船で海からアクセスするか、
最寄りの街から約1時間半の
トレッキングでアクセスする以外には
辿り着くことができない、
リグーリアの小さな入り江にある
L'Abbazia di San Fruttuoso(サン・フルットゥオーゾ修道院)。
ドーリア家(Famiglia Doria)の所有であったものの、
一時放置されていたこの修道院は
ドーリア・パンフィーリ家(Doria Pamphilj)から
1983年にFAI(イタリア環境基金)に寄付され、
その後、修復が行われて一般公開となっています。
ポルトフィーノ山の緑と、入り江の青という
自然の織りなす色彩の中に、
白く浮き上がるような建築物は
海からアクセスすると言葉を失うような美しさです。
伝説では、スペインの司祭フルットゥオーゾは
その助祭二人とともに火にかけられて殉教しました。
そののち、アラブ人の侵略を受けたTerragonaから
司祭Prospero(プロスペロ)が
修道士をともなって逃亡する際、
フルットゥオーゾの遺灰をもっていた
若い修道士(Giustino)の夢にフルットゥオーゾが現れ、
彼に自分の遺体を安置する場所を示したと伝えられています。
その場所とは3つの特徴を持つところで
海岸沿いにある「凶暴なドラゴン」が棲息する
「洞窟」で、近くに「水源地」のある場所。
天使によって導かれた司祭と修道士たちが
この三つを満たす場所をリグーリアの海辺に見つけ
そこにいたドラゴンを天使が鎮め、
この地の水源の上に教会を建てたとされています。
建築群の起源ははっきりしませんが、
800年代には初期の修道院の建設が始まっていたとされています。
上記の伝説のように
当時スペインのTerragonaの司祭だったプロスペロが
アラブ人の侵略から逃れてリグーリア地方に辿り着き
殉教者Fruttuosoの聖遺物を安置するために
この地に教会を建てたのが始まりといわれています。
現存する修道院の建築物の大半は10-11世紀の頃のもので
神聖ローマ帝国皇帝オットー1世の未亡人アデライデの命により
改築が行われています。
この改築で、水源地に該当する場所に
ビザンチン風の丸天井をもつ教会が建てられています。
13世紀からドーリア家の手が入り
より海に近い部分に開廊付きの修道院施設を設け、
彼らのこうした改築協力に感謝の意を表する形で
修道士たちは教会のクリプタ部分に
ドーリア家の墓を集めた部屋を作ることを認めています。
現在もこのドーリア家の墓は残っており、
1275年から1305年に亡くなった
同家のメンバー7名が眠っています。
1467年に最後の修道士が亡くなると
ベネディクト会は修道院から去り、
ドーリア家に関係する臨時修道士などが出入りしますが
そのころから修道院の衰退が始まります。
1915年に大洪水に見舞われ
教会の一部が崩壊し、
奔流によって運ばれてきた土石により
修道院前に小さな砂浜が形成されました。
1933年にリグーリア州美術監督局による修復が行われ
洪水の被害を修復し、
改装されていた開廊の海側の三連窓を
オリジナルに戻したりしています。
1983年にイタリア環境基金に寄付されたあと
1985年から1989年に大掛かりな修復が行われました。
回廊部分は二層になっており、
下層部分のロマネスク様式の回廊は小さな庭園に面しています。
またこの回廊に面した一角に
前述の、白大理石とグレーの石を使った
二色作りの墓碑がならぶ、ドーリア家の墓もあります。
上層部分は12世紀に増築されたもので
1500年代にAndrea Doria(アンドレア・ドーリア)の希望で
大幅に手が加えられています。
修道院の建築物から少し離れたところに
大きな塔が建てられていて
急勾配の階段を使ってアクセスすることができます。
修道士たちが日常的に利用していた
淡水の水源地と修道院自体を海賊の襲撃から護るために
1562年にドーリア家によって建てられたものです。
この塔の、海に向かった二面には
鷲印のドーリア家の大きな紋章がつけられています。
ラパッロ、ラ・スペーツィア、
サンタ・マルゲリータ・リグーレから毎日船が運航されています。
ポルトフィーノからは約30分、
サンタ・マルゲリータ・リグーレからはポルトフィーノ経由で約45分。
L'Abbazia di San Fruttuoso
San Fruttuoso (Camogli)
開館時間:平日
1月・2月・3月・10月・11月・12月 10:00ー15:45
4月・5月・9月後半 10:00ー16:45
6月・7月・8月・9月前半 10:00ー17:45
土日
1月・2月・3月・10月・11月・12月 10:00ー15:45
4月・9月後半 10:00ー16:45
5月・6月・7月・8月・9月前半 10:00ー17:45
休館日:12月25日
入場料:5ユーロ(特別展開催中は7,5ユーロ)
インフォメーション:http://www.sanfruttuoso.eu