安呑演る落語

音源などを元に、起こした台本を中心に、覚え書きとして、徒然書きます。

ちりとてちん

2008年02月06日 | 落語
隠居: さァ、困ったナ。こういうことがあうからなァ。いや、しょうがないヨ。返すわけにはいかないだろう。といって、いつまで取ってもおけないしナ、この陽気だから。えッ、食べきれやしないし、誰かに手伝って食べてもらうだナ。そうだ、お向こうの金さん呼んできなヨ。あの人はお世辞の上手な方でナ、どうも、聞いてる方が『この人はお世辞だナ』 と思いながら、ついその気になることもあるかなナ。おかしなもんだヨ。でも、いい人だヨ、あれだけのもンだヨ。ちょいとお願いしたいことがあるからって呼んできなヨ。
・・・・・あッ、どうもご苦労さま。えッ、どうした? すぐ来るって? あゝ、そうかい。あッ、来た様子だ。
あーあ、さァどうぞ、どうぞお上がりください
金さん: どうも、こんばんは。ご無沙汰ばかりしておりましてどうも、申し訳ありません。エー、あがらなくちゃァいけないいけないと思いながら、つい貧乏暇なしで。いえ、目と鼻の先にいながら、どうもなんとも申し訳ございません。えーッ、恐れ入ります。でも、なんですナ。ここんとこちっともお目にかかりませんが、いつもながらご壮健で結構でございます
隠居: ちっともお目にかからないことはないでしょ。あァた、今朝、朝湯で会ってます
金さん: ハ、ハ、ハ・・・・・そうでした。今朝、朝湯で会いましたネ。朝湯からこっち、ズーとお変わりなく・・・・・
隠居: 変な挨拶だネ。えー、実はネ、あなたをお呼びしたのはほかでもないんだが、ちょいとお願いしたいことがあって
金さん: あゝ、なんでしょうか
隠居: 実はネ、家で今日、碁の会をやるつもりでネ、まァ、好きな連中が何人か寄るわけでネ、その後、まァ大したこともできないが、ご膳を出したいと思って、で、まァ料理をあつらえたのサ。ところが、これ、お前さんネ、急に都合ができて、会がとりやめだ。お客さんは一人も来ないが、料理だけは来ちまう。あゝ、困っちまうヨ、このお前さん、陽気だヨ。いつまで取っちゃァおけないし、といって家はお清と二人っきりで、とても食べきれない。これは返すわけにもいかない。そこで、よかったらひとつ手伝って、料理を食べてもらいたいと思ってあなたを呼んだんですが、どうです、あの、お腹の方は?
金さん: あゝ、あゝ、あゝ。お料理を? ご馳走になれるんですか。ありがとうございます。ちょうどあたし、お腹のすいてるとこで、なにかいただこうかなと思っているとこでしたから、ありがとうございます。ぜひ頂戴いたします
隠居: それはちょうどよかった。オイ、じゃ膳をこっちへ運びなさいヨ、ウン。それからネ自慢のものがあるんだが、お酒だがね、灘の生一本、これはいい酒だ、ひとつやってみてください
金さん: へェ、ヘェ、灘の生一本、そういう結構なお酒があるということは話に伺っておりますが、まだ一度も頂戴したことはございません
隠居: 「いや、やってください
金さん: そうですか、どうもありがとうございます。あゝ、どうも恐れ入ります。ヘェ、えッ、こんな大きなコップで、これでですか? イヤ、どうも、恐れ入りますナ。いいえ、結構です、結構です、大きい方が。かえってネ、猪口でやりますってェとネ、量がわかりません。これなら量がわかりますから。え、いや、あたしは・・・・・なんです・・・・・え? そうですか、お酌していただくんですか、もったいないですね、あなたにお酌していただいてバチが当たりゃしませんか。いいえ・・・・・かえってもう、暑いときは冷の方がよろしゅうございます。・・・・・ややや、やァ、やァすごい、うまい酒だ
隠居: なんだなァ。うまいもまずいにもまだ飲まないのに
金さん: 飲まなくてもわかるんです、いいお酒は色からしてちがいますからね、コクがありますから、ベトついてますからね。フーン、こうやってお酒も盛り上がってまして・・・・・えゝ、結構です、いただきます(飲む)・・・・・
ヘェ、これが灘の生一本・・・・・ヘェ、いいお酒ですねえ、まったく。こんなおいしいお酒頂戴したことがありません。ウン、アー、おいしいすネ、こりゃァ。なんすか、喉がスーッとひろがってくような感じがします。へへへ、本当に。
えッ、これが? あゝ、鯛のお刺身ですか、これがですか? ヘェー、あたし、鯛のお刺身があるてえことを話に・・・・・・・まだ一度も頂戴したことがありません
隠居: まァ、やってみてください
金さん: ヘイ、ありがとうございます。どうもすいません・・・・・へ、へ、へ・・・・・これがね、このわさび、ヘーェ、きれいな色をしてますなァ、これは。一体これはなにでできているもんです?
