう
杢: ね、だから、おかしいと思って、長屋ァ連中で立会いのもとに開けて中ァ見た。あんた、血の海。血の海の
中でおかみさんが虚空を掴んでえ~
八: 何てえ形ィしてやがる。ゼンマイで動く人形ね、手前みてえなのがあらァ
杢: 酷(ムゴ)いねえ。昨日まで元気な人が・・・・・。まあ、泣いてても仕様がない。弔いは長屋連中で懇ろにして、
で、家は新しくして貸しに出すてえと、いろんな人が借りに来るが、三日ともたないんですよ。
いやがるのを、やっと聞いてみると、それも道理だ。引っ越して来て一日、二日はな・ん・で・も・な・あ・い
八: ちゃんと喋れねえのか
杢: 雨のシトシトと降る晩などがある
八: あるよ。そらァ。その通りで間違ってねえよ。雨だって降るよう。晴ればっかりじゃァねえんだから。
雨が降らなきゃァ、百姓、田植えに困ンだろうよ
杢: 田植えの心配なんかしなくたっていいよ
八: で、・・・・・どうした?
杢: 宵の内は賑やかだが、夜が更ける。あたりはシィーン
八: うん。話はその通り。お前の言ってるこたァ、間違ってねえ。宵の内はどこでもたいがい賑やかだ。
夜が更けると静かになっちゃう。その通りだ。夜が更けて賑やかになるのはなァ吉原だけだ
杢: ああ、そうですか。あんまりこの節行ったことねえもんですからね。どの位賑やかで・・・・・
八: 大変だぞォ、ドンチャン騒ぎで・・・・・
杢: で・・・・・今、一晩幾ら位?・・・・・
八: 何だ、この野郎は。殺された話はどうしたい。早くやれ、先を・・・・・
杢: 雨のシトシトと降る・・・・・
八: 聞いたよ、それは
杢: 宵の内は賑やか・・・・・
八: そこも聞いたィ
杢: 何処やらの寺で打ち出す、あっ、ここだ、遠寺の鐘。陰に篭って物凄くゥ
八: ブォーンと鳴った頃、爺や・・・・・
杢: 爺や? 仏様のリンがひとりでに“チン”
八: オッ、お前いま、慌てていったな。 いろんなもんが鳴っていいねえ。“チン” なんて、セコく鳴らないで
“チィーン” でいけよ。陽気にやれよ、太鼓か何か入れてな、チンチン、ドンドンッてよ。もっといくかァ。
どかーん、ボカーン、グングン、グングン、ダダダダアダダッ、突っ込めえー、突っ込めえー、二百三高地
を奪え~っ
杢: 乃木大将じゃないよ。そう言う話じゃないんだよ。あのネ、でネ、その・・・・・
八: 早くしろい
杢: 四畳半、六畳、合いの間じょ襖が音もなくツツツツッと開く・・・・
八: まてィ!音もなくって ツツツツッて音してんじゃねえか。
杢: ・・・・・(無言で、両手の人差し指を合わせ、襖が開く仕草)
八: そうだよ。でも、便利でいいなァ。寒い時なんか、懐手したまンま小便だ。ブルブルッてんで月見て小便
して寝ちゃう
杢: 月と小便と一緒にして・・・・・。サラサラ、サラサラと髪の毛が唐紙にあたる音。ふと見ると殺されたかみ
さんの幽霊。翠の黒髪おどろに乱すと、これからこれへ(乳下から下を撫でるように表す) 血みどろ、
血まみれ。細ォい手を・・・・・
八: この野郎、太い手を出すなっ
杢: さも嬉しげに、ニタニタッ、ケタケタッ、と笑う
八: 愛嬌があっていいねえ。幽霊が、笑うってにはいいや。泣き付かれて相談されたって困っちゃうしな。
で、ニッコリ笑っうて頬っぺたに指ィつけて首ィ傾げて、こんなことすんじゃないか?
杢: ジンゴちゃんじゃないから、そんなことしないよ。あなたぁ、よーく引っ越してお出でだねえと、越して来た
人の顔を撫で・・・・・(雑巾で撫でようと)
八: 何しやがんでえ、(雑巾をうばって) 寄越せ、それを。こん畜生!
杢: エッペ、ペ、ペッ
八: 何がエッペだ、こん畜生こん畜生こん畜生
杢: エッペッペ ゝ  ゝ ゝ
八: 何がエッペッペだ。この野郎! 引っ越して来るから頼むぞっ
杢: アー!
熊: どうしたい。また飛んでったよ。逃げたの? うまくいった? 大丈夫?
杢: 大丈夫どころの騒ぎじゃないよ。変なの寄越すな、ああいう馬鹿を。いけないよう、どこの国で取れたか
熊: 知らねえが、怪談もなんにもわかンない。何ィ言ったって驚かねえ。冷たァい手って、やろうと思ったら
逆に、雑巾ひったくられて顔中こすられて、滅茶苦茶になっちゃった、どうするよ。引っ越してくるよ、
あの野郎は。家賃いらねえって言っちゃったんだから。どうする、二人で半分っつ払うか
熊: 冗談じゃねえよ。で、何か置いてかねえかい?
