実家から電話がかかってきた。
金曜日の17時過ぎだ。
日本時間は25時だ。
まぁ、カクテルバーの金曜日の夜だから
その時間まで営業していても全然おかしくない。
しかしそんな時間に
こっちに電話してくるなんて、それは尋常ではない。
一瞬家を留守にした隙の電話だった。
忘れ物を取りに部屋に戻ったときに
留守番メッセージが点灯していたので、
仕事の件かと思って、さっと確認した。
留守番電話には母の明るい声で
「もしもぉし。またかけまぁす。」の一言。
緊急事態でないのだけはよくわかった。
(母は常に用件を残さない。留守電の意味がない。)
しかしなんだろう、気になるので、
出先から携帯で電話をかける。
国際テレフォンカードを使って
イタリアから日本にかけたほうが安いのは
以前のエントリでも書いたとおり。
たとえ携帯からでも通話料金の心配せずにかけられる。
仕事場(つまりカクテルバーのほう)にコール。
いつものように一回コールで繋がる。すばやい。
受話器の向こう側が賑やかだ。
さすがに金曜日の夜だ。
母に用件を尋ねると
「あ、たいしたことじゃなかったんだけどね。」
そんな気はした。たいしたことじゃない。
あなたのメッセージの声でそれだけはわかっていた。
母 「今さ、お客さんたちと盛り上がってさ。」
私 「うん、賑やかそうだね。」
母 「あんたの知っている人ばっかりだよ。」
つまりは常連さんが集まって盛り上がっているのだ。
母 「でね、○○ちゃんが
『靴下履いて寝ると親の死に目に会えない』って
いうからさ。
あんたいつも靴下履いて寝るじゃない。」
私 「あ、それで電話してきたわけね。」
母 「そうよ。」
その後常連さんの間を受話器はぐるぐる回って
この「迷信」の話で盛り上がる。
私 「わかったよ。
今年の冬から寝るときには靴下履かないよ。」
この世の中に迷信は山ほどある。
ただの脅しじゃなくて、
昔から言い伝えられていることだから
きっと深い理由があるのだ。
靴下履いて寝たからって
「親の死に目に会えない」かどうかはわからないけれど
もしかしたら健康上に障害が出るとか、
なにか理由はあるのだろう。
遠く離れているから
本当に何かあったときに
すぐには駆けつけられずに
万が一のときに間に合わないということは
私も両親も十分承知している。
でもやっぱり
「死に目に会えない」なんていわれると、
行いを正そうという気になる。
というわけで今年の冬から
私は靴下履いて眠れないことになった。
迷信といえば
日本とイタリアでは色々違いもある。
うちの居候がよく言うのは次の3つ。
「家の中で傘を広げるとよくないことが起きる」
「梯子の下をくぐるとよくないことが起きる」
「オリーヴオイルのビンを割ると7年間祟られる」
最後のひとつなんか
とてもイタリア的でしかもすごい細かくてリアルである。