隠居: いやだナ、この人は。だから・・・・・鯛ですよ
金さん: オウ、そうすナ、お魚・・・・・わかってます。きれいなお魚でネ、目も鼻もありませんけども
隠居: お刺身だよ、それは
金さん: そうです、そうです、わかってます、お刺身ですネ。いただきます、ヘェー。(食べる) フーン、ヘェー、・・・・・わさび効いたか、目に涙・・・・・なんて、馬鹿なもんですネ、人間なんてェものは。結構なお料理伺ったり、わさびの効いたので目に涙をうかべましてネ、ェヘヘ・・・・・おいしいもんですネ。こういうおいしいもんをいただけば、後、芋ばっかり食ってたって大丈夫です。(食べる) ウム・・・・・結構なもんです。お酒といいお魚といい、まことにどうも、申し分ございません。盆と正月が一緒に来たようなネ。えッ? なんです?そっちのそれが鰻の蒲焼ですか? あゝそうですか、鰻ですか、これ? いや、鰻の蒲焼があるてェことは話に聞いたけども、一度も頂戴したことはない・・・・・・
隠居: やってくださいヨ
金さん: ヘェ、これが鰻ですかねェ、こういうふうになるてェとわかりませんなァ。ヘェー。(食べる)・・・・・ウーン・・・・・いい味なもんですね、これは。口の中にいれるとトローッとして、この味のなんともいえない、ヘェー、こりゃァどうも。こういうおいしいものが世の中にあるとはしりませんでした、まったく、えゝ。ウーン、こりゃァうめえ。ウン・・・・・鰻も・・・・・
隠居: なんだなァ、食べるとか喋るとか片っ方づけなさいヨ。でも、嬉しいや、そうやって喜んで食べてもらえると。こっちも張り合いがある。そうだ、あたしもお付き合いしよう。清や、膳をこっちへ、あたしのも持って来ておくれ。あたしは飲むんじゃないんだ、チビチビなめる方だからナ、ウーン、燗もしてもらおうかな。そうだ、お豆腐があったら貰いたいナ。お豆腐ってェのはン、あれはお酒の毒なんぞみんな吸い取るなんてェことを言うが、お豆腐をひとつ・・・・・。エ? なに、買いに行って参ります? あゝそうかい。じゃ、いいんだ、いいんだい。わざわざ買いに行くならいいヨ、ウン。 ございます? なにが? お豆腐が・・・・・この前買っといたのが忘れて取ってございました? この前てばありゃァ随分前だナ。十四、五日前になるんじゃないかい、食べさせてもらったのは。フーン、鼠入らずの隅に忘れてございました? オイ、そりゃァだめだヨ。この陽気にそんなとこね入れっぱなしで・・・・・持って来てごらん、持って来て。ウン、どうせ食べられっこないんだから、あゝ、そこへ置いて、あッ、これか。ほうらごらんヨ、ボーッと黄色く、お前、毛が生えちゃってらァね。スッカリ腐っちゃってる。だめだヨ、気をつけなきゃ、ネッ、台所のことはお前さんに任してあるんだから、こういうことを気を付けないともったいない、これ。早く食べるとか、いや、向こうへ持って行って捨てなさい、捨てなさい。どうせもう・・・・・あゝ、ちょいと、お待ちヨ。それをもう一度ここに持ってきな。
いいから、ここへ持って来て置いてごらん。あッ、それから粉の赤い唐辛子があったろ、あいつな、あれを持ってききてみな。ハイ、ハイ、ハイ、ウン。どうもよくまあこう腐らしたもんだよナ。まったく。しょうがねえや、世話ァ焼ききれねェ
