蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

殺戮は正確に

2016-01-23 10:43:41 | 日記
 スコープを覗く。出てきた。いつもながらキレのいい動きをしている。直角に曲がるかと思えば、蛇行したり、まるで滑るように移動していく。
 おそらく私のようなプロしか手が付けられないだろう。
 ゆっくりと引き金を絞る。身体のど真ん中をぶち抜いてやった。手と足とはぴくぴく動いている。往生際の悪い奴だ。なんとか隠れる場所へ逃げ込もうとしている。やはり、一発で頭を吹き飛ばさないとダメなようだ。壁に潜り込む一歩手前で動かなくなった。
 壁の反対側から子どもが出てきた。この商売をしていて一番嫌なパターンだ。しかし、情けをかけるわけにはいかない。せめて苦しまないように殺してやるのが精いっぱいというものだ。
 頭を吹き飛ばせた。
 母親が出てきた。子どもの死体を抱きながら、周りを見回している。スコープを通してだが目が合った。こちらが見えるはずはないのだが、恨みのこもったまなざしが私を射ぬいている。母親の頭を吹き飛ばしたはずだったのに、どこかで手元が狂ったのだろう。左足を射ぬいた。子どもの死体を抱えながら、壁の向こうへと消えて行った。
 気がつくと、壁の向こうから、黒光りする身体を誇示するように10匹ほどが飛んできた。銃を置いてこんな時のために用意しておいたスプレーをバッグから取り出す。
 身体が凍りついたようになって奴らは落下していった。
 一匹みつけたら十匹いると思えと教えられてきた。戦いはまだまだ続きそうだ。我々が絶滅すれば奴らが勝者となる。そんな地球の姿は想像したくもない。