あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第七十三章

2021-02-28 01:08:36 | 随筆(小説)
我が子の亡骸を、胸に抱いて眠る母エホバ。
人が死を恐れるのは、死んだことがあるからである。
死を、知っているからである。
わたしが死を恐れないのは、これまで一度も、死を知らないからである。
死から生まれし者がどのようにして、死を知り得ようか。
母よ、どうしてあなたとひとつに帰れるだろうか。
わたしはあなたから生まれ落ちた為、
わたしはあなたである。
あなたはわたしで在り、死は永遠にみずからを知る日は来ない。
彼は生命の絶えた世界で彼女に向かって言った。
きみが毎晩、見知らぬ男と寝るのはじぶんの母親の顔を探しているからだ。
でもきみは知ることなんてできないだろう。
きみの母親に、もともと顔は存在しない。
存在してはいないものを、きみは見つけることはできない。
彼女は花の本質は花軸でも花弁でも雄蕊でも雌蕊でも子房でも根でも葉でもなく、存在するどの部分でもないと彼に応えた。
宇宙のように巨大な万華鏡のどの面にも、存在していない。
でもいるんだ。その花のなかに、ぼくのママはいるんだ。
ママは顔がないから、ぼくに求めている。
ぼくは母を知らない。ぼくは知ることなんてできないだろう。
ぼくらは愛に堪える日まで、絶えつづけるだろう。
そして果てしない夢を見つづける。
どこにもない道を、歩きつづける。
端のない光る紐を、結びつづける。
きみはぼくと。













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