金さん: ウ、ウ、ウン、大変な臭いだ、こりゃァ。ウウン、ウン
隠居: いやいや、これはべつにあなたに食べさせようというんじゃないんだ。今、この赤い粉の唐辛子をふりかけてネ、豆腐を崩して、豆腐の形をなくして、赤いドロドロしたものができるでしょ、ホラ。
オイ、清、なんか容れ物がないかな、なんでもいいヨ、えッ塩辛の瓶があります? えッ、結構だナ。
紙がはがれてます?あゝ、紙がない方がいいヨ。瓶だけで結構。持って来てこれへ入れてナ、変な顔をしてんじゃない。入れたら余ったのを捨てちゃっていいヨ。それへ蓋をしてちょいとそっちへ片付けといてくれ。
ご苦労だかもう一度つかいに行っとくれ。六さん呼んできとくれ、ちょいとお願いしたいことがありますって、なんにも言うことはない。すぐにおいで願いますってナ。 ご苦労さま。いえネ、この先にネ面白い男がいるんだ、六さんつって、ネ。 あなたを前に置いてこんなことを言っちゃァなんだが、あァたは大変お世辞の上手なかた。えッ、いえいえ本当にサ。その男はお世辞なんてのはこれっぱかりも言ったことがない。
で、なんか物を食べさせてやっても、『おいしかった』 『うまかった』 ということを言わないでェ。
なんかものを聞くだろう、けっして知らないということを言わない、なんでも知ったかぶりをする。
大変悪い癖だからなァ、一度なんかいい折があったら、懲りるような目にあわせて、その悪い癖を直してやりたい・・・・・とこうあたしはまァ普段から思って、今ちょいとネ、面白いことを考えついたんだ。 
その男が今ここに来るからネ、そしたら喜劇を一幕ご覧に入れよう、エッ、ウン。 
アッ、そうだ、あなたがここにいたんじゃまずいなァ。 あのー、隣の部屋かなんかに行ってもらってネ、お膳をそっくり持ってって、それで、見ててもかまわないけど、笑ったりなんかしちゃァだめだヨ。 
こっちの方の仕事がやりにくくなるからね。膳をそっくり持ってってネ、お酒もドンドンやってくださいヨ
金さん: いえ、もう、お酒あたし、だめです。いや、本当。たんといただけない方ですから、一合上戸の方ですから、いや、もうこれで充分です。えゝ。お酒は結構ですから、いや、充分にもう酔いが回りました、エゝ
隠居: 本当かい。遠慮されちゃこまるんだ、えゝ?
金さん: いえ、いえ、遠慮しません、本当に結構です。これだけもう頂戴すりゃァ、もう
隠居: おうかい、そいじゃァ、お酒がいけなきゃァ、ご膳の方をおあがんなさいヨ
金さん: あゝ、ご膳。ご膳てェいいますとあのおまんま、あの、お米の。いえ、あっしはお米のおまんまがあるということは話に聞いていた・・・・・
隠居: わかった、わかった。そっくり膳を持ってネ・・・・・結構、結構。
・・・・・ハイ、ご苦労さま、そうしたい? ・・・・・一緒に来た、あゝそうか
六さん: あッ、こんばんは
隠居: さァ、どうぞ
六さん: こんばんは・・・・・今お清さんお使いで、なんだか急な用だそうで・・・・・
隠居: わざわざどうもお呼びだてしてすまなかったナ。 いえネ、実はあなたにお願いしたいことがあってネ。
それでまァこうやって来ていただいたんだが・・・・・ウン
六さん: なんですか?