杢: あっ、さっきの財布持ってっちゃった
熊: オイ、杢さん、杢さんよォ、やつ、引っ越して来たよ
杢: ウン
熊: ウンじゃァないよ。やつが引っ越して来たってんだよ
杢: 分かってるよ。見てたもん
熊: ・・・・・どうすンだい? えゝっ、オイ
杢: 仕様がねえよ
熊: 仕様がねえじゃァ済まねえよ。大家に知られたら大変だよ。どうすンの?
杢: 困ったねえ
熊: 他人事じに言うなよ。火でもつけるか
杢: よせよ。乱暴なことを言うない
熊: なら、どうすンの?
杢: だから、やるより手が無え
熊: 何をやるんだい
熊: あの話をよォ、怪談噺さ。幽霊、幽太を出そう。それより仕方ねえ
熊: どういう風に?・・・・・
杢: どういう・・・・・って、喋った筋書き通りに幽霊を出すんだい
熊: あの野郎ン処にか?
杢: 当り前だよ。他の家に出したら、えれえことにならァな
熊: 上手くいくかね
杢: なァに、人間なんてどっかに弱い処があらァ
熊: どういう風にすんだい
杢: ム、そのことでね、どう考えても二人じゃァ無理だ。そこで虎ンべにも話して一役買ってもらうことになったい。
あいつだって引っ越して来られりゃァ困るだろうしね
熊: で、来るのかい
杢: 来るよ、万事おれに任せといて・・・・・
B: どうでえ、いいねえ。我が家が出来た。嬉しいねえ。今迄は居候の身の上だ。いつも親方の眼が光って
たよ。うっかりあぐらもかけねえや。まして、女なんざァ引っ張り込めねえや。それが今日から俺一人だ。
逆さになって歩こうが、寝て喰おうが買ってだい。そこへ女が来るんだ。抱こうが、さすろうが、構わねえ
んだ。ウヒィッ、たまらねえ。休みの日なんざァ、ウヒィッ・・・・・だね。ちょいと掃除・片付けだけで、こんなに
綺麗になったい。これであいつが来ると、また一段と綺麗になって世帯らしくならァ。『あたしがやるよ』
って、あいつは綺麗好きときてやがるし、料理もうめえし、ね・・・・・
 『幽霊が出る』 ってやがら、出るもんか。家賃は只だし、結構なこった。天下ァ取ったようなもんだ。
・・・・・湯でも行って来よう
八: 今晩は
隣人: はい
八: あのォ、今度、隣へ引っ越して来たもんで、八五郎っていいます、よろしく
隣人: ああ、そうですか。ズーッと空いてたもんで、何か心配でしてね
八: 何か出るんでしょ。出やしませんよ、ね
隣人: ・・・・・?・・・・・
八: 大家さんの家は遠いんですってね
隣人: いえ、遠くありませんよ。表へ出て右に三軒目の処ですよ
八: ・・・・・へえー、そうですか。なんだい差配人のやつめ、何をいってやんだい。いえね、大家さんちは、遠方
とかいってたんで・・・・・。いえ、どうってことないんで、チョイとお湯に行ってきますんで、お願いします。
火を少しだけ熾してきてあるんで・・・・・。いえ、大丈夫ですけどね・・・・・
隣人: 行ってらっしゃいな。お湯屋分かりますか。出て右の方に・・・・・
八: 何とか分かります。どうも・・・・・
杢: あいつ、湯に行ったよ、オイオイ。こっちへ来い。聞いてるかい。聞いてる? 入っちゃえ。
 いいね、筋書きは判ってるね・・・・・。何? 火が少し火鉢に熾きてる? そうか、じゃァ、そこに炭ィ
ドンドン入れて、ガンガン火ィ熾しちゃいな。いいね。
・・・・・で・・・・・その行燈の灯り、芯を細くしちゃって薄暗くしちゃおう。
野郎が帰ってきて、火がガンガン熾きてて、薄暗くなってりゃァ『おかしいぞ』 と思うよ。
そこでお前は庭に出て、そこに持って来たドラを一つ、『ボーン』と鳴らせ、遠寺の鐘だ。
で、虎さん、お前さんに頼んだのはここだ。体が小さいから仏壇の下に入れるだろ。そこで、鉦(カネ)を
一つ『チン』とやる。『ボーン』の『チン』だ。
 箒を二つ持って来ただろう。一本の方を水に濡らしといて、濡らしてない方で、庭から上がって来て、
襖をサラサラ、サラサラッて撫でてやるんだ。『女の髪の毛』って訳よ。
で、その襖に細引きを付けといて、両方から引っ張って開けるんだ。ひとりでに開く、ってアレだ。
野郎、覗きに出てくるだろうから、ここで俺が水の付いた箒で奴の顔を逆さに撫で上げる。
