新春の空に太陽が昇ってきた。なんか変だ。遠近感がおかしい。と思っていたら、二個目の太陽が昇ってきた。二つとも小ぶりだ。続いて三個目、四個目と昇ってきた。
テレビをつけてみると、案の定臨時番組になっていて、天文台の人とか、宇宙の研究者などが、わいわい言っている。
途中から見たのでアレなのだが、どうやら太陽が四つに分裂したらしい。そんなことがありうるのでしょうかとアナウンサーが質問すると、ありうるも何も目の前でこんな現象が起きているんだからと、天文台の人が言っていた。一寸怒っているようだ。説明できない現象が起きると大なり小なり人間はイラッと来るようだ。まして、専門家である。そんなこと私もわかりませんと言えば簡単なんだが、プライドがあるもんなぁ。
定型だけれど、街の声も出てきた。
「いやー、分裂の時代なんですね」というのがなんかピタッとくる。
「四つになって、地球の気温はどうなるの?」という事を心配している人もいる。すぐにスタジオにカメラは切り替えられた。
「いま、地球の気温はどうなるかという声がありましたが、どうでしょうか」
また、天文台の人が指名されている。
「えー、まだ明確な違いは出ていないようです」と言って、スマホを出してどこかと連絡を取っている。
「観測中なのですが、いまのところ、目立った変化はないようだという事です」
そうか、天文台と連絡取っていたんだ。
「こんなことってありうるんですか?」と言う問いに対して、宇宙の研究者が答えていた。
「いやー、私も長年観測してきたのですが、こんなことが実際に起きるとは思ってもいませんでした。宇宙の中でこんなことが起きるなんて考えてもいませんでした。」
次の日の朝、太陽が三つ昇ってきた。一つ減っている。特番では、明らかに、気温が下がってきていると天文台の人、気象予報士の人が言っていた。
テレビは、「今、太陽は何個か」を連日と言うか、画面の隅の方で報じ続けた。
さぁ、えらいことになってきた。「温暖化の危機」どころではなくなってきた。世界中の気象学者が集まって、対策を協議し始めた。コンピューターの予測では、各国が採っている「温室効果ガス削減」路線を続けると、地球の寒冷化は確実になるという。
この間、ずっと太陽は三つであり続けている。
ついに各国の首脳の会合が開かれて、「温室効果ガス増加」へと舵が切られることになった。
二酸化炭素を如何に排出するかが議論の中心となった。
「牛のゲップ促進剤」と言う薬も発売された。石炭にも注目が集まった。ただ、大気汚染は深刻な状況になっているので、フィルターの設置は先進国の負担で推進しようということになった。
海水温も目に見えて低下し、太平洋の諸島では、水没していた土地が姿を現した。海水の膨張率が低下したのだ。
その年の冬、日本各地のスキー場は好景気に沸いた。雪がたっぷり増えたからだった。いいことずくめのように見えた。
温室効果ガスの排出量も順調に伸び、小さな太陽が三個になったことを補えるとのやや楽観的な見通しも示された。
そして、元旦。「愕然」とはこのためにあるような言葉であった。小さな太陽が四つ昇ってきたのだ。
ここ一年間やってきたことはどうなるのか、いやいや、いつ三個になるかわからない、もうやってらんないよ・・・いろんな声がテレビにも新聞にも、ツィッターにもあふれた。
イギリスのある新聞が、一面に以下のような見出しをつけた。
『There are more things in heaven and earth, Horatio, than are dreamt of in your philosophy.』
『天と地には多くのことがあるのだよ、ホレイショー、所謂哲学で知られたとされるよりも、もっと多くのことが』
この一年、テロの数がやや減少したというのは、このように、人類全体が翻弄されていることと関係はあるのだろうか、という社説がその新聞に載った。
テレビをつけてみると、案の定臨時番組になっていて、天文台の人とか、宇宙の研究者などが、わいわい言っている。
途中から見たのでアレなのだが、どうやら太陽が四つに分裂したらしい。そんなことがありうるのでしょうかとアナウンサーが質問すると、ありうるも何も目の前でこんな現象が起きているんだからと、天文台の人が言っていた。一寸怒っているようだ。説明できない現象が起きると大なり小なり人間はイラッと来るようだ。まして、専門家である。そんなこと私もわかりませんと言えば簡単なんだが、プライドがあるもんなぁ。
定型だけれど、街の声も出てきた。
「いやー、分裂の時代なんですね」というのがなんかピタッとくる。
「四つになって、地球の気温はどうなるの?」という事を心配している人もいる。すぐにスタジオにカメラは切り替えられた。
「いま、地球の気温はどうなるかという声がありましたが、どうでしょうか」
また、天文台の人が指名されている。
「えー、まだ明確な違いは出ていないようです」と言って、スマホを出してどこかと連絡を取っている。
「観測中なのですが、いまのところ、目立った変化はないようだという事です」
そうか、天文台と連絡取っていたんだ。
「こんなことってありうるんですか?」と言う問いに対して、宇宙の研究者が答えていた。
「いやー、私も長年観測してきたのですが、こんなことが実際に起きるとは思ってもいませんでした。宇宙の中でこんなことが起きるなんて考えてもいませんでした。」
次の日の朝、太陽が三つ昇ってきた。一つ減っている。特番では、明らかに、気温が下がってきていると天文台の人、気象予報士の人が言っていた。
テレビは、「今、太陽は何個か」を連日と言うか、画面の隅の方で報じ続けた。
さぁ、えらいことになってきた。「温暖化の危機」どころではなくなってきた。世界中の気象学者が集まって、対策を協議し始めた。コンピューターの予測では、各国が採っている「温室効果ガス削減」路線を続けると、地球の寒冷化は確実になるという。
この間、ずっと太陽は三つであり続けている。
ついに各国の首脳の会合が開かれて、「温室効果ガス増加」へと舵が切られることになった。
二酸化炭素を如何に排出するかが議論の中心となった。
「牛のゲップ促進剤」と言う薬も発売された。石炭にも注目が集まった。ただ、大気汚染は深刻な状況になっているので、フィルターの設置は先進国の負担で推進しようということになった。
海水温も目に見えて低下し、太平洋の諸島では、水没していた土地が姿を現した。海水の膨張率が低下したのだ。
その年の冬、日本各地のスキー場は好景気に沸いた。雪がたっぷり増えたからだった。いいことずくめのように見えた。
温室効果ガスの排出量も順調に伸び、小さな太陽が三個になったことを補えるとのやや楽観的な見通しも示された。
そして、元旦。「愕然」とはこのためにあるような言葉であった。小さな太陽が四つ昇ってきたのだ。
ここ一年間やってきたことはどうなるのか、いやいや、いつ三個になるかわからない、もうやってらんないよ・・・いろんな声がテレビにも新聞にも、ツィッターにもあふれた。
イギリスのある新聞が、一面に以下のような見出しをつけた。
『There are more things in heaven and earth, Horatio, than are dreamt of in your philosophy.』
『天と地には多くのことがあるのだよ、ホレイショー、所謂哲学で知られたとされるよりも、もっと多くのことが』
この一年、テロの数がやや減少したというのは、このように、人類全体が翻弄されていることと関係はあるのだろうか、という社説がその新聞に載った。