隠居: 実はネ、今日家で客をするつもりでネ、まァ何人か集まるわけでネ、大したこともできないが、ご膳を出したいと思ってネ、料理なぞあつらえたんだが、ところが、これが急に都合ができてネ、とりやめでお客さまが一人も来ない。えッ、お料理だけ来ちまった、返すわけにもいかない。うちは清と二人っきりだ、とても食べたって食べきれやしないヨ。 それからネ、よかったらひとつ手伝って食べてもらいたいと思ってネ、この陽気だからいつまでもとっておけないからネ。 どうです、六さん、お腹の方は
六さん: ウン、そうですか・・・・・イヤ、飯食っちゃったばかりでネ、腹くちいんですけどネ
隠居: そうかい。そうれじゃだめだナ
六さん: 詰めて詰まらねえことはありませんけどもネ。 困ってんなら食べてあげましょうか
隠居: そうかい、いえ、まァね、食べてもらえばこっちも助かるヨ。捨てちまうよりはいいからね。でも、無理して食べてもらって体でもこわして・・・・・
六さん: いえ、そんなことはでえすヨ。体をこわすなんてことはありませんけども、まァ、食い物さえいいものならねェ。なんす、いったい?
隠居: 食べてもらえるんなら、今こっちに膳を運ばすから。オイッ、こっちに膳を運びなさいヨ。それからネ、あなたはあの、いける口だろ? お酒だがネ、こりゃァ自慢だ。灘の生一本、いい酒だ、ひとつやってみてください
六さん: 灘の生一本・・・・・そりゃァ本物じゃねえでしょ
隠居: いやァ、本物だヨ
六さん: いや、そんなことねえんすヨ。灘を出る時分にはもう水が入ってますからね。 われわれの手に入る時分には方々で水が入ってネ、よく水っぽい酒だなんていうが、酒(サカ)っぽい水と言った方が間違えないでしょう
隠居: そんな悪いもんじゃないんだヨ。 まァひとつやってみてくれ
六さん: あゝそうすか、あゝ、コップでネ、えゝ。ちょいとにしてくださいヨ、変なもんで飲めねえといけねえから、ちょいと、ちょいと (飲む) ・・・・・まァ。これならまあまあですな
隠居: あゝそうかい。それでよかったらネ、いくらでもあるんだからネ、充分にやってくださいヨ。あッ、それから鯛のお刺身、これを肴にネ
六さん: あゝ、鯛ネ。腐っても鯛ですからネ。鯛、平目というと上等なように言われてますがネ、やっぱり鮪が一番うまいすよ。鯛だって食えねえことはないんですけどね
隠居: あのう、鰻の蒲焼がよかったら
六さん: あァあ、養殖ウナギネ、こりゃァ。ネッ、そうなんすよ、この川でもってネ、こう自然におおきくなった脂ののった生きのいいなんてえのはまあないすね。 みんな、向こうの方に行きますてェとネ、養殖場でもって鰻を養殖してますよネ、こんなになってトグロを巻いてネ。 あんなものは鰻の味もなにもありゃァしませんからねェ
隠居: あゝ、そうかな。かえって、あの養殖の鰻の方がいいなんてェことを聞くがねェ。せっかく呼んであなたの口に合うものがなくってねェ、気の毒しちゃったなァ。あなたなんぞ食通の方だ、なんでもいろいろ食べてウーン、口はまァ、そう言っちゃなんだが贅沢なかただから、われわれと違ってねェ・・・・・あゝ、そうだ。贅沢ってえばいいものがあらァ。これならあなたの口に合うと思うがねェ、もらい物なんだヨ、こりゃァ。どことかの名物ったなァ。あ、そう、台湾の名物、ウン。 名前がネ、えー・・・・・・ちりとてちん。台湾のちりとてちん。知ってるかい、あなた
六さん: ちりとてちん? 台湾・・・・・あァあ、あの台湾のねェ、ちりとてtん・・・・・知ってます、知ってます。
あっしは台湾に行っている時分にあれでもって飲(ヤ)ってましたから
隠居: あゝ、そうかい。やァ、あたしはどうもあいつはなんか、口に合わないんだなァ。。ウーン、なんてえのかナ、こう、蓋を取ると、あの臭いがサ、あのプーンとくる・・・・・
六さん: ありゃァ臭いで食うもンすヨ、ありゃァ
隠居: そういうもんかい。ヘェー、おい、ちょいと、あれ持っておいで、さっきの。そりゃよかった、あなたがやってたてェの・・・・・じゃ、これでひとつ飲ってもらおう。ハイ、ハイ、これなんだがネ
六さん: あゝ、そう、これ。この赤いドロッとした水気のある・・・・・よくこれが手に入りましたね。貴重なもんですよ、こりゃァ。これはあのネ、粉末もあるんですヨ、こりゃァ
隠居: 粉末があるの・・・・・そりゃァ知らなかったナ、粉末があるとは・・・・・。粉末はどうやって食べンの
六さん: あれは、もう、なんですねェ、湯をこうさしましてネ、キュッとこうかき混ぜてネ、あの西洋辛子と同じような理屈ですヨ、こうかき混ぜましてネ、そうするとすぐ食えるんですからね
隠居: ヘェー、そうかい、ハ、ハ、ハ・・・・そんなことは知らなかったネ。じゃ、ま、これでひとつ飲ってみてくださいヨ。
オイ、お皿を持っといで。でもよかったヨ、あなたがやってたってのは、粉末があるとは・・・・・そのネ、気がつかなかったよン。 粉末の方もやっぱり、ちりとてちんてェいうのかい?