その前に鴨居に釘ィ打って紐で金槌をぶら下げといて、それを上下(ウエシタ)に動くようにしとく。
顔を撫でられて逃げようとした時に、その金槌が野郎のおでこン処に当たるように、紐を合わせとく。
『ギャッ』 と逃げて 『ゴツン』 とくる。これで野郎二度と帰って来ないと思うよ。
・・・・・いいね、え、野郎、帰って来た。よしよし、虎さん仏壇、二人は庭へ・・・・・
八: どうも、お隣さん、相すいませんでした。留守に誰も来なかったですか? そうですか、どうも。
いいお湯でした。おやすみなさい・・・・・。いいなァお湯は・・・・・。湯は裏切らないね。いつ行っても
いい心持ちにしてくれるから嬉しいね。さて、と独りで一杯やるか。それとも冷やかしにでも行くかね・・・・・。
えーと、・・・・・アレッ?・・・・・おかしいね。何だい、こりゃァ、薄暗くなってらァ。火がこんなに熾きてるよ。
ハテナ、・・・・・。
 オイ、まさか、本当に出るんじゃァねえだろうなァ。古狸の奴の話は本当なのかね。嫌だなァ。
確か、引っ越して来て一日、二日は何でもねえって言ってたよ。三日、四日経った雨のシトシト降る晩
なぞに・・・・・てえ話だったい。初日で晴れだ。星が出てんだから幽霊は出ないよ。それに遠寺の鐘もまだ
鳴ってないし・・・・・
杢: オイ、源さん、ドラだよ、遠寺の鐘だい・・・・・
源: ブワーン
八: 何だい、今のは? 『ブワーン』ってやがったよ。近いよ、遠寺じゃなくて、近寺(チカデラ)の鐘かね、近間に
寺があったっけ。鐘なんざァ驚かねえよ。驚くもんか。仏壇の鈴(リン)が鳴らなきゃァいいんだ。仏壇の鈴が、
『チィー・・・・・ン』 と鳴ってやがら・・・・・。サラサラッて、ああ、髪の毛の音がしてやがら・・・・・。
四畳半、六畳、合いの間じょ襖が・・・・・ズズズーッと、あ、あわ、あ、開いたぞォ、
 誰だ、そこに居るなァ・・・・・
 *って顔をだしたところを、水につけた箒で顔を逆さに擦り上げた。
『ギャッ』 と表へ駆け出そうとした時、金槌ィ合わせておいたから、はずみのついたオデコにゴチンと
当たった。
八: ギャァー! こんな家にゃァ、居られねえ。逃げろ逃げろ大家ン処に掛け合おう
(ドンドンドンドン) アワワワ アワワワ、あれっ、 あーあ 大家さん、あしゃ・・・・・しゃ・・・・・しゃ・・・・・
アワワ・・・・・
大家: 何だい、誰だい?
八: アワワワ、あしゃ・・・・・しゃ
大家: 何を言ってやんだ。今、開けらァ、何だい、お前さんは?・・・・・
八: アワワワ・・・・・、お、お前、お前さん、大家か?・・・・・
大家: 家作を持っているから大家だ。それがどうした? それよりお前はなんだ?
八: 俺は店子だ
大家: 店子? 知らねえよ
八: 今日越して来たんだ
大家: 何ィ、今日越して来た、あの空家にか? 誰に断わって・・・・・
八: 差配人だ、古狸の杢兵衛だ
大家: 杢兵衛は別に差配人じゃァねえよ
八: そう言ってた
大家: よく判らねえが、何かわけがありそうだな。で、引っ越して来て、何で夜、俺ン処に飛び込んで来たんだ?・・・
八: あの家に幽霊が出たんだ
大家: 幽霊がァ? 本当か?
八: 嘘でこんなに驚くかい。出たんだよ、出るとは聞いてたけどよォ
大家: 俺は聞いたことはねえ、誰に聞いたんだ?
八: 古狸だい。あそこにもと、若い後家が住んでて、それが殺されて、新しく越して来た奴の処に
『恨めしい』 って出るんだい。こっちは出ねえと思って借りたんだ
大家: そうか読めた。それで、あの空家に借り手がなかったんだな・・・・・
八: それが出やがったんだい。出ただけじゃァねえや。幽霊の奴ァ、追い駆けて来やがって、俺のオデコを
拳固で殴りやがった。その拳固の堅えの何の、あの幽霊には骨がある
大家: 何言ってやがる。なら、仕様がねえじゃないか。出るの承知で借りたんなら・・・・・
八: 出ねえと思ったから借りたんだい。何とかしろい、家を世話しろ
大家: そんなこと出来るか
八: 出来なきゃァ、お前さんがあすこに住みな。幽霊が出る代わりに、家賃が只だ
大家: なに? 家賃が只だ? それなら俺がすんでやる
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