はくちょう座の二重星「アルビレオ」☆全天一と言われるこの美しき星を「天の川の流速を測る観測所」に見立てたのは、宮澤賢治。「銀河鉄道の夜」での話だ。さまざまの謎めいた人物が乗り込んでくる「銀河鉄道」で、いじめられっ子の少年ジョバンニが、ケンタウル祭の夜、幻想の宇宙列車旅行に出発する。
アルビレオはトパーズ色とサファイア色の二重星で、賢治は「青宝玉と黄玉の大きな二つのすきとほった球が輪になって・・」と作中表現している。銀河鉄道が最初に通過するのはこのはくちょう座で、アルビレオはこの白鳥のクチバシにあたるβ星だ。「立派な眼もさめるやうな、白い十字架が立って・・・すきっとした金色の円光をいただいて、しづかに永久に立ってゐるのでした。」と書かれている。(メロスが見た星<えびな博・みつる著>より抜粋引用・以下も同様)
さて、プラネタリウム<満天>ではこの「銀河鉄道の夜」が、KAGAYAさんというCGアーティストに手掛けられ、40分のアニメ映像として上映されている。鉄道は、夏の空に輝く星座を南にたどりながら進み、実際に乗車しているような感覚を楽しめるそうだ。ドームの支配人は「お仕着せがましくなく、活字の世界に近い演出で、解釈は見た人に委ねる作品。新鮮です。」と語った。今年は全国18ヶ所に加え、中国・北京や台湾・台北でも上映されているとの事だ。(新聞記事・要約転載)
「銀河鉄道の夜」の最後に、本当の幸福を探すこの旅に出たジョバンニが、銀河の旅の終点「そらの孔(暗黒星雲・石炭袋)」で、共に旅をしてきたカムパネルラとも突然の別れを向かえる・・。物語はこの寒々とした光景で終わるのだが、後に見つかった原稿に第二次稿挿入部として「あらゆる人の幸福のために、おまえはあのプレシオスの鎖を解かなければならない」という言葉が彼に向かい語られているそうだ。(プレシオスの鎖=プレアデス星団(すばる星団)旧約聖書からヒントを得たものらしい。
最後に、賢治の詩を記そう。「春と修羅(生徒諸君に寄せる)より」
新たな詩人よ 雲から光から嵐から 透明なエネルギーを得て 人と地球によるべき形を暗示せよ
新しい時代のコペルニクスよ 余りに重苦しい重力の法則から この銀河系統を解き放て
アルビレオは双子の星☆。我らがゆり姫は5月生まれで双子座☆。賢治のこの詩は、明らかにゆり姫のことを詠っているように、僕には思える。<~amazing dream~>は時を越え、銀河鉄道の夜を走り続けるのだ。