六さん: いや、粉末はやっぱり名前が違いますヨ
隠居: なんてんだい
六さん: そりゃ、あの・・・・・ちりんとてんちん
隠居: じゃ、やってください。さァ、やってください
六さん: エゝ、エゝ、これさえありゃ、あっしはなんにもいりませんヨ。・・・・・ハハイ・・・・・ちりとてちん・・・・・
隠居: えゝ、やってください
六さん: これネ、もったいないですヨ、むやみに食べちゃァ。ウン、これはなかなか手に入るもんじゃねえ
隠居: えゝ、いいんだ、いいんだい。あたしのとこじゃ食べないんだだらネ、これ肴に、ネッ。遠慮しないで・・・・・
六さん: じゃ、あしはこれそのままそっくりいただいて帰って、楽しみに少しっつ・・・・・
隠居: いや、そんなことしないでいい・・・・・みんな食べちゃったっていいんだ。あと、みやげにあげますよ、持ってってください
六さん: もったいないすヨ
隠居: もったいないことはない。食べないほうがもったいないんだから・・・・・これ、食べ方やなんかいろいろあるんだろ、これ
六さん: えー、難しいんです、これ食べんのは
隠居: そうだろう。ウーン、あっしはなんんもわからないんで、ここでひとつ食べて見せてくれないかナ、どんなふうにして食べるものなのか
六さん: そりゃあなたネ、その教えてもらいたいって言うなら、そりゃ食べて見せないこともありませんけどもネ
隠居: あなた、そんなことを言うけど、食べ方知らないんじゃないのかい?
六さん: 冗談言っちゃいけませんヨ。あっしはいつも、向こうでもって朝に晩にこれやってたんだから。
ウン、食べてごらんに入れますけどネ、こりゃなかなかネ、食べられるようになるのは大変ですよ。
これがちゃんと食べられりゃァ、もう一人前の食通。 エヘン・・・・・このツーンとこますが、これが特徴なんです、このツーンがなきゃァ、くだらねえもンですからねェ。・・・・・で・・・・・目の方へピリピリッときますけどもネ、エッ・・・・・これ食べるときは、向こうじゃ箸もしゃもじもなんにもいらねェんですヨ。
鼻をこうつまんでおきましてネ、目の方を眠っといて、端の方から口の中に流し込む (食べる)・・・・・
あの・・・・・オエッ!・・・・・フーッ・・・・・オエッ・・・・・
隠居: なんだい、お酒? あゝ、お待ちお待ち。ヘェェェ、わからないもんだネ、どうも。いや、難しいネ。のどから出したりいれたり・・・・・とてもそんな真似はできねえ・・・・・さあさ・・・・・やってください
六さん: あゝ、(食べる) へ・・・・・エイ、うまかった
隠居: うまかったはよかったナ、そりゃァどんな味のするもんだい?
六さん: えゝ、こりゃァ、ちょうど豆腐の腐ったような味